2021年8月28日土曜日

8月書評の5


◼️ 柏葉幸子「霧のむこうのふしぎな町」

魔法使いの末裔たちの町で働く少女。児童ファンタジー小説です。

「千と千尋の神隠し」に関連しているというフレーズを読みかじって読んでみた。1974年の講談社児童文学新人賞作品。これは2004年の新装版。

静岡の小学6年生のリナは、お父さんに言われて、東北地方の山村に入口のある「霧の谷」へとやってくる。魔法使いの末裔たちが暮らす小さな町。外国人はおろか、小鬼やケンタウロスが普通にいる町。滞在する屋敷の厳しい主人、ピコットばあさんに命じられたリナは、町の店で働くことになる。

お店は、ナータという早口で食の好みが少々おかしな女性が営む本屋では、人間の言葉を口汚くしゃべるオウムがいる船具屋にお使いに行き、シッカというおじいさんのせともの屋でシッカが魔法を使うのを目の当たりにし、マンデーとサンデーという父子がいるおもちゃ屋では、隣のトケの店のお菓子を食べ過ぎている2人を心配する。

屋敷には発明家で話し相手のイッちゃん、抜群のコックのジョン、家事をするキヌさん、そしてふしぎな猫のジェントルマンがいて楽しく過ごすがやがて・・

たしかに「千と千尋の神隠し」に似ていなくもない。映画企画の話もあったようだ。

ピコットばあさんのきびしさと命令形、働かせることとか。こっちは小柄でどこかかわいらしいイメージ笑。全体にあまりおどろおどろしさもない。エピソードのそれぞれの立ち方に独特の魅力を感じるかな。

しっかり者のリナがそれぞれ特徴がある人たちと触れ合い、不思議な体験をする夏のひととき。なかなか微笑ましく面白い。

児童ファンタジーの原点のようなストーリーに癒されました。

◼️ 北村雄一「ダイオウイカvsマッコウクジラ」

タイトルからのそそられ度No.1ですね〜

なんて面白そうなタイトルなんでしょ。最初の方だけ、あとは別の深海生物を紹介する内容、と情報は見てた。まあそんなものかと。

船乗りによくあるオオウミヘビ伝説の正体はダイオウイカを見間違えたもの?ということはかつて目撃されたという、オオウミヘビがクジラに巻きついて海に引きずりこもうとしていた場面はつまり?ダイオウイカとマッコウクジラの関係性は?

なるほど、これはこれでそこそこ面白い。30ページ足らずだけれども。他の深海生物もなかなかに知的好奇心をそそる。

サメの仲間だけれども蛇のような頭と身体を持つラブカ、古代ザメのミツクリザメ、かつて日本のトロール船が引き上げた10メートルあまりの大型動物、ニューネッシーと騒がれたその正体は?紛れもない新種なのにクジラに似ていたため騒がれもしなかったメガマウス。極め付けはリュウグウのツカイで、銀色に輝く細長い身体、頭には赤いたてがみ、異形で最大7.6mにものる巨体・・そりゃオオウミヘビに間違われるわ、と思う。

見たいでしょう。この本には写真はないのです。webで調べてみましょう。

さて、いくつか読み手としてのマイナスポイントを。わがままかも知れないが。

タイトルの内容を書いてはあるし、こちらもそんなものかと了解しかけてしまうが、当該コーナーには、もひとつ熱意のなさと、この短さでも当然といったような印象を受けてしまった。

終盤ダーウィンの進化論に関連して、特定の人、考え方にさして説明的、論理的といえない攻撃をしている。学者が書くものにはたまにある。私は全面的にやめて欲しいと思っている。読む方には関係ないし、明らかに感情的。

タイトルにはそそられる。内容も半分くらいまではたしかに面白い。しかし、どうもテンポの悪さとあいまって、あとこんだけ書くなら写真くらい載せましょうという気持ちもあって、どうも後味の悪い読書となったのでした。

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