妻がコロナ陽性となってしまい、在宅勤務。重症化の確率は低いものの、高熱で頭痛がひどく、咳も出てしんどそうである。夜中に一度呼吸が苦しく、手指がけいれん、腰から下に痺れが来たので救急車を呼んだ。受け入れる病院はもはやないとのこと。到着した頃にはやや落ち着いていたので納得はできたが、反発もあるのか、救急隊員の方ではなく、スマホのスピーカーで保健所の方から入院は出来ない、と告げられる。
まあだいじょぶだ。買い物と掃除と洗濯と多少の料理。在宅勤務はそれができるし。私も息子はいまのところピンピンしている。薬なしで解熱してから3日後に濃厚接触者はおしまい。もうすぐだ。
◼️ フランソワ・デュボワ「楽器の科学」
「音色」の違いとは、いわゆる「音響」とは?
最初は理論の多さにちょっと戸惑った。しかしだんだん面白くなってくる。
音は波である。1秒当たりの振動数が多いほど大きく/高く聴こえる。音の3要素は大きさ、高さと「音色」で、理屈的には波形の形が違う、と解説されるが、実際は、楽器による「倍音」の数の違いが1つの原因である。
基音、例えばド、の音の中には整数倍の、2倍音、3倍音・・が含まれている。フルートの倍音は10数個であるのに対し、クラリネットの倍音は30数個。これが音色の違いを生む。
さらに、音色は聴き手の受け止め方、心理空間に左右される。その要因は美しさ、迫力、明るさである。不思議なことに、多くの人の感じ方は大きく外れない。濁った音を澄んだ音、と受け止めることは少ない。
そして音を増幅し、倍音の違いを生むのが「共鳴」。振動しうる物体には、最も振動しやすい周波数がある。たとえばピアノを弾いたら置いてあったコップが鳴る、などの現象は、その物体、ここではコップの固有周波数で振動しているということ。これが共振。共振によって音が聞こえることを共鳴という。
楽器ごとの共鳴の仕組みが説明され、さらに、コンサートホールの設計に踏み込んでいる。音を吸収したり、反射したり、難しい計算によりホールでの音響は成立している。客席や聴衆は音を吸収してしまうので、リハーサル時の音と、本番の音がまったく違うこともありうる。
最後の章では現代の優れた音楽家たちに、
①あなたにとっての良い楽器とは
②あなたとあなたの楽器とのパートナーシップとは?
③コンサートホールにより、素晴らしい、あるいはひどい音響体験は?
という質問をしている。ヴァイオリニスト、チェリスト、ピアニスト、日本人のソプラノ歌手、パーカッションら現代の若い音楽家ごとの分析もなかなか面白い。ヴァンサン・リュカさんというフルート奏者が激賞しているのが日本のムラマツフルート製の作品。知らなかった。
著者はマリンバ奏者。マリンバ、学校の音楽室にあった木琴、鉄琴の下についている共鳴管の、音程により違う長さに見入ってしまう。うーん、いま小学校に戻れれば、もっと楽器いろいろ研究して極めるのに、的な気分になったりする。
何人かは、日本で優れているホールとして、上野の東京文化会館を挙げている。行ったことないんですよねー。ともかく、次に聴きに行く時には気にすることも多そうだ。楽しみが増えたっ。倍音に耳を澄ましてみよう。
◼️ ヨシタケシンスケ「あるかしら書店」
本屋について、本について、想像力を広げる。おもしろかった。
ヨシタケシンスケ展にて購入した本。いやあ、もう、ならではの想像力の広げ方、シンプルな絵、小技を効かせた展開にくすっと笑ったり、単純にいいなあ、と思ったり。
本屋に来る人、おじいさん、学生らしき娘さん、青年、やや年配の女性、お子さまたちが表紙の本屋の主人に尋ねます。
「なんか『ちょっとめずらしい本』ってあるかしら?」
「なんか『本にまつわるイベント』の本ってあるかしら?」
「『本にまつわる名所』の本ってあるかしら?」
「なんか『本そのものについて』の本ってあるかしら?」
主人は表情を変えつつ、おだやかに、時に暗黒街で裏取引をするように?答えます。
「ありますよ!」「そりゃあもう!」
「ゴザイマス」
ナンセンスなものもたくさん。あははは、なんじゃそりゃ、というのもあり、中にはほほう、なるほど、また、あったら楽しそうだなあ〜と思わずこころが明るくなる発想もあり。
100ページちょっとに亘って、いろーんな本、本にまつわるあれこれが連ねてある。
不便だけど楽しそうな「2人で読む本」、穏やかにルナティック「月光本」、古本屋さんが動く本棚でパレードするお祭り、神保町でやんないかな。
「お墓の中の本棚」はホントにあればいいのに。ビジュアル的に映えそう、壮大で美しく儚い「水中図書館」。城ですね。
「本のつくり方」はシンプルで楽しい。「本その後」「本が好きな人々」「ゆっくりめくる本」はクスッと笑える。「ラブリーラブリーライブラリー」シリーズはんっ?と考えちゃうほのぼのもの。
ちょっとメランコリックな時や疲れた時に、腰掛けているベンチに愛嬌たっぷりの「文庫犬」が来たり、窓の外に「文庫鳩」が来たら嬉しいだろうなあ!
実に楽しめる本でした。
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