2023年3月11日土曜日

3月書評の6

母の墓参りと父の健康伺いと、例年家族親族といる時間が長い帰省。だいたい時期も毎年これくらい。今年は弟の結婚が重なった。

金曜帰ってランチお茶と別々の人、夕方から読書好きな先輩、2軒めの、同級生がやっている店でまた待ち合わせとこの日くらいしかゆっくり人と会えないので5階建て。焼き鳥で博多以外ではなかなか食べられない豚バラをちゃんと発注。

土曜日は糸島に墓参り、父と姉と弟と末の弟とその奥さん、甥っ子姪っ子も来て大所帯でランチ。まあそれぞれ元気でにぎやかなのでした。



◼️ 澤田瞳子「吼えろ道真 大宰府の詩」

大宰府左降後、菅公は賑わう博多津で唐物の目利きとして活き活きと動くー。

まさにいま、帰省で博多行きの新幹線に乗っている。時期を合わせて読んだ。右大臣菅原道真は901年に失脚、大宰員外帥へと左遷され彼の地に下る。道真が大宰府にいたのは2年に過ぎないが、物心ついたころから太宰府政庁跡や天満宮、その近辺の風情はどこか古代の雰囲気を醸し出し、心の底に横たわるものだった。離れてみた後に分かったことも多く、とても郷愁をかき立てる。

大宰府左降後の道真は、実際には島流しも同然だったという説もあり、あまり物語化されたものは見なかった。そういう意味で貴重なシリーズである。老い、失意に沈み怒りながらも粘り強く生来の知識欲を発揮し、大宰府の最高権力者、太宰大弍にも一目置かれる。

シリーズ2作め、すでに博多津で身分を偽り、目利きの菅三道として名が広まり始めていた道真。宿舎の南館は従者の味酒安行の献身により清潔に磨き上げられ、買い求めた唐物で溢れていた。大宰大弐の小野葛絃の甥で、大宰少弐の葛根は道真を尊敬しつつも左降の身であまり目立つ活動をされると、大宰大弐である伯父に迷惑がかかると苦々しく思っていた。そのイライラは話し相手にとつけてある官人の「うたたね殿」龍野保積にも向けられていた。

やがて、慣例となっている博多津に着く唐物のうち上等なものを都の政府が買い上げた京進唐物が値打ちのない安物と取り替えられていた事が発覚し、唐物使の藤原俊蔭が調査のために派遣されてくる。果たして真相はー。 

大宰大弐の小野葛絃はその才覚と怪しい雰囲気?で有名な小野篁の子という設定でおやじと比べればぼんくら、などと言われているがなかなかの切れ者であることを窺わせる。一方葛根は若く真面目な武人、物語中の汗かき役。そしてまた藤原俊蔭がまた油断ならず、食いついたら離さない蟒蛇うわばみ、とあだ名される男。そよ調査は不穏なものを漂わせる。真の目的は何か?

事の真相も興味深くはある。しかし大宰府は大陸に対する玄関口として大きな権力を持ってい、また強い矜持もあったとされている。そして国防の最前線でもあり、外国人の商人や珍しい品物があふれる博多津は殷賑を極めていたであろう。その雰囲気と、道真が老いて流罪同然の身でなお、粘り強いエネルギーを持って頭脳を駆使し、役人からも信を得て暮らしている、という姿が印象的だ。

小野葛絃の息子で、まだ10歳にも足りない阿紀が道真の書に感じ入り弟子入り、やがて師の一字をもらってあの大家になること、今回は出てこないが葛根の妹・恬子が実はあの歴史的美人であることなど楽しみも多い。

父が太宰府に勤め、政庁跡や観世音寺、天満宮は身近であった。関西に移り住み、太宰府は奈良に似ていると感じた。今回も天満宮をお参りしてソウルフードの梅ヶ枝餅を食べるのが楽しみだ。住まいは福岡市に近く、博多津のほう、天神や博多で旧交を温める。

帰ったら京都の北野天満宮にでも行ってみようかな。

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