2022年3月12日土曜日

3月書評の3

マニアな?本2冊。今週からぐっと暖かくなった。クッキーが一時ごはんを食べなくなった。レオンがいなくなったことが関係してるのか・・


◼️ 北原尚彦・村山隆司
「シャーロック・ホームズの建築」

やばい、とひと目で即買い。ホームズ物語に建築は深く関わっている。

シャーロッキアンと建築家が、ホームズシリーズの舞台となる建築物を紹介、絵や図を想像で描き、やや専門的な解説をつけたもの。

この本を見るとプチシャーロッキアンは想像する。隠し部屋があった「ノーウッドの建築業者」「金縁の鼻眼鏡」なんかはどう描いてあるんだろう?

さらに「ぶな屋敷」「三破風館」「ウィステリア荘」など建物の名前そのものがタイトルの屋敷はどんなものか?

読む前に楽しみなことこの上ない。21もの建築物が取り上げられている。

もちろんスタートは数々の事件の起点となり、王様や金持ち、庶民の老若男女も含めたさまざまな依頼者、レストレイド、グレグスンらの警察関係者ときに犯人、悪党が出入りしたベイカー街221Bの部屋。

「ボヘミアの醜聞」で劇中の重要な場所、アイリーン・アドラーが住んでいたブライオニー・ロッジ、「まだらの紐」のチーターやヒヒが放し飼いにされたストーク・モーラン屋敷、「四つの署名」のポンディシェリ荘・・さらにスコットランド・ヤードや、ホームズ&ワトスンが出会ったバーツ、セント・バーソロミュー病院もある。

おおむね最初のページに正面から見た建物の全景があり、事件の説明、作中での建物の描写の部分を抜粋し、建築学的に考察する。その後に俯瞰図や解説の入った見取り図、ポイントとなる部屋の詳細図などがある。

シャーロッキアン的に有名な「マスグレイヴ家の儀式書」の舞台、ハールストン屋敷の西日問題など、ワトスンの文章だけでは絵や図として描くのが困難なケースもあったようで、検討を重ねて解決している。

ワンバーワンクラスの人気を誇り、私も大好きな「バスカヴィル家の犬」の大きなバスカヴィル館については期待を持って読んだけれど、後の方の絵が少なくて肩透かし、と思っていたら巻末付録にも絵があって少し埋め合わせられたかな。たしかにこの物語は荒涼としたムアで主要な動きがあるんだけれど、逃亡犯にロウソクを使ってコンタクトするシーンや肖像画で気づくシーンなど入ってたら嬉しかったかなと。

「金縁の鼻眼鏡」のヨックスリー・オールド・プレイスやハールストン屋敷のなどは詳細、ほかもビジュアル的にも楽しめる。また錠や鎧戸、主人と使用人の寝室の階層、造りなど建築用語、知識も好奇心をくすぐる。

いまホームズ原文全作品制覇に挑戦中なので、都度この本を開いてより想像力を膨らませようかな。

知り合いの書店関係者によれば売れ行きはいいとか。切り口により面白い本ができるものだなと思う。


◼️ 大島和人「B.LEAGUE誕生」

かつて怒っていた。いまはBリーグ好き。
それにしても実行力とスピードがすごい。

中高とバスケットボール部活だった私はかつて怒っていた。スラムダンクの流行、田臥勇太のNBA挑戦、日本のチームへの復帰と盛り上がる契機はいくつもあった。しかし特に男子の日本代表はいつまで経っても弱いし、協会の会長選挙は流会につぐ流会で大もめになっている気配が小さい記事で伝わってくる。

何をしとるんだ、何をもめてるんだ、サッカーはとっくに成功しているじゃないか、なかなか改革が進まないことにいちバスケファンとしてイライラしていた。

当時男子のトップリーグには日本を代表する企業がズラリと並んでいた。バスケット、バレーボールはチーム人数も少ないし、ほとんどが大卒で入る。将来は安泰、親も納得しやすいだろう。実によくできたシステムだと思う。

しかしだから、名門チームの廃部が相次ぎ、代表強化につながるプロ化に踏み切るのは遅れていた。JBL、JBLスーパーリーグ、新JBL、NBLと長くないスパンで変遷を繰り返し、そのうちにプロリーグであるbjリーグができ、日本バスケットボール協会は追認した。バスケットボール界の現代化の目は見えなかった。

開催地となった2006年世界選手権での巨額赤字が引き金となって内輪もめが極に達し、2007年日本協会の役員改選では評議員会の流会が相次いだ。この本によれば正常化するまで20カ月かかったらしい。びっくりでしょう。

そんなバスケ界が動いたのは、外圧によってだった。FIBA国際バスケットボール連盟が改善を求めて2013年に警告、2014年11月には制裁処分を課した。男女ともに国際大会から締め出され、解除されなければリオオリンピックの予選に出られない。特に女子はオリンピック出場、上位進出の有力候補だった。

・男子2つのトップリーグの統一
・日本協会のガバナンスの強化
・男女日本代表の強化策確立

がFIBAが投げかけたテーマだった。

実は私も、この強硬策に反発心を覚えたことがある。独立リーグがあるのは別におかしいことではないんじゃないか、強引すぎるのでは、と。バスケ先進国とは言えない日本に何でこうまでFIBAがこだわるのか。しかし本を読み込むと、何度も来日したバウマン事務総長の狙いは深かった、というか、天啓に導かれたというか、この弁護士は、バスケが好きすぎる一面もあるだろうと思える。

現実的には世界選手権後に大もめになったことを知ってたからこのままではオリンピックを任せられない、といった感覚、地元出場なしとなりかねない事態は放っておけない、日本のマーケット力、アジアのモデルの確立、といった理由はあったかも知れない。

FIBAの課題はそのまま日本の弱点だったし、戦術も巧妙。リオ五輪、女子の出場を「人質」に取った。もちろんFIBAも落としどころを考えていたはずだ。

短時間でなんとかしなければ、となって、リーダーに川淵三郎を据えたことが大正解だった。川淵氏と右腕となった弁護士さんの立ち回りの見事さはそのままこの本の読み応え、である。

企業チームとbjリーグチームの参加、協会評議員全員の辞任をクリアーして、書くと簡単だが実質半年という短期間で最難関事項を仕上げてしまう。そして2016年秋、新生Bリーグは開幕した。

私も毎週のように観ているが全試合の配信を実現し、人気も上々だ。これまでを知っているだけに夢みたいな気分である。八村塁や渡邊雄太といったNBAプレイヤーが誕生、女子代表はオリンピックで銀メダル、女子に変革をもたらしたトム・ホーバスが男子監督に就任と、期待値が高まり続けている。

地域密着、そのために5000人収容できるホーム会場で8割開催、というB1加入の条件は、地方の体育館を回っていた当時からすると厳しすぎる条件とも思われたようだ。しかし千葉や宇都宮、大阪は成功しているし、沖縄にも1万人収容のアリーナができてワールドカップが来年開催される。神戸にもできる。Jリーグの流れを汲む要件は正解だったと言える。

自著「独裁力」では控えめにしていた川淵さんの行動の効果も右腕となっていた境田弁護士の証言です、すごいと率直に思える。その川淵さんも、

「『バスケットボールの素人が、何をそんな偉そうに改革できると思っているんだ?』という感じの人がいて、バスケの幹部関係はみんなそうだった」

話を聞きに行った先でそんな態度に遭ったと述懐している。Jリーグを成功させた78歳の方への対し方。こんなところに積年の原因がある、というのは言い過ぎだろうか。

外圧がなければ、東京オリンピックがなければ、川淵三郎氏がいなければ・・Bリーグはそうやって偶然の要素が功を奏して成立した。ここは忘れてはならないだろう。

男子日本代表の強化も、まだ途上。前回のワールドカップ、オリンピックと続く国際大会の連敗をまず止めて、パリオリンピックに出場するのが現実的な目的だ。

周囲の影響でだんだん詳しくなって来た私も、Bリーグや各カテゴリの大会、そして代表戦をこれからも本当に楽しみにしている。

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