地元図書館が入るショッピングビルに行ってみると「どうする家康」の等身大パネルがあってほおーと。イベントがあるのかな。
フィンランド映画「コンパートメントNo.6」カンヌでグランプリ(最高賞はパルム・ドール、グランプリは2位ってとこかな)受賞。アカデミー賞にもゴールデングローブ賞にもタイトルが上がっている。
夫を含め何でも持っている年上の女性の愛人。自分に対する関心の低さに傷ついたまま、女は旅に出る。北の果てへ、考古学的に価値のある岩絵を見にー。コンパートメントで同室はなんと失礼で粗野な若い男だったー。
展開が演劇みたいに早いなと。心の旅路は分かるし表情も生きている。でもなんかカンヌ〜って感じだった。
ピカソ展へ。日本未公開のものも含め数が多かった。同時代人のクレーの絵も数があった。私の好きなマティスにも響く作品があり満足。
近くの刀の装具展も回って帰る。
まあまず良い気分転換だったかな。
◼️ いせひでこ「まつり」
なんの予備知識もなく手にしたら、先月読んだ「大きな木のような人」のヒロインさえらがいた。
主にヨーロッパ、特にスペインやパリのイメージもあるいせひでこさん。今回は日本のまつり。どんなんだろう、と開いてびっくり。さえらがいたのです。何の予備知識もなかったのにこの暗合。だから読書はおもしろい、ワタクシ天才的なハナを持ってる?なんて思っちゃいました笑
「ルリユールおじさん」は植物図鑑の本を修理して欲しくてパリの街を探し歩く少女ソフィーが主人公。
「大きな木のような人」には植物学者になったソフィーの職場があるパリの植物園、そこへ毎日のように絵を描きにくる少女さえらが、ソフィーの同僚の学者、木のおじさんと仲良くなります。
日本へ帰ったさえら。ストーリーは木のおじさんとさえらの手紙から始まります。
親愛なるさえらへ
きみの大きな木より
内モンゴルでナラ、ボルネオでマングローブ
アマゾンで密林の研究をする木のおじさん。
さえらは5月、おじいさんが作ってくれた「さえらの小さな庭」にひまわりの種を植えます。
なんとさえらのおじいさんは庭師なのです。
きょねんパリで木の先生といっしょに育てたひまわりのように大きな花が咲くといいな。
「大きな木のような人」ではソフィーとおじさんにひまわりの種をもらい、咲いた花を届けたソフィー。小さく描かれたその黄色がひときわ印象に残ってます。
さて、10月、ちんじゅの森のお祭りの日、おじさんはついに来日を果たします。抱きつくさえら。ちょっと感動。やはりホームの日本ではさえらに自然な笑顔が目立ちます。
おじいさんの案内でさえらと杉並木の街道を歩く木のおじさん。和歌山・高野山の奥の院に続く道を思い出します。スケールの大きい、自分がミニチュアになってしまったような巨木の列、その上に白く光が見える。壮大な風景、なのにいせさんの絵はどこかコンパクトな印象を与えます。
かつて松尾芭蕉も新緑の季節に通ったとかで旅僧姿の2人、芭蕉と曾良でしょうか、一方は杖をついています、を緑と青、白の光が鮮やかな中に薄鼠の衣の人と強い印象を投げかけるページ。
それをめくると、現実は一気に秋深まりつつある祭りの準備。引いて練り歩くいわゆる屋台の製作中。森の木の葉の黄色、龍の彫刻の木目、さらに鳳凰は赤。この場面転換の素晴らしさ、熟練を感じさせるヴィヴィッドさにはやられました。
手古舞の衣装に身を包んだ可愛らしいさえら。完成した屋台は金と木目と黒、そして屋根の下などの暗部は魅惑の紫色。効いています。屋台は綱を引き、屋根の上には若者が立って踏ん張り、巡行を盛り上げます。
暮れ方、おはやし、灯火、龍に鳳凰、火の鳥ー
祭りのイメージはシンプル。想像力をかき立てます。
ちんじゅの森の夜の濃紺の下で祭りの赤が映えます。
我が家の地元の祭りも、よく似ています。隣が巡行のゴールとなる神社だったこともあり、秋になればお囃子の練習、本番クライマックスは神社で、大勢の見物人が見守る中、屋台はぐるぐる回る、よく聞き取れなかったけれど、掛け声が変わり
「まっせえこんかい!」
雄叫びのようなものを数回上げて終わりとなっていました。
祭りの後。寝てしまったさえらをおんぶするおじさん。物語の途中にはヒノキは柱に、カシは車に、ヤナギ、トチ、イチョウは彫刻にと恵みの活かし方に触れられています。「チェロの木」という作品にも、楽器の素材となる木、森の描写があり、いせさんらしいな、と考えます。
思い返せば、宮沢賢治「水仙月の四日」をはじめとしていせさんは決して和を描かない人ではないのでした。でもここ最近読んだ本のイメージで意識がヨーロッパに行っていて、音楽でいう転調のようなものを勝手に自分の心の中で味わっちゃいました笑。それにしても、今作でヨーロッパと日本の秋、土着の祭りをつなぎ見事に描き出した技には脱帽でした。
この連作はまだ続きがあるのだろうか?いまは知らない方がいいと感じています。
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