2022年3月26日土曜日

3月書評の8

最近チラシでブックカバーを作るのが趣味になっていて、単行本も文庫も新書も、やたら折る。有用そうなチラシやパンフレットを見たら取っておくようになっている。楽しい。

レオンが死んでひと月。何年もリビングにふとん敷いて、最後の方は座椅子を倒して一緒に寝てたのが、毎日ベッドに寝るようになってまだしっくり来ない。楽にはなったけどねー。

レオンを思い出す。母を思い出す。時が経っても会いたい、話したい。そういうものだと知る人生の晩年。


◼️ 巽好幸「富士山大噴火と阿蘇山大爆発」

改めて読むといろいろゾッとしてしまった。阿蘇が巨大カルデラ噴火を起こしたら、ほんとうに、凄惨なことになる。

タイトルが富士山大噴火、だけだったら読まなかっただろう。福岡市ベッドタウン生まれの私は阿蘇山に何回も行った。幼い頃から母が、阿蘇山が爆発したらあんた、こっちまで火山灰が降りよったとよ、と言っていた。たしかに熊本・宮崎に遊びに行ったら車に火山灰がうっすら積もることは普通にあるけれど、さすがに福岡まで火山灰来んやろ、と思っていたし体験したこともなかった。しかし、阿蘇のカルデラで大規模噴火が起きたら、それこそ福岡なんてもんじゃなくて、日本が危なくなるー。

特に東日本大震災以降「日本列島は活動期に入った」とする説がよく出ているが、これは本当か?という検証のため、なぜ日本列島は地球上でも有数の地震と火山の密集域なのか、を説明していく。日本を取り巻く地域のプレートテクトニクス、地震の原因、火山のもととなるマグマの生成、地震と火山活動の関連などが序章に述べられている。

次は富士山噴火について。宝永大噴火(1707年)から噴火していないため休火山だと習ったけども、死火山とされていた御嶽山が爆発したことをきっかけに休火山、死火山という言葉は使われなくなったと。地学選択なのに知らなかった笑。そもそも火山活動は数万年単位のものであり、現代では富士山はバリバリの活火山という認識だそうだ。富士山は独立型で美しいフォルムをした巨大火山。なぜそうなのか、が語られる。日本の海底には富士山をはるかにしのぐ標高5500mの火山もあるらしい。

富士山が20日間に渡り火山灰が降り続いた宝永年間並みの噴火をした場合、日本には偏西風が吹いているから東側に火山灰が流れると予想して東京湾をまたいで房総半島一帯まで2センチの火山灰が積もると予想されている。よく言われるように首都圏が混乱するのは間違いない。


しかし、というか・・阿蘇一帯の巨大カルデラがもしも大噴火を起こしたら、富士山の噴火とは次元の違う被害が出るらしいのだ。

カルデラとは大噴火により放出されたマグマの空間が陥没した窪地のこと。阿蘇のカルデラは東西18キロ、南北25キロで世界有数。大ざっぱな理解ではこの下に巨大なマグマ溜まりが形成される。

巨大カルデラ噴火のエネルギーは富士山宝永噴火の1000倍以上と推定される。阿蘇一帯に巨大な噴火が起きた場合、九州北部ほぼ全域は高温の火砕流で壊滅的被害を受ける。火山灰の量は近畿で50センチ。木造家屋の半数近くは全壊、首都圏も20センチ、北海道でも5センチ積もる。

火山灰は怖い。10センチ程度まで積もったら交通系は完全マヒ、つまり救援活動もできない。ガラス質の粒子が詰まることで発電はできなくなり、給水もストップせざるを得なくなる。健康被害やPCの動作不良も重なる。

阿蘇が最後に巨大カルデラ噴火を起こしたのは8万7000年前、日本全体でも鹿児島の鬼界カルデラで起きた7300年前のものが最後。今後100年で発生確率は1%だそうだ。著者は列島全体にわたる被害の甚大さを訴え続け、観測体制と防災対策の充実を主張しているとのこと。しかし目の前に台風、水害、地震というすぐに対策すべき災害が多く横たわっている現状からさすがにこの確率では理解を得られないという。

最初の方では、最近専門家と称する人が間違った主張をしているなど、マスコミ批判や畑違いの論文不祥事まで持ち出して我こそは専門家、と述べる論調にヤな感じを抱いていた。でも相手にされなくとも、明日起きるかもしれない巨大災害の危険を訴え続ける姿勢に、ちょっとイイ印象を覚えてしまった。実際読み込める本だった。

南海トラフ地震の発生確率が首都直下型地震よりはるかに高いとの論にまたゾッとする。


巨大な火山に囲まれた窪地の平野の風景、やまなみハイウェイ、ギザギザの根子岳、草千里、噴火口、異様な光景や植生、スケールの大きさはいつも心をくすぐった。ついでに言えば焼きとうもろこしも大好きだった。

阿蘇は世界一のカルデラ、とは九州育ちなら誰もが聞いたことのあるフレーズだろうと思う。実際には世界一でも、日本一ですらない。屈斜路湖カルデラの方が大きいとこの本にも書いてある。公式HPにも世界一、とは記載していないようだ。

異様な、憧れの世界、阿蘇に今作で別の顔を見た思いだ。毎年のようにある自然災害。せいぜい夜間断水くらいで、深刻な災害に遭ったことがなく、阪神大震災の時はまったく意表を突かれた。いまは心の準備はある。個人的にはあの日から本当に変わったなと実感している。


◼️ 小林朋道「先生、頭突き中のヤギが尻尾で笑っています!」

子モモンガ、か、かわいすぎる。

書評サイトで見てタイトルだけで面白そう!と借りてきた本。予想通りなかなか楽しかった。

なんといっても最初の章の子モモンガのつぶらな瞳がかわいすぎる。実験のためにモモンガを巣箱ごと大学に持ち帰ったら想定外にエアコンが止まった影響で死んでしまった。数日後、ひょっとして雌モモンガだとしたら、と思いつき巣箱を探ってみると3匹の子モモンガが見つかった。

スポイトでミルクを与え育てる。著者の手や首、肩などから離れず遊ぶ子モモンガ。髪の毛を毛づくろいしたり耳たぶを甘噛みしたり。やがて子モモンガも身体から離れて飛びついたりするようになる。

そこで子モモンガが発する「ガーグルガーグルガーグル!」という鳴き声が成獣の求愛行動のものと同じと気づき、なぜそういう類のことが起きるのか、という動物行動学的な説明に移る。

やがて子モモンガを森に帰す。情愛いっぱいの著者の正直がいい。普通に都会で生活してるとそんなことはとてもないからいい追体験。

で、大学の敷地に生えていたキノコ、ニセショウロの傘の部分に著者はモモンガの顔をマジックで描いて、大学の別の先生が天然の模様とカン違いして興奮した、という笑い話につながったりしている。さらにモモンガの研究合宿がヤマネの研究になった体験もある。

タイトルはヤギの、遊びの時もあるが真剣などつきあいにもなる頭突きについての実体験、研究。ヤギに関しては鳴き声で肉親を聞き分けた行動をするか、という実験もある。

その他ヤドカリ、また体験をもとにした著者のスギへの想いなどなども盛り込まれている。おもろかしくて、さらさら読めて、時に専門的。

シリーズ本はまだまだあるので、先が楽しみだ。

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