2024年1月28日日曜日

陸の王3

展示室には昨夏の⚾️甲子園で優勝した慶應高校。真紅の優勝旗、優勝盾などもありました。

同行の弟は卵サンドと、評判のコーヒー。大学というものにあまり入ったことがなかったからと物珍しそう。2人で敷地内を回り、その後東京タワーまでお散歩。兄弟親族はやっぱり身内。なんでも話せる安心感がある。

今回の東京建築行はこれにて終了。田町なので品川からすぐ新幹線。途中の滋賀はまだだいぶ雪が積もってました。ちと疲れたな。まだまだ楽しみは多い。次はどこへ行こうかな😊

陸の王2

店内の様子〜天井も八角形ですね😆ステンドグラスは大正4年のもの。高さ6.5mだそうです。大きくてダイナミックですね。

もちろん建物もステンドグラスも改修、再現の手が入ってます。関東大震災や戦時の空襲で大きなダメージを受けました。

建物内は無料で見学でき、慶應の歴史を辿る展示室もあります。

陸の王1

慶應大学のシンボリックな八角塔。明治45年、開館式の写真にもそのまま同じ形状が見えます。この塔を備えた旧図書館を訪ねました。いま八角形の部分はカフェで一般利用もできます。季節のクリームソーダはゆず。テーブルもコースターも八角形😎コースターお願いしていただいちゃいました。

名建築で、スイーツを😆

世界の巨匠

フランク・ロイド・ライト展に行ってきました。ギャラリートーク開催ということもあってか、ずらりと行列、整理券が配られてて、入るまで30分待ち。世は建築ブーム。世界で最も有名で、オールタイムベストである近代建築の巨匠のファンはたくさんいるということでしょう。

奥まった軒、つまりスリリングなくらい突き出たひさしにフラットなプレーリースタイルなどフォルムの構成の多彩さ、採光の多さに加え、独特の幾何学模様や家具のデザインの多様さには感銘を受けます。

浮世絵収集家としてもめっちゃ有名で、自分の持ってる浮世絵だけで展示会もやったんじゃなかったかな、のライトはアジアだけではなくサウスアメリカやヨーロッパのテイストも取り入れた装飾を思い切って前面に出している。そんな稀有な個性が世界中のファンを惹きつけるのでしょうか。

関西にある旧山邑邸、東京の自由学園明日館、そしてもと帝国ホテルの支配人林愛作がライトの直弟子遠藤新を招きライト風味たっぷりに作った甲子園ホテル(現武庫川女子大学の建築学部のある甲子園会館)と見学してなんとなく分かった風でいたものの、やっぱり落水荘、グッゲンハイム美術館、ジョンソン・ワックスビルなんかの紹介を観ると、すごい人だなあと唸ってしまう。タリアセン・フェローシップの斜め屋根もいい感じ。

撮影できるところは椅子テーブル壁にベンチの一角だけだったけど、よく見るとそれぞれフツーじゃない面白さがある。

ライトの帝国ホテル、行って見てみたかった、ホントに。一部が移築、再構築されている明治村にはいつか行かねば。

有楽町の帝国劇場も玄関入ったところからステンドグラスだけちらっと見ました。

東京文化会館 エピローグ

文化会館の売店で、安かったのでパンダ🐼のハンカチを購入。これで黒猫🐈‍⬛、うさぎ🐇、アルパカ🦙に続く動物ハンカチシリーズまた1つゲット。というわけで、楽しい上野行だったのでありました。

東京文化会館おまけ

赤と青のドア。外のここは建築ファンの写真スポットだとか。コンクリートの板壁装飾の並びが不規則で遊んでる。たまらんね😆

東京文化会館の5

会館のレストランで、本に載っていたチャップスイ。たっぷり高級な具が入った中華丼って感じ。中国🇨🇳からアメリカへ紹介され、アメリカ🇺🇸風味を取り入れたものが日本に取り入れられたんだとか。昭和36年のレストラン開業からあるメニューでここでしか食べられないもの。中華丼っぽくて美味しかった。りんごのケーキもしずる感あっていいですね。映える。

東京文化会館の4

ヴィオラのリサイタルは初めてだったけれども、ヴァイオリンよりずっと低く感じる、でもチェロよりは1オクターヴ高いのかな。低さがあって、心地いい高音もあって、腹落ちのいい音でした。最初は前に、響きが聴きたくなって後半は後ろのほうで。自由席GOOD👍特に最後のブラームスのソナタは、あ、ブラームスの旋律だ、と瞬間感じたほど、聴かせるメロディライン。ホールにふわっと広がるような、でもぐっと向かってくるような、伸びやかでいい演奏を味わいました。

東京文化会館の3

ロビーから2Fのレストランに向かう階段やロビーのソファなど各所に赤を配してある。このソファもフォルムが上品。かっこいい〜。ちなみに作者などの情報なし。色彩は、観客部分は赤を散らし、スタッフ部分、楽屋や舞台裏など青だとか。タイルは落ち葉のイメージ。

東京文化会館の2

小ホールはゴツゴツしたコンクリート部分、後ろの「昇り屏風」と言われる折れ曲がった反響板や工夫が凝らされた照明は彫刻家の流政之が手掛けたそうです。後ろの板壁は細い素材を縦に並べていて、幅がまちまちで規則性もなさそうで渋い。

凝った演劇シアターっぽいね。カッコいい。

東京文化会館の1

東京で今夜は約束もないし、神保町カレー食べて本をあさりつつ山の上ホテルでも見に行こうかなと思ってたところ、前日まで読んでいた「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」で取り上げられていた東京文化会館でヴィオラのリサイタルの当日券があるとのこと。パッと上野まで行っちゃいました。

コルビュジェの弟子前川國男の設計で、外から見たら斜めに外側へ広がっている大ひさしが特徴的。中はわっと派手ではないけれど、タイルもおもしろく、金、そして赤が散らしてあるのが印象的でした。

大雪と富士山

大雪の東京出張、新幹線ずっと徐行運転で1時間遅れ。名古屋からは晴天でした。

時間に余裕を持って乗ったので遅れることはなく、車内もすいてて、珍しい雪景色を楽しみました。何も考えず、いつも通り先に送った荷物が朝の段階で東京に届いているかはっきりしなかったため、多分ムリかもとリュックに着替え類を詰め込んで行ったら途中の追跡システムでは東京に着いたと。手で持っていけるものは限られてるので助かった。

手塚治虫の「陽だまりの樹」で、まるで凍りついた銀だ、と表現されていた富士山がとてもキレイでした。

1月書評の11

先日、宇宙フォーラムに行ってきました。向井千秋さんらと日本の宇宙飛行士第一世代となった土井宇宙飛行士によれば、宇宙観光旅行の時代はあと10年で来る、と。Σ( ̄。 ̄ノ)ノ😳

確かにアルテミス計画の月の有人探査再び、その先には火星の有人探査があり、さらに月面の基地造り、その先に火星の住居整備もあるかもしれない。宇宙はいまホットなのです。民間企業の参入が激増していることも大いに関係がありますね。

最後は宇宙大好き中川しょこたんが登場、ハイテンションで土井さんやフライトサージャン、医師の樋口氏に楽し鋭い質問など。途中、日本初の月面探査機SLIMの最新情報がもたらされ、会場が湧くなど、宇宙ファンたちの集いはアツい空気が充満してて楽しかった。ああ自分は宇宙好きなんだなあと再認識しました。

「宇宙を、目指せ」by土井宇宙飛行士

◼️ 甲斐みのり「歩いて、食べる 
東京のおいしい名建築さんぽ」

行きたいとこざくざく出てくる。東京モダンには特別なものを感じるね。

著者の「京都のおいしい名建築さんぽ」を読んでここ2年くらいでいくつも訪ねてスイーツを食べて目と舌で名建築の良さを感じてきた。京都、という古都は悠久の歴史だけでなく、明治から大正期、首都が移された後も日本の代表的な都市のひとつとして発展したモダンな雰囲気も漂わせている。また近年のインバウンドもあり、次々と新たなスイーツが開発されていて、古いけど、常に新しくて勢いのあるイメージだ。

いきなり京都について長々と語ってしまったけれど、新たに帝都となった東京はものすごい勢いで発展したはずで、文明開花、東京モダンという言葉にはえもいわれぬ感慨を覚えたりする。憧憬に近いというか、より近代史を語っているというか、特別なものがあると思う。私には子どもがまだ小さく若い頃に転勤で6年過ごしたところ。思い出にも結びついているのかなと。

有名建築は、知識としてはだいたい押さえているつもりでいた、けども知らなかったり、横目に見てただけのモダン建築も出てきて、どれも魅力的で美味しそう。もっと早く読めば良かったと後悔。

行ったことがあるのは、こないだプロジェクションマッピングの企画など夜間に見学した東京都庭園美術館、ホントに大きいグランドプリンスホテル新高輪、学士会館は空いていれば出張時必ず泊まる。ライトの自由学園明日館にはかつての食堂でミニパウンドケーキ付きのコーヒーセットをいただいた。

東京駅はいつもさっさか通り過ぎてしまうだけ。各所にモダンを感じるポイントがありそうなので、行けるうちにゆっくり見てみたくなる。日本橋の高島屋、三越ともにのぞいたことはあるものの、もっとちゃんと見ておけばよかったと思わせる。両方のデパートともお子様ランチが載ってて、思わず食べ比べてみたくなる。

前川國男の東京文化会館は外からのみ。象徴的な大ひさし。中入りたいな〜。お隣には師匠ル・コルビュジェの国立西洋美術館。こないだ表参道で時間あったのに坂倉準三の岡本太郎記念館行けばよかったと後悔。パンケーキが美味しそうで、アップルパイも食べてみたいな〜。

クラシック好き、惹かれてしまうのが渋谷の「名曲喫茶ライオン」モダンな店内、青い光に包まれた2階席でクリームソーダ食べながらコンサートや名盤レコード聴きたい。写真撮影禁止、私語は控えめに、というルールもなんかディオゲネス・クラブの中に身を置くようだと勝手に想像したりして。ちなみに創業者が修行したロンドンのライオンベーカリーの伝統を引き継いでいるとか。

青山のミュージアム1999 ロアラブッシュ、赤坂プリンスクラシックハウスとおっしゃれー。いくつもの名建築を移築した「江戸東京たてもの園」こんないいところがあったとは。目黒総合庁舎は知ってたけど、やはり階段の魔術師村野藤吾の階段見に行かねば。新宿区の若松河田駅からすぐの小笠原伯爵邸も瀟酒という言葉に尽きる。シガールームの外壁は可愛く小粋でイスラム風の室内はダイナミックな模様でカッコいい。カフェのシトロンタルトもヤバいくらい美味そうだ。

東京出張までに読もうと思っていたが直前になった。大雪の影響あるか、明日から。今回は小笠原伯爵邸を手がけた曾禰中條建築事務所設計の慶應大学図書館旧館を観に行く予定。他もめっちゃ見たくなった。次もその次も、行きたいところは尽きなさそうやね。

学士会館はもうしばらくしたら一旦閉館だそう。山の上ホテルも行っておきたいな。

1月書評の10

🏀Bリーグ生観戦、ぼっちです。大阪エヴェッサvs横浜ビー・コルセアーズ。河村勇輝のいる横浜をずーーっと応援しててweb中継を中心にほぼ毎試合観てます。なかなか関西では横浜の試合がなく、ワールドカップで河村人気が沸騰、開幕戦の京都戦はチケットとても手に入らず、今回は何とか入手。来場プレゼントでTシャツいただきました。嬉しい😊

前日負けたビーコル、2戦めは序盤から飛ばす。トランジションからの速攻が冴え、ディフェンスもハードに当たる。エヴェッサはきょうは外から入らない。終始優勢に試合を進めたビーコルがリベンジ。河村はペネトレイトに後半は大事な場面でスリーも沈めて30得点。いい試合を観ました🔥勝った👍

おおきにアリーナはアクセスが悪く、以前来た時、行きのシャトルバスは暑い中待ちに待った上ギュウギュウでかなわなかったし、最近行った人にまたあんまし良くないことを聞いたし、この河村フィーバーの中、自由席で早く取らないといい席なくなる。2時間半前には最寄駅に着いて、まだキュウキュウくらいだった路線バスにギリギリ飛び乗ってなんとか到着。一般開場時間が過ぎちゃってたため、もうかなり埋まってて、探してなんとかコーナーの端席を確保。沖縄のワールドカップ時と同じような角度でなんか思い出す。

早く着いても、エヴェッサはイベント運営が上手で退屈はしなかった。ただ時間潰し用に持ってったミステリ本は途中から試合前の演出で照明が暗くなり読めなかった。隣の子連れお母さんも同じで読めへんわーと言ってた。

河村が練習に出てくると拍手が湧き「小っちゃいなー」「うわ本物や」「次は横浜で観たいなぁ」などにぎやかな関西弁。

Tシャツ配布の成果で?😆会場は赤く染まったけれどもビーコルのベンチ裏を中心にかなりの横浜ブースターが固まって座り、ゴーゴービーコル!と声をあげていた。

お食事関係は地元のイオンでおにぎり🍙と🥐パン、飲み物買っていってたので試合前と途中にパクパクと、でもキッチンカー、人気ないところはほとんど人並んでなかったから、次は買ってもいいかなと。

帰りは終了で飛び出し、時間を調べておいた路線バスでスムースに脱出成功。ユニバーサルシティ駅で降りて明るくショップの集まった駅前を眺めつつ、電車に乗って人心地。ターミナル駅から歩いて行けるアリーナ希望。気も使ったし、なんか疲れたよ。

でも楽しかった。生はやはりテレビとは全然違う。やっぱたまには会場ライブ観戦しなきゃね。

日曜夜は20時から「光る君へ」21時から「さよならマエストロ」22時から「アイのない恋人たち」とドラマ3連発。私にしては珍しいが、どれも観たい😎

◼️ くわがきあゆ「レモンと殺人鬼」

Xでもよく書評が上がっているこのミス文庫グランプリ。迫る魔の手、疑惑のパレード。犯人はどれだ?

表紙とタイトルが目立つなと印象を受けた本をたまたま入手。Xの読書垢さんたちの間で実によく書評を見かける。このミスの大賞は「名探偵のままでいて」これもよく見かける。

一時期ミステリはよく読んだ。いまは本格が読みたくなったら海外の古典が中心で、いわばリアルタイムの国内もの、賞をとった作品はかなり久しぶり。なんというか、ピントが手前に合う感覚を覚える。著者は30代、高校の先生だそうだ。

小林美桜は少女の頃、レストランのシェフ兼経営者の父を少年に斬殺され、母は失踪、双子の妹・妃奈とは別々に親戚の家で育てられた。大学職員となった今、連絡を取り合っていた妃奈が山中で斬殺死体となって見つかる。その直前、妃奈は主人公に、父を殺した犯人・佐神が出所したと告げていた。

また生前、保険外交員をしていた妃奈の元恋人が死に、多額の保険金の受取人が妃菜となっていたことで、妃菜の疑惑を追及する報道陣が主人公のもとに押し掛けていた。美桜は猛バッシングを受けている妃奈の疑惑を晴らすため、協力を申し出たジャーナリスト志望という男子学生、渚とともに調査を始めるー。

高名な実業家で妃奈と付き合っていた銅森、その用心棒的存在の金田、学内で子どもを預かる活動をし、そのアルバイトを主人公に勧める院生の桐谷、さらに渚とそれぞれのキャラはすべて疑わしく思える。大好きだったお父さん、少女の頃憧れた中学生の蓮くんの思い出がクロスする、さらに佐神の視点もあり、謎の中心、真相は何なのか、そして犯人は誰なのか、事態は錯綜する。

ともすればややこしいストーリーではあるがさほど難儀はしなかった。謎から放出された不安が迫ってくる。そして大ピンチと意外な真実、現実が反転、スライドする感覚。

読み込ませる力のある作品で最後までスリルを味わった。全ての要素が出てさあ犯人は、というタイプではなく、その点やや都合の良さを感じるがゾクゾク感はまずまず。見えない、けれども何かが来る、必ずの、不可避の予感。上手に隠し、増幅して盛り上げている、

現代最前線のサスペンス小説を楽しみました。

2024年1月21日日曜日

1月書評の9

我が家も小さなこたつを導入。私にとっては独身時以来四半世紀ぶり、息子に至っては人生初めての自宅こたつ。太宰治が「炬燵は人間の眠り箱」と書いてる通り家族みんな寝る寝る😅息子は2日連続で朝まで爆睡。私もきょう久々にこたつでうたた寝。サイコーやね。

読んだ小説に出てくる音楽好きの高校生がラリー•カールトンのギター・ソロもう最高だからよ、と作中で言ってたのを見て、たしか持ってたなと探して聴いてみる。一時アコースティックギターよく聴いてたのです。小説の彼が言ってるのはエレキなのかな、なんて思いつつ。音楽は、ジャズもクラシックもJ-POPも、色々なものをそれぞれちょっとずつ。音楽は自由にする。

サッカー⚽️日本🇯🇵vsイラク🇮🇶は完敗と言っていい。勝負という意味で言えば0-2で負けててアディショナルタイムに1点返してもやはり遅い。準備不足、初戦のベトナム戦に逆転できたということもあって油断していた。気迫負け、はベトナム戦で経験したんじゃなかったのかね。レベルが2段アップするイラク戦に対して入りから良くなかった。最初ワッとラッシュかけられたらすぐへこんでしまったというのは少々情けない。また2試合続けて2失点というのは、守備のどこかに欠陥があるということだ。ただ負けられるうちに負けた。1点返せたのも得失点差を考えればもちろんプラス。次の相手インドネシア🇮🇩も手強いと思って全力で当たるべし。なんといっても日本を手こずらせたベトナム🇻🇳に勝ってるんだから。引き締める良き糧にしていかないとね。

お餅買ってきたから、こたつでお餅を砂糖しょうゆで食べたいかな。みかんがあれば完璧👌😁


◼️佐藤多佳子「聖夜」

ちょっと鬱屈した高校生のオルガン奏者。青春ものの佳作。

佐藤多佳子は「サマータイム」「ごきげんな裏階段」初期の児童ものを読んでこのましいイメージがあったもののその後追いかけてない。久々に手にして、独特の良い、なんというか読感(そんな言葉あるのか笑)を得た。

鳴海は高校3年生。父親が聖職者、母がピアノ・オルガン奏者だった影響で、自然と教会でオルガンを弾いていた。キリスト教系の高校のオルガン部に属し、礼拝時にはBGMとなる曲を弾く。

鳴海が小学生の時、母は父と離婚しドイツ人のオルガン奏者とヨーロッパへ渡った。お堅くいつも正しい父と祖母との暮らしの中、ショックを引きずる鳴海は、オルガンの腕は抜群なものの、無感動で孤独な日々を送っていた。オルガン部に大学院生のコーチが来て、文化祭で発表会をしようともちかけるー。

あとがきを先にちらっと読み、過去作品を本にした、と書いてあったのでてっきりかなり初期の小説かと思ったら一連の有名作、例えば「一瞬の風になれ」よりも後のものだった。

おもしろい設定と成り行きだなと思って読んだ。鳴海は生活に困っているわけでもなく、オルガンの才能、ギフトを持ち、しかしきちんと努力もする。成績も悪くなく、どうやらルックスも良いようで、クールさが女子にウケているらしい。

ようは、生まれついたもので、どうしようもない部分がない。そしてたったひとつ彼のコンプレックスとこだわり、ショックのもとになっているのが母親のことだ。なにか鬱屈している、無感動、手応えがない、という贅沢かな、とも思える停滞の感覚が伝わってくるようだ。

また、ただただ母のことでひねくれているわけではなくて、考えてないわけでもなく、分からない、掴めない、初めてやってみて、自然と感じてみて自覚できる、というのが初々しい。大事なところをサボる、のもあったな、と思わせる。

通底しているのは音楽。物語は本格的なパイプオルガン、電子オルガン、リードオルガンと常にオルガンの演奏が流れている。読み手はいつも聴いているわけではないので、この荘厳で宗教的な響きに想像を膨らませる。

そして鳴海が触れる音楽、シンセサイザー、エレキギター、バンド。作中で鳴海の友だちがラリー・カールトンのギター・ソロもう最高だからよ、と言うのを読んで、確か持ってたなとCD探したりする。あった。これはアコースティックギターもの。作中にあるのはスティーリー・ダンの「ロイヤル・スキャム」というアルバムに参加した時の演奏で、エレキギター。YouTubeで聴いてみる。なるほど味があるな、と。

紆余曲折を経て、鳴海は進む。音楽の演奏の感覚、その表現はめいっぱい多彩にされ、読みながら感動を覚える。音楽もので表現はされ尽くしているし多く読んだけれども、クライマックスまでに敷いてきた動線が違うのでいつも新鮮で鮮やかで、しっとりしている。佳作だと確信。

坂本龍一の著書のタイトル通り「音楽は自由にする」。私のようにかじっただけで弾けない人、好きなだけの人にも伝わる、いや余計憧れるのかも。良い読書でした。

1月書評の8

ウッディ・アレンの新作「サン・セバスチャンへようこそ」を観に行く。まあその、ウッディ・アレンらしいラブコメで、途中名作映画、「男と女」「勝手にしやがれ」等々の場面を再現挿入してあったりと好きな人には楽しめるかも。

ウッディ・アレンは「ウッディ・アレンの愛と死」「アニー・ホール」「マンハッタン」「アリス」このへんは懐かしい大毎地下🥰「ラジオ・デイズ」は福岡の学生時代に映研の友人に連れて行かれた、「ウッディ・アレンの影と霧」はマドンナ出てるから、と会社の同僚数人を誘って行ったら慣れてない人には殊更わけわからん系の作りで不興を買ったなと😎あとは「夫たち、妻たち」かな。今回の作品はスペインのサン・セバスチャンロケで「それでも恋するバルセロナ」に似てるかと。特集ないかな〜。ダイアン・キートンもミア・ファローも懐かしい。

まあともかく、御年89歳、今回もらしさを感じられた、のは良かったけど、俳優陣がかなり高齢なのは正直びっくり。いつ撮ったの?である。主演の1人、妻の多忙さ冷たさのためサン・セバスチャンの女医に恋する中年男は今年81歳。映画会社のバリバリの広報ウーマンの妖艶な妻は62歳。びっくり。

パンフに作中取り上げた名画一覧とアレンのフィルモグラフィーが掲載してある。ああ、ヌーヴェルバーグもウッディ・アレンも勉強不足&記憶の彼方。トリュフォーとジャンヌ・モローの「突然炎のごとく」はもう一度観たいな。


◼️ 長野まゆみ「雪花童子」

乱れる。まあこうなるのも自然の流れかとも思うが・・苦笑。なぶられまぐわう美少年。

長野まゆみは少年を主人公に、宮沢賢治風味を現代風に発展させたような童話風の作品、むつかしい漢字、植物、鉱物などを多用して、時にSF風に独特の美しい少年を築いた話、また少年同士の葛藤を描いたジュブナイル的ナラティブと、独自の世界観の物語群が好ましい。

もちろんこの作風は著者の持つ手管のほんの一部であって、中には語り口がどこか講談風でもあるような、さらさらと流れる昭和風の物語もあり「45°」のような長野まゆみ+星新一?というような短編集もある。


今作は比較的初期の作品のようだが、まあその、美少年を描いていれば、こっちにいくのもまあうなずけるかなというような、魔夜峰央をずっと進めたような男色もの(男女も女性同士もあるが)だ。まぐわい、まくるし笑


それだけではなく、月白の身体、きれいな顔に辰砂の唇、がさんざんに痛めつけられ、弄ばれ、責め苛まれる。SMっ気も、痛みに震えながら耐える少年独特の美しさも、白皙に流れる赤い血というやや狂気を含んだ色彩の美もあるわけだ。おまけにゲテもの食い、アレまで食べ、さらには日本三大有毒植物の実を口にする。

将軍、武士が出てきて、しかも男子は水干指貫を着ていて御所もあり、どの時代か読みにくい物語3篇。明らかに京都近くなので室町か?なんて思う。巻頭の「白薇童子」は人をだまして身ぐるみはがす年増狐や夜叉が出てくる異界の話。

次の「鬼茨」は雪白の肌に丹朱の唇、「新芽を思わせる清爽な萌葱色の水干姿で、肩から袖にかけて少しずつぼかした淡黄色の雲母びき綸子に、白山吹の花を散りばめた小袖を着て」登場した申楽の家の息子・小凛が将軍のヤバいドラ息子に折檻を受け・・というなにやら耽美、倒錯的な世界。

表現の美しさ、多彩さでエロで刺激的、さしつさされつ、官能をくすぐる物語を展開する作品といえる。このテイストで何作くらい書いてるんだろ。作家の多くの引き出し、数ある変化球を見て認識を新たにするにやぶさかではないし、ゲージツ的、耽美、倒錯、表現、持ち味のよいマッチングは分かる気がする。

男色も歴史的には珍しくなかったし、中世オスマントルコの皇帝は少年の身体が大好きだった。私にはなにかを否定する気はさらさらない。でも、好みかと言われれば明確に違うなと思う。

初期のイメージが強く、そのテイストを求めて長野まゆみの少年もの作品を読む。今回は逸脱の例かな。次だね次つぎっ。

1月書評の7

これは木星でっす。ジュピターと半月、片割月、弓張月。なんてことないけど、ああ、おれ星が好きなんだよ、って思える夜空。

◼️ 齋藤潤「本気で考える火星の住み方」

準備、訓練が進む火星有人探査計画。その向こうには将来の移住計画が・・宇宙移民となるために必要なことは?

さる宇宙シンポジウムに行けることになり、話題として出るというので読んでみた。一昨年2月の出版なので情報はさして古くないだろうと。著者は小惑星探査機「はやぶさ」のサンプルリターンプロジェクトに起ち上げ当初から携わった方。イーロン・マスクが目標に定めるなど火星有人探査は熱い話題。月の向こうに火星はあるけれど遥かに遠い。

まずは火星がどんな惑星か、から。地球と軌道が近くおよそ2年2か月、780日ごとに接近する。この期間が火星ロケットを打ち上げるチャンスだ。地球からは到着までに9か月程度かかる。大気は地球の1%しかない。標高約2万7000mというエベレストでも比較にならないオリンパス火山や大峡谷がある。赤い酸化鉄を多く含む火星では時折ひどい砂嵐が起きる。

次に観測、ガリレオの望遠鏡観測から探査の歴史まで。ソ連とアメリカが競うように探査機を打ち上げ、1976年にアメリカのバイキング1号2号が初めて着陸した。このニュースは子供の頃聞いて喜んだものだ。打ち上げ翌年にやっと着いた、という遠さにびっくりした記憶がある。やがて2004年、オポテュニティ、スピリットというローバーが送ってきた地表の画像には胸躍らせた。

さてでは火星に住むために何が必要か。火星有人探査計画はロシアでは2025年までに可能とし欧州宇宙機関ESAは2030年までに実施する計画を構えているとか。

まあその、冷静に考えれば月の有人探査も最近出来ていない、もちろん複数回の有人探査の後にしか移住なんて出来ない。有人探査だけでも、宇宙の放射線、そしてすでに訓練が行われている長期の閉鎖生活、無重力での筋力低下やメンタルヘルスなど課題は山のようにある。

そこがクリアされたとして、住むには家が必要。SFのイメージでは月や火星に南極観測基地のような建物を思い浮かべるけれども、まだ月に人類が居住する基地もできていない。宇宙兄弟ならすでにあるんだけど^_^

火星では通信途絶を引き起こしかねない砂嵐に耐え、かつ放射線を防ぐため(地球と違って大気がごく薄いので大気による吸収?はできない)基地は地下に作るのが良い、と何度も主張している。

もちろん大規模な基地建設なら土木関係の人員が必要となる。重機の持ち込みからさらに最終的に移民するためには、惑星間を移動する大きな貨物船的なスターシップが必要だが、人類は作ったことがない。

おそらく火星有人探査は近々の月面探査の先にある。おいそれとは帰ってこられないから非常に困難だ。月面基地の経験を経てようやく火星基地、となるだろう。その過程を追うことができたらとても面白いだろうけれど、正直そう簡単には実現しないだろうという感慨かな。

天文好きには楽しい本でした。

1月書評の6

◼️ 吉田真紀「日本全国タイル遊覧」

マジョリカタイル、泰山タイル、本業タイル・・釉薬が効いてるのが好きかなやっぱり。街の見方が変わるかも。

ここ数年建築に興味を持っていて、京阪神や首都圏のモダン建築を見て回っている。神戸女学院の渋かったりかわいかったり色彩豊かなタイル、そして京都の人気カフェ、さらさ西陣のマジョリカタイルを見て興味を深めていたところにこの本と出会った。自然な流れかと思ふ。

タイトルの通り北海道から沖縄まで、日本全国の注目すべきタイルがある建築物を周遊しカラー写真入りで紹介している本。2022年の出版で、ここ最近の建築ブームに沿った企画かなと。

江戸時代から陶器のタイル様の物はあり、イギリスのヴィクトリアンタイルを真似て国内で生産する色、デザインともに鮮やかなマジョリカタイルは明治末以降大正時代から昭和戦前にかけ広まったらしい。な、なんかタイル的文明開花な香りがする。

また建築関連ってブームが熱いところがある。帝国ホテルを設計した世界的建築家フランク・ロイド・ライトが大谷石を使えば、あそこもここも大谷石、というのも見てきた。

タイルそのものは様々な用途がある。この本ではトイレ、風呂場のタイルが多く取り上げられる。さらさ西陣ももとは銭湯をリノベーションしたもの。もちろんそればかりではなく、外壁、内壁はもちろん、土間、階段に壁泉、暖炉の装飾、ドーム天井や中庭、細い通路、いわゆる犬走りに散らしたり。

釉薬だけで味が出る。焼成時の窯変の妙も楽しい。無釉のもの、釘で引っ掻いたようなデザインのスクラッチタイルもあり、模様も花模様から鳥、蝙蝠を組み合わせている渋いのもあり、動植物人間の絵を描いたり、色目だけでも濃い色に赤やオレンジを配したり。形も四角、レンガの横長だけでなく、丸や楕円や大小の四角と様々。階段や柱の曲面に対応したタイルも美しい。

縦横に並べた芋目地、ずらす馬目地、格子状、ジグザグ山型、市松貼りなど様々。バリーエションは無限ですね。小学校や文化施設にはモザイクタイルで絵を描いているのもあり、まさに縦横無尽。

紹介されている中で行ってみたいのは福島猪苗代の天鏡閣、ヴィクトリアンスタイルの皇族の別邸。深い藍色、ペパーミントグリーン、水色、ピンク、イエローでチューリップの花をモチーフにしたものが多い。泊まらなければ入れない、茨城の民宿浜の湯の風呂もカラフルで楽しそう。

横浜の代表的なモダン建築、ホテルニューグラントは早く行かねばのカッコ良さ、東海中部、伊豆の踊子の宿福田家、川奈ホテル、起雲閣と値段を考えなければ全部行きたい。下呂温泉の湯之島館は壁に廊下浴室周り、粋なカーブのモダンな渡り廊下に卓球室までタイル敷き。赤めの辰砂釉も好きだなあ。

京都八幡市の旅館橋本の香、美香茶楼。さらさ西陣のごとく最近はリノベが盛んで嬉しいこと。ここもかつての妓楼建築に惚れ込んだ女性が漢方エステ店、旅館、中国茶楼に改装して活用、おしゃれだ・・石清水八幡宮詣でと絡められるかな?

知らなかった大阪岸和田市の施設、自泉会館には八芒星や「※」に似たデザインのおもしろいタイル。ここは比較的近いし行ってみたいかも。大阪市内の綿業会館はモダン建築としてとても有名、ここはも少し後の楽しみにします^_^

九州は地元福岡に旧蔵内邸、大川市立清力美術館など興味ありあり。最後に新しく、新しいからこそのカッコよさもあり、伝統工芸を生かしたタイルがカラフルな沖縄の壺屋陶芸センター、陶器会館もぜひ訪れてみたい。那覇に近くて行きやすそう。まあ人生もう1回くらいは沖縄行くだろう。

愛知・常滑や岐阜・多治見のタイルミュージアムも魅力的すぎる。というようにすっかりこの本の世界にハマってしまったのでした。駅前の広場のタイルに目が行くようになって影響大。これからしばらくは街を見るのが楽しいかもです。

目にあやなものを読みたかったので、大満足。

1月書評の5

◼️ 青山美智子「木曜日にはココアを」

著者さん2冊め。ここまでの感想は、オーストラリアと、色。ドラマで観たいね。この形で。

青山美智子は、「青と赤のエスキース」の単行本がきれいで、京都は平安神宮近くの蔦屋書店で、たまってたTポイントで買ったなと。

繋がりのある短編集で、美術が絡み、一部の話の舞台がオーストラリアだった。

「木曜日にはココアを」川沿いの桜並木が終わるあたり、小さな人気店「マーブルカフェ」の若い店長ワタルは、毎週木曜日には店に来てエアメールを読んだり書いたりする「ココアさん」に恋をしている。

まあこの人気の本、多くの方が書評を書いておられるので詳細はカット。物語に出てくる人から繋がりつながってオーストラリアに行って帰ってくる短編集。各話に象徴的な色が設定されている。

オレンジと、やっぱり緑の絵を描く女性の話がいいかなと。

いい話、幸せな話ばかりだ。キュートに、可愛らしく、明るくHappy。ワタルもココアさんもバリバリの働くママも髪の薄いおじさんも、魔法使いも老夫婦も。ちょびっとの塩味はしても、喜びを際立たせる重すぎる哀しみも不幸も生きづらさもほとんどない。

しかしこのテイストの連続で、我々読み手は著者のワールドに取り込まれる。もっと幸せな話を読みたい、ほっこりしたい、喜びの顔が、ハッピーエンドが見てみたい、包まれたいと思ってしまうのだ。

兎角設定に暗いものが多い小説群、そして最近1つのジャンルを成してきているような生きづらさを感じる主人公の話。人の世はけっこうキッツいことが多くて言う人はずけずけ文句やグチを言い、傷つく人、心が増える。自然災害も国際情勢も。暗いニュースが多い。

その中で福々しい、心に美味しい、微笑ましく読めるエピソードたち。苦しい話と同じくらい、せめて楽しい、嬉しい話はあるはずで、このテイストで押し切ることで新たな好ましいものがフワッと構築されている。

朗読劇などでだいぶ活用されているようだけど、このミニドラマを連なる形、1回実写ドラマでやってみて欲しいな。ワタルは鈴鹿央士かなあ。

これが青山美智子の筆致か。他はどうかな、もう少し読んでみよう。

1月書評の4

今月は水星が見頃とか。暁けら曙へ当たる時間帯に撮影に成功⭐️三日月🌙と金星の接近も、まるでSFの世界で別の星にいる気がする。強い光の金星の左斜め下、淡い光の点ですがこれが水星マーキュリー。どうぞ🤗

さるお菓子店のプレゼント🎁に当選、しかし関東の某都市のお店に取りに行くのが条件だった😅💦東京に勤める弟に連絡して引き取ってもらった😎

フィンランド🇫🇮の名匠アキ・カウリスマキ監督の映画1本、きょうはハッピーエンドもの❤️しかしポスターに新鋭カウリスマキ、とあって時代を感じさせる1990年の作品。日曜日は寒かった。

トットちゃん映画とピーターラビット展でチラシ作成🐇

全国都道府県対抗女子駅伝、わが兵庫県は東京オリンピック1500m決勝に日本人として初めて出場、8位入賞を果たした田中希実選手を2区に立て、これがたった4kmなのにドトウの19人抜き🏃‍♀️🌬️でトップに。まさに異次元、多元宇宙。びっくりです。

自分のおやつ用にスーパーでイチゴのロールケーキを買って昼ごはん後にコーヒーで食べたら買い物から帰った妻のおみやげはロールケーキ。入れていただいた紅茶でお茶☕️とケーキ🍰のダブルダブル😎

いちご🍓全盛の季節やね。通勤途上の白い山茶花が目に映える。

◼️宮下奈都「たった、それだけ」

最後に上手いな、と思わせる、繋がりのある短編集。

宮下奈都はたしか「宇宙小説」という幾人かの著者が書いた短編集の1つで名前を覚え、本のまとめサイトで知った「スコーレNo.4」を読み当時衝撃を受けた。「よろこびの歌」、続編の「終わらない歌」と佳作で「羊と鋼の森」で本屋大賞。好きな作家さんの1人だが、思い切った表現と人間観察力を駆使して読むことの心地よさを演出する筆致を好む一方で、いくつかの作品では訴えたいものが響かないな、といった想いを持った。

さて今回は。ガツンと事件が起きる。大手商社の贈賄容疑。人の良い担当部長のため罪を暴き逃げるよう促す愛人、それを責めるMaybe別の愛人。幼い娘とともに残された、失踪した部長の妻、部長の姉と1話ずつ。そこからは少しジャンプする。退場した部長に絡む事件と関係者のミステリ的な成り行き、ではなくて少し違う方向へと流れる。実際ここの場面転換は短編集の中で大きなものではある。

特異な状況をベースに置きながらの、生きづらさ、不器用さ、思い込みのやっかいさを随所に散りばめながら、最後に爽やかに終わる。読後感は確かにいい。ただ部長事件が放り捨てられたとこになんか回収不足のもやもやを感じたりする。このような形もないではないって経験が言ってるんだけども、この爽やかさとでも、と尾を引く感じ、遠い感覚が物語の設定とどこかうまくマッチしていて上手に読み手の心を捉えている気もする。

本作は「羊と鋼の森」の1年ほど前、2014年に発表された。宮下奈都の作品はどこかに狙いが潜んでいて、それを心で感じる時は名作の域だと思う。今回は解説を読んでそうなのか、と得心した。となると?描き方、構成含めうまいなーとは思う。どこかでもう少し強さを求めてるかな。

もう少し、たったそれだけのことができていれば・・誰しもそういう思い出、経験はあるだろうし、上手に衝いている雰囲気もある、でもそれだけではない。うーん、さりげなさすぎるのと、やはり不幸にみずから沈んでいる期間が長いとどうも重たすぎるってとこかな。

次は誰、次はどんな話、と読ませる筆力は健在。らしい作品かな、と久々でもあり嬉しかった。

1月書評の3

1月はブログの更新をサボってまして、FBのコピペです。ちょっと遅いですがお許しを。。

名画座で「BLUE GIANT」ジャズ漫画のアニメ化。凝縮版なのでトントンと話は進む。でも音楽にジンとし🥲若者の成長に涙し🥹ストーリーの悲しい成り行きにボロボロ泣く😭年末から音楽を活かした映画ばかりで嬉し楽しい。

「2023年あなたの1本」手作り名画座、来た人が楽しそうに書く。私も"戦メリ"。書いてある作品名をふむふむと。こんなのがあってさ、と映画友達と話をするのも楽しい。「トラスト・ミー」はハル・ハートリーかな懐かしい。「シンプルメン」も大好き、どこかでやってたよね、とか。分かる人いますか😆

映画の帰りにいつもの河川を見ると白鷺がたくさん。妻不調で独身の時から得意のクリームシチュー。やっぱ上手だなわし😎でも作るとどうしても漢飯(おとこめし)🍚になる。ザクっと多く作って腹がふくれるやつ😁

あとは春高バレー🏐でした。準々決勝からは全試合観戦。東福岡、洛南が早々に敗退、ベスト4はインターハイとの2冠&春高連覇を狙う駿台学園、インハイベスト4、大阪の昇陽、福井工大福井は福井県としては男女合わせて初のオレンジコート。そして名門鎮西が上がってきた。

駿台学園は1強と言われていた。天皇杯ではV3のチーム、2022年インカレ王者の筑波大、駒澤大を倒して決勝トーナメント進出するという恐ろしいチーム。

国体では山口の高川学園に敗戦、今大会も3回戦で当たり1セットを取られたが勝ち切ってきた。準決勝は昇陽エースのオポジット小山海皇(みこと)を中心とした攻撃を封じ3-0。一方の福井も鎮西を3-0で下し県勢初の決勝へ。

互いにレフトライトの攻撃、ブロックは強くレシーブも良く、セッターもリベロも上手い。福井はエースのキャプテン堤凰惺(おうせ)を中心に粘る。しかし駿台はレベルの高い攻撃力、守備力を展開、レシーブ、スパイクといい場面で抜群の働きをするキャプテン亀岡聖成(せな)がゲームを引っ張り、3-0の完勝で連覇を果たした。

ストレートのゲームでもドラマは見える。5セットマッチは特に試合の流れが見える。おもしろい準決勝、決勝だった。互いに1、2年の有望選手もいて、また来年も強いだろう。

女子は名門・就実が3冠を狙った下北沢成徳を3-0で破り2年ぶりの優勝。コロナで棄権となった去年の悔しさを、次の代が晴らす結果に。180cm超の選手を3人揃え、高さに勝る成徳は、就実の機動力、確実性に遅れを取った。解説の竹下佳江さんがトスの丁寧さに触れておられた通り、セッターもリベロも打ちやすいトスを上げ、アタッカーもトスを信じて迷いなく打っていたのが印象的だった。

🏀ウィンターカップ、🏀ニューイヤーカップ、🏐春高と続いた私の年末年始スポーツ観戦は完結した。今回も楽しかった〜。願わくば🏐も福岡県勢の活躍を願いたい😆応援への気合いが違ってくる。

◼️ 鯨統一郎「金閣寺は燃えているか?」

バーの女と教授と若き文芸通が織り成す文豪作品の掘り返し。分析と追究は好ましい。

若いバーテンダーのミサキの店「スリーバレー」に今夜も立ち寄る教授は日本文学界の重鎮・曽根原。そして若く謎めいた文豪作品通の男・宮田。3人は有名な文豪作品を掘り下げていく。シリーズ2作めかと思う。前作は夏目漱石「こころ」をたしか百合小説と言ったり、なかなか荒唐無稽な評価をして実証の論を展開していく。

川端康成シンドロームの私にとってはやはり「雪国」でしょうかね。葉子の死は殺人とか怪談とか出てきます。川端は時にはっきり示しません。特に会話文ではこれは何ですか?大根です、どうして山に登るんですか、そこに山があるからです、といった明瞭な遣り取りはあまりないです。大事な部分は特に。

要素だけを散らしていることが多い。だから逆にさまざまな推論が可能になってくるんですね。私的にはいろんな対比や比喩的、象徴的な意味もあるんだろうと思います。その上で「雪国」は結局のところ仕掛け、演出が白眉な作品だと考えています。ウラを返せば、あまり論理的に思索する話ではないのではと・・言い過ぎですかね^_^なのでこのシリーズでは常識を説く役の曽根原教授の見方に近いかなと思いました。

ミサキの関心を引きたい曽根原にとって宮田はウザく、荒唐無稽な論ばかり述べる"唐変木"であります。物語の追究に関して、ミサキが進行役となり追究していく形の物語です。

川端のほか、田山花袋「蒲団」、梶井基次郎「檸檬」、三島由紀夫「金閣寺」について、3人は話を深めていきます。かなり原文を研究しているので、指摘にはふむふむ、という部分も大いにある。しかし、頷ける論ばかりではなく、いくら文章に照らしてみても無理があるかなと思ったりもする。おそらくそれを見越しているはずで、この本の愉しみ方の一つかなと。なにより検討、追究していく過程には惹かれる。文豪の生い立ち、人柄、成り行きも多少なぞれる。読んでて楽しくなりますね。

学者の分析論を読むと少々思い込みが過ぎるな、大発見のように言われてもね、など正直しらけることがある。本の読み方感じ方はやっぱり人それぞれで、難しいところ、それを逆手に取ってライトな物語化しているなと思えます。

三島はいくつかしか読んでないが「仮面の告白」そして「金閣寺」はとても良かったと思ってます。こちらも感覚的なものですね。美と滅び、それから最初は破天荒で荒々しく見えた友人が、最後は常識人のように主人公に意見するのも興味深かった。主人公は真面目に見えて、どこか不穏なものを携えている、金閣寺を取り巻く空気も何かを待っている感じ、金に黒が見え隠れし赤となる。思い出し感想ですが、やはり「金閣寺」は三島にしては出っ張る部分も穏やかで、名作かと思います。

このように、理屈だてしようと思えばいくらでも出来そうではある。この作品の中の金閣寺論も矛盾は少ないように思える。読み方はさまざま。私はやはり一読のみの印象で評価を決めていきたい。

数年後再読するわずかな作品は名作であるかもしれないし、何かのきっかけで偶然の再会をするのかもしれない。前者は「ガリヴァ旅行記」「幻の女」であり、後者は最近芝居のチケットを買って再読しようと思っているチャペックの「ロボット」、映画で出てきた幸田文「木」だったりする。そんな読書が好きっすね。

まあなんか、初巻に比べるとパンチは弱めだけども、文豪好きなら、楽しめたり、いろいろ考えられたりします。そんな本ですね。

1月書評の2

同級生や読書友の薦めにより映画「PERFECT DAYS」を観に行きました。

人にはそれぞれ快い生活のルーティンがある。一定の行動様式、好きな食べ物、ほっとしたり知的好奇心を満たす場所、記憶に残したくなる風景を持っている。そして長く生きていると、どこかに変えようのない葛藤も抱えていたりする。

長い期間の1日1日にはインシデントによるさざなみ、何かを喪失してしまう現実が連なる。

ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースが人生の美しさを描いた作品。主演のトイレ清掃人・平山を演じた役所広司はカンヌの最優秀男優賞に輝いた。

テレビで、役所広司が東京のトイレ清掃人の日常を描く映画、くらいの紹介を観たことがあったが、あまり気にしていなかった😅私としたことが。

平山が掃除をするトイレが建築的に興味深く、東京スカイツリー近くの下町の切り取り方が素晴らしい。また、アキ・カウリスマキもそうだが、名監督は音楽を有効に、楽しく使う。居酒屋のおかみ役が石川さゆりで実にしっとりしてチャーミング、歌まで披露する。カンヌの人々はどう感じたのだろうか。

平山が熱心に読み込むのが幸田文の「木」。幸田文は私の中でベスト・エッセイストで、この本は木に対する思い入れ、研究、行動が綴られている佳作だと思う。

人生の蹉跌と、日常の美しさ。誰もが持っているもの、そして日々の移り変わり。演出は小粋、ストーリーは淡々。観客が胸の奥で受け止めるような虚しさと希望を放ってくる。

滋味掬すべき映画ですね。観た後、少し心持ちが変わった気がする。これが表現の目的の1つだよね、としみじみ。映画って、やっぱりおもしろい。


◼️ 藤井旭「月と暮らす」

円でなく、球体と見ると想像が広がる月。その姿、月のある風景、ちょっと科学。暮らしの中の月をまとめた本。

月って何かの象徴だったり、幻惑のもとだったり、神秘的だったり、あはれを誘うものだったりしますよね。月の知識を整理したり、また啓発されたりするのが愉しい作品でした。

山の月光、海の月、月の道、夕暮れの月、惑星と月、三日月の地球照と、カラー写真の多い構成、まずはさまざまな月のシーン。次は満ち欠けを月齢0、新月から次の新月まで、朔望月の期間月齢ごとに見て、様々な知識を散りばめていきます。三日月は本来月齢2の細い細い月のこと、春の三日月は高く秋の三日月は低い。弦月、片割月、月の弓、月の舟などと呼ばれる上弦の半月。

コペルニクス・クレーターに北寄り虹の入江のムーン・レディ、満月の少し前の十三夜は栗名月、黒っぽい玄武岩質だから月全体での反射率はわずか7%だそう。満月は半月の10倍以上明るい、十六夜いざよいに立待月、居待月、だんだん月の出が遅くなると寝待月、臥待月、月齢20、午後10時ごろの月の出で更待月、やがて有明けの月、暁月。月齢22で下弦の半月。特定の月齢に対応する神様をその月の出を待って拝む月待ち信仰。二十六夜の三日月を待ってオールで宴会するのが江戸時代に大流行、ついにお上の取り締まりの対象になったとか。晦日は月ごもり、陰暦から来ている、などなど。


この1月は未明から早暁に水星が見ごろ、私もこの稿を書いている日の朝に目視観測、スマホで写真を撮った。宵の明星が細く鋭い三日月とランデヴー、いやなんかSFチックで地球以外の星にいるような気分でした。

月齢の後もまだまだ続きます。月の光で出る虹、月虹、ムーンボウ。雨を呼ぶ月暈(げつうん)、日食金環食月食に星食。月のことば、月に叢雲、花に風、鏡花水月、ブルー・ムーン、ゲーテ「ファウスト」のワルプルギスの夜、魔女の酒宴には血のように赤い片割月。

そうそう、星月夜、とはそもそも星づく夜のことで月がなく、星が明るく輝く夜のことだとか。ゴッホの絵には月が皓々としてますよね。あれ?😆


奥の細道、西行に徒然草の花はさかりに、月はくまなきをのみ、みるものかは。私の好きな宮沢賢治「月夜のでんしんばしら」、竹取物語に源氏物語、枕草子の月、月はありあけ。

月の観察、知識、月にまつわる文学など様々に取り上げている。

私的には、なぜ太陽と反対に、月は冬は高く、夏は低く昇るんだろう。地球に対する軌道面が変わるわけでもないのに、という長年の疑問に、月の公転面もまた地球の赤道面に対して23.5度傾いていると知りなんか納得した。

月は太陽系で6番めに大きい衛星。火星には2つの小さい衛星があるものの、やはり巨大惑星に圧倒的に多い。中で地球という小型の惑星の1/4サイズの月は、つまりは異例なくらい大きい。だから地球が安定していることも復習、文芸的にはいつも、月より少し大きい、いわるゆガリレオ衛星たちから見た巨大な母天体、空一面を覆い尽くすような、インディペンデンスデイの侵略戦艦のような光景を想像する。確かオールタイムベストSF「星を継ぐもの」で描写があったような。それが土星だったらどうなんだろう。タイタンから土星はどう見えるんだろうか。あ、大気が厚かったっけ。

だらだら書いて来ましたが、良寛さんの歌で締めたく思います。とても興味深い本でした。

ひさかたの月の光のきよければ
照らしぬきけり唐も大和も
今も昔も 嘘も誠も

気がつけば鬼束ちひろ「月光」を口ずさんでいた。気分やね。

1月書評の1

新年のご挨拶、遅れましたが、やはり能登の地震による災害に気持ちがザワザワしていました。被災地の方々に心よりお見舞い申し上げます。阪神大震災も1月の、寒い日の発生でした。

画像はUSJ、ユニバーサルスタジオジャパンの新年のお祝い花火です。毎年もの。今年は新年の一斉汽笛は聴こえませんでした。

大変な年明けとなりました。ともかく2024年もよろしくお願いいたします。

◼️宮部みゆき
「あやかし草子 三島屋変調百物語五之続」

変わり百物語、ますます充実。やっぱり宮部みゆきは、上手すぎる。2話め「もんも声」がサイコー。

ゆるゆると続いてきた変わり百物語も5巻め。叔父の袋物商い、三島屋に身を寄せているおちかが市井の人々の不思議な妖し物語を聞くというお話。聞いて聞き捨て、語って語り捨て。

今回はシリーズに大きな転機が訪れる。

最初の頃はかなりシリアス、またちょい完璧主義っぽくて読み終えるのに少し骨が折れたりした。途中から可愛い系、怪物暴走系笑、そして本当に恐ろしく、また人間臭い話など、多彩でなおかつキレが増してきた気がする。

今巻「開けずの間」の行き逢い神は間違っても出会いたくないもの。しかし語り手はうっかりの血筋でコミカルだ。2話め「だんまり姫」のもんも声は年配の女性の方言や語る物腰が大変好ましくおもしろい。深刻めな境遇、出来事はあるものの、キャラクターに中和される感じで、成り行きも可愛らしい。名語りの1つと言えると思う。

「面の家」「あやかし草子」「金目の猫」ひと続きのような話である。面はああこれも時代劇、と思い出させるような定番のお家騒動、草子は6人夫が変わった老婆の話、猫は、こどものころ誰しも出会ったことのある不思議な現象、のような気がして、その風味がまた小憎らしい。

そして、おちかは逆プロポーズで貸本屋の勘一と夫婦になる。さて、黒白の間、次なる聞き手は、おちかとともに聞いた話を絵に描く、三島屋の次男、グルメでよく口の回るいかにも商人の若い富次郎。さてどうなるやら。

このシリーズは、宮部みゆき氏がとてものびのびと、著者の好きな世界を書き連ねていて、読む方もふむふむと、まるで聞き手になったかのように読んでしまう。少々分厚いけれど、読み始めたら早い本。殊にここ何作かは柔らかくて読みやすくなった感じである。

また読めるかな。