2022年11月7日月曜日

11月書評の2

このページのプロフのクッキー画像を変えようとしたのだが、昔のメアドで登録して、いまはGoogleのメールを使っているからか、変なふうになってうまくいかない笑。誰かなんとかしてっ。


上弦の半月と木星の接近。あさって皆既月食 lunar eclipse 曇りませんように。

天気良かったけどどこも行ってないっす。前週まで歩き回りすぎてかかとが痛いし。

地元には支線の鉄橋をくぐる河川公園ロードがあり、柵らしきものすらなく、すぐ目の前を3両電車が走っていく。いつもジブリみたいだなあと思ったりする。久しぶりにの〜んびり、かかとに負担がかからないよう歩いた。

先にノーベル文学賞をとったアニー・エルノーの代表作とやらを購入。不倫。赤裸々な記述で反響を呼んだ衝撃作らしい。どれどれ。でもね、この分野は大人として思うけど、小説と現実とはかなり違う部分かな。でも日本の一部の作家が試みているような赤裸々のしかたもどうもね、と思ったりする。まあいいや。

先日観た映画のテーマを歌っていたyamaという仮面アーティストをテレビで観て検索。J-POPは先日もタレントの誰かがいいと言っていたamazarashiを聴いたり、ベリーグッドマンを聴いてみたり。探す作業が楽しい。若い才能は観たいよね。同じ番組では稲垣潤一がまだドラム叩きながらドラマティック・レイン歌ってはりました。

⚾️早慶戦を観る。ライオンズドラ1の蛭間を見とかなだし。で、モーツァルトのピアノ協奏曲20番を、内田光子→ラドゥ・ルプー→リリー・クラウス→マルタ・アルゲリッチの順に聴き比べる。

ピアノ🎹の入りのところ、内田光子は、独特の丸い音で、緊張感をみなぎらせて、これ以上なくデリケートに入る。しかし他の奏者は違って、けっこうフレーズで訴える、突き刺すように入るのでふうむ、となる。ルプーは強いところは強く、しかし音に深みがあり、決して急がず思索的。

20番は、モーツァルトには珍しくデモーニッシュな曲調だ。リリー・クラウスは明るい部分を持ち前のチャーミングさで立て、暗く妖しいメロディーとのギャップを際立たせている。アルゲリッチさんは、ダイナミズムと繊細さ、甘さを組み合わせて聴かせる演奏。しかも聴かせようとしているのではなくて、ピアニズムを強く発信している感じがする。

堀辰雄の短編集を読んだりするとまた、なんか感性のたがを外して、見るもの聴くものを更地の心に感じたくなることがある。

なあんて、読み飛ばしてください。でも、誰しも、一瞬感じたことの膨大な積み重ねがあって、大部分は通り過ぎてしまう。そのうち少しでも書いておきたいな、と思うのです。秋のもの想い😎

◼️ 堀辰雄「羽ばたき」

有名作以外の堀辰雄。新鮮な印象の短編集。

堀辰雄と言えば「風立ちぬ」「聖家族」「美しい村」「菜穂子」といったところだろうか。表現も物語もどこか西洋風な色彩感の強い、秋がよく似合うような筆致のイメージだ。さらりとした文調が特徴でもある。

今回は大正15年、1926年から昭和11年、1936年の短編、堀辰雄が22歳から32歳まで書いた、ごく短いものを集めた作品集。水、母親、子ども、妖精、死などをキーワードにしたファンタジー、また師匠芥川龍之介と恋人片山廣子、堀が恋した廣子の娘・総子との交遊を匂わせる作品も入っている。

どれも興味深い。5つ歳上の川端康成とも交友をよくしたとのことだが、似ているな、と思わないこともない。川端も浅草を舞台とした作品があり、堀の作品たちにも頻繁に浅草は出てくるが、綿密な取材を窺わせ、その時代の今を切り取る川端よりもやっぱり堀の文章の方がモダンに映る。

特に印象に残ったのは、思い出も消せる舶来のゴム消しを入手して上向きになる男の話「夕暮」。浅草公園にいるジュゴンを気に入る男「ジゴンと僕」、有名作につながっているような雰囲気を持つ、少女ザザの小さな話「魔法のかかった丘」だろうか。会話が初々しいカップルの「あいびき」もなかなか。

表題作「羽ばたき」はジジとキキという少年が出てくる、鮮烈な破滅の小説という感じ。スタジオジブリの「魔女の宅急便」の、主人公の少女キキとその相棒の黒猫ジジ、というのはこの作品にちなんでいるとのこと。

ふむふむ。ジブリの「風立ちぬ」は、主軸の戦闘機設計の話と並行した、主人公と恋人のストーリーに、堀辰雄のエッセンスが大いに取り込まれている。やっぱり女の名前は菜穂子なんだな、絵を描くんだなとかなり宮崎駿の傾倒ぶりを感じたが、今回でさらに強まった。

収録された22篇と解説は、私の堀辰雄の理解に大きく役立った。後期、と言っていいのか分からないが、名作群につながる洗練されたタッチ、実際泥くささ、人間くささをあまり感じない描き方で行間に人の情や異常性と理性、その中間をにじませたりする。その萌芽を眼にした気がする。

堀辰雄はおもしろい。まだあるならもっと読みたい。

◼️いせひでこ「ルリユールおじさん」

パリの小さな物語。大事な本の、修復のお話。

いせひでこさんにはインスパイアされることが多い。バランスと、閃きを見るというのか、この作品も、愛せる題材を取材し、ゆっくりとムリなく創っている。

パリ、ある日、小さな女の子ソフィーの大事な木の図鑑、そのページがバラけてしまう。ソフィーは街に出て、直してくれるところを探す。ルリユールにいってごらん。露店のマダムの言葉に、ルリユール、ルリユール、と探すと、それらしき小さな店に行き当たる。ルリユールおじさんは製本職人。ソフィーの本を見てさっそく直してくれるー。

好奇心が強く物怖じしないソフィーはあれこれと作業中のおじさんに話しかけます。多くの工程を丁寧に進めて、ソフィーがアカシアが好き、と言ったことから、スペシャルな仕掛けを施しますー。

美しいお話です。本読みは、もちろん製本のことに興味を持っていますので、その知的好奇心も満たしてくれます。ソフィーと、おじさんというよりおじいさんとの穏やかな交流。おじさんは父親から仕事のことを聞いていた遠い日を思い出します。

「わたしも、魔法の手をもてただろうか」

回想シーンには、さりげなく他の職人さんの姿も描き込んであります。手で製本をする職人はこの数十年で少なくなった、時の移り変わりを感じさせます。

ストーリーの、言葉のないページにはパリの街並みが彩り豊かに、少し枯れて、人間臭さまで感じるタッチで描かれています。そして街を行き来するソフィーの青い服、ルリユールおじさんの青いセーター。青はキーポイントのようです。回想シーンは茶色。そして出来上がったわたしだけの本、その色も目を柔らかに惹きつけます。

チェロを弾き、スペインなどを旅する絵本作家のいせさんはもう少し感覚的なイメージがありました。しかしモチーフをつかみ、展開させていく絵とセリフには考え抜かれた技術、それも感覚なのかも知れませんが、が窺えました。

いせひでこさんの数多い絵本は少しずつ読んでいきたく思ってます。マイフェバリットですね。

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