2022年5月13日金曜日

5月書評の3

GW唯一のお出かけ、大山崎山荘美術館に行ってきた。

いま何やってるかな〜とHPを見ていたら、先日読んだ、ルーシー・リーの展覧会の図録表紙の青い鉢があると。こりゃ行かな!となりました。

もともとテューダー様式の建築に注目していたけども、入ってすぐに表紙の鉢があり、ルーシー・リーと河井寛次郎、濱田庄司、そしてバーナード・リーチの陶芸、安藤忠雄設計で建て増した部屋にはモネやシニャック、クレー、ヴラマンクなどの絵画があり、建築も見て、リーガロイヤルホテルの「ルオーのステンドグラス」というケーキを食べてと頭をめぐらすのに忙しかった。

入り口の近くの革張りのソファがめっちゃ気持ち良かったd(^_^o)

◼️ ジョルジュ・シムノン
  「紺碧海岸のメグレ」

シムノンが散らす対比と人間的な動機への帰結にうまいなあ、と感じる作品。

紺碧海岸と書いてコートダジュールと読みます。冬服でパリから来た殺人の捜査に来たメグレはリヴィエラの地の太陽とバカンスの地独特の雰囲気にあてられてしまう。なんかこのへん「異邦人」なんか思い出しちゃいます。

背中をナイフで刺された死体を放っておいて、有り金持って逃げようとした同居の女たち、さらに被害者の男が身を落ち着けていた「リバティ・バー」にいる肥満の元娼婦と若い娼婦を、メグレは違和感を覚えつつ調べる。

被害者はオーストラリアの富裕な実業家で、コートダジュールに来てから母国に戻らず、親族たちと揉めていた。女たち、親族、彼が死んで得をするのは?

調べていくうちに、それぞれひとクセもふたクセもある登場人物たちが、いよいよ怪しくなっていく。そして、この地で起きる人間の営みが、メグレにとっても読者にとっても、距離感のある異世界での出来事のように思える。そう、セオリーを追っていくけれど、セオリーではない空気感、暑い、退廃的、享楽的な匂いが心に広がっていくような感覚になる。

そこで、動機は一種意外だけれど、納得できるもの、という素早いオチがあり、異世界を脱出したメグレが自宅で夕食を食べながら、妙に明るく噛み合わず、でも底抜けにアットホームでユーモラスな会話を妻と交わす場面にホッと笑って終わり。

メグレは心理的、と読み始めた当初から思っている。細部に回収していないかもという点もよく見られるけれども、今回は設定がとても技巧的で面白かった。シムノンの作品を折に触れ読むのは、私の貴重な愉しみだ。


◼️ 小林朋道
「先生、大蛇が図書館をうろついています!」

ヘビ大好きな学生のWkくんにMVP!^_^

1年に1冊出ているというこのシリーズ、いまのところ1年ずつ遡っている。今回は2020年の春に出たもの。

プロローグ、先日読んだこの次の巻の一章となった子モモンガとの出会いが語られる。何回見ても可愛いねー。

次巻よりも学生の活躍が多くてこれが楽しい。ヘビ好きな2人の卒業生は学内のヘビ部屋という施設で卒業研究をした。アオダイショウとシマヘビでは支柱の登り方は違うのか、また登り方の特徴は?など生態行動の観察、また霊長類にあるというヘビニューロン(ヘビの姿に激しく反応する神経)に関する実験など興味深い。ヘビはダントツに怖がられている生物なんですね。

うち1人のWkくんはヘビが好きすぎて、住んでいるアパートにニシキヘビを含む数種のヘビとヤモリ、トカゲ、そしてそれらの餌の昆虫類を飼育していたとか。大学のある鳥取から山形の実家に帰るときは持てるだけの子たちを連れて行く笑が、全部は無理。どうするかというと、その交友関係作りの巧みさで、家族とともに住める造りの交番のお巡りさんやその家族に預けるのだとか。

さらに、爬虫類と触れ合うイベントでは上手な解説で、来訪した小学生の警戒心を解き、さわりたいと思うところまで持っていくのだそう。自治体のイベントに呼ばれたり、テレビまで取材に来たりと大人気のWkくん。イベントでの、顔出しの写真も掲載されているが、これがまあなんとも親しみやすい表情で、読んでて微笑んでしまいます。

ニホンアナグマの溜め糞の実験やユビナガコウモリのルースト(洞窟内でぶら下がって休憩すること)の優位性の実験に関する解説も好奇心を刺激した。

私の自宅にも、春から初夏に青色が鮮やかなイソヒヨドリが来て気持ちよさそうに囀る。イソヒヨドリの短い救助日記もほのぼのとしてGOOD。

コンパクトに動物行動のおもしろさが味わえる。もっと遡って読もうかな。

0 件のコメント:

コメントを投稿