◼️ 川淵三郎「独裁力」
バスケ好き。Bリーグ発足のリーダーが川淵さんで良かったと心から思う。
偉大な方である。Jリーグ発足当時から注目していた。日本プロサッカーリーグの形を見事に整えて、大々的にスタートさせたこと、大規模スタジアムを整備したこと、ネーミング「Jリーグ」は以降どれだけのスポーツリーグに真似されたか。そして、チーム名から企業名を外す大胆な改革を成し遂げた。
バスケットボール界は、長い間内紛が絶えなかった。協会の会長がもめて長いこと決まらなかったり、というのは新聞ネタにもなった。また企業チーム主体でプロ化の必要なしという姿勢も見えたJBLと、そこに業を煮やして起ち上がったbjリーグの並立状態だった。
FIBAは2つのトップリーグのある日本バスケ界のガバナンス不足を理由に制裁を下した。女子を含めた国際資格停止処分。FIBAが主催する大会、リオオリンピック予選にも出ることが出来ない。川淵さんは強く請われて改善のためのタスクフォースのチェアマンに就任、私案として新リーグ構想を示し、長年にわたって降り積もって固まっていた様々な課題を解決し、プロリーグ発足へこぎつけた。おまけにソフトバンク孫会長と話して大型契約を取り付けた。もはやJリーグと同じ健全なスポーツビジネスだ。
日本がリオデジャネイロオリンピックの予選に間に合うようにと短期間での勝負、作業となったが・・やはり成功させてしまう。Bリーグは成功した。今年つぶさに観ていた。どの会場も熱いブースター(サッカーでいうサポーター)がたくさん入っている。理念を確立し、ホームアリーナを決め、地域に密着する。地方の体育館を回っていた、当地の教員が試合を運営していた頃とは隔世の感がある。その素朴な時代も好きではあったんだけどね^_^
なにより、プレーのレベルが上がっていると思う。情報量もかつてに比べて格段に多い。全試合のweb生中継も観ることができる。今年のリーグ戦、プレーオフは本当に楽しませてもらった。サッカーはJリーグ発足から25年の歳月をかけて、その間エキサイティングな旅を重ね、2018年のワールドカップでは最もベスト8に近づいた。
バスケットボールはまだ継続的な代表強化、選手の多様性、そのマネジメントなどはサッカーに比べると質量ともに経験不足、でもだから、これから楽しみな旅が始まる。東京オリンピックもホントに楽しみだ。
もしも川淵さんでなかったら、長年の停滞から抜け出せていただろうか。川淵さんで良かった、ホントに。
本書の後半はほとんどJリーグ時代に経験したことだ。社会のためになにが出来るかを考えて協賛社を募るなどの事業につなげる。その構想、パワーと推進力は本当に素晴らしい。
Jリーガーが学校を訪問し、自身の挫折や抱えていた悩みを話す「夢先生」のエピソード、1人だけ上手くて孤立してしまう、という部分に共感を覚えた子、自殺を考えたけど夢先生の話を聞いて思い止まった子などの話には本当にホロリとしてしまう。人生に訪れる、あえかな、でもしっかり覚えている拠り所。意外にその支えが大きい、というのは誰しも実感するところだろう。
80歳にして誰もに頼られる川淵さん。すごい、独裁者、だと思います笑
◼️ 志村ふくみ「色を奏でる」
染色家・志村ふくみさんのエッセイ。自然の色への目線が細やかで表現も多彩。浸れます。
私は、色好き。体系的には覚えてないけれども、日本の伝統色である縹色とか薄鼠とか蘇芳、鴇色なんて言葉にはワクワクする。
最近着物の小説を読み感想を綴った際、読書友が薦めてくれた本。いやー良かったです。
まずもって、桜染め、梅染めなどは花ではなくて樹木を煮出して染める、というのにびっくり。そうだったのか!草木染め、は例えば草の色をそのまま付けることはないそうだ。ちなみに緑は唯一直接染めることが出来ない、色なんだそうだ。
志村さんが色、にそそぐ眼差しは緻密だ。思い立って琵琶湖をめぐる湖西線に乗り、エリアによって変わりゆく湖面の色を表現している章には唸ってしまった。こんな小旅行も憧れる。琵琶湖はゆっくり巡ってみたく、思い切ればすぐ行けるのにまだその機会がなくて、刺激される。
もちろん、色を得る自然への深い憧憬と感謝、糸、織への思い入れ、着物への造詣の深さと色の組み合わせに対する感慨など豊かな本。また文章表現も巧みすぎて、これが本当の文章家だよ、なんて勝手に思い込んで独りごちたくなる。
志村さんは30代で一から織物、染色を習い始めた。現在96歳、人間国宝だそうだ。琵琶湖からほど近い近江八幡のご出身で、京都に工房がある。この本にも数々の京都の話が盛り込まれている。紫式部と源氏物語についての短い一篇にはもう沈潜してしまった。
「うす紫に、茶と鼠をふりまぜた♭の諧調はげんのしょうこ」
「青いトロンボーンの音色の裂(きれ)
しもつけ」
「色にはそれぞれの運命がある。くちなしは無言、そして無地がいちばん美しい。」
植物のこともたくさん、色感の筆致にもエッジが立っていて心をくすぐる。
緑と紫を混ぜるとねむい灰色にしかならないが、この補色どうしを隣り合わせに並べると「視覚混合」の効果で美しい真珠母色を得る、
そうなんだ、と。この組み合わせの美しい真珠母色って心から見てみたい。緑と紫が?柔らかく美しい、淡いピンク色?どんな色?
芸術に関する知識も豊富、流れるような、気持ちよく引っかかるようなことばと深みのある内容。
ダメだ。やられた。志村ふくみさんの本はまた読もう。楽しかった。
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