2023年3月4日土曜日

2月書評の11

3月1日、フレデリック・ショパン生誕の日の夜、2021ショパン国際ピアノコンクール優勝、ブルース・リウのリサイタルに行きました。

バロック時代、1700年代のジャン=フィリップ・ラモーという人のクラブサン曲集より6曲。最後の「ガヴォットと6つの変奏」の悲哀を含んだ演奏に揺さぶられる。
そして、ショパンコンクールで絶賛を浴びた、ショパン「ドン・ジョバンニの『お手をどうぞ』の主題による変奏曲」。モーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」の劇中の歌曲を主題にしたもの。
繰り返し聴いた品の良い、美しい難曲。ダイナミックで、しかしホントにテクニカルで、音が華麗。

後半はソナタ2番。心の動揺を表すような曲調で入り、第3楽章は有名な葬送のメロディー。そして、青空に故人の霊と参列者の悲しみ、光が揺蕩っているような情景を思い浮かべる、天へ突き抜けるようなフレーズ。

ラストはショパンの盟友、リストが同じ主題で作曲した「ドン・ジョバンニの回想」。ショパンのと似ている部分もあるが、こちらはリストらしく技巧的。

ピアノはコンクールと同じファツィオリ。ペダリングもスマート。粒立ちのよい音の連なり、柔らかさ、高速をものともしない技巧と美音。それがダイナミクスを引き立てる。力強く、若い逞しさを感じる演奏に酔いしれた。

会場はチケット完売フルハウス、スタンディングオベーション。こういうのを万雷の拍手っていうんだなあ・・と大盛り上がり。

アンコールの曲はこれまでのツアーの情報でだいたい把握していた。ショパン、ショパン、聴きたかったバッハのフランス組曲5番、そして4曲めの最初の音で会場が「ハッ」と息を呑んだ。

リストのラ・カンパネラ。繊細な音のコントロール。そしてスーパーな技術を駆使した迫力ある大団円。すげぇ!と会場またスタンディングオベーションの大拍手。もう興奮して大満足で帰ったのでした。

アンコール曲

・ショパン : ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作

・ショパン : 3つのエコセーズ Op.72-3

・バッハ : フランス組曲第5番 ト長調 BWV816 より 1.アルマンド

・リスト : ラ・カンパネラ

・ショパン : ワルツ第19番 イ短調 遺作

翌日はツアーのオーラスで福岡。友人たちが観に行っていた。なんと出待ちをして写真撮ったそうな。友人のお母様も聴いてらしたそうで広がるピアノの輪なのでした😊

昔からクラシックには粉ものを合わせるのが好きで😆今回は友人とともに福島のたこ焼き屋。トロトロチーズ、ソースマヨ、塩ごま油としょうゆ、3器4種類。美味い!

2月は11作品11冊でした。あまり調子良くなかった。

◼️ ミシェル・バークビイ
「ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1」

コナン・ドイル財団公認のパスティーシュ。ハドスンさんにワトスン夫人、そしてもちろんTHE WOMANも。

日本でもよく読まれているアンソニー・ホロヴィッツが、コナン・ドイル財団公認の続編「絹の家」を発表してからしばらく、今度は女性たちが主人公の公式パスティーシュが誕生した。
ヒロインたちはベイカー街221bの家主にして家政婦のハドスン夫人、ワトスンが「四つの署名」で射止めたワトスン夫人にして才気煥発なメアリーである。2人は親友という設定だ。

時は切り裂きジャック事件の直後でまだ世情穏やかならぬ頃、ホームズは相談に訪れた女性シャーリーのもどかしさに何も聞かず帰してしまう。ハドスンさんはシャーリーを階下で呼び止め事情を聞き出す。幸せな夫婦に事実を誇張したりでっち上げた情報を送りつける脅迫者がいるー。高名な探偵コンビの行動をつぶさに見て世話している女性たち。さらにホームズたちの部屋から台所へと伸びる通気孔でたびたび会話を聞いたりもして、密かに羨望の火を燃やしていた彼女らは、ホームズたちに内緒で犯人を捜すことにする。

おなじみホームズの手足となって働く、ウィギンスがリーダーの路上少年集団ベイカー・ストリート・イレギュラーズたち。ハドスンさんはなにくれとなく彼らの面倒を見ており、このグループ出身のビリーを雇い入れた経緯もあり、女性2人は彼らを頼みに捜査を始める。

するとシャーリーの夫を尾行していたウィギンスが階段から突き落とされケガを負う。そして、印象や特徴をつかみにくい「顔のない」男がハドスンさんにつきまとうようになる。

やがて知り合ったホワイト・チャペルで施しをする高貴な婦人に、2人はいかにして脅迫者が破滅をもたらすのか、驚愕の事実を聞くのだったー。

ホームズのパスティーシュなりパロディではいわゆる聖典で詳しく描かれていない登場人物の活躍も楽しみの1つ。ハドスンさんの過去やイレギュラーズとのつながり、メアリーの性格設定なぞもおもしろい。女たらしといえばの「緑柱石の宝冠」の男など各所にシャーロッキアン的な楽しみが散りばめてある。こういった作品ではレギュラーと言っていい、シャーロックの兄にして政府の代理人マイクロフトも登場、人気に火がついた「ボヘミアの醜聞」で名探偵を見事に出し抜き、ホームズが「the woman あの女(ひと)」と呼ぶアイリーン・アドラーも参戦する。ある意味まさに不二子ちゃん的役割だ。

ジャックの恐怖がにじむ、最下層ホワイトチャペル地区、そこに生きる女たちの姿も描かれる。ロンドンの闇に蠢く脅迫屋。モノや金ではない彼が望むものは・・

シャーロッキアンものは楽しい。ただ中にはちょっとそっち行き過ぎない方がいいのにな・・とまとまりがつかないものもある。今回は基本線を外さないし、落ち着くところへと向かっている。221番地(Bというのは221番地のもう一つの、2番めの世帯、という意味だとか)の台所が主要な舞台、というのが好感度高く心をくすぐる。

冒険と残虐と危険、ピンチ。まあすこーし甘めではあるけども、読むのが楽しい母性をも混じえた活劇。そして心に秘した正直な想い。もう戻れない?笑。

ハドスンさん、設定は48歳。朝食のアイディアはスコットランド人も顔負け、モラン大佐の狙撃にも怯まず、瀕死のホームズのことをワトスンの医院に訴えに行く。はからずも抱え込んだ下宿人と時代を共にし、所々で活き活きした姿を見えるマーサ。

シャーロッキアンには深く愛されるキャクターだろう。シリーズ2作めも出ているようだから、また読もう。

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