神戸編。メリケンパーク。地元よね。
いろんなとこの自己画像からついにクッキーを外した。かわいいクッキー。レオンが死んだ時、私はひと晩遺骸の隣で寝た。その時クッキーは悲しそうにレオンに寄り添っていた。
犬は群れる動物。でもこの2頭はホントに仲が良かった。もともとクッシング症候群で毛が抜け落ちていたクッキーはみるみるうちに体力が落ち、4カ月後に旅立った。
レオンは大往生。長く胃捻転の発作があったから、もう苦しまないでいいと、同志が去った感覚だったけど、クッキーは可愛かったし、いまだに信じられない。でももう思い切らなきゃいけない。
天国で、レオンと走り回っていますように。あ、運動苦手で走るのキライだった😅
◼️ 板垣千佳子編「ラドゥ・ルプーは語らない」
読み終わりたくない気持ちにかられる。生で聴いてみたかったピアニスト、ラドゥ・ルプー。
クラシックを気にするようになってそれなりの年数が経つ。しかしラドゥ・ルプーのことは最近まで知らなかった。はっきりと認識したのは昨年のショパン・コンクール。ファイナリストに色々質問する恒例のコーナーがあり、幾人かがルプーの名前を挙げていた。5年間隔のコンクールの間、2019年に引退した、というのも理由かと思う。検索しても映像は少なかった印象だった。ほどなくこの本の出版を知り、そして今年、ルプー死去の報を聞いた。
ルプーは、録音、収録が嫌い、インタビューも絶対といっていいほどNG。日本の音楽事務所にいて長年ルプーの日本でのマネージャーをしていた方が取材、編集した作品。ルツェルンでの引退コンサートに駆けつけ、ルプーに関する本を出したいと直接打診したところ、
「君がそうしたいなら、すべてまかせるよ。実り多いことを祈っている」
との返事をもらったという。
多くの奏者、関係者にリモートでインタビューしたもの、また寄稿をまとめてある。先日も日本で公演したピアニスト、アントラーシュ・シフ、チェロのミッシャ・マイスキー、指揮者・ピアニストのダニエル・バレンボイム、引退コンサートで共演したチェリスト、スティーヴン・イッサーリスといった大物から2010年ショパンコンクールの覇者ユリアンナ・アヴデーエワ、2015年大会優勝のチョ・ソンジンなどの若手まで。
以前に比べて増えたように感じる演奏の動画でルプーのピアノを聴きながら読む。読んでまた聴く。曲調を大事にしつつ、テンポはゆっくり、丸みのある音で、全体の中の部分ぶぶんを最適な音量と強さで。多くのマエストロ、ヴィルトゥオーソが語っている通りだ。
演奏について、心に訴える部分は、最初の夫人、エリザベス・ウィルソンの表現がシューベルトの演奏を聴いた時の回想の言葉が核心かと思った。
「ルプーの演奏を聴いていると、抒情的で、喜びに充ち、また悲劇的な側面も含めて、シューベルトのパーソナルな世界と切実に、心から、熱烈にコミュニケーションを交わすという、音楽がまさにその根源において創りあげられていくさまを体験していることをまざまざと感じるのです」
編者の取材により、謎に包まれていた青年時代が分かってきたという。ルーマニアで生まれ、8歳で作曲で賞をもらい、天才を示す。作曲を勉強し、指揮者を志す。モスクワ音楽院へ留学、当時すでに多くのピアノ曲、協奏曲の知識があったという。ピアニストとしてヴァン・クライバーン国際コンクールやリーズ国際コンクールで優勝。順調なキャリアを築き、友人も多かった。本の中で複数の口から内田光子も友人の1人だったと語られている。内田光子のインタビュー読みたかったな。
ピアノ曲を弾くときも、曲の構成、全体を考えたような演奏が特徴だったという。それは天性にり作曲や指揮の習得が志向されたことに繋がる。長年の友人だったシフの章は、手紙のようにルプーに呼びかける形となっている。
「まるで作曲家のように演奏し思考するあなたは、楽曲の形式と構造を理解し、その主たる構成要素のヒエラルキーを把握しており、どんなに小さな細部をあつかうときにも迷いがありません」
特別なピアニストだったのだろう。友人、関係者たちからの賛辞は故人の演奏、人柄に対して至高の言葉が並ぶ。クラシックではあらゆる表現が尽くされるが、特に食傷気味にもならず、ただ美しい。
訪れた若いピアニストの悩みを聞いてやり、何時間もかけて、心に寄り添うようなレッスンをしている。チョ・ソンジンも知遇を得て親しくし、ルプーの家でレッスンを受けている。ルプーのレパートリーはモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームスなどドイツ系が中心。コンサートでは弾かないものの、ショパンも熟知していたとか。
それにしても自己に厳しく、録音、録画、インタビュー嫌いである反面、暖かくユーモアのある姿が醸し出される。冒頭、編者の依頼への返事といい、人情に厚いのだろう。
賛辞ばかりの本ではある、でも、いつまでも読んでいたい気分になる。ただ想い出話を連ねただけのものではなく、確かになにかが浮かび上がって、心を動かす。私はルプーのコンサートを聴くことは出来なかった。いまはもう少し、動画で聴きたくなっている。シューベルトの幻想曲や、ブラームスのソナタを、聴こう。
いい本だった。ルプーのなじみのピアノ調律師、ミシェル・ブランジェスの話は視点という意味でも興味深い。それは読んでいただくとして、彼の言葉でこの稿を締めたいと思う。
「パリのサル・プレイエルでのシューベルト『楽興の時』の第2曲のアンダンティーノといったら、この『楽興の時』を聴くためだけに飛行機で大西洋を横断する価値があると思いました」
ブラボー。。
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