2022年8月27日土曜日

8月書の7

復活なにわ淀川花火大会🎆。時期も後ろ倒しで涼しくずっと観ていた。ビール、が似合いそうだけど、コーヒーにブラックモンブラン様のアイスバーをおともに。

外スイーツはわらび餅黒蜜かけパフェ。長く咲いている百日紅サルスベリは逆三角形のピンク。シェイクスピア劇の舞台を巡る旅本に浸る。

夜の部活動。すでに開催国枠で出場が決まっている、バスケット🏀男子ワールドカップ2023。しかし日本🇯🇵も予選には出場している。アウェーのイラン🇮🇷vs日本🇯🇵戦、25時ティップオフの試合をバスケ沼部でライブ観戦。深夜に歓声を上げるぼくら😆🔥ウチは息子も起きてて2人でやーやー言ってた🤗

翌日はU18アジアカップの準決勝。22時30分からやはり応援。勝って決勝は日韓戦。あす同時刻だ。きょう、3×3の女子U18ワールドカップも観戦。準々決勝、ドイツ🇩🇪に惜しくも敗戦。

雑事買い物をわーっと済ませる。私は安物買いの銭失い的だなあ〜といつも思ったりして。

暑さもひと段落しそう。次週は雨の週とか。きょうも突然降ったし、今年の天気は油断ならないな。


◼️ 今村昌弘「魔眼の匣の殺人」

二重底、三重底・・超能力と奥と消失。

今村氏のデビュー作でありベストセラー「屍人荘の殺人」は「そ、そう来たか」という意外性とトリックの見事さがあって、さらにまた殺人の特徴をベースにした犯人の心情の描写が正気と狂気の境を見せていて、感心したものだ。

この第2作もタイトルと表紙絵がなかなか刺激的。さてどんなものだろうと読み進める。舞台は和歌山県の山奥の集落。

前作のテロに関係が深いと思われる斑目(まだらめ)機関の情報を追い、山奥の集落に向かった剣崎比留子と葉村譲は、バスに同乗した高校生、十色真理絵の、不吉な未来を絵にする予知能力を知る。十色は高校の後輩、茎沢忍ともに葉村らと同じ目的地へと向かっていた。

着いた集落は無人だった。やがてバイク旅行中にガス欠を起こした王寺貴士、車のトラブルのため立ち往生した大学教授の師々田厳雄と幼い息子の純、墓参りに立ち寄った朱鷺野秋子らと出会った葉村たちは、斑目機関の超能力研究所だった「魔眼の匣」と呼ばれる館へと辿り着く。主は老予言者として恐れられているサキミで、世話係の神服奉子が雑事をこなしていた。オカルト雑誌の編集者、臼井頼太も取材のため訪れていた。

「二日間のうちに、男女が二人ずつ、四人死ぬ」

集落に人がいないのは、サキミのこの預言を恐れてのことだった。やがて谷にかかる橋が住民の手で焼け落とされ、葉村たちは孤立無援となる。電話線も切られ、スマホは通じない。サキミの予言は、外れたことがない。男性6人、女性5人、そして死人が出るー

作中にもあるが、不気味な館にグループが閉じ込められるミステリーの黄金パターン、クローズドサークルもの。犯人はこの中にいる。本格だ。

次々と死人が出て、ミステリーにはやや異質な予知能力がからむ。予言は覆せない。異常な状況に置かれた者たちの心理状態が大きな要素となる。

死のいくつかは衝撃的ではある。しかしアガサ・クリスティの名作や綾辻行人「十角館」のような、サスペンスフルな状況、濃い猜疑心まではいかない。

犯人当てがクライマックスというよりは、その動機の推論、またサキミという存在に対する推理など、比留子から機関銃のように連続して織り成される二重底、三重底の謎解きが大きな特徴か。

初作に比してスケールの大きさはあまり感じなかった。やや散漫かな。でも後半の畳み掛けと掘削するように明らかになっていくこと、裏付けはないが推理小説的事実、が連なり事件の深い真相を表していくところには迫力があった。

今回読んでいて引っ掛かりを覚えた部分には後で解答が用意されている感覚、一種の気持ちよさがあった。

論理的な推理もの、ミステリーには超能力は棲息する惑星が違うかのごとくやや異質っぽく映る。しかし・・話の流れでバランスを取っているようにも見える。

と書評を書き終えて、考えてみたら、第一作もありえない設定だったそういえば。超現実的なものとミステリーとの融合を目指しているのかも?

その点含め、次の「兇人邸」も楽しみだ。



◼️ 安壇美緒「ラブカは静かに弓を持つ」

考えている、というのが見える佳作。チェロの魅力、目を惹く表現。

チェロは人間の声、男声に近い、とはよく言われる言葉。高音のヴァイオリンにくらべ、どっしりとしたフォルムは楽器の魅力を伝え、低音をベースにした表現領域の広さは深みを醸し出し、奏でられる音楽の波が心を打つ。聴いていて好ましいからかファンが多いな、と思う。ヴィオラはマイナーで、コントラバスは大きく低すぎる、というのもあるかも。

さて主人公の橘樹(たちばな・いつき)は20代半ば、全日本音楽著作権連盟の職員。町の音楽教室でレッスンの時に管理楽曲が演奏されている実態を押さえようとチェロ教室に生徒として潜入する。練習曲は著作権が消滅しているクラシックでなくポップスを選び、ボールペンに模した機器で毎回のレッスンを録音する。

樹は少年時、5歳から8年ほどチェロを習っていたが、やめるきっかけとなった危険な事件の恐怖から今も不眠に苦しんでいた。

不安がないまぜの中始まったレッスン。樹はハンガリー留学帰り、少し年上の講師、浅葉に出逢い、やがて教室から借りたチェロで熱心に練習に励み、浅葉の生徒たちの食事会のメンバーになる。自分の変化を実感する樹だったが・・

音楽著作権団体がレッスンで管理楽曲が演奏されるたびに著作権料を徴収するー。実際に話題となった事案で確かにそれはやりすぎでしょ・・という第一印象だった。

音楽絡みでインパクトのある設定をベースに、チェロの持つ魅力を引き出し、また取り巻く人々の温かさも加えた、大きな包容とも言えるものに、主人公は癒されていく。ちなみに長身?白皙のイケメンキャラのようだ。

しかし、このままで終わるわけがないのであった。そりゃそうだよね。破綻と、それからー。

周囲の大人ぶりと、外身を冷静、控えめで固めた樹の、成熟していない人間っぽさを出しているところに好感を持つ。心の中で浅羽に敵意を剥き出しにするところであったり、普段は大人しいけれど、しゃべりだしたら止まらず、論理的に見えて、少し常識からずれている部分などにそれが見える。いかにもありそうで、ちょっと怖かったりする。

またやはり、読み手をチェロに引き込む流れは魅力的。出てくるクラシックの曲を聴きたくなる。そして、ところどころにある、目を惹く、良い匂いのする表現が楽しい。

「言われたとおりにドッツァウアーを弾くと、その音は真水のように、柔らかくぬるく澄んでいた。あの日とはまるで響きが違う。古い絵画が色を取り戻していくかのように、その情景は鮮やかだった」

後段の「古い絵画が・・」に感じるものがあった。こう抜き出してみると、平易なフレーズにも思える。しかし流れの中で読むとベストマッチ+αとなる。

「腹が立ったよ。たったそれだけのことすら俺に都合よくできていない、世界ってやつに」

オルハン・パムクが自著の中で、小説について、人生とはまさにこのようなものだ、という感覚を呼び起こす力が大事、という意味のことを書いていた。人生というにはだいぶミニマムではあるけども、共感してしまう。

「夜の河川を望む車窓が、みるみるうちに加速する。光る旋律は海へと潜り、どんどんと下降を続けて、醜い魚が潜む深度まで暗闇の中を突っ切った」

ラブカは「生きている化石」との異名がある、醜い深海魚のこと。作中では映画の中のスパイを指す言葉になっている。物語の主要な舞台となっている東京の二子玉川の商業ビル地域には、在住時、ホントによく行っていた。多摩川のそば、子どもと行くのにいいところ。電車は二子玉川から都心側で地下に潜る。懐かしい感覚もあった。

「その優しい音圧は、深海で放たれるソナー波のように橘の座標を的確に捉え、そのありのままの輪郭をはっきりと浮かび上がらせた」

なるほど上手だな、とニヤリと。

宮下奈都の初期作品「スコーレNo.4」を思い出す。読み出すなり「ずいぶん思い切った表現を使う人だなあ」と、良い意味の異質感があった。

最後まで興味を持ってサクサクと読めた。明るい気持ちにもなれた。

ただ、正直、ですね。出来すぎている感も強かった。まったく私の勝手な思いです。設定もよし、題材もよし、物語の進行もよし、ハラハラ感もちゃんとあり、伏線もうまく回収している。でも、よく出来たテレビドラマのようで、小説的とは言い難かったかも。主人公の生い立ちと現状も、少し弱いかなと思う。よく出来ているから気になるところも出る。

これからたくさんの作品を書かれるだろうと思う。また読むことを楽しみにしている。ラブカってAdoの曲があるらしいので今度聴いてみよう。

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