2023年2月19日日曜日

2月書評の8

暖かめで雨がちの週末。今週は日本代表活動でBリーグはブレイク。バスケ沼部は気持ち的にヒマ😎たまった録画を観てます。

同級生が神戸に来たので明石焼きで和やかなお迎えごはん。お気に入り店にまた行けて至福です。

クラシック🎹の話。バッハというのは教会音楽のイメージが強い。老後の楽しみ、なんて敬遠してきた。モーツァルト以降の人の方がダイナミクスも繊細さもある気がしてたし。

その一方で、ヴァイオリン🎻してた人、ピアノ経験者らと話をする中で、奏者さんはバッハが好きだな、何度も感じたことがあった。

今週なにげなくフランス組曲5番を聴いていて初めて、ああ、バッハの旋律、かわいいじゃない、と思えた。聞かせどころがいくつかあって、奏者が気持ちを入れるポイントが見えたように感じた。

ちょっとまた自分が変わったかなっ。

◼️ 梯久美子「サガレン」

北への憧れ、宮沢賢治・・樺太を巡る旅。何もないはずなのに、心が飛ぶ。

なじみの古書店店主さんが宮沢賢治学会員の講師さんで、賢治の話をしていて、すごくいい本、と薦められた一冊。さっそく図書館。私は九州の生まれで北への憧れもある。

鉄子で廃線マニアのノンフィクション作家さんがサハリンの鉄道で旧国境を越す。日露戦争のポーツマス条約で日本が得た樺太の南半分。賢治は未完の童話で「サガレン」と読んでいる。

ロシアでは流刑の島で、訪れたチェーホフが著作を残している。また島国日本では珍しい国境を見るツアーが人気を呼び国境見物に来る人も多かったとか。林芙美子が訪れ、紀行文を書いている。第一部は南部の都市ユジノサハリンスク(豊原)から寝台急行で北上、北緯50度の旧国境を越えて北半分のノグリキへの旅。

そして第二部は宮沢賢治の足跡を追う旅、なのだが、軌道の幅を広げる工事のためサハリン全島で列車がストップ。車での移動となる。

賢治は1923年の8月にサガレンに渡っている。岩手の花巻から青森で青函連絡船に乗り、渡った北海道で列車で稚内まで行き、サガレン南部のコルサコフ(大泊)まで、宗谷海峡を船で渡った。そこからスタロドゥプスコエ(栄浜)まで鉄道に乗った。

日本から進出していた王子製紙大泊工場の知人に花巻農学校の教え子の就職を頼むためで、実際に勤めた卒業生もいた。しかしこの旅は、前年に理解者であり最愛の妹トシを亡くしたための傷心旅行の意味合いが大きかった。

「青森挽歌」「津軽海峡」「旭川」「宗谷挽歌」「オホーツク挽歌」「樺太鉄道」「鈴谷平原」「噴火湾(ノクターン)」と旅中の詩作が進んでいく中で、最初は悲しみに耐えきれなく見えた賢治は、サガレンに上陸してから、光が射したように、またさわやかな気分に包まれたかのように短い期間で作風が変わっている。

「宗谷挽歌」のトシに語りかける部分は胸を衝かれる思いがした。後半は賢治らしい言葉遣いや軽やかさが戻ったようにも見える。

そしてサガレンでの旅の経験はほかの著作にも、取り分け有名な「銀河鉄道の夜」にも活かされている証左が解説される。

賢治を追う旅はひょっとして鉄道移動ができなかったからというのもあるかもしれないが、賢治の著作に寄り添って土地を巡り、植物相などにも言及していて、心が沈み込みたゆたう気分になった。

サガレンは何度も行きたくなるところだという。いかにも何もなさそうではあるが、それでも賢治がある意味浄化されたような気分を味わってみたいとも思う。

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