2026年2月11日水曜日

2月書評の4

(写真は泉鏡花「日本橋」の装丁表紙絵・小村雪岱)

◼️ 泉鏡花「茸の舞姫」

えらいもんを読んでしまった感覚。幻想世界が炸裂する。怪し、蛇、そして鏡花らしく色気もチラリ。

お決まりの、そろそろ読みたいな、と思った時の泉鏡花短編@青空文庫。しかし唸る。この才気に触れるのが楽しくてたまらない。

杢若は町中で面倒を見ている、天涯孤独、子供のような変わり者。お祭りの日、神社の境内に蜘蛛の巣を広げて「綺麗な衣服だよう」と言って商品のように見せている。杢若は幼き頃、何日も姿を見せなかったことがあり、天狗に攫われたと言われた。その後もよく人間界からいなくなり、どこへ、と聞かれても「実家だよう」と言って詳しくは答えない。

蜘蛛の巣には薄紅、浅葱色、黄色の蝶、金亀虫(こがねむし)、蒼蠅、赤蠅の艶々とした怪しい彩り、そして水銀の散ったような露がきらめく。

夜更けに向かい、天狗、般若、狐の面をつけた不思議な3人の山伏が神社を訪れ、緩く舞う。山伏は杢若の蜘蛛の巣を見て「えら美しい衣服じゃろがな」とのたまい、神官が、誰が着るというのだ蜘蛛の巣を、と訊くと「綺麗なのう、若い婦人じゃい」と答える。杢若は神官に「実家」のことを語り、やがて山伏たちが衣服を脱ぐと・・

始めの奇矯なシーンからどんどんと内情を語っていって怪異をにじませ、一気にファンタジーの世界に引き込む。どこかで結がつくとは思っていたが、こんなにも異質な形態とは思わずで、少しく驚いた。キーワードはタイトルにある通りの茸。しかし、特殊な妖しさと危険さを漂わせるこれを、ここまで仕立てて魅せるのはすごいと思う。

色彩感も素晴らしく、あやかしの情景を現出している。で、鏡花が好きな蛇も出演、そして女肌。

バラに短編をかじっているので、もうどれを読んだかもひとつ覚えていない。今回のチョイスもほぼ偶然だけれど、まざまざと、切れるような鬼才を見せつけられた気がした。

先日小村雪岱展で「日本橋」の表紙を見てきたこともあり、次は紙の本で読んでみようかな。

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