食べ物シリーズっ。
◼️長野まゆみ「45°」
不思議怪しい系?想像と現実と幻想と。こういうのも"小説っぽい"と受け止める最近。
今回はTwitterで見かけたいわるゆ読書垢さんの書評に、この本について山尾悠子氏が美しい書評を書いていると読みかじり、そうなんだ、読んでみようと手にした。
短編集なんだけれども、タイトルがまたふるっている。まあ見てください。
「11:55」
「45°」
「/Y」
「●」
「+−」
「W.C.」
「2°」
「×」
「P.」
・・ちなみに「●」は「クロボシ」そして「×」は「閉じる」と読む。なんか、らしいなあと微笑。
「11:55」
待ち合わせの喫茶店に1時間早く行くと、中学の同級生川上と、雇い主の女性「クレハチ」が会っていた。カメラ好きの少年時代、川上はわざとエロい写真を撮って、自分を最悪な状況に追い込んだ。しかし教育実習で母校に戻った語り手は、当時の写真を見て、意外な事実を発見する。
冒頭のこの話などはまだ軽い感じ。変わったシチュエーションの原因と結果、こんなことがあったらなんとなく面白いでしょ、という設定の羅列、男女の交錯、といった、オチを含んだ篇が連続する。中には終わって、え?つまりどうだったの?と思って読み直し考えるような、わざと混乱を呼び起こすようなラストもある。芝居がかっていたり、ちょっと残酷だったり、負の記憶であったりと読む心のどこかをつつくような幻想のような感覚もある。
長野まゆみは宮沢賢治風の名作「少年アリス」で人気に火がつき、難しい漢字を使い、植物、鉱物の知識を駆使し実在するかどうかわからない食べ物飲み物はじめ様々なモノを使って、SFっぽい美少年が主人公の作品だったり、素朴な現実の設定で少年たちの葛藤を描いたものが多い。BLっぽいものもある。1つのジャンルとして好きでもある。
その時代から転換点を迎え、現代の設定で文章の中に今回のような遊びをふんだんに取り入れた流れるような作風の作品も1つの特徴となった、と思う。
今回は遊び心あふれる短編集と言うべしだろう。読んでいて、なるほど山尾悠子が好きそうな感じ、かも?と思った。これも小説的おもしろさか。たまに読むぶんには面白い。
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