2024年6月27日木曜日

バスケ🏀バレー🏐!

雨が降ってじめじめして来ました。先週は大雨予報もあり、かつ天気と関係ないところでJRのダイヤが乱れまくったりしてなんか目が回る感じがした。写真は大雨の後、一時的に晴れ渡った半月の夕景。

クラシック前に美味しいパスタが食べたいと探して行ってみたオシャレなお店は早い時間帯なのに女性でいっぱい。サクメシだからと予約なしで入れ込んでもらいました。チーズたーっぷりのアラビアータ美味かった。

バレーボール🏐ネーションズリーグ、男子は土曜日に東京オリンピック金メダルのフランス🇫🇷をフルセットの末に破った。向こうはヌガペトというベテランエース抜き、こちらは高橋藍が不出場だけれどお互いほぼフルメンバー。西田に代わって入った宮浦、良かった。そしてなんといっても特筆すべきは石川。とにかく、打ったら決まる。硬軟自在、ブロックを抜けていくアタックはレシーブされることなくコートを射抜く。試合途中石川のスパイクを1本初めて上げたレシーバーが思わずガッツポーズするほどの決定力だった。さすがはセリエAチャンピオンのペルージャで来季から主力とみなされる男。気迫もすばらしかった。

続いて行われた女子の決勝トーナメント準決勝、世界ランク1位、今大会無敗のブラジル🇧🇷戦、日本女子はこれまたフルセットの末勝利をつかみ、遂に優勝を争う最終決戦に駒を進めた。大砲オポジットの和田が大活躍。トータルの交代策もうまくいっていたかなと。ブラジルとは相性がいいのは間違いない。セルビア🇷🇸や中国🇨🇳のようにメンバーを落としているチームもあるが、この結果は良い自信になる。きょうもバレー🏐は2階建て。vsイタリア🇮🇹の決勝戦もがんばれ、ニッポン🇯🇵🔥

というわけでこの日はプロ野球⚾️オリックスvs西武→バスケット🏀男子日本🇯🇵vsオーストラリア🇦🇺→大河ドラマBS→バレーボール🏐×2鬼滅の刃は録画とスキマがなかったのです😆このへんで。

コンサート②

翌日は堀米ゆず子さんのシベリウスヴァイオリン協奏曲。シベリウス、実はこの半年で3回め。いかに演奏機会が多いか分かります。でも何回聴いてもとても良い曲。北欧のファンタジックさを含んだ出だしと緊迫感が高まるクライマックスが好きですよね。大喝采で、アンコールはバッハを美しく決めてくれました。

後半はシェーンベルク。ブラームスピアノ四重奏第一番のフレーズの一部は、パトリス・ルコント監督「仕立て屋の恋」という映画で印象的に使われています。私は大好きで、当時CDを買って聴いていたもの。

今回はその管弦楽版。オケならではの様々な工夫が凝らされていて、映画で使われたフレーズが大編成のストリングスでよりその悲哀性を訴えかけてきました。ちょっと感動しちまいました。色々な巡り合いがあるものです。感謝😊

コンサート行きつつ、秋冬の人気コンサートのチケットゲットにトライしたりと、ある意味クラシック週でした。

コンサート①

今週末はコンサート2つ。毎年恒例の山形交響楽団さくらんぼ🍒コンサート。もれなくミニパックいただけます。めっちゃ美味しい😋

今年は「魔笛」序曲からソリスト&合唱隊を入れての「戴冠式ミサ」とモーツァルトの前半。そして後半はトランペットが中心の楽曲と、Violin:辻彩奈さん、Violincello:上野通明さんという俊英でブラームスのダブルコンチェルト。重厚さのある曲、若手2人は溌剌とした演奏を聴かせてくれました。バラエティに富んだステージに満足😊

マスコットはでん六のでんちゃんと山形県おもてなし課長のきてけろくん。来年も来てねー。

6月書評の9

◼️ 門井慶喜「東京、はじまる」

東京駅を設計した辰野金吾の一代記。考えさせられるものもあった。

辰野金吾という名前は、昨今の建築ブームで以前に増してよく聞くようになった気がする。かつて日本は江戸時代から明治時代へ、武士の時代から近代へと極度に劇的な転換を迎え、加速度的に西欧化した。洋風大建築がそれこそ雨後の筍のようにボコボコと建てられた。その中で辰野の建築の軌跡はそのまま日本近代史につながる。日銀は各地方都市の支店まで手掛けているし、旧国技館、大阪市中央公会堂、奈良ホテルなども辰野の手による。

辰野金吾は鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルを師に学び、イギリス留学を終えて帰国、やがて建築事務所を開業する。日本銀行本店をコンドルが担当すると聞くと、師匠・コンドルは本国で一流というわけではない、などと伊藤博文らを前に強く意見し、仕事を奪い取るー。

物語は日本銀行と東京駅それぞれ落成、開業までのパートに大きく分かれていて、その合間に辰野の生い立ちから家族生活、教科書に出てくるような偉人たちとの関わりなども織り込まれる。

建設される土地、つまり江戸から維新となってしばらくの東京の一等地の様子や、当時の建築素材、デザイン、機材の導入や工法なども紹介されていて、時代感がにじんでいて興味深い。

辰野金吾を取り巻く時代、人々。読む中で考えてしまったことがあった。

私はニワカな建築ファンで、去年は京阪神それぞれの建築祭にも行ったし、東京でもいくつも観に出かけた。

やはり明治期の建築は赤煉瓦にドーム型屋根が多い気がする。もちろんいかめしく構えた西洋建築も大いに楽しめる。ただ、どれかというと以降の時代、石の素材を活かした建築がしっくりきて好みに合ってたりする。商業の地・大阪にはあまり高層ではない石造りのビルが多い。

戦後はコンクリートを使った大規模建築が相次いだ。それから本書の中でも触れられている高層化。フランク・ロイド・ライトの帝国ホテルも時代の波の中では古くなっていった。

現代はまた違って引き締めの時代の残滓を残しつつ、当時とは芸術性、オシャレ度、都会的センスが違う局面に達している気がする。SNSの"映え"や昨今の建築ブームも大いに関係しているだろう。一般のビルには機能性重視が目立つものの、ちょっとだけでも特徴を持たせる、カッコよくする、気持ちが見える。レディメイドにプラス@、のような感じだ。近未来的なフォルム、知恵を使った工夫、が別の形を取って新たに出てきているのではないか。木材を使った特徴的なデザインのものもある。

本書の中ではコンドルの建築を古いと断罪した辰野金吾が、やがて弟子に考え方が古いと厳しく意見される。いわく将来的には効率が大事となるため、コンクリートを使った高層ビルの必要性を辰野に訴える場面がある。

そのコンクリ時代も華やかだったがやがて批判派が現れる。時代は移る。新しいものには反発も起こる。聖徳太子の時代、仏教は外国の宗教で受け入れるのにハレーションが起こり、大和国を二分する戦があった、なんてことも考える。辰野が初期のコンクリート製の倉庫を見て気持ち悪さとでもいうような違和感を覚える場面にはふうむ、となってしまった。

そもそも、なぜ人は今の時代、名建築に惹かれるのか、明治維新、直後の文明開花に生まれた東京モダンとも言うべき雰囲気は確かにオシャレである。ドラマで見た、まさに日本を拓かん、とする人々の雰囲気に触れられるからかもしれない。

私的には、実は小さい頃には戦前のモダン建築は、気づかないだけで身近のあちこちにあったのではないか、当時の建築は取り壊され建て替えられたものも多く、残っている名建築に、当時のなにがしかの感覚を思い出し、世代的にえもいわれぬノスタルジーを感じるから、というのもあり得る説ではないかと思っている。

建築はいろいろと考えさせられる。なぜ惹かれるんだろう?という問いの答えを考えるのは楽しくもある。そもそも、という掘り下げ方は今後もしていきたい。

ところで、1月に慶應大学の図書館旧館を訪ねた。設計を担当した事務所共同経営者の1人が辰野金吾の親友・曾禰達蔵。詳しい人物像を知ることができて嬉しいと同時に、少し不思議な感覚もした。

6月書評の

◼️ 中井由梨子「20歳のソウル」

活き活きと打ち込む姿に何度もこみあげてしまう。「市船ソウル」を作曲した少年の物語。


「大義の作った曲だ、いくぞぅ」

顧問の先生の掛け声で市立船橋高校吹奏楽部関係者が葬儀場で演奏を始めた映像を見たことがある。

この本は千葉県の市立船橋高校、通称"イチフナ"の吹奏楽部で同校の応援曲「市船soul」を作曲、20歳で早逝された浅野大義さんの人生を綴ったノンフィクション。

「レッツゴー習志野」などの応援曲で美爆音を聴かせる習志野への進学がかなわず、市立船橋に進んだ大義さん。しかし市船の吹奏楽部も分厚い活動をしていて、県下の強豪校だった。トロンボーンを担当して音楽部活に打ちこみ、仲間とともに成長していく姿に何度かこみあげるものがあった。これは何だろう?としばし考える。

ある程度の年齢になれば、子どもががんばってる姿を見るだけでホロリと来てしまったりするものだ。それもある。しかし市船吹部は顧問の先生の信念、活動量の多さ、豊富さ、言いにくいこともさらけ出してぶつかり合うミーティングと充実している。のびのびと、進歩を感じつつ、やる気をもって前へ進む生徒たちの姿がまるで物語のようで、単純にすばらしい、と感銘を受けたのだろうか。

私もまさに20歳になる息子がいて、ずっとスポーツをしている。ブカツの仲間となにげなく楽しそうにしているのを見るのは嬉しいものがあった。

結論は出ないけれど、親から見えない姿が書き起こされている、ということも一因だろうかと。生命の儚さが、充実した青春に涙させた、こともあるんだろう、たぶん。でもそれだけではないような気がしている。

早すぎる死には、言葉がない。まさに身につまされる。将来を嘱望されたプロ野球選手、まさにこれから花開こうとしていた水泳選手、病魔は人を選ばない。悲しく皮肉なことだ


「レッツゴー習志野」も「市船soul」も動画で聴いた。生ききった証。ずっと遺る。また甲子園で聴くことを楽しみにしている。

6月書評の7

◼️ 柴田よしき「小袖日記」

源氏物語タイムスリップもの。平安エンタメです。

柴田よしきは確か初読み。以前に本友が「ワーキング・ガール・ウォーズ」「やってられない月曜日」をおもしろい本として挙げていたくらい。名前には男性っぽいイメージがあった。今回読んで女性作家さんと確信した。

不倫相手と別れることになりやけになっていた20代の「あたし」は雷に打たれたはずみで平安時代へとタイムスリップしてしまう。どうやら紫式部=藤原香子のお付きの女房、18歳の小袖と意識が入れ替わったらしい。小袖は源氏物語のネタ探しに奔走することになる。

源氏物語「夕顔」「末摘花」「葵」「明石」の真実とは。そして「若紫」の段で小袖は決定的な出会いをする。

源氏物語は、川端康成いわく、日本最高の小説でいまだにこれを超えるものは出て来ていない。数年前に通読し、少しそれまでとは違った感覚になった気がする。しばらく宇治川の重い流れのイメージがついて回った。京都市内源氏めぐりをしたり、宇治探訪をしたりした。文体そのものは、私が読んだ訳者の与謝野晶子にも苦労の跡が見えたくらい、長うっとうしい。しかし場面の展開やそこに込められたものを感じるとき、紫式部って天才、と思ったりした。色彩感や運命への直観、加えてエンタメ性に秀でている。

さて、小袖は現代の女性の感覚から、源氏物語を毛嫌いしている。男の身勝手さ、女性の蔑まれ方が許せない、といった視点から物語を見る。香子さまは聡明で切れ者、ネタ探しというよりは小袖を実地調査の探偵として使っているような感じだ。この時代に現代人が暮らす時の、異様に見える部分も多く指摘している。

小袖の批判は痛快で頷けるものではある。ただこの時代の女性の悲哀を知るにつけ少しずつ感じ方も変わっていったような気がする。まあしかし若紫は私も原典を読んでて誘拐同然だな、と思った通り、ロリコンと言われても仕方ない所業ですね、はい。ただ無理押しもドラマを生み出すもとではある。

よく思うけれど、私ただの庶民ですーという人が妙に推理力に優れていたり、そもそも知っている情報量が多すぎるでしょ、も思うことはある。その例にはもれなかったし、理屈も多いと思う。

ただ、源氏物語題材のバラエティはおもしろい。現代に帰った若紫も気になるし、まだ序盤。ぜひ続編を書いて欲しいな。宇治十帖まで行こう!

6月書評の6

◼️ 長野まゆみ「野川」

作家に求めるものって、と考える。ヘンだけどヘンじゃない長野まゆみの青春モノに考えた。

長野まゆみサンとの付き合いも長くなってきた。いまのようなペースで読み始めたのは15年くらい前で、長野まゆみを知ったのはその数年後。「鳩の栖」で魅了され「少年アリス」に感嘆し「天体議会」で美少年たちのSFチックな日常と冒険に酔い「カンパネルラ」の完成度に目を瞠りとまあその他にも好きな作品はいろいろ。小難しい漢字、鉱石に植物の知識と好ましくバラエティ豊か。その少年ものは教科書にも採用され、娘ので読んだと読書友から聞いた。

最近は少年同士の葛藤という、以前とはだいぶ違うテイストの、やっぱり少し変わった、しかし特徴的にこなれた語り口の物語などを書いてもいる。

「野川」のヘンさ、というか独特の部分は東京郊外の地理を、鳩の視点で立体的に見ているところかと思う。ストーリーに忍ばせた芯は興味深い。教師役の説明はやや冗長でくどいかな。風景の表現は清々しさも感じさせるもののやはり長め。

で、両親が離婚し、社長からチラシ配りをするようになった父とぼろアパートで暮らすようになった中2の音和少年の、葛藤と成長のストーリー。歩き、地勢を見る音和。温かく周囲を取り巻く、鳩を飼い訓練する新聞部員たち。

親子と、少年の心と、鳩。サラサラと読めたし、都内の自然と地形、成り立ちは興味深くもあった。物語としての3次元的な部分と森の緑、俯瞰的なビジョンは興味深くもあった。

作家の抽斗と、いまの姿勢。以前友人と、自分がしたいことと求められることが違うのはよくあること、という話をした。読者はぜいたくで経験則にも引きずられる。あの頃、のちょっとヘンだけど、抜群の吸引力と独自の世界、小説、ということを感じる深い力に満ちたキレキレの作品をステレオタイプに求めてしまっている。

そういう目で見ると、純粋な青春もの、というストーリーがヘンじゃなくてヘン、計算された、立体的なサイト、視界はヘンで興味深い、という感じだ。スイマセンわがままです。

ただ、結局のところ長野まゆみは一筋縄ではいかない、という結論に落ち着きほくそ笑んだりもする。まだまだ未読の作品も多いし楽しみだ。

6月書評の5

◼️ 赤染晶子「じゃむパンの日」

コミカルなエッセイ集。なんとも・・関西やなあ。ピン芸人みたいやわ。

書評で興味を持ちメモしてたらポール・オースター「幻影の書」を貸してた後輩が読みますか〜?と持ってきてくれた。持つべきものは読書友。クラシック好きと本読みは教えたがり貸したがり。たしかに自分が1回読むだけではなんかもったいないし、自分の感銘を人にも知って欲しい!というわけできょうも戻ってきたポール・オースターを別の者に、手持ちの青山美智子「木曜日はココアを」を同じフロアの同僚にせっせと貸したのでした。

著者は京都の方だそうだ。身近に起きたこと、また過去の体験を多少の、いやかなりの妄想を交えておもろかしく書く。55のエッセイと、こちらも翻訳者にしてウケの良いエッセイスト、岸本佐知子氏との爆笑交換日記を収録している。

表題作はなんかよくわからないデイドリームと自意識と変な隣人たちが交錯した結果、じつに関西らしい、もっと言えば関西女子らしいオチでキュッと締めている。

ププっと笑ったのが「流しそうめん?」と著者の祖父が自作の「飛び出しぼうや」を作って道路に置く「しょうちゃん」。どれもあったな、ありそうやな、もしくはないないない、なんやねんそれ、とか心の中で何かのリアクションをしてしまいそうなお話。いかにも関西女子でこんなかけ合いをしてそうだなあというのもある。嫌いではない。

筆がスラスラ、という感じでこれをどう物語に活かしているのか、芥川受賞作「乙女の密告」を読もうか、他にどんな作品が、1974年生まれ・・とプロフィール欄を見ていて動きが止まった。早逝されたのか。合掌。笑いを遺す人は独特の虚しさを読者に与える。

よけいに芸人エッセイストがストーリーテラーに変わる作品を読みたくなった。

2024年6月16日日曜日

6月書評の4

なかなか今月はピンチで、半分終わってしまったというのにまだ読了4つ。月10記録が途絶えそう。半期終わりのランキング作成も待っている。

なんて、個人的なもんだから、記録が途絶えても、ランキング作らなくても世の中的にはなんら関係ないんだけどね。それでもやってしまうのは楽しみだから!😆

◼️ 内田百閒「第一阿房列車」

大阪へ、静岡へ、鹿児島へ、そして東北一周?とスケールが大きくなる、用事のない鉄道旅。
なかなかいい風情を醸し出す。

実はこの本には続編「第二阿房列車」があって、私は「第二」を先に読んだ。テイストは変わらないけれど、著名な文士ということであちこちから歓待されたり取材されたり、また迫り来る悪天候をなぜかスルスルと交わしていく展開が面白く好感を残した。だから第一を、と探し求めることはせず、しかしなんかうっすら予想していた通りやっぱり巡り合った次第。

さて、朝起きれない、思い込み激しい自己チュー文士先生、あれこれと理屈をつけて気に食わないことはせず、ゆえに目の前の列車をみすみす逃し2時間待ったりして、観光名所には積極的ではなくでもやっぱり行ったりしてどうもダラダラした行って帰る旅。

相棒は第二でも一緒の国鉄職員・ヒマラヤ山系くん。なんとなく大男だからそう呼ばれてるのかな、というイメージがあり、ぬぼーとして要領を得ない受け応えもマッチしていたからそう思い込んでいた。解説によれば国鉄の雑誌を編集していた平山三郎という人でなるほど名前か、と笑。百閒の原稿が欲しいから同道していたとか。

昭和26年から27年の連載もの。旅はまず大阪まで行って一泊して帰ってくる。列車は区間により蒸気機関車と電気機関車が混在している。新幹線開通の13年前の旅である。なんかこう、朝ドラあたりで出てきそうな、戦後の時代感が見える。よく時代を語る時に例えとして出すけど、私が中学生の頃まで切符には人力でハサミを入れてた。まだそれが常識で他が考えられないくらいの頃だ。

次は静岡まわり。富士山を見たかったけど雲がかかって見えなかったという小旅行。そして長編スタート、鹿児島へ。途中故郷の岡山を通る時には、これはたしか「第二」でもそうだったかと思うが、テンションが上がっているのが分かる。鹿児島では西南戦争の弾痕を見たり、桜島を眺めたり。最終章は北へ。盛岡、青森周りで山形まで行って仙台にもどり松島を見て帰ってくる。最初の方では考えられない9泊もの旅。折しも季節は秋だ。スケールが大きくなったものだ、と思って読んでいた。

あれこれと物事を感じる通りに、少しコミカルに書くが、ともすればあれはいかんこれも気にくわないといった風になりがち。ヒマラヤ山系くんにはドブネズミみたい、とか犬が死んだ様なきたならしいボストンバッグをさげて来たとかさんざんである。

ところがそのようなテイストの珍道中のなかにふっと流麗な風景描写なぞが入る。

「隧道を出ると、別の山が線路に迫って来る。その山の中腹は更紗の様に明るい。振りつける雨の脚を山肌の色が染めて、色の雨が降るかと思わせる」

横手と黒沢尻の間を走る山間の横黒線。陸奥の紅葉。これも雨の日だ。スッと挟まれると、表現が浮き立ってきれいな透明感をも覚えてしまう。この自己チュー変人的な列車漫遊記の中ですごく素直な表現で、なんとも言えない味わいを紡ぎ出す。不思議なものだ。


内田百閒は夏目漱石の弟子で、芥川龍之介の親友。たしかお金がないからと湯河原の漱石のところへ交通費を使ってわざわざ行ってお金を借りて来る。算段通り、良い宿で晩も朝も美味しいご飯を食べさせてもらい、漱石持ちで車で駅まで送ってもらう。そんな話を読んだことがある。「第二」だったかな・・?すっとぼけた点は1つ個性的だと思う。漱石の弟子だからか、辞書用意して読みましょう的なむずかしい漢字もある。今回も「鳳眠(ほうみん)」という言葉を調べたら、夏目漱石くらいしか使ってなくて研究が進んでいないなんて書いてあって苦笑してしまった。

んーやはり第二の方がおもしろかったかな。第一はやや冗長で少し読むペースが遅くなってしまったし。まあこれもエッセイの1つの形、なんだろうと思うことにしよう。

6月書評の3

◼️ 朝倉かすみ「平場の月」

らしさ、がにじむ。青砥と須藤、過ぎた人生と恋の果て。山本周五郎賞。

著者の「田村はまだか」で、独特の既視感で昭和を濃厚に思い出させる作風を知った。同作で吉川英治文学新人賞を取り、この作品は山本周五郎賞を受賞、また直木賞候補作に上がったこともあり気にはなっていた。映画化されるんだっけ。興味はあるかな。

50歳、青砥健将。妻と離婚し息子たちは成長してそれぞれ自活、父は亡く母は認知症で施設に入っている。中学の同級生たちは青砥と同じく地元に残っている者も多い。検査に訪れた病院の売店で、かつて告白したことのある須藤葉子に再会する。青砥、須藤とお互いを呼びながら付き合いが深まっていく。しかしー。

べったりとした地元感、生活感。そのベースの上で、2人は淡い恋心をおとぎ話のように成就させる。しかしー。味付けとして、謎めいた風の須藤の、うまくはいかなかった人生が語られる。

最初にネタバラシしていることもあり、成り行きは分かる。たぶんしてなくても分かる作り。そこへ向かって、青砥目線で見た須藤が、日常の口調、表情、仕草、なんということもない言動にわたってとても細やかに描写される。

恋愛ものの常道といえばそうかもだが、すでに人生ひと回りしてしまった年齢とそれに伴う現状に、妙に可愛らしい風情が漂う。数十年の年月を経て、過去を見てまた自分を見つめること、変わったのか、変わらないのか、揺れる中でだから新鮮だ、とハッとしたりする。

人は何に感じるのか、大人の割り切った頭で思考すれば、どれもこれも馬鹿らしい、と思える時もある。でもこだわってしまう、その葛藤と、一歩引いた、他人から見れば少々ヘンな、言い換えれば超越したような行動。

章のタイトルは須藤のセリフ仕立てにしてあり、「痛恨だなぁ」がやっぱり好きだなと。

優等生だった須藤のキャラは女言葉を使わず中性的。自分の考えでそれなりに社会的に上手に行動するタイプ。青砥にもきっぱりとした面をたびたび見せる。

名前を聞くようになった作家さんは自然同年代より若いと思ってしまう最近。著者さん私よりそれなりに年上でちょっとびっくりで、この昭和テイストの既視感も納得。若い時に年配の方の話を聞く時は、失礼ながらセピア色、モノクロの風味がしていたものだが、自分がいざそうなると数十年の昔でもカラーそのもの。

おっかなびっくりで触ると、意外な想いにしばし浸ったりする。空想を、物語で可視化された気分というとこかな。

四季

フェスティバルホールにて、ヴィヴァルディ「四季」とピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を組み合わせアレンジしたステージ。ソリストはヴァイオリンと聴くの初めてのバンドネオン。ピアノに堪能なコンダクター鈴木優人はチェンバロとピアノを操りながら弾き振り。時に片手ずつチェンバロピアノの同時弾きをする姿にまるでかてぃん・角野隼斗みたい、と。

ヴィヴァルディの「冬」はCMやフィギュアスケートでもよく使われるフレーズで緊張感、ざわつく心象を余すところなく表して締め、アンコールはとっておきのリベルタンゴ。ノリノリの前半「身体を揺らす」演奏でした。

後半はビシッと大編成のストラヴィンスキー「春の祭典」。季節感と組合せを大事にしたプログラム。生で聴くのは初めて。迫力を感じました。

週末はwebで高校バスケ🏀の九州大会。女子は福岡の精華女子が宮崎の小林高校を大接戦の末振り切って優勝、男子は福大大濠がライバル福岡第一に差をつけて制し、男女とも無事ウィンターカップの出場+1枠を確保しました。

夜はバレー🏐のネーションズリーグ。勝てばパリオリンピック出場決定のカナダ🇨🇦戦を落としてしまったものの、集計の結果女子代表は出場権をゲット。良かったねー。

バレー男子は自力でのオリンピック出場じたい実は2008年北京以来。開催国枠の前回東京オリンピックではベスト8なのでやはり次はメダルを目標にするべきかと。

女子は6大会連続出場、前回はグループリーグ敗退でともかく決勝トーナメント進出が望まれる。ただトーナメント1回勝てばベスト4なのでなんとか勝ち抜きたい。

だいたい午前中は日用品の買い物に行ったりで帰ってきてスポーツを観て、大河ドラマを観て、今なら鬼滅の刃を観る前に風呂まで入ってしまう。なんか家で土日は本を読まなくなっている。

とはいえ読書友との交流は盛ん。会社の本読み後輩たちに先に亡くなったポール・オースターの本を持ってって、こちらもいろいろ貸してもらい、地元の古書店でも仕入れたりと楽しくやってます。

テレビで紹介されてたリンガーハットの冷やしちゃんぽんを探したものの最寄りのコンビニもコープもなし。舌がちゃんぽんになっててあったかい方を買う。どら焼き、特に白あんめちゃウマだった。

梅雨に入る前に紫陽花の季節は終わろうとしてる感じ。なんかね、気分も少し下がり気味、毎年この季節夏バテ入るので。まずはよく眠ることやね。

2024年6月9日日曜日

BELIEVE

東京出張はすぐ帰り写真といえばサラリーマンの町新橋コリドー街あたりで食べた焼き鳥のみという😁東京なんか暑かったー。

週末は感動の🏀ワールドカップin沖縄の日本代表ドキュメント映画「BELIEVE」を観に久々の神戸ハーバーランドまで出向いた。もう最初の1分で感動モード。友人たちが映っているのを確認し、あの時の興奮に浸る。もうすぐオリンピック本番、終わったらスラムダンクの再上映、もちろん高校のインターハイもあって夏はバスケイベント盛りだくさん。

バレーボール🏐は男子ネーションズリーグを楽しむ。思惑通り首位スロベニア🇸🇮に勝ち切った。週に代表戦4試合も観られるなんてサイコーです。

女子も好調、いよいよオリンピック出場権が決まる最終週。バスケの映画中、1人1人の選手が目標を口にするシーンがあった。「アジア1位です」

🏐日本女子代表も信じているよね。
BELIEVE,BELIEVE,BELIEVE.
きっとできる🔥NIPPONの力を見せつけよ、がんばれ、日本。

6月書評の2

◼️劉慈欣「三体」

壮大な序章。名作は内容が細かく、概要がシンプル。なるほど、と。

SFの超大作として、アジアの作品として初めてヒューゴー賞を取り、世界で売れ続けている「三体」3部作。中華系のSFってケン・リュウ氏もいて、最近元気なイメージ。

この小説、中国誌での連載が2006年にスタート、2008年に単行本化、中国全土に渡る人気作となった。2015年にケン・リュウ氏(中華系アメリカ人)が英訳したものがヒューゴー賞を受賞したとか。

この1巻めは壮大な序章にすぎないというのがよく分かった。人によっては最初に出てくる文化大革命時のなまなましい実力行使が読むにたえないということもあるらしい。私は天安門事件など興味があったし、歴史的な歩みは映画ほかの影響もあって少し分かるからあまり苦ではなかった。えぐかったけど。

文化大革命時に大学教授の父を紅衛兵に殺された葉文潔(イ・ウェンジェ)は反乱分子として扱われるが、父の教え子楊衛寧(ヤン・ウェイニン)や政治委員雷志成(レイ・ジーチョン)の導きで、彼女は最先端の技術により宇宙を監視する業務に就くようになる。

一方、現代において、髪の毛より細い線でありながら自動車や船までも切断するという物質、ナノマテリアルを研究する汪淼(ワン・ミャオ)は、ある日自国の陸軍少将、NATOやアメリカ軍の軍関係者らと科学者が出席する会議に呼び出され「科学フロンティア」という団体につながりのある高名な学者が2か月足らずのうちに次々と自殺していることを知らされる。既知の1人の遺書には「物理学は存在しない」と書かれていた。

汪淼が独自に調べを進めるうちに、Vスーツを装着しゴーグルをかけて参加する、あるゲームを知り自分もやってみる。そこは過酷な気候の「乱紀」と安定している「恒紀」に分かれる世界で、3つの太陽があり、日の出と日没の時期が入り乱れていた。そのゲームの名は「三体」ーーー。


著者はエンジニアで発電所等のコンピューター管理をしていたとか。中身は完全な理系小説で割り切って読んでいくもの。そして提示された謎が解けた時、そこにはスケールの大きな仕掛けがあった。


見出しで触れたのが感想で、三体ゲームは時代考証も本文に触れている通り雑めということもあり笑、設定の謎を少しずつ紐解いていく過程が楽しめる。キャラ付けその他もなかなかおもしろい。ただ科学的な部分は、特にラスト近くはさっぱり分からないので目で追うだけで割り切って読む。まあSFにはよくあることだ。

私はほぼまったく予備知識なく読み、その方がおもしろいと思うので大ネタは秘すけれど、大人向けから児童用まで、もう数え切れないくらいのSFエンタテインメントで前提となっているポピュラーな題材。ある意味この大作にはふさわしいのかもしれない。

ミステリ仕立ての不可解現象、バーチャル・リアリティと三体世界の設定、ナノマテリアルの利用へ持っていく構成など、序章と言いつつ見どころも満載で、それらを駆使して大きな設定を為している。この後どう動いていくのか。今作も610ページで科学もの。それなりに時間がかかった。シリーズ2も3も上下巻。な、長そうだな・・。

「次元」についての説明が詳しめに織り込まれている部分が、知的好奇心を刺激されて興味深かったかな。

ちょうどというか、時はアルテミス計画をはじめとする月の探査と、月を足がかりにして行う方向の火星有人探査へ、宇宙に興味がある人々の興が湧き立っているというタイミング。宇宙への挑戦、その最前線は新たなステージに辿り着く寸前まで進んでいる実感が敷衍していると思われる時期。かつての宇宙ものSFから、新たな時代のメルクマールとなる作品の出現が求められていた気すらする。微妙な影響がないとは言えないだろう。まだ言うの早いかな。3部作通読してからかな。いつになるかな〜。

中国の社会情勢を踏まえている部分は緊張感と現実感を含む強い制約を生み出している。この点ヒューゴー賞の理由になったのだろうか。もしも欧米の社会と価値観に斬り込む内容だったらどうだろう。いや、制約自体は色々考えられるかな、それもおもしろいかも、なんて考えてしまった。

2024年6月5日水曜日

きぼうが天頂を

先週の話、大雨が過ぎて、久々にきぼうを観測🛰️関西は北西から来てほぼ天頂、頭の上を通過して南東へ。大阪市街の光の海の方向へと遥かに飛んで行きました。いつもながら、手を振ってしまうし😆なんかいいことありそうな👍

6月書評の1

◼️Authur Conan Doyle
"The Adventure of
      the Golden Pince-Nez"
「金縁の鼻眼鏡」

ホームズ短編原文読み45作め。第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還」より。

「帰還」の作品は私的にドイルの筆が充実期を迎えていると考えています。「金縁の鼻眼鏡」はまずタイトルがなんとなく興味を惹きますね。違いを感じるというか。これが事件に深く関わってくる、という予感。しかもなにかレトロで意味深そう。その通り、すこうし異質な物語。捜査範囲は狭くスケールは小さいものの、ホームズの観察力が活かされていて、ストーリーとして独特の印象を放ちます。では始まりはじまり。

1894年はホームズがスイスはライヘンバッハの滝に、宿敵モリアーティ教授とともに落ちて亡くなったと思われた状況からベイカー街に生還した年。その11月下旬ある日の夜、嵐をついてホームズとワトスンの部屋にやってきたのは、スコットランド・ヤードのpromising、将来有望なホプキンズ警部でした。自分を尊敬する生徒のような若き俊英にはホームズも優しく接します。晩秋の雨に打たれたホプキンズに暖炉のそばの椅子を勧め、飲み物を用意します。

ケント州南方のヨクスリー・オールドプレイスで殺人。若い男が殺された。

"So far as I can see, it is just as tangled a business as ever I handled,"

「調べたら限りでは、これまで扱った事件のうちでいちばん複雑じゃないかってくらいなんです」

"There's no motive, Mr. Holmes. That's what bothers me"
「動機がない、そこが悩みどころなんです」

"Let us hear about it,"「話を聞こう」

ヨクスリー・オールド・プレイスという屋敷の主人はコーラム教授と名乗る老人。1日の大半は寝たきりで、散歩には杖をついて歩いたり、車椅子を庭師モーティマーに押してもらったりしている。学者だということで近在にも評判がいい。ほかに気立のいい家政婦とメイド、そして近年、学術書を書きたいとのことで秘書を雇った。最初の2人は長く続かず、その次に来た、大学を出てすぐのウイロビー・スミスが教授の眼鏡に適った。

スミスの仕事は、午前中が教授の口述筆記、午後から夜が参考文献や引用部分を探すこと。子供の頃からずっと敵のいないタイプで、礼儀正しく、物静か、勤勉。欠点がない。

屋敷は自己充足的というか、まる何週間も、誰も庭の外には出ないような暮らしだった。幹線道路から100yards、90m小くらい引っ込んでいて、庭へ入る扉は鍵がかかっておらず誰でも出入りできる。

お昼前、11時と12時の間のこと。メイドのスーザン・タールトンは上の階正面の寝室でカーテンを掛けていた。教授はベッドで寝ていた。午前中はめったに起きてこない。年配の家政婦・マーカー夫人は屋敷の裏で何か作業をしていた。スミス青年は自分の寝室兼居間にいて、その時階下の書斎に降りて行く足音をスーザンが耳にした。姿は見てないけれども間違いないと彼女は言っている。

その1分くらい後に下の部屋から恐ろしい叫び声がした。荒くしわがれた不自然な声、男女どちらの声とも分からない。同時にドサっという衝撃が家全体を震わせ、静かになった。

少しの間メイドは固まっていたものの階段を降り書斎へ急ぐ。スミス青年が床に横たわり、助け起こそうとした時、首の後ろ側から血が流れ出ているのが見えた。小さいが深い刺し傷で、頸動脈が切断されていた。凶器となった封蝋ナイフがカーペットに落ちていた。この部屋の教授のデスクにいつも置いてあったものだった。

スーザンが水差しから顔に水をかけると、スミス青年は目を開け、

"The professor,it was she."

「教授、あの女です」

と呟き、のけぞって死に至った。

その直後、叫び声を聞いたマーカー夫人も書斎に到着した。現場をスーザンに任せて年配の家政婦は階段を昇り教授の部屋へと急ぐ。叫びを聞いた教授は興奮してベッドの上にいた。寝る時の格好のままだった。教授はモーティマーの手伝いなしには着替えができず、庭師は12時に来るよう言われていた。

教授はスミス青年には1人の敵もいないと信じており、いまわのきわの言葉も意味が分からず、うわごとではないかと言っている。警察が呼ばれたー。

ここでホプキンズは現場の簡単な見取り図を出します。私も当然見ていますがここに出すことは出来ません。スンマセン。言葉でできる限り。

書斎は1階で、犯人は庭の小道を通って裏のドアから邸内に入った。廊下をまっすぐ行って書斎に着いた。他のルートだとかなり困難になるとのこと。廊下は書斎の部屋のところで直角に右に折れるよう分岐していて、この2つめの廊下は階段を昇って教授の寝室に直接つながっている。

先ほどの、裏口から来るルートで入った書斎の対角線上にもドアがあり、向こう側の廊下に出るようになっている。しかしそこは2階からスーザンが降りてきていた。

つまり、脱出も入ってきたルートを辿ったに違いない。ホプキンズはすぐ調べたが、小道の上には足跡が無かった。小道に沿って草の上を歩いた跡があった。足跡を残さないように行動したようだ。手だれの犯罪者か。門のところはタイル張り、幹線道路は雨でぐちゃぐちゃで、結局足跡らしきものは見つけられなかった。この嵐でよけい見えにくくなってるだろう。さらに屋内の廊下には椰子の木の繊維で編んだマットが敷かれていて足跡は残らない。

書斎はほとんど家具がなく、作り付けの書棚がついた書き物机があるくらい。書棚には2列の抽斗があってこれは開いていたが、その真ん中にある小さな戸棚にはもともと鍵が掛かっていた。金目のものはなく、戸棚の中の重要な書類も盗まれていなかった。

そしてホプキンズは死体を見聞しました。傷は首の右側を後ろから前へ刺していた。自殺にしては不自然に過ぎる。

さらにホプキンズは死体が手に握っていた証拠を入手していました。

それは両端の紐がちぎれた金縁の鼻眼鏡。スミス青年の手に握られていたと。

"There can be no question that this was snatched from the face or the person of the assassin."

「犯人の顔からもぎ取られた、疑問の余地はありません」

ホームズは鼻眼鏡を手に取り観察した、自分でもかけて窓の外を見てみた。含み笑いをしながら紙に数行書きつけ、ホプキンズに渡す。

Wanted,a woman of good address,attired like a lady.
「尋ね人 物腰の柔らかく淑女風の婦人」

She has a remarkably thick nose, with eyes which are set close upon either side of it.
「鼻が目立って大きく、眼は鼻に寄っている」

She has a puckered forehead, a peering expression, and probably rounded shoulders.
「額にしわ、目を凝らすような顔つきをしており、おそらく猫背」

There are indications that she has had recourse to an optician at least twice during the last few months.
「この数か月で少なくとも2回眼鏡の修理に行った」

As her glasses are of remarkable strength, and as opticians are not very numerous, there should be no difficulty in tracing her.
「並はずれて度の強いレンズで、眼鏡技師はさほど多くないから彼女を突き止めるのは難しくないはず」


びっくりするホプキンズ。眼鏡のフォルムとスミス青年の最期の言葉から女性のものと見て間違いなく、金縁という贅沢さから身なりもきちんとしている、鼻当てから鼻が大きいことが分かる、しかしホームズがかけた場合、レンズの中心が鼻に寄りすぎていて、焦点が合わせられなかった。つまりこの女性の瞳は極端に鼻の近くにある。度の強い眼鏡をかけている人は身体的にその特徴が現れる。さらに鼻当ての2つのコルク部分はまったく同質で、すり減り方に差はあるものの両方ともそれほど古くなく、眼鏡屋のもとを2回訪ねたと分かる、と解説するホームズ。

"By George, it's marvellous!"

あまりの感嘆に叫ぶ生徒ホプキンズ。明朝6時の列車に乗ることにして警部はベイカー街泊。嵐は収まり寒か募る朝出発。8時から9時と間には現地着。大阪からだったら和歌山くらいかな・・。

庭の小道沿い、小道と花壇に挟まれた細い草地を通った犯人はそうとう慎重を期したようです。草を踏み倒した跡は消えていました。犯人は来たルートを辿り直して逃走したーホームズは意味ありげに、とんでもない離れ業だ、と評します。

さらにホームズは推理の一端を披露します。この女性には殺意はなかった。凶器はその場にある、手近なものだったからだ。ヤシのマットに足跡を残さず、書斎に侵入、15分前まで家政婦が書斎にいたため、滞在したのは数分と思われるー。

小さな戸棚の鍵穴近くに、ホームズは新しい引っかき傷を発見します。この錠は短時間でこじ開けられるものではなく、鍵は教授が時計の鎖につけて持っているー。

つまり犯人が鍵を開けたか開けようとしていたところにスミス青年が入ってきて、慌てて鍵を抜いたところで傷が残る、青年は女性を捕まえ、ふりほどくために彼女は手近なものをつかみ彼を刺す。被害者は倒れ、犯人は逃走した。書斎に入って来た所と対角線の出口の扉は開かなかったとスーザンが証言、確認。ホームズたちは教授の部屋へ向かいます。

"Hopkins! this is very important, very important indeed. The professor's corridor is also lined with cocoanut matting."

「ホプキンズ!教授の部屋へ向かう廊下にもヤシの敷物がある。これは重要だぞ」

"Well, sir, what of that?"

「それがどうかしたんすか?」

ホームズの頭の中でだけ大事なリンクがありそうな。まあいいやと庭へ出る廊下と同じくらいの長さの廊下を進み、上階へ昇り、教授の部屋へ。後で明らかになりますが、ホームズは暗示的だ、としています。

部屋は広く、本棚から溢れた本が床に積み上げられていました。中央のベッドに老人がいました。鷲のような顔、貫くような視線を放つ黒い瞳。もじゃもじゃの白髪に顔中の髭。ベビースモーカーでアレキサンドリア産の煙草を客に勧めます。教授はシリアやエジプトのコプト僧院から発見された文書の分析などをしていると話し、今回の惨事で有能な秘書が失われたのを嘆き、あなたが来てくれたからには安心だ、と洗練された英語でまくしたてます。その最中、ホームズは猛烈に煙草をふかしながら行ったり来たりしていました。

ホームズの質問は、青年が最後に発した言葉に心当たりはあるか、悲劇の原因に心当たりはあるか、でした。教授はうわごとをスーザンが聞き間違えた、スミス青年は自殺したのだ、と主張します。

鍵をかけた戸棚の中身は不幸な妻からの手紙や大学の卒業証書で、確かめるべく鍵を渡します。ホームズは一瞬観察し、すぐ返します。そして午後2時に再訪することを告げ、部屋を出ました。

庭の小道をぶつぶつ言いながらうろうろしていたホームズは家政婦マーカー夫人を見つけ話しかけます。女性を信用せず、女嫌いとも評されるホームズはこの短編集にある「恐喝王ミルヴァートン」でミルヴァートン宅のメイドと婚約してみせたように、必要とあらばあっという間に女性と信頼関係を築く能力を持ち合わせていました。マーカーさんとも然りて何年も知っているかのようなおしゃべりを楽しみます。

そうなのよ、教授はめっちゃ煙草を吸うからあなた、お部屋でロンドンの霧かと思うかも知れないわよ、なんて打ち解けているマーカー夫人。

んじゃ、食欲もないでしょうね、さっき行ってきたあんばいでは、朝食なんて食べてない方に賭けますね、とホームズ。ブッブーはずれ、という感じで返す(想像です笑)マーカーさん。

"he ate a remarkable big breakfast this morning. I don't know when I've known him make a better one, and he's ordered a good dish of cutlets for his lunch. I'm surprised myself,"

「それが、びっくりするほどたくさん召し上がったのよ、今朝。あんなに食べたのは見たことなかったわ。ランチには大きなカツレツまでご注文になったし、ホントに驚いちゃったわ」

前日の朝、街道で何人かの子どもが見知らぬ女性を見かけていたと、ホームズの人相着衣に合う人だったという情報をホプキンズが聞かせてもうわの空のホームズ。昼食の世話をしてくれたスーザンが問わず語りで話した、スミス青年は昨日の朝散歩に出掛け、悲劇の30分くらい前に戻っていたというには食いつき気味な様子を見せました。

2時に教授の部屋へ入った時、教授は昼食が終わったところで、皿は空、食欲旺盛な様子でした。

"Well, Mr. Holmes, have you solved this mystery yet?"

「さて、ホームズくん。謎は解決しましたかな?」

彼はまた煙草を勧めてくれましたが、手を伸ばしたホームズは缶ごとひっくり返してしまいます。さて、他の話でも例があるので、ホームズが似合わぬそそうをした時は、たいてい何か仕掛けが?とほくそ笑むシャーロッキアン。

皆で膝をついて散らばった煙草を拾い終わった後、ホームズの眼は輝いていました。

"Yes,I have solved it."

「謎は、すべて解けた」とは名探偵コナンですね。

ともかく、ホプキンズとワトスンは驚いてホームズを見つめます。教授はひきつった顔で、表情にはやや嘲りの色も浮かんでいました。

庭でかね?
いいえ、ここで。

いつ分かった?
たったいまです。

冗談をおっしゃる、という態度の老人に、間違いないと確信しています、と応酬するホームズ。あなたの目的と、果たした役割はまだ分かりませんが、と条件を付けた上で、語り始めました。


昨日教授の書斎に1人の女性が、戸棚の中の文書を盗み出すべくやってきた。彼女は自分の鍵を持っていた、先ほど見た教授の鍵には傷をつけた跡がなかった。教授は共犯者ではなく、女性は老人に知られることなく盗もうとした。

彼女は秘書のスミス青年に取り押さえられた。逃げようとして彼を刺した。予想外のことで、秘書が死んだのは不幸な事故に近い状況だった。慌てて彼女は逃走を図った。ヤシの木の敷物に沿って。しかし眼鏡がなかったため、同じ敷物が敷いてある別の道を選んだと気づいた時には書斎にスーザンがやって来ていた。引き返せば見つけられる、退路はない、廊下に隠れる場所はない。彼女はやむなく教授の部屋へ入った。

驚きと恐れをないまぜにした表情を浮かべて、ホームズを睨んでいた教授は、演技のような大笑いをしてみせます。

私はこの部屋にいたが、気づかなかったというのかね?

あなたは彼女と話をして、逃亡を手助けした。

"You are mad!"
"You are talking insanely. I helped her to escape? Where is she now?"

教授はついに激昂します。
「正気じゃない、じゃあその女性はどこにいるというんだ!」

そこに、とホームズは部屋の角にある背の高い本棚を指差しました。その時でしたー

"You are right!I'm here"

その本棚が回転し、外国訛りの言葉とともに、女性が部屋に飛び出てきたのです。

ホームズの指摘した通りの人相、着衣の夫人は明るい所へ突然出て来たこともあり、目をしばたたいていました。埃と蜘蛛の巣まで被った風体、しかしその物腰や顔には気高さがはっきりと伺えました。

ホプキンズは彼女の腕に手をかけ、逮捕する旨宣言しました。優しく、しかし毅然としてその手を払った女性は、スミス青年を殺したのは自分であること、でも手に握っているのがナイフだということすら気がつかなかったと話します。

体調が悪いらしく、恐ろしいほど青ざめた女性はベッドの端に座って話を続けました。

"I have only a little time here,"
"but I would have you to know the whole truth. I am this man's wife. He is not an Englishman.He is a Russian. His name I will not tell."

「あまり時間がない、でも全ての真実を知っていただきたい。私はこの男の妻です。彼はイギリス人ではありません。ロシア人です。名前までは言おうと思いませんが」

"God bless you, Anna!"
"God bless you!"

「なんてことを、アンナ!なんということを!」

初めて見る教授の狼狽。アナは軽蔑しきった目つきで教授にセルギウス、と呼びかけ、なぜ汚れた人生にしがみつこうとするのかと咎めます。そして身の上話を始めました。

かなり以前、50歳のセルギウスと20歳のアンナはロシアのある大学街で結婚した。2人は改革のための反政府結社に属していた。セルギウスは自分の保身と巨額の報奨金を得るために裏切り、彼の証言で仲間は全員逮捕され、絞首刑、流刑。アナもまたシベリア送りとなった。ただ終身刑ではなかった。夫はイギリスに潜伏していた。

アンナは当時、親友と言える男がいて文通していた。彼は暴力を嫌い、思いとどまるように手紙に綴っていた。アンナは日記に彼への気持ちと互いのものの見方を記していた。セルギウスは怒り、手紙と日記を取りあげた上、彼を亡き者にしようと考え、おそらくは罪をでっち上げ、その男、アレクシスはシベリアへ送られた。彼はいまも岩塩坑で働かされている。

you villain, you villain! 悪党、悪党!とアンナは老人を罵ります。教授はなだめようと言葉をかけますが、彼女の態度はゆるぎません。

刑期を終え、アンナは手紙と日記を取り返そうと思った。ロシア政府に提出すれば、アレクシスは釈放されるかもしれない。何か月もかけて夫の行方を捜した。夫はシベリアに手紙を送ってきたことがあり、妻を非難した内容で、日記からの引用があった。アレクシスとの手紙とアナの日記はまだ夫の手元にあると確信していた。

アンナが雇った探偵は、秘書として教授宅に入り込んだ。書簡は書斎の戸棚にあり、鍵の型を取り、家の見取り図を渡してくれた。そして秘書は午前中仕事にかかりきりで教授の書斎には誰もいないと報告した。

"So at last I took my courage in both hands, and I came down to get the papers for myself. I succeeded; but at what a cost!"

「ついに私は勇気を振り絞り、手紙や日記を入手するためやってきた。そして、手にできた。しかし・・なんという代償を払ったことでしょう!」

アンナを取り押さえたスミス青年が教授の秘書とは知らず、朝、彼女は散歩に出ていたスミスに教授宅への道を尋ねていた。

ここでホームズが割り込みます。秘書は帰って教授に話をする。だから、あの女です、と最期に口にした、伝えようとしたんだ。アンナはホームズを制し、話を続けます。

"He spoke of giving me up. I showed him that if he did so, his life was in my hands. If he gave me to the law, I could give him to the Brotherhood."

「夫は私を警察に引き渡すと言いました。私はもしそんなことをしたらどうなるか、彼の命は私が握っている、と言いました。私を官憲に渡すのなら、私はかつての同志たちに彼を渡すと」

道を間違えて入ってしまった部屋ではシビアな会話がありました。かくしてコーラム教授は朝ごはんと昼ごはんを大量に発注し、アンナに食べさせたのです。日が暮れて警察が引き揚げたら夜陰に乗じて姿を消し、二度と戻ってこない約束でした。ところが、ホームズによって見つけられてしまった。

アンナは懐から小さな包みを出しました。印象的ですのでこの場面の会話は多めにお届けします。

"These are my last words,"
"here is the packet which will save Alexis. I confide it to your honour and to your love of justice. Take it! You will deliver it at the Russian Embassy.Now, I have done my duty,"

「最後にお願いがあります。この包みの中身でアレクシスは救われます。あなた方を信じ、その正義を愛する心に委ねます。受け取ってください!そしてロシア大使館に送ってください。
もはや私は役目を果たしました」

「やめろ!」ホームズが跳ぶように部屋を横切り、彼女の手から薬瓶をもぎ取る。

"Too late! I took the poison before I left my hiding-place. My head swims! I am going! I charge you, sir, to remember the packet."

「手遅れです!隠れ家から出てくる前にこの毒を飲みました。ああ目が回る!さようなら!頼みましたよ、どうか包みを忘れないで・・」

全ては終わり、事件の振り返りです。

"It hinged from the outset upon the pince-nez. But for the fortunate chance of the dying man having seized these, I am not sure that we could ever have reached our solution."

「最初から金縁の鼻眼鏡がすべてを解く鍵だったんだ。もし死んだ青年が眼鏡をつかむという幸運がなければ、事件が解決したかどうか定かじゃない」

犯人は入って来たルートを通って出て行った、という仮説に立てば、目がほとんど見えない状態で小道と花壇の間の細い草地の上を通っていったことになる。だからホームズは、犯人はまだ家の中にいると考えたのですね。

庭の小道へ通じる廊下、教授の部屋へつながる廊下、どちらもヤシの敷物だった。ホームズの指摘にホプキンズが「それが何か?」と言ったやつですね。眼鏡のない犯人にこの2つの廊下は間違えやすく、犯人の女性が教授の部屋に入ったのは明白でした。

ホームズは隠れ場所がないか捜し、かの本棚の前だけ積まれた本がないのを見てとりました。そして煙草を次から次へと吸い、灰を本棚の周囲に撒き散らしたのでした。

さらに階下ではコーラムの食事の量が増えていることを聞き出すー部屋に潜む誰かにも与えられるように。再び上がっていった時、煙草の箱をひっくり返して床に這いつくばり、灰を落としておいたカーペットに足跡が残っているのを確かめた。ホームズたちがいない間に、誰かが本棚の隠れ家から出て来ていた。

"Well, Hopkins, here we are at Charing Cross, and I congratulate you on having brought your case to a successful conclusion. You are going to headquarters, no doubt. I think, Watson, you and I will drive together to the Russian Embassy."

「さあ、チャリングクロスに着いたよ、ホプキンズ。君の事件はみごとに解決したよ、おめでとう。警察本部に行くんだろうね。ワトスン、君と僕は馬車で一緒にロシア大使館に行くとしよう」

いかがでしたでしょうか。これまでも何度か触れてきた通り、ホームズシリーズはイギリス帝国主義時代の作品で、オーストラリア、南アフリカ、インドといった植民地や新大陸アメリカ、中米がらみなど国際色豊かな面が特徴として挙げられます。メディアも時代に合ったニュースを提供していたでしょうし、まだ見ぬ土地に思いを馳せるのはSNSが発達した現代よりもっと想像力を刺激したでしょう。

今回は、「海軍条約文書」のようになにやらきな臭さも孕んでいますね。反政府活動、革命結社の女性とホームズシリーズの中でも異質です。この話は1894年の出来事とされています。発表されたのは1904年。ロシアでは革命集団が組織され、騒乱が頻発していたようです。翌1905年、血の日曜日事件をきっかけにロシア第一革命が起こります。日露戦争の時期でもありますね。

もひとつ。今回も構成のことを考えました。

この短編ミステリではコーラム教授がロシア人、ということが大きな要素になっています。読み手は解決まで知らされることがありません。

ホームズは次々と、明快な論理を披露し効果的で、捜査をパンパンと打っていきます。加えてその手法が奇妙で面白い。また事件発生から解決まで1日半。物語はホームズが相談を受けた深夜から翌日昼下がりまでという短いスパンの捜査です。ムダのなさ、スピード感が短編にマッチしていて、なおかつ、背景を気にするヒマを感じさせない。教授のタバコと研究内容で外国的な雰囲気は感じさせつつ、ですね。

ホームズが初登場した長編「緋色の研究」や最後の長編「恐怖の谷」も大きな2部構成でした。短編「グロリア・スコット号」他にも同様の構成は見てとれます。ホームズものだけでなく、実は、と原因となった背景を見せずに後で説明するのはミステリ、いや小説の常道といえるかも知れません。

ただ今作には、都合よさをテクニカルに上塗りする、そんな小気味良さをも感じます。

長々と背景を語ることなく、コンパクトな仕上がりの一篇。テンポ良く、おそらく当時の時流に即していて、ほどよくエキゾチック、クライマックスは劇的です。男女関係がリアルでもありますね。そして計略がうまくいけば、シャーロック・ホームズさえ乗り出して来なければアンナはまだ生きていて、すべてが上手く転がったかも、なんていう哀愁さえ抱かせます。

様々な要素をギュッと詰め込んだ秀作、タイトルからしてイケている。お気に入りの作品です。

5月書評の12

5月は12作品。今年ここまで61作品。だいたい上半期の読了数が見えてくる。6月は苦戦中でひさびさに10行かないかも?特に土日読まなくなったんだなー。スマホ病だし。


◼️ 髙田郁
「幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別編 下」

特別編の月日の巡りは早くて、みなどんどん歳をとる、で長生き。高齢者活躍の構図はなんか現代の世相を反映しているかのような。流れの中で気になるキャラのその後ー。

江戸は大家に見舞われて、幸の五鈴屋、菊栄の店も蔵を残して全焼、そして再建。大川には皆が望む大橋がついに完成。様々な想い出を胸に、幸は九代目店主となる賢輔とともに大阪の店へと帰る。ともに、お竹どんも故郷大阪へ。92歳でバリバリと働いている。

話は幸が帰る前の大阪。八代目店主・周助のもとに六代目で戯作者を目指していた故人・智蔵の子がいる、という報が入る。会いに行ってみるとまさに生き写しの若者だったー。

周助はまたある志を抱いており、幸と賢輔のこともありと、事態はもつれながら進む。

2話め。かつて幸の前に五鈴屋台四代目の嫁となった菊栄は店主の弟でのちの五代目・惣次に、「笊嫁(ざるよめ)」と陰口を言われ、やがて離縁となる。しかし菊栄には商才があり、江戸で小間物商としてかんざしなどの髪飾りでヒットを飛ばし成功していた。幸とは長い付き合いの姉代わり。幸が大阪へ発ち、江戸に残された菊栄は、次の商品を生み出すべく鋭敏な感覚を駆使しつつあれこれと考える。そして、五鈴屋で失態を犯し出奔した惣次は江戸で両替商の店主となっていた。嫌い合っていた2人は互いの才能を認め、たびたび会食をともにする。

なにやら大人の雰囲気漂う、微笑ましくもある関係。他の話が基本まっすぐだし、女性の美しさを求め知恵を巡らす成功者・菊栄がらみの余談はあってしかるべき。そして、あるべしはもうひとつ。

姉を想う賢輔への恋に破れ、姉の才を妬み、ついに五鈴屋を潰そうと目論む音羽屋のもとへと走り、幸と敵対した妹・結。やがて手代が禁を犯し重追放、闕所となりいまは山奥の旅籠屋の女将となって切り盛りしながら桂、茜といった幼い娘たちとともに暮らしていた。夫・忠兵衛は毒気がなくなり、釣り三昧で、結ひとりが忙しい。加えて、長女の桂は姉の幸に似ていたー。

小説にはよく見られる。ゴーゴリ「外套」や芥川龍之介「芋粥」のように負け組を描く作品。結というのはそういう役どころ・・と承知はしていても不憫やな、と思ってしまう。先行きも読めるし。光が差したと信じたい。

最終話、幸は還暦。田沼意次の政策により幕府への御用金が商家に課される。一方、生まれ故郷・津門村、いまの甲子園球場近く、を訪ねる際通りかかった尼崎藩のさびれた様子が気にかかった結と賢輔はー。最後に五鈴屋の名前のもとである、五十鈴川を2人して訪れるー。

大団円。著者の挨拶も載っている。幸の物語はこれで終わりかなと。ただ、五鈴屋その後の話はまだ作品になりそうだ。別の次回作シリーズも構想中だとか。

先へ先へと。大河ドラマはもちろん作りもの。でも楽しめるか、彩り豊かか、なにより知恵と、惹かれるものがあるか。工夫と発想、気づき。考えて考えて形にする。なんか著者が幸や菊栄に見えてきた。

楽しみだ^_^

2024年6月2日日曜日

イベントなし紫陽花時期

GWからイベント続きだったこともあり、午前の買い物以外は完全おうち時間の週末。

写真あまりなし。金沢名物ハントンライスに、スーパーで安かったのでたまにはととんこつインスタント麺。晩ごはんのカニ🦀、食べたくなって買ってきた神保町カレーボンディのレトルト。

ご近所のアジサイは盛りやね。外は暑いけど、雨も降るし家の中は涼しい、半袖短パンでは寒い😅

最近後輩たちから、気分に波がない、短気というイメージがないと続けて言われ、いや心の中では結構ホットテンパーかも、なんて思ったりして😎良い評価を損なわないようにしなくてはね。

⚾️交流戦に、高校バスケ🏀に🏐バレーネーションズリーグに一喜一憂。オリンピックへの出場権を得ている男子はこれから石川&高橋藍が出場する。女子はパリへの切符を懸けて、スリリングな戦いが続く。ブラジル🇧🇷戦はフルセットの末敗れたものの、中国戦、ドミニカ戦の勝ちは嬉しい。これまで攻撃パターンや選手交代に疑問符がついた場面もあったものの、ここへきて解消されてきた。あと1週で決まる。日本ラウンドも難敵揃い。ガンバレー🔥

今週もちょい忙しいな。がんばがんば👊