神戸モダン建築祭続き。北野のシュウエケ邸と安藤忠雄初期作品のローズガーデン。
ここまで「10月」書評と銘打っているが、スンマセン11月の間違いでした・・ボケてるもいいところ😅
11月は10作品。泊まり出張や建築祭をはじめとするイベント続きで数少なめだった。だいたい今年の読了作品数が見えてきたかなと。
◼️ 堀辰雄「大和路・信濃路」
今回色は白。読み手に影響を与える堀辰雄の表現。仏像、寺、古典。
堀辰雄は絵画のような表現を、1つではなくそれこそ油絵を描くように多重に塗り込めていく文豪だと思う。その透明性、刺激のなさ、クラシックで言えばシベリウスのような穏やかさは共感を生まないことも多いと思う。堀辰雄はちょっと・・という同年代の者もいる。
一方で後輩の男性は今作収録の「浄瑠璃寺の春」を読んですぐに浄瑠璃寺を訪れたし、女性の友人は堀辰雄が作中でその美に魅了され称賛している、秋篠寺の技芸天女像を観に行った。
堀は夫婦で浄瑠璃寺を訪ねている。白い馬酔木の花が印象的だ。信濃路も雪の白、辛夷こぶしの花の白。もちろん他の色も出てくるけれども大和路と信濃路ではこの白がキーポイントっぽい。
大和路は食い入るように読んだ。どうしてかというと近年奈良はお気に入りで、こちらに書いてある寺などはほとんど行ったことがあるから。法隆寺、中宮寺、唐招提寺に薬師寺、新薬師寺、海竜王寺、飛鳥はこないだ行って、飛鳥京、石舞台古墳、高松塚壁画館にキトラ古墳ほかとサイクリングしてきた。いまや美術展ではチョー人気、アシュラーと呼ばれるファンもいるくらいの興福寺の阿修羅像は「なんというういういしい、しかも切ない目ざし(まなざし)だろう」と評されている。東大寺は三月堂が好みだ。
法隆寺の細身で背がとても高く浮遊感さえある百済観音像は「そのうっとりと下脹れした頬のあたりや、胸のまえで何をそうして持っていったのだかも忘れてしまっているような手つきの神々しいほどのうつつなさ」と褒め、一番好き、と書いている。
ひとつ不思議なのは、海竜王寺から近い法華寺の十一面観音像に関する記述がないこと。東大寺を発願し大仏を造らせた聖武天皇の妻、光明皇后の発願の法華寺にあり、皇后がモデルとされる観音像。奈良で一番いい、という人もいる。私も豊かな髪や色、纏う雰囲気に感銘を受けた1人だ。この時期は注目されてなかったのかな。
ひたすら散策して堀辰雄一流の、メロディアスとでもいったらいいか、若さを感じさせなおかつ全体の一色となるような、薄く慎重めの表現をすること、また「浄瑠璃寺の春」のラストはまさに絵画のような、写真のような美しさ。これは憧れたり感化される気持ちも分かる。
古典や西欧の詩人の話を混ぜてあるのもたいへんいい味。堀辰雄は、おもしろい。
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