クリスチャン・ダニエル・ラウホ「勝利の女神」大理石
ディテールも素晴らしく、冬に見た日展入賞者の作品とはさすがにレベルが違うな世界、と思った。
◼️ 原田マハ「ユニコーン」
フランスで人気を博した女流作家にしてショパンの恋人でもあるジョルジュ・サンドの不思議なお話。
ここのところ「ユニコーン」といえば大谷翔平のことだ。54本のホームラン、59の盗塁、メジャー初の50-50を達成し、さらにトリプルスリーまで手にした、滅多に目にすることのない逸材。アメリカの実況アナウンサーが大谷の例えとして使ったとかで、まさに当を得た、夢のある言葉だと思う。
よく読む原田マハがこのタイトルの本を書いてると書評で知りすぐ読んでみた。
当初ジョルジュ・サンドは覆面作家で、その小説は最先端の流行で大きな評判を読んでいた。著者が女性と知られ、むしろ人気は高まり、パトロンには困らなかったようだ。この時点ではショパンとの恋の予感を匂わせている。
実際、サンドは同時期の多くの芸術家らと親しくしていた。作中にも出演するドラクロワ、ギュスターヴ・フローベール、アレクサンドル・デュマ、ヴィクトル・ユーゴー・・ショパンの仲間内の集まりにはフランツ・リストもいた。
そのサンドは、自分のコラム中で2度にわたりタピストリーに触れている。そこに著者は感じるものがあったようだ。
フランスの美術館にある貴婦人、かしずく少女、ライオン、ユニコーンが描かれた赤いタピストリーのデザインを最初の方に紹介するだけでなく、途中ページにもアップ、モノクロ、見開きなどでふんだんに盛り込み神秘性を増していく。
物語中、サンドは朽ち果てていくタピストリーを救うべく、作家で当時フランスの歴史的記念物保護局の視察官でもあったプロスペル・メリメにタピストリーを調査して国が引き取るよう進言してほしいと依頼している。その望みが叶うことはなかった、ようだ。
ユニコーンが象徴するのは力と純潔、無邪気さと純粋さ。そのタピストリーに潜む物語が、サンドを突き動かした。華やかなパリの、芸術家の社交、その中の奇譚、といったところかな。
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