3連休は寒くて天気も荒れてるし、加えてちょっとバテてるな・・と感じるのでのんびりすることに。正直な話、最近タバコ吸ったら左胸が痛い。年齢的にも怖いし、考えようかな。
クッキーはたまにごはんを残す時があるけど元気出ないわけじゃない。もうすぐ12歳。やっぱトシ相応やね。足腰も少し弱ったし。
◼️ エドガー・アラン・ポー
「アッシャー家の崩壊」
最後におわっっ、となる短編。ゴシックホラーの代表作 in Americaらしい。
読むきっかけは、「100分de名著」が今月ポー特集で、次回この「アッシャー家の崩壊」を取り上げるからそれまでに読もうと。ポーは「モルグ街の殺人」は文庫で持ってて、「黒猫」は読んだ記憶があるけれど、「アッシャー家」は確か読んでない。予備知識はまったくなくて最後おわっっと、純粋に驚いた。ある意味幸せ?笑
「私」は少年時代の親友、ロデリック・アッシャーに招かれて由緒あるアッシャー家の屋敷に滞在する。沼の近くにある家屋は古びており陰気だった。蒼ざめた、優美な顔のアッシャーは淡白なものしか食べられず、強い光線に弱く、花の香りに息苦しさを感じ、音楽は弦楽器の音しか受け付けないといった神経症的な自分を自覚しており、死の予感を持っていた。この症状はアッシャー家特有のものー。
アッシャーのギター演奏を聴き、ともに物語を読む生活の中、患っていた彼の双子の妹、マデリン嬢が死んでしまう。
古く歴史のある広い館、神経質な住人、物語と音楽、病気と死、地下の遺体安置の穴ぐら、嵐、そしてラストには赤い月と舞台立ては揃っている。1839年の作品で、いまもってアメリカのゴシックホラーの代表作とされているとか。オーブリー・ビアズリーの挿絵をみたけどもたしかに似合いそうだ。
嵐の中奇怪なものを見た「私」はアッシャーの病気にさわることを恐れ、部屋にあった物語の本を読んで気を逸らせようとする。しかし、読み上げる文章にぴたりと符合する激しい物音が、「私」の耳に聴こえてくる。ああ怖い。
「黒猫」や「モルグ街」と同様に暗く、黒い。その雰囲気が極まった感じである。やや難しい感覚もある。またちょっと直訳にすぎるかなという気もする。ともあれ、ゴシックホラーの金字塔を味わえて満足。
北村薫の「紙魚(しみ)家崩壊」という、大量の蔵書でつぶれそうな家を描いた小説を読んで、あまり意味がわからず頭を捻ったことがある。
今なら少しは分かるだろうか?^_^
◼️ ウィリアム・シェイクスピア「ジョン王」
失政を重ねるジョン王。中世の史実との重なり具合に魅力を感じる。
シェイクスピアは軽快な喜劇と史劇の1500年代末と、四大悲劇に象徴される1600年代初頭で期が分かれるのではとなんとなく思っている。今回は1590年代の作と見られる史劇。史上最低の王様、というふれこみもあるようだ。
ざっと調べたことを書くと、出生の折、父王から土地を与えられなかったことに由来して失地王と呼ばれた。兄で第3回十字軍を指揮した獅子心王・リチャード1世は当初ジョンより年上の弟ジェフリーの子アーサーを王位にと考えていた。しかしアーサーがフランス王のもとにいたため遺言でジョンを指名した。フランス王がアーサーの正当な王位を主張して戦争となり、ジョンは大陸のイングランド領のほとんどを失った。さらにローマ教皇と対立し破門されて数年後屈服、謝罪。国を支える諸侯からは人気がなく、王権を制限するマグナ・カルタ憲章に合意せざるを得なかった。あとでジョンが訴え出て教皇から無効宣言は出されたが、これに怒った諸侯らがフランスに援軍を求めまた戦争になった、というまあ史実に残る失政の繰り返しである。
マグナ・カルタが成立した土地、ラニー・ミードはジェローム・K・ジェロームの名作「ボートの三人男」で出てきたな・・と思いつつ。ジョンの失敗の歴史は、イギリス人にはおなじみ感もあるのかと。しかし、ジョンも連なるプランタジネット朝の源流はフランス貴族だったというのも皮肉で、両国間をややこしくしてたのかもと想像してしまった。
ジョン王のイングランドは12歳の甥・アーサーの王位の正統性を押し立てたフランスと戦争となる。しかし戦場近くのアンジェで市民代表から両家の婚姻を勧められるとジョンとフランス王フィリップはあっさり和睦、アーサーの母コンスタンスは狂わんばかりに嘆く。
しかし和睦も束の間、ジョン王はローマ教皇から破門された。教皇の使者から教皇側となってジョン王のイングランドを攻めるか、教皇を敵に回すか迫られたフィリップは和睦の破棄を選ぶ。ジョンは兄・獅子心王の落とし胤、「私生児」やヒューバートを腹心として戦う。
アーサーをイングランドへ連れてくることに成功したジョンはヒューバートに殺せと命じる。時あたかも、諸侯はアーサーに同情を寄せ、ジョンへの批判の声が高まっていたー。
前半、イングランド側、フランス側の王同士の挑発のやりとり、続いてジョンの母、イングランド皇太后エリナーとアーサーの母、コンスタンスの罵り合い、ローマ教皇を含めた三すくみ。和睦が成ったと思ったらキリスト教の力ですぐ壊れる。新郎のフランス皇太子と花嫁のイングランド側ブランシェ、若い2人は気持ちを通わせているように見えたものの、教皇の割り込みで気持ちと立場の板挟みになり、足元が揺れる。
やっぱりシェイクスピアは上手いな、と思ってしまう。
アーサーとヒューバートの絡みには灯火を見る気がする。芝居心があるくだりだと思う。でもまた暗澹とした状況へ。諸侯も日和見であっちへ付きこっちへ付き・・
プランタジネットの一員となった「私生児」はシェイクスピアによくある道化の役。セリフが多く、毒のあるキャラクターで劇をかき回す。だが1人、王とイングランドに忠実な「私生児」は悲しみの中、最後にこんな言葉で芝居を締める。
「このイングランドは、まず自分で自分を傷つけぬかぎり、これまでもこれからも征服者の足元にひれ伏すことは断じてない」
「イングランドがおのれに対し忠実であるかぎり、我々を悲しませるものは何もない」
混乱の中の心の叫び、当時の観衆はカタルシスを感じたりしたのだろうか。
「ジョン王」は上演回数も少なく人気のない戯曲だそう。たしかに様々にコロコロと状況が変わる中で芯がなく、ドラスティックさに欠け、どのキャラクターにもさして惹かれない
でもキャラの造形や暗愚な王、混乱して収まらない感覚の創出など、やっぱりシェイクスピアは魅惑的だな、と思ってしまうのである。
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