2017年12月1日金曜日

11月書評の4

東京出張2週連続。やはり6年居た身としては色々回りたい。今回は竹馬の友と会えたし、ご飯も美味しかったが少々散財した。^_^

Eiko「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」

いやー電子書籍であっという間に完読。まじめにやろうっと。

ヨガ・インストラクターの著者が、4週間で開脚できるようになるというストレッチの方法をビジュアルで解説、またその内容を盛り込んだビジネスマン・ビジネスウーマン小説を執筆している。

私は、この本で開脚ブームが起こってしばらくした頃、緩んできた身体のケアとして開脚柔軟を始めた。まだ10ヶ月ほどだが、酒を飲んだ時、体調が悪い時以外は毎日やっている。著者のストレッチはwebでも見ることができたから、一部を見よう見まね、あとはオリジナルの方法で続けているが、まだ全然開かない。20度くらいは改善して、でもまだ120度ほど。

うーむと思っていた時に、電子書籍アプリで無料購読のお知らせが来たから飛びついて読んでみた。

改めて読んでみると、やはり自分のやり方は甘いんじゃないかと痛感。形を見直してまたトライし続けなきゃね。複雑なことは一切書いてなく、いくつかのストレッチだけ。シンプルで、だからいいのかも知れない。

でも開脚を始めてからの、最初は続けるのがちょっと大変な部分、進歩し始めてからのやる気は少しだけ共感できた。いま私も、だいぶ前には倒れるようになっている。肘もつくことができる。あとは脚を開くだけだーってそれが一番難しくかつ達成しなきゃいけない目的なんだけど。。次は135度を目標にまたがんばろう。

篠宮あすか「あやかし屋台なごみ亭」

福岡生まれの著者、「太宰府オルゴール堂」に続き、今度は中洲の屋台を舞台にして描くあやかしもの。

金曜日だけ開店する屋台、なごみ亭ー。26才の女店主・椎葉なごみが作る料理を、狐のあやかし・コンが連れてきたワケありの客が食べる。そこには切実な理由があった。20才の木戸浩平はある日、目覚めた時部屋にいたコンに連れられ、なごみ亭で働くようになる。

前に、太宰府というローカルな懐かしいエリアを小説に取り挙げてくれて嬉しいと思ったが、今回は屋台。しかもこちらはシリーズ化しているようだ。屋台は大学の4年間くらいしか行かなかったが、やはり懐かしい。「ともちゃん」また行って焼き鳥にラーメン食べたいなっと。

さて、今回はあやかし。あんまり悲惨すぎることはないけれどそれぞれに切ない事情。しっぽりとした風情が街の屋台に似合う。登場人物の関係性のコミカルさ加減とバランスが取れている。

ただ前作でも思ったが、ちょっと抜けたような雰囲気の部分もあるなあ、と。もう少し詰めても良さそうな気もする。

さて、物語は博多弁である。私は地元にいた頃、かなりベタな博多弁の中にいたという自覚がある。「ちゃ」がやたらと入る。浩平の博多弁もそうなのだが、この年代の男子はここまでベタな博多弁は話さない、という感覚がある。どうなんだろか。

また「ちかっぱ」(思いっきり、めっちゃなどの意)などという言葉が、ラノベとはいえ小説のセリフになっていることはちょっと驚いたりする。

私の世代では古い博多弁「つやーに」(キザな、カッコつけてさっという意)、「しろしか」(うっとおしい)、なんかは消えかかっていて、それこそ「ちかっぱい」などの言葉が出てきたくらいかと感じていた。浩平のベタな博多弁は強調するためにあえてそうしているのか、新しいのか古いのか、さすがにもう分かんない。

題材GOOD。シリーズ次作も探して読もう。

柴崎友香「その街の今は」

京都で本屋巡りをした時、ミョーに興味を惹かれた柴崎友香。大阪の街を楽しめる作品。

ハズレの合コンの帰り、クラブに寄った歌子は、友達の友達である良太郎と酔った勢いでベタベタし、メアドを交換する。翌日、一緒にいた友人の智佐に様子を聞かされるも、前夜の記憶がなかった歌子だったが、アルバイトをする喫茶店に、良太郎が現れるー。

出だしはかなり軽めだし、全編にわたってフツーの20代後半女子、という感覚に貫かれている。歌子の目から見て感じることが主で、大阪で生まれ育った歌子が、街の古い写真が好きなこと、が副菜としてこの物語に彩りと深さを与えている。

名前はもちろん知らないわけではなかったが、興味を抱いたのは、先日京都のセレクトブックショップに行って興味を惹かれたからだ。「ビリジアン」という作品を○○氏が絶賛!と書いた帯だった。どうも女子系のようだ、と目を留めた。後日地元で買うときに、芥川賞受賞の「夏の庭」と本作とどちらにしようか迷ったが、先に織田作之助賞などの賞を獲得し、ブレイクしたのがこっちじゃないかな~と勝手に思い買ったが、正解のような気がしている。

過去の街の写真が好きで、そこに時代性を感じるのは、面白い発想である。先に書いた軽い日常や20代後半にしては薄い恋愛の状況と、高齢の方の話や古い写真の探訪は、控えめに表現される地元愛とともに興味深い対比として心をくすぐる。関西在住として描かれているミナミの光景がよくわかるだけに、より面白かった。安心して読める物語だ。

純文学的とはいえ、も少し心を動かすところがあってもいいとは思う。が、他の作品ではどんなストーリーの展開をしているんだろうと興味が湧いた。もっと読んでみよう。

森鴎外「山椒大夫・高瀬舟」

教科書には載ってたけれど、ちゃんと読むのは初めての森鷗外。さてさて入門編。

平安時代末期、筑紫へ左遷され帰ってこない夫を探すため妻と安寿、厨子王の姉弟、女中の4人は旅に出るが越後直江の浦で悪い人買いに騙され、姉弟は丹後由良の山椒大夫の奴婢となる。ある日姉の安寿は厨子王と一緒に山へ柴刈りに行きたいと申し出、認められるー。
(「山椒大夫」)

「山椒大夫」「魚玄機」「じいさんばあさん」「最後の一句」「高瀬舟」「寒山拾得」が収録されている。昭和13年、1938年出版の短編集で、解説は斎藤茂吉さんである。いやー文学史。「山椒大夫」が発表されたのは1915年。森鷗外晩年で、歴史ものをよく書いていた頃の作品だそうだ。

なにぶんすべて短い。最も長い山椒大夫が46ページである。14ページのものもある。伝聞調の感じのものがほとんどで、日本の江戸時代や、唐の長安の話まである。えっこれで終わりー?という話も正直あるが、短い中にエッセンスが詰まっているな、というのが感想だ。

安寿の一計を知った時、その前の彼女の振る舞いを思って胸を締め付けられるし、「魚玄機」は難しくてもひとつ分からないながら、天才女詩人の行く末に感じるものがあるし、「じいさんばあさん」「最後の一句」もけなげさと凛とした部分に惹かれる。ここまではすべて女性が主役である。

「高瀬舟」も昔教科書で読んだ通り印象的だ。

森鷗外は有名な作品がたくさんあり、ここでどうと言ってしまえないが、歴史ものには、一瞬の光を感じさせる描き方がある、というのはひとつ体得した。さてさて他も読んでみようかな。

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