神田神保町で好きだった店、欧風カレー「ボンディ」の味がレトルトになったという情報をゲット、さっそく買ってきて食べた。んー濃厚で思い出すものがある。ライスにとろけるチーズ、もれなくほこほこの小ぶりジャガイモ2つ付き。また行きたいなあ〜。
4月は17作品15冊。この2か月ほど多くなっている。興味が持てるものをさくさく読んでいる。一時期は物語だけだったけども最近は情報・知識系も多い。
まあまだ、今年は世界の名作系も少し入れていきまいな、と思いつつまだまだなのでした。
◼️北杜夫「幽霊」
生い立ちと青春。なにが「幽霊」なのか。
1954年に自主出版したという、北杜夫のデビュー作にして自伝的作品。
父母に姉、肉親を亡くし、戦争を経て成長する少年の私。昆虫に興味を抱き、自然を観察し、病に臥せる。幾人かの女性に興味を惹かれるが、それは生い立ちと分かち難くつながっていた。そして、単独で日本アルプス、槍ヶ岳で過ごして、何かに出逢う。
まず思ったのは、一文一文の表現に意匠が凝らしてあるということだ。文豪たちよりはやはり現代に近い文体で、言葉が知的で美しい。すべての文に力が入りすぎていてやや読むのに肩が凝る気もするが、どこか純粋さが見て取れる文調だ。
惹きつけられたのは、おそらく10歳くらいのころ、1人で図画教室に残り百合の絵を描く場面。百合の花弁が、暮れゆく陽の光にさゆらぐその陰翳を捉えたくて暗くなるまで熱中する。この年代よりも幼い頃、目に映る植物や虫、蝶や黄金虫などの甲虫の表現が、硬質で色彩的だった、と思い返し、その感性をここでぶつけている、と悟った気になった。
作中に紹介されている蝶たち、「風の精かともまごうこの上品な白い服をもつ天使」クモマツマキチョウや「太い黒帯を黄の衣装に対照させ」ているミヤマモンキチョウ、「素晴らしい眼紋と光輝とにつつまれて」いるクジョクチョウ、そして幼少の「ぼく」が夢中になったウラギンシジミなどの画像を調べながら読むのも楽しかった。
槍ヶ岳の夜、幽霊に向かって、「ぼく」は何という言葉を呟くのか。それにしても寒い槍ヶ岳の山小屋にたった1人、3000mの美しい月の夜の光景なんて見たら、人生変わるだろうな、と。
北杜夫はこのあと「どくとるマンボウ航海記」がベストセラーとなり「夜と霧の隅で」で1960年に芥川賞を受賞する。
びっくりしたのは、氏が亡くなった病院が東京にいた時代の家の近くの病院で私が住んでた時期だったということ。あまり読んでなかった作家さんだけども、また読んでみようかな。
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