2026年2月23日月曜日

3月書評の9

◼️ 稲葉白菟
「神様のたまご 下北沢センナリ劇場の事件簿」

シモキタの地域ミステリ。小劇場をめぐる人間模様。続きあるよね?

下北沢は単身赴任時に数回行った。当時のシモキタ駅はすごい高い階段があったような。確かに広くない路地にお安くて小さくてクセのありそうな店がたくさんあるイメージ。劇場もあった。何かの用で夜10時ごろ歩いたこともあり、劇中の雰囲気も少しだけ分かる気がする。

下北沢の複合施設・シモキタザワ・イーストエンドに入っている下北沢センナリ劇場。そのオーナーの孫・竹本洸太朗は大学入学で神戸から上京、2つあるハコのうちセンナリ・コマ劇場の支配人・日英ミックスのウィリアム近松のもとアルバイトとして働くことになる。折しも、ホームズ物語のオマージュを上演しようとした劇団の出演者が小道具として持ち込んだ本物のアレクサンドライトの指輪が見つからず、盗難かという騒ぎが持ち上がるー(神様のたまご)

冒頭のエピソードには「The Adventure of the Blue Carbuncle」という副題がついている。ホームズ短編人気の1つ「青いガーネット」だ。クリスマス時期に盗品の、有名な青い宝石がガチョウの体内から見つかる、というお話。そちこちにパロディっぽい仕掛けも見える。ほか、サスペンスもの「死と乙女」、島崎藤村の詩をロックにする「シルヤキミ」、ちょっとホラーっぽい「マクロプロスの旅」、本格ミステリの色合い「藤十郎の恋」で締めとなる。

劇場に絡む人情もの、という感じがする。基本テイストはコメディっぽい。洸太朗の祖父がセンナリ劇場を立ち上げ、祖母はオーナー、おじがもう1つのハコ「ザ・センナリ」の支配人、小さい頃来た時遊んでくれた女性の和田は制作部長、まりやとダイク、2人の若いアルバイト。この本でも一部の者にフォーカスはされているが登場人物についての掘り下げはこれから、という感じ。これは続巻あるだろうなと。

街ものと舞台もの、両方あって、ステージも有効に使って、ライトなものから本格まで、舞台、芝居を使ったミステリも過程はおもしろい。ワクワクして読める。

青いガーネットのネタについては、議論は尽くされている感があり、プチシャーロッキアンとしてはまあ想定の範囲内。他にもちょっと結末が予想できるな、という作品もあった。謎そのものはどうなるのか、という期待感を持たせる異色さ。でも結末はもうひとつ物足りないかな。

独立した感のある下北沢の街を活かすのもまだまだこれからかと。ただシモキタって憎めない、若いエネルギーが注ぎ込まれている街だなと思う。

とりあえず続巻を注目しようかな。

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