2022年8月9日火曜日

8月書評の1

夜半はひどい雨、日中は晴れて猛暑、双頭の入道雲が湧き、遠雷の音が聴こえる。雲の上に月。

インターハイ、バスケットボール🏀男子決勝戦は残り5秒、劇的な逆転のスリーポイントシュートで福岡第一が開志国際を降し優勝。いや興奮しました。

上位チームは良い選手が多くいて、高校バスケは今後も群雄割拠。ウィンターカップが楽しみだ。

バレーボール🏐男子は、京都の東山が優勝。準決勝で、優勝候補鎮西に見事なトータルディフェンスで勝った東福岡は頂点に及ばなかった。でもよく頑張ったと思う。こちらも強豪校がひしめく。

バスケット、バレーはインターハイが最初の全国大会で、ここで今季の勢力図が見極められ、各校冬のウィンターカップ、春高バレーに向けて、チームを進歩させていく。

高校野球⚾️も開幕。高校生たちに元気もらっている。頑張るよー🔥


◼️ 奈倉有里「夕暮れに夜明けの歌を」

予感どおり、本読みには好ましい作品でした。

こちらで書評を見かけ、おもしろそうだなあ、読みたいなあと思ったものの図書館になく、書店でも見かけずスルーしてしまっていた。先日本友が「これ読む?」と持ってきてくれた。本読みの指向は似てるんだなと思わず微笑んだ本。かくして読むこととなりました。みなさまもあるのではと思いますが、だいたいこういう直感は外れない。本好きには少ーし深く興味をそそるものではないか、という。どうですかね。

著者が2002年から文学を学びにロシア留学していた頃の生活、友人、恩師、社会情勢、そしてなによりもロシア文学のことを語った本。

まず何よりも、勉強したい、という意欲の強さが素晴らしい。この思い入れと気概と実行力がなにせ叙述力を支えている。文学、文芸が好き、という気持ちの表れが読むほうにも響く、気がする。


ペテルブルク、モスクワの留学生活ではルームメイトや講座の教授にも恵まれ、喜びが活写されている。前半は特に、タイトルとなった「夕暮れに夜明けの歌を」の由来であるアレクサンドル・ブロークの詩に魅了されたこと、親身に教えてくれたペテルブルク語学学校のエレーナ先生の「あなたは絶対にこの瞬間を忘れないわ」という言葉と情景。ぐっと来る。

最初の方にはチェチェン勢力によるひどい地下鉄爆破テロも描かれておりリアルだ。

モスクワの文学大学に移ってからはさらに学問に専心するようになる。ロシアの詩人・作家の作品に絡めた文章が興味をそそる。全体でメモしただけでも、

・マリーナ・ツヴェターエワ「ソーネチカ物語」
・サーシャ・フィリペンコ「理不尽ゲーム」
・ミハイル・ブルガーコフ「巨匠とマルガリータ」
・トルストイ「クロイツェル・ソナタ」
・ワシーリー・アクショーノフ「クリミア半島」
・アンドレイ・クルコフ「灰色のミツバチ」「ペンギンの憂鬱」「大統領の最後の恋」

「巨匠とマルガリータ」は奇想小説、「理不尽ゲーム」は翻弄されるベラルーシの話、アクショーノフとクルコフはウクライナが題材で、全面的な戦争となる前からロシアとウクライナ間ではさまざまな不穏な事態が続いていて、終わりの方の章はウクライナ情勢に割かれている。

恋愛関係までささやかれたアントーノフ先生との想い出深いくだりは少々理屈っぽくもあるが、純朴でかわいらしさも滲む。通い詰めたという歴史図書館の描写も美しい。

文学を探しにロシアに行く。陶酔とも言えるほどの深い理解と心をくすぐる解説が織り交ぜられたエピソード集は興味深く、心の奥を打つ。予感が当たっていたことが嬉しかった。

ロシア文学はおいおい読んでいこうと思う。

◼️逢坂冬馬「同志少女よ敵を撃て」

スナイパーというものの魅力。

タイトルと表紙の絵のストレートさが印象的。本屋大賞受賞作として評判の本。本友さんに貸してもらった。

1942年、独ソ戦の最中、ドイツ軍に村を襲われ、猟師の母を殺されたセラフィマは赤軍の狙撃手として育てられ、女性狙撃手たちの小隊に入る。スターリングラード攻防戦で、要塞都市ケーヒニスブルクの戦いで、セラフィマは探す。母を撃った、頰に傷のある凄腕スナイパー、ハンス・イェーガーを。

ソ連軍は組織的に女性の兵士を編成、女性の狙撃部隊も実在したことを題材に、少女セラフィマがスナイパーとして戦場に投入され、ついには敵軍から「化け物」と呼ばれるほどの狙撃手になる過程をその葛藤とともに描いている。

ゴルゴ13の例を引くまでもなく、狙撃手、スナイパーというのは特殊な立場を持ち、スキがなく、鍛え上げられたその超人的な能力で戦果を上げる、スーパーで興味を惹く存在だと思う。

加えて史実の詳細、死と隣り合わせの戦闘の激しさ、残酷さ、宿命の対決的ストーリーなどが相まって読ませる作品となっている。良いキャラの仲間が次々と死んでいき、善悪の曖昧さが交錯する、いわば戦場もののセオリーをも踏んでいて、大河ドラマ的。


外国の戦場のストーリーといえば、深緑野分「戦場のコックたち」「ベルリンは晴れているか」を数年前に読んだ。一部から外国の戦場ものを日本人が書くことに批判も出たと記憶している。小説の境界は難しいけれど、私的には最低限の線を外しておらず、おもしろければいいのでは、と思う。日本人は研究熱心だからデタラメはあまりないかなと。今作も専門家に監修を依頼しているようだ。

戦場と性はリアルな問題。ソ連軍侵攻の際、ベルリンの女性は大変な被害を被ったという。軍内部の女性の存在感にも触れられている。


さて翻って正直な感想は、んー、というところもあった。

調べた知識が前面に出ているきらい、どうもストーリーを都合よく引っ張っている気味が気になったかな。人間関係はどうも過剰にお芝居的で、エピローグも長い。


評判の良い作品に構えてしまったりするのは性格の悪さかなあ、と気にしつつ。読ませるのは間違いない。

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