◼️ 柴田よしき「小袖日記」
源氏物語タイムスリップもの。平安エンタメです。
柴田よしきは確か初読み。以前に本友が「ワーキング・ガール・ウォーズ」「やってられない月曜日」をおもしろい本として挙げていたくらい。名前には男性っぽいイメージがあった。今回読んで女性作家さんと確信した。
不倫相手と別れることになりやけになっていた20代の「あたし」は雷に打たれたはずみで平安時代へとタイムスリップしてしまう。どうやら紫式部=藤原香子のお付きの女房、18歳の小袖と意識が入れ替わったらしい。小袖は源氏物語のネタ探しに奔走することになる。
源氏物語「夕顔」「末摘花」「葵」「明石」の真実とは。そして「若紫」の段で小袖は決定的な出会いをする。
源氏物語は、川端康成いわく、日本最高の小説でいまだにこれを超えるものは出て来ていない。数年前に通読し、少しそれまでとは違った感覚になった気がする。しばらく宇治川の重い流れのイメージがついて回った。京都市内源氏めぐりをしたり、宇治探訪をしたりした。文体そのものは、私が読んだ訳者の与謝野晶子にも苦労の跡が見えたくらい、長うっとうしい。しかし場面の展開やそこに込められたものを感じるとき、紫式部って天才、と思ったりした。色彩感や運命への直観、加えてエンタメ性に秀でている。
さて、小袖は現代の女性の感覚から、源氏物語を毛嫌いしている。男の身勝手さ、女性の蔑まれ方が許せない、といった視点から物語を見る。香子さまは聡明で切れ者、ネタ探しというよりは小袖を実地調査の探偵として使っているような感じだ。この時代に現代人が暮らす時の、異様に見える部分も多く指摘している。
小袖の批判は痛快で頷けるものではある。ただこの時代の女性の悲哀を知るにつけ少しずつ感じ方も変わっていったような気がする。まあしかし若紫は私も原典を読んでて誘拐同然だな、と思った通り、ロリコンと言われても仕方ない所業ですね、はい。ただ無理押しもドラマを生み出すもとではある。
よく思うけれど、私ただの庶民ですーという人が妙に推理力に優れていたり、そもそも知っている情報量が多すぎるでしょ、も思うことはある。その例にはもれなかったし、理屈も多いと思う。
ただ、源氏物語題材のバラエティはおもしろい。現代に帰った若紫も気になるし、まだ序盤。ぜひ続編を書いて欲しいな。宇治十帖まで行こう!
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