映画化もされた「線は僕を描く」続編。水墨画の表現がうなる。ホロリが何度も。
両親を失ったショックから立ち直れていない大学生が、水墨画でそのきっかけをつかむ、というドラマ。なにせ本職の方が著者なので、制作過程が本格的、心構えまで詳しい、また、やはり絵を言葉で表す引き出しが豊富だと思う。
水墨画界の巨匠、篠田湖山門下となった大学生の青山はテレビも入り注目度の高い揮毫イベントで大失敗をしてしまう。湖山からは筆を置くべき時期、と諭されるが、納得できない。話題の人となった青山は湖山の一番弟子、西濱湖峰の手伝いで小学校に水墨画を教えに行く。そこは、亡くなった母が4年前まで勤めていた学校だったー。
筆を置くべき、というのは破門、という意味ではなく、休養して離れてみることが必要、という意味だったのだが、大学3年生の進路の問題にも絡み、だんだん別れへとつながっていくようだ。
映画では青山くんは横浜流星、湖山の孫娘で青山くんと同年代、美貌の絵師として露出も多い千瑛(ちあき)は清原果耶、搬入、展示などを行う実務担当で、かつ抜群の腕前を持つ西濱湖峰が江口洋介、巨匠・湖山が三浦友和だった。青山くんはもなぜかひとつイメージに合わないけどもやはり頭に浮かべながら読んでしまう。
さて、実はそれなりに小説を読んできた身としては細部に、ん?と思うところもあったし「線は僕を描く」から時間が経っていることもあってか、どうして青山くんの精神と肉体はこんなにまで疲弊しているのだろうと、その点が作品の全体からは分かりにくかった。ともすれば繊細すぎる状態を演出しているようにもとれた。
だがしかしけれども・・圧倒された。まずは母親が勤めていた学校で、小学1年生たち、校長先生、後を引き継いだ同僚の先生たちとの触れ合いでほのかな光が射してくる部分にはもう、ホロホロの涙。肉親を失った身を切るような哀しさ、そして目を輝かせる子供たち。青山くんがイベントで絵を描いて、そこに子供たちが・・とてもジンとくる場面だった。
「線は僕を描く」でもそうだったが、なにせ作画中の表現が的確で豊富で小粋。またとても詳細で、つぶさに追いながら想像するので読むのに時間がかかる。筆の状態、水の含ませ方や手順まで、呑みこめないながら心中に絵を浮かべてしまう。ここまで表現がうなり吠え、像を結ぶのは本当になかなか巡り会えない筆致だと思う。
湖山のメモリアルなイベント、そして青山くんの進路。先読みする人はできるのかもだが、やはり深い感慨が押し寄せ、またホロリ。結は書いてきたものに見事に結合している。
完結編?もっと読みたいと思わせる作品です。
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