当面アーティゾン美術館「空間と作品」展で。
◼️今村昌弘「兇人邸の殺人」
意外な「アレ」が現れる迫力。クローズドサークルで比留子さんと葉村はずっと・・?危機感募る作品。
もうふつうにあらすじは出てるかと思いますがネタを伏せて書きます。何も知らない方が面白いのではという個人的な考えのもと。文庫化を楽しみに待っていたらある日図書館で目の前にあったのでパッと借りた。「屍人荘の殺人」「魔眼の匣の殺人」に続くシリーズ第3作。
剣崎比留子と葉村譲は大学ミステリ愛好会の先輩後輩。比類子は抜群の推理力を持ち、事件を呼び寄せる体質とされる。葉村はワトスン役で様々な葛藤を感じつつ比留子に同行、物語を1人称で語ることが多い。ある日比留子に呼び出された葉山が待合せ場所のカラオケボックスに行くと、大企業成島グループの一族で子会社社長の成島陶次と秘書の裏井が比留子とともに待っていた。
テーマパークの中に班目(まだらめ)機関の元研究者・不木の住まいがある、そこへ資料を奪いに侵入するという成島たちと同行することに決めた比留子と葉村は成島が雇った傭兵たちとともにテーマパーク内の屋敷「兇人邸」へと潜入する。難なく不木の身柄を押さえた一行だったが、予測もしていなかった敵が襲いかかってきたー。
この計画に比留子さんが呼ばれたのは、班目機関絡みの事件を引き寄せる体質を見込んでのことだった。
盛り盛りに盛ってるな、という感触。凶悪な殺人者、狂気の特殊機関に特殊部隊、子ども。殺人形態とその後もまあ残忍でホラー。物理的かつ精神的なクローズドサークル、離れ離れになる比留子さんと葉村。殺人の偽装や疑心暗鬼、効果音や舞台装置も本格的。
次の展開を求めて貪るように読む感覚。物語にハマる。これまでの形態をパワーアップしている第3作。異常空間。
おもしろかった。でも少し比較を。第1作「屍人荘」も予備知識なしで読んで「そ、そうきたかぁー」という驚きがあった。そこは今回もよく似ていた。突然現れたし。
こちらは盛った分、館ものミステリ風味が本格ガッツリで見取り図苦手な身はついて行けなかったところがあったかな。また「屍人荘」はトリックとその説明にストンと落ちる感触があった。加えて犯人の心象が異常と正常の間を揺れ動いて響くものがあった。こちらはどれかというとアトラクション的に楽しんだ感じかなと。ちょっと「わたしを離さないで」を想像もした。
川端康成いわく、処女作を超えるのは難しい。初回作は新鮮さもあるし。あーでも長らく待っていた作品をようやく読めて爽快感もある。物語だし、これくらい思い切ってやってくれるとやはり嬉しい。間違いなく続く終わり方だし、次作をまた楽しみにしよう。
0 件のコメント:
コメントを投稿