2024年10月4日金曜日

9月書評の13

◼️辻村深月「闇祓」

ふむふむ。闇ハラ、ふむふむ。いくつかの作品を思い出す。

辻村深月は何を読んだっけと思い出す。「冷たい校舎の時は止まる」「凍りのくじら」「太陽の坐る場所」「島はぼくらと」「朝が来る」「かがみの孤城」思ったより読んでる。「凍りのくじら」は傑作で人によく薦めている。「孤城」は鍵がよく考えられていて、アニメ映画を観に行った。

さて、「闇祓」はらしい面もあり、そして私には、いくつかの作品を思い出させた。人と人との機微。たとえ小学生であってもさまざまあり、神経を使うのは想像できる。ましてや学校のママ同士のつきあいはいかにも色々ありそうだ。高校の憧れの先輩との恋、小学校の読み聞かせグループ、会社の人間関係、小学校のクラス、歪む。なにかがおかしくなって走っている。そこには人智の及ばぬ原因があった。

高校生の幼い心持ちを掘ることは著者の得意とするところだと思う。ママ同士の関係性は角田光代さんを思い出す気がする。いかにも良い人間と見えた隣人の豹変は、えー、サスペンスドラマにもなった作品があった。そして小野不由美「残穢」で感じたゾクリとする衝動がある。

うまく行っていると表面的に見えている、それが暗転する。なぜか、ひどくおかしくなる。その点は現実の世にもありそうなこと。しかし元凶を退治する、となるステージはファンタジーの部類に入ってくる。興味深いミックスかな。現代的なハラスメントにも踏み込んでおり、意欲的、チャレンジングな面もある。

人間社会のひずみを詳細に描き出し、そこにホラーファンタジーを載せる。グイグイと読ませたし、ねじれた関係性が明らかになっていく点はそうなのか、なるほど、と思ってしまった。

ただまあイヤミスのような向き、特に導入はあまり乗り切れなかったかな。先も見えるし。ただ読むにつれバリエーションの豊かさ、画家のデッサンのような描き込みを感じた。

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