◼️ 杉井光「世界でいちばん透きとおった物語」
Twitterで見かけない日はない本。いわゆるバズり中。ともかく私も透きとおってみました。
見出しの通り、毎日Twitterの読書垢を賑わせている作品。ネタバレ厳禁とされているようで、Twitterは字数も少ないのでほとんどどんなストーリーか情報もない。
読んだところ、なるほど、ふむふむ、というメインのネタに対する得心があった。さてさてー。
藤阪燈真は推理小説の大御所、宮内彰吾の息子。しかしいわゆる庶子で、宮内のファンだった校正者の母との間にできた子供だった。母がきっぱりと縁を切ったため燈真は父に会ったことがない。その母も2年前交通事故で死に、母の遺したマンションの部屋で書店員のアルバイトをしながら暮らしていた。宮内が癌との闘病の末亡くなったと知ってしばらく経ったある日、宮内の嫡子である男から連絡が入り、遺作があるかも知れないと聞かされる。燈真は以前から知り合いの編集者、深町霧子の助けも受け、幻の作品「世界でいちばん透きとおった物語」の捜索に乗り出すー。
サクサクと読ませる小説だった。未だ見ぬ本の捜索、というプロットはいくつかの作品で体験したが、何回読んでも魅力的だと思う。
社交的でない燈真が複数の愛人に話を聞いていく、など読ませる面白みもあるし、登場人物も描きこんでいる、というとこまではいかないけども、それぞれ個性的で目立つ。父、母に対する感情と冷めた硬い気持ちとの往復もいい感じに抑制ぎみ。そこここに散りばめられる書籍編集の知識も本好きには好ましい内容かと思う。
ちょっとまだるっこしいが、バズった本の評価は、難しいといえば難しい。思い浮かぶのは「永遠の0」や「君の膵臓をたべたい」かな。結論としては正直を書けばいい、と思っている。しかし自分の中に爆売れしたということへの何らかの余計な感情があったりするかも、なんて考えてしまう。これまでの経験から一過性のもの、という感覚も捨てきれない。
で、感想としては、最大のネタは、理屈では分かった気もするけども、茫洋としかつかめなかった、というもの。
硬めに設定された殻を破り、感情が抑え気味に溢れる場面はやや裏付けとなるものが薄く共感までは難しい。ちょっとレトロ感があるし。若者の大きな未来、そこには好感を覚える。プラス専門的な知識は読んでて楽しい。謎へと迫る過程には惹かれて、集中もできた。全体としてはふむふむ、なるほど、という感じだったかと思う。
私は売れるということにはプライオリティを置く。売れるってだけで価値がある。読者の読んでみたい!という意識も刺激する。これからもこのような現象はあるべきで、なんというか
波乗り感には満足した。
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