2023年12月9日土曜日

12月書評の3

◼️山﨑圭一
「人生が楽しくなる西洋音楽史入門」

旧約聖書から戦後まで。世界史とクラシック音楽史を並行して解説。題材が広く楽しい。

吹奏楽、オーケストラ経験者である高校のセンセイが書いた、世界史と西洋音楽史。この方、歴史の講義で13万人の登録者を持つユーチューバーであり、本を何冊も出している人で、楽しませ方を知っているなと。

紀元前13世紀の出エジプトからギリシャローマにキリスト教の誕生。ゲルマン人の大移動からフランク王国。世界史で習いました。もちろんこの時期に高名な作曲家はいなかった。けれどもヴェルディがバビロン捕囚を題材にしたり、レスピーギのローマ3部作、またキリストの受難など、古代は音楽のテーマとして取り上げられている。

個人的にはギリシャ悲劇を読んで、こんな遥か紀元前に舞台が成立して、舞台歌謡があったことに感銘を受けた覚えがある。どんな歌だったんだろうと興味津々。歴史に関してはシェイクスピアもギリシャ、ローマもの両方創ってるよね。

この本に音楽自体が現れてくるのは9世紀ごろのグレゴリオ聖歌から。

十字軍を経て、百年戦争ではジャンヌ・ダルクがフランスの危地を救い、ハプスブルク家が台頭してウィーンが音楽の都となる。ロッシーニは「ウィリアム・テル」でハプスブルク家支配からのスイスの独立をオペラにした。

13世紀末からはルネサンスがイタリアで始まる。ミサ曲、カノンやシャンソンが生まれ、後期ルネサンスではシェイクスピアやガリレオの人文科学が発達、そして大航海時代、宗教改革、絶対王政へ。豪華な宮殿ではバロック音楽が花開く17〜18世紀。ソナタ形式やオペラが出てきてバロック音楽が発達する。スカルラッティ、ビバルディと聞いた名前が出てくる。バロックを集大成したのはバッハ。そしてハイドン、モーツァルトの古典派の時期となる。交響曲、弦楽四重奏曲などの室内楽も発展する。古典派からロマン派への架け橋となったのがベートーヴェン。初期は明らかにモーツァルトらの影響を受けているものの、後期は独自の音楽性を発揮したチョー名曲を続々と生み出した。これは第1〜5番のピアノ協奏曲を聴いてても分かる気がする。

・・というように近代まで行くことになる。やがて政治の主役は市民へ、産業革命が起き、中産階級が増え、音楽も大衆向けのものが増えてくる。キラ星のごとく多くの近代の作曲家が出てくる。

歴史について解説しながら、その時代の風潮、世相から音楽の特徴につなげている。確かに、特にヨーロッパの歴史は、断片的な知識はあってもつながらないイメージがしていたので、今回整理でき、作曲家の背景、その流れも一時的に理解できた。

実はこれ、著者は高校の後輩に当たる人。クラシックが好きな私に同窓生が教えてくれた本。頑張ってるな、と感心&尊敬である。

ところどころ「重要」と強調するところが歴史の先生らしいなと思った。生徒は重要、と聞けば集中力を上げてノートを取るからだ。

今年は例年になくコンサートに行った。ブルース・リウ、カミーユ・トマ、ヒラリー・ハーン、中野りな、藤田真央、角野隼斗、小林愛実、内田光子。協奏曲の後交響曲もたくさん聴いた。大阪フィルのシベリウス2番が良かったな〜とクリスマス前のこの季節に思い返す。

チャイコフスキーやラフマニノフといったロシアン・ロマンチシズム、またショパン、ドビュッシー、ドイツ音楽もよく聴く。少しずつ深めたい。各ページに紹介曲のハイライトが聴ける動画ページのQRコードがあるから、タイトルは知ってるけど聴いたことないな・・という作品をいくつか聴いてみようと思う。

次のコンサートでは少し歴史に思いを馳せながら聴くんだろうか。なかなかおもしろい形式の本でした。

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