2024年6月5日水曜日

5月書評の12

5月は12作品。今年ここまで61作品。だいたい上半期の読了数が見えてくる。6月は苦戦中でひさびさに10行かないかも?特に土日読まなくなったんだなー。スマホ病だし。


◼️ 髙田郁
「幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別編 下」

特別編の月日の巡りは早くて、みなどんどん歳をとる、で長生き。高齢者活躍の構図はなんか現代の世相を反映しているかのような。流れの中で気になるキャラのその後ー。

江戸は大家に見舞われて、幸の五鈴屋、菊栄の店も蔵を残して全焼、そして再建。大川には皆が望む大橋がついに完成。様々な想い出を胸に、幸は九代目店主となる賢輔とともに大阪の店へと帰る。ともに、お竹どんも故郷大阪へ。92歳でバリバリと働いている。

話は幸が帰る前の大阪。八代目店主・周助のもとに六代目で戯作者を目指していた故人・智蔵の子がいる、という報が入る。会いに行ってみるとまさに生き写しの若者だったー。

周助はまたある志を抱いており、幸と賢輔のこともありと、事態はもつれながら進む。

2話め。かつて幸の前に五鈴屋台四代目の嫁となった菊栄は店主の弟でのちの五代目・惣次に、「笊嫁(ざるよめ)」と陰口を言われ、やがて離縁となる。しかし菊栄には商才があり、江戸で小間物商としてかんざしなどの髪飾りでヒットを飛ばし成功していた。幸とは長い付き合いの姉代わり。幸が大阪へ発ち、江戸に残された菊栄は、次の商品を生み出すべく鋭敏な感覚を駆使しつつあれこれと考える。そして、五鈴屋で失態を犯し出奔した惣次は江戸で両替商の店主となっていた。嫌い合っていた2人は互いの才能を認め、たびたび会食をともにする。

なにやら大人の雰囲気漂う、微笑ましくもある関係。他の話が基本まっすぐだし、女性の美しさを求め知恵を巡らす成功者・菊栄がらみの余談はあってしかるべき。そして、あるべしはもうひとつ。

姉を想う賢輔への恋に破れ、姉の才を妬み、ついに五鈴屋を潰そうと目論む音羽屋のもとへと走り、幸と敵対した妹・結。やがて手代が禁を犯し重追放、闕所となりいまは山奥の旅籠屋の女将となって切り盛りしながら桂、茜といった幼い娘たちとともに暮らしていた。夫・忠兵衛は毒気がなくなり、釣り三昧で、結ひとりが忙しい。加えて、長女の桂は姉の幸に似ていたー。

小説にはよく見られる。ゴーゴリ「外套」や芥川龍之介「芋粥」のように負け組を描く作品。結というのはそういう役どころ・・と承知はしていても不憫やな、と思ってしまう。先行きも読めるし。光が差したと信じたい。

最終話、幸は還暦。田沼意次の政策により幕府への御用金が商家に課される。一方、生まれ故郷・津門村、いまの甲子園球場近く、を訪ねる際通りかかった尼崎藩のさびれた様子が気にかかった結と賢輔はー。最後に五鈴屋の名前のもとである、五十鈴川を2人して訪れるー。

大団円。著者の挨拶も載っている。幸の物語はこれで終わりかなと。ただ、五鈴屋その後の話はまだ作品になりそうだ。別の次回作シリーズも構想中だとか。

先へ先へと。大河ドラマはもちろん作りもの。でも楽しめるか、彩り豊かか、なにより知恵と、惹かれるものがあるか。工夫と発想、気づき。考えて考えて形にする。なんか著者が幸や菊栄に見えてきた。

楽しみだ^_^

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