2023年12月17日日曜日

12月書評の6

◼️夢枕獏/村上豊「陰陽師 鉄輪」

謡曲の鉄輪(かなわ)を元にした物語。丑の刻参りに頭にろうそく。女は、鬼と化すー。

夢枕獏の鉄腕の話に、ふんだんに挿絵を用いた本。鬼ものは好きで、能の謡曲にある物語はけっこう読んでいる。先日も京都に紅葉狩りに行って、鬼は出ないな、と思ったりした笑。能にそんな演目があるのです。この本は図書館を渉猟していて目に入りパッと借りてきた。シリーズになっているようだ。

かなわ、である。時は平安、女に捨てられた女が、鞍馬山近くの貴船神社に丑の刻参りをしたところ、顔に朱を塗り、3本の脚に火を灯した五徳(鉄輪)を頭にいただけば鬼になれる、という神託が下る。

都では女の元夫が呪いを受けて苦しんでいた。相談が源博雅を通じて安倍晴明にもたらされる。博雅は笛の名手であり、深夜笛を奏でていたところ牛車に乗った高位らしい夫人と知り合いになったという。

晴明は茅で人形を造り、鬼になりかけ、生成りの状態の女を謀る作戦を立てる。果たして女は元夫の寝所に現れたー。

恨む相手の藁人形に名前を書きつけた紙を付し、頭部に釘を打ちつける。有名な丑の刻参り。私はこの鉄輪の、五徳を頭にいただく、という発想に感心した。やがて五徳の脚は鬼の角と化すのではなかったかな。

物語の後に、同じ話から著者が脚本を書いた舞踊劇「鉄輪恋鬼孔雀舞(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)」も収録されている。こちらでは博雅の笛である葉ニ(はふたつ)の役割がより重要だ。

ちなみに葉二は古典にその名が見え、鬼との関連が深いとされる。小説やライトノベル等でもキーアイテムとして出てきたりする天下随一の横笛という位置付け。

鮮やかで妖しく、ちょっと可愛らしい昔話風の色絵が入ることで想像広がり楽しめるようになっている。

シリーズいつかまた読んでみようかな。

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