2017年12月29日金曜日

私的読書大賞2017 各賞発表!

今年もテキトーに作った(笑)各賞の発表。ランキングは通年ですが、各賞は下半期(7~12月)に読んだ作品が対象です。


◆表紙賞

ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」

表紙ではなく表紙の見返しの著者近影、の美貌に目が眩んで買いました。ふふっ。まあこういうのもありかと。。一種のジャケ買いですな笑。著者近影は↓↓↓


◆福岡県知事に成り代わって感謝賞


篠宮あすか

「太宰府オルゴール堂  独身貴族の探偵帳」

「あやかし屋台なごみ亭」


表彰状。篠宮あすか殿

あなたは、われわれの故郷、福岡を舞台にしたライトノベルで、懐かしい街、言葉、食べ物などを取り挙げ、物語の中で秀逸に描写されました。特に太宰府という、福岡市南部および筑紫地区の人々の心の拠り所のひとつである太宰府天満宮ならびにその界隈をベースとした小説を創作されたことは、白眉の所業であります。よってここに表彰します。もっともっと描いてわれわれを楽しませてください。


◆日本の誉れ賞

山根一眞

「スーパー望遠鏡アルマの創造者たち」


自分への誕生日プレゼント、などと思いながら買った本。いやー、日本の技術力は素晴らしい。興奮したな。


◆本好き賞


井上靖「天平の甍」


私は今年途中から2つの書評サイトに投稿しているが、それぞれ利用者の好みがあるようでなかなか面白い。で、片方で最も得票が多かったのがこの作品。鑑真が過ごした、奈良・唐招提寺の売店で、抹香の香り付きの文庫を買って、浸って読んだなあ。ってこの本だけ上半期です。


◆読メ賞


恩田陸「蜜蜂と遠雷」


いわばMIP(最も印象に残った)賞。もうひとつの書評サイトでもっとも「いいね」が多かったのがこの作品。投稿直後からけっこうな勢いで増えた。表紙も明るくていいし、タイトルも良し、内容の充実と透明感。受賞作の違いがサイトの特徴の違いを表してます。


◆特別賞  カズオ・イシグロ

「遠いやまなみの光」「浮世の画家」


このノーベル文学賞は、明るくビビッドなニュースとして取り挙げられた。多くの人が、日本でドラマにもなった「わたしを離さないで」を知っていたからだと思われる。日本を舞台にした初期2作は、イギリスに舞台を替えブッカー賞を取った「日の名残り」に繋がっている。まだファンタジー色がないころのお話。ノーベル賞発表直後の土日に本屋に行って訊いたら、全くないとのことだった。これも思い出よね、本読みの。


◆シェイクスピアと太宰治賞

「マクベス」と「斜陽」


「マクベス」は、魔女のそそのかしが結構好きである。シェイクスピア6冊読み「リア王」も良かったし、「オセロ」は悪役のワルさに感心したが、夫婦ともに夢を見て、転落していく部分に惹かれたかな。

「斜陽」は戦争が終わって元華族が落ちぶれて・・という話。内容からすると「走れメロス」というタイトルの短編集が「女生徒」やら「富嶽百景」「駈込み訴へ」が入ってて明るい精神安定時代を象徴しているのだが、「斜陽」は心を動かされた、という感がある。


◆ドキュメント賞


井口俊英「告白」


大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件の際、顔写真も古いものしか出ず、謎に包まれていた当事者。その逐一の告白を読んで、古い本ながら、ある種の感慨を覚えた。リスク管理的にも、間接的に社会に影響を与えた作品。読み物としても興味深かった。


これでご報告は終わり。いまゆっくりと次の本を読んでいる。ここから2018年モード。なんか信じられないな。


書評をお読みいただいた皆さまに感謝。いつもありがとうございます。来年もよろしくです。







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私的読書大賞・ランキング2017!

毎年恒例の、私的読書大賞。7年目を迎えました。


ここまで6年間のグランプリは、


2011年   北村薫「リセット」

2012年   熊谷達也「邂逅の森」

2013年   藤原伊織「テロリストのパラソル」

2014年   朝井まかて「恋歌(れんか)」

2015年  朝井リョウ「何者」

2016年  宮下奈都「終わらない歌」


実に6年で4つが直木賞。権威主義です(笑)。


さて、今年は171作品171冊読みました。史上最高。さすがに我ながら多いなあと思います(笑)。


グランプリの選考、かなり迷いました。まあともかくも発表しちゃいましょう。


2017年のグランプリは・・


東山彰良「流」


でした!戦後の台湾を舞台に、日本統治時代のこと、本省人と外省人といった興味を喚起することから、軍隊生活、初恋、幽霊にハチャメチャな行動など、たくさんのエッセンスを詰め込み、活き活きと描いている。まるで喧騒が聴こえてきそうな感覚を味わった。


恩田陸「蜜蜂と遠雷」とどちらにしようかというところだったが、これまで経験したことのない印象を抱いた「流」にした。上半期1位の伊坂幸太郎「サブマリン」も良く、逆に考えるのが楽しかった今年。


今回も直木賞受賞作。いやー権威主義です。


さて、では年間ランキング!


1位  恩田陸「蜜蜂と遠雷」

2位  伊坂幸太郎「サブマリン」

3位  ブッツァーティ「タタール人の砂漠」

4位   井上靖「天平の甍」

5位   あさのあつこ「弥勒の月」


6位  豊島ミホ「エバーグリーン」

7位 森絵都「つきのふね」

8位 木下正輝「宇喜多の捨て嫁」

9位 島尾ミホ「海辺の生と死」

10位 絲山秋子「沖で待つ」


11位 ジェイムズ・パトリック・ホーガン

       「星を継ぐもの」

12位 ミヒャエル・エンデ「モモ」

13位 ドリアン助川「あん」

14位 敷村良子「がんばっていきまっしょい」

15位 オルハン・パムク「私の名は赤」


16位 加藤陽子「それでも、日本人は 『戦争 』を選んだ」

17位  ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」

18位  太宰治「斜陽」

19位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」

20位 湊かなえ「山女日記」


去年の今頃も来年は読むペースを落とそう、と言ってて、結局40冊も増えちまいました。まあ太宰とかシェイクスピアとか、薄い本も多かったんだけど。来年は140くらいで。


まずは山のように借りてきた、正月読書から。さあ、来年も、読むぞ。




2017年12月25日月曜日

年末感2

大阪市中央公会堂のプロジェクションマッピングを観てきた。その前は中之島図書館のオシャレな喫茶店でコーヒー。いわゆるおひやがフルーツ風味か野菜風味か選べるところで、フレッシュは牛乳で、GOODだった。

まだ、20代の頃私は2年近くこの界隈に出勤していたから懐かしい。プロジェクションマッピングを観ようと、人がたくさんいて、露店も出ていて、ちょっとした冬夜のお祭り感を味わえた。

年末感というよりはクリスマス感かもね。忘年会もあって、明るく楽しく過ごした。

いよいよのクリスマス前週末。

「オリエント急行殺人事件」「ゴッホ 最後の手紙」を観に行った。12月は多め。

オリエントはケネス・ブラナーが監督・主演で名作を撮り直したもの。原作からかなり演出的でもあり、やっぱ派手なとこはハデにしないと、みたいな感じだった。

列車というごく狭い中での事件、というのは強調されていて、それは良かった。だが、演出もいくつかはうーんというものがあった。そりゃ、事実は出揃っていて、あとはどう推理するか、というミステリー小説の常套の雰囲気は映画では出せないものではあるけどね。

ネタバレだけど、例えば終盤、女性客が刺されるのは不要、意味がない。やるならもっと前に入れて煽るべき。外の裁判のような感じも、だいぶ・・。ラストは原作を生かして欲しかったな、と思う。

ゴッホは、世にも手間をかけた作風だった。先に俳優の動きと台詞を撮影しておき、それをゴッホのタッチでアニメーション化、背景はすべて絵で付ける。そのためにオーディションで合格した画家にゴッホ風の絵を6万点以上描いてもらったという、ものすごい労働力のかかった感じの創り方。途中で挟まる回想シーンだけは実写のモノクロ。多少加工してある。話の筋がけっこう良くて、いいドラマだった。

ゴッホの絵に登場するヒゲの郵便局長、その息子(幼子で絵画にも登場している)がゴッホから弟テオに宛てた手紙を渡すべき相手を探す旅である。絵の具屋のタンギー爺さん、医師ガシェ、ガシェの娘マルグリット、下宿屋の娘、など絵のモチーフとなった人々が登場し、また背景はゴッホの描いた農村や池の風景を動かしている。

路地裏のサンドイッチ専門カフェでランチ食べながらパンフを読み込む。新手法だわ。なかなか出来ない。採算取れないでしょ。勉強させてもらいました。ひとつクレームを。

前も言ったことはあるが、webの公式サイトに載せてあることとパンフの内容が同じというのは承服しかねる。こちらはたったあれだけの情報だけど値段が高いと思うものを買っている。そこに載っていることを無料で公開するのは無神経だと思う。違うだろうか?

土曜は髪切ってブックオフ、日曜日クリスマスイブは神戸ハーバーランドのスポーツゼビオに左投手用グラブを買いに行った。ミズノのマークがカッコいい柔らかい黒のグラブ。ホントは青が欲しかったようだが左は少ないから選択肢があまりなく、あきらめた。

帰りに南京町寄って軽く昼食。私が豚まんに鶏皮ぎょうざに角煮バーガーにごま団子、息子は豚まん2個と唐揚げ串。しめて1230円なり。やっぱ南京町食べ歩きは楽しいな。アニメイト寄って帰る。

晩はローストチキン、ローストビーフ等々クリスマスメニューで腹いっぱい食べた。もはや我が家はノンアルコールで、一瞬スパークリングワインかと思ったらグレープジュースだった。

これで終了。次は年末モードだ。

2017年12月17日日曜日

年末感をこれで知る

今週は比較的飲み会のある週。焼肉ーカラオケと、焼き鳥と日本酒の品のいい店。サプライズもあって楽しかった。この季節はにごり酒が美味しくて大好きである。

私は普段はほぼアルコールを飲まない生活をしている。またここのところ毎日、開脚柔軟に筋トレをしている。食事もあまりカロリーの高いものは家でも食べていない。なので飲みに行くとパターンが狂って体調にほんのちょっとだが差し障りがある。そんな時はあーもう禁酒しようかな、とも思ったりする。でも、そもそも飲む全体量と機会が少ないから禁酒といっても意味がない。もひとつ、美味しいお酒もあるからやっぱやめられない。

今年のふたご座流星群は飲み会と重なり観測できなかった。

筋トレ2日サボった分を週末でなんとか取り戻し、また調子出てきたかな、と思った頃に飲み会。年末はこの繰り返しである。

土曜日、ブックオフに息子がついてくると言ったので久々に2人で外出。ぼそぼそ野球の話題なんかを話しながら行く。マスクを忘れて寒そうだったので、100円ショップでフード付きのネックウォーマー買ってやる。よく似合う。生意気な年頃の子供風味満載だ。ブラックサンダー(チョコ菓子)も買って食べていた。

ブックオフで主に新刊で購入したのを売る。大した値段にはならない。ホント必ずご不要の本ありましたらぜひお持ちくださいというくせに安い。そんでちょっと分厚かったり新しいのは510円とかで売る。私の重松清「赤ヘル1975」なんかは100円くらいだったがやはり500円とかで売るんだろう。今回一番高かったのはガブリエル・ガルシア・マルケスの130円くらいで、高いかと思った稲垣足穂は一番安かった。またお持ちください、と言われたので、そこはおっさん、「高う買ってやー」と若者店員に言い返した。

本棚破綻してるので、数を減らさなきゃならないし、またすぐ来るだろう。継続が大事だ。

パパ缶コーヒー買って、息子はいちごヨーグルト飲む。帰りのブックファーストで「ダイヤのAact2」の10巻買った。

中央図書館まで歩き、借りていた「オリエント急行の殺人」「タタール人の砂漠」を返す。名作だった。そんで、シャーロッキアンものとデアンドリアという人の「ホッグ連続殺人」借りて帰る。ホッグは書庫から持ってきてもらったのだが、相当にボロボロで、変色しまくっていた。まあ読めるからと借りてきた。帰りにまた息子は自販機でペットボトルのレモンソーダを買う。そういやこの種類はお気に入りで、ママに知られないように空ボトルをいくつもとっておいてると言っていたがまだ続いてるんだろうか。

家に帰ってピラフ食べてしばし読書。ワンコと一緒。息子もくっついてくる。夕方から妻子はインフルエンザの予防接種。パパはワンコの散歩。

サッカーE-1の男子優勝決定戦は1-4で惨敗。相手も国内組なのだろうが、こないだまで神戸にいたチョン・ウヨンまた懐かしいイ・グノなんかがいて、強かった。続いて「守り人」をテレビで観て筋トレして風呂入ってちょっと本読んで寝た。

土曜の夜ふかし。金曜は会社生活延長で早々に眠たくなるが、土曜の夜はそうでもない。まったくサタデーナイトほど解放された気分になるものはない。

日曜日は日がな1日家にいる。息子は部活、ママはお出かけ。午前からハンカチとワイシャツにアイロンをかけ、自分の部屋を掃除、毎週のシェーバー掃除。ワンコに餌やって、自分はカップ焼きそばにおにぎり、ちくわにコロッケの昼食。そのうち息子が帰ってきた。2人とワンコ2頭でまったり。外寒そうなので完璧な防寒対策のカッコをして4時にクッキーを散歩に連れ出すもすぐママ帰還。クッキーがママから離れたがらず散歩は10分くらいで終了。

読書の進まない週末。こんな時もあるものだ。年内も残り少なし。計画的に。

2017年12月11日月曜日

冬寒

週半ばからぐっと寒くなった。最低2度、最高10度くらいで朝寒い。スーツもコートも真冬仕様に変えた。まあまだ寒くなるのだろうが。

で、ムクムクしたコートを着る時、昨年まではパンパンでちょっときついな、と思っていたものがスッと入ったから、あれ?とまず思い、その後そうか、痩せたんだ、と納得した。

開脚柔軟から始めたのが今年の2月。腹筋し始めたのが4月くらい。体型は確実に変わった。腹筋と背筋が引き締まり、ウエストもベルト穴1つ分は確実に減った。しかし体重が減らないという矛盾?に苦しんでいる。実際は約3キロ減ってて、そこから踊り場状態。もう3キロくらいは楽勝でマイナスかと思っていたがおぼつかない。ボクサーの人って大変だなあーとアホな考え方に陥ってしまう。

どうも脇腹のぜい肉がもひとつ締まらないので、webで調べてさらなるトレーニングを投入。30回×3セット追加。通常の腹筋の反対で、仰向けに寝た体勢から脚を片方ずつ上げ、右肘と左膝が触れ合うように(実際にはガツン、とぶつかる感じになるのだが)上体も動かす。やってみると、たしかにこれまでにない、腹の内側の筋肉に疲れがある。腹筋パートが一気にキツくなった(笑)。まあこれを数ヶ月やってみてまた様子見だ。

さて、今週の土日もフツーに地元である。1週間前くらいに熱を出していた息子が金曜、学校から帰ってまた高熱。39度。そりゃだいじょうぶだろうとは思うが、ひさびさに夜は看病、つっても一緒に寝ただけだが。小さい頃はよく夫婦交代で徹夜看病したもんだ。

誰でも、病気で弱っている時、夜は寂しい。息子を見ていると、普段でもまだ独り寝に不安を感じる時があるようだ。だから安心して寝るようにしてあげたい。翌朝土曜日熱は下がって、期末テストに出かけて行った。

私は午前中珍しくやる気を出してYシャツアイロンとシェーバーの掃除を済ます。午後から歯医者。もう寒いからぶ厚いダウン。昨年まで窮屈感あったやつが楽になってたから、また体型の変化を実感した。歯医者はこの日で終了。先生に歯みがきよく頑張ってますね、とホメられめっちゃ嬉しい。

帰りに100円ショップで、靴下と手袋、お菓子類買う。また薬屋で期限が切れていたヴェポラップ買う。これから季節だ。

帰ってワンコを散歩に連れ出す。病院に行ってた息子の言うことには、溶連菌感染症。のどが腫れて熱が出ているとのこと。webで調べると子どもに多い感染症で、薬を飲み続けないと合併症が怖いそうだ。飛沫感染もする。ただ薬の服用後24時間で登校はしてもいいらしい。高熱でフラフラしてたが、うどんとパンを食べてなんとか薬を飲む息子。頭痛い、と言ってるから少し心配である。早めに寝に行かせ、パパはグランプリファイナル女子。確かに上位陣は悪くなかった。しかし、宮原知子の演技はほぼパーフェクトだったのにえらい点が低いな、と思った。まあ宮原は腰のポジジョンがよく、指先に至るまで気を遣う、教科書的なスケーティングなので、逆にジャンプの時に片手なり両手を上げて跳んだりするザキトワらと比べてハデさが少ない。また小さいぶん、どうしても演技の見ばえに差が出てしまう。うーむ3位くらいはいくかと思ったがまさかの5位だった。

それから「守り人」を観て、筋トレして風呂入って歯みがきして寝た。息子の部屋をのぞくと、この日はぐっすり寝てたので別に寝る。

日曜日は早起きしてブックオフ。バッグだと5、6冊しか持っていけないが、それでも売りに出さないと、本棚が限界に近い。次週土日はどちらも行くのを目標に。

あんまり買うのがなかったが、一冊ずっと探してたのがいきなり見つかり嬉しく帰る。家ではブッツァーティ「タタール人の砂漠」を読了。いやー人生とは。こたえたなあ。名作です。

父親から送ってきた柿をむいて食べる。またこんなデカいのをたくさん送ってから。食べ切れない。

フィギュアグランプリファイナルのエキシビションを見た。ジュニアの紀平は体格が大きく筋肉があり、正統派の美人タイプか。ダンスも習っているということで、表情も含めて表現力があればいいなと思う。世界初のトリプルアクセルートリプルループに表現力がつけば最強だろう。

まだ15才で平昌オリンピックには出ることはできないが、その次は19才。主力となる。その頃はまたフィギュアの勢力図も変わっているんだろうか。そんなことを思っていた。

2017年12月6日水曜日

穏冬始

もう12月となり、まだ紅葉は残っているが、冬の入り口は顔を見せている。とはいえまだ穏やかだ。最高気温は14度くらい、最低は低くて5度くらい。

先々週は京都夜飲み、先週は東京だったから、3週ぶりに土日どちらも家にいる週末。

土曜日は午前寝て、午後は歯医者に行っだだけ。ワンコの散歩をしておしまい。長野まゆみ「夏帽子」読了。

日曜日は朝に下って、図書館。本当はデアンドリアという人の「ホッグ連続殺人」というのを借りようと思ったのだが、折しももうすぐ映画公開、アガサの「オリエント急行の殺人」が目に入り、また近くに、前々から興味のあった「タタール人の砂漠」があったからその2冊を借りてきた。しばらく岡本太郎「青春ピカソ」読んで出てくる。この日に読了。

川沿いの遊歩道は穏やかだ。風が吹くと冷ためではあるが、ライトダウンひとつで十分すぎる。落葉も始まり、いい風情である。

バスで山へ登る。こないだ京都に行ったけれど、私があまり紅葉に興味が湧かないのは、常に紅葉に囲まれているからだと思う。昼に帰り着き、ボンカレーの昼ごはん。

この日はM-1グランプリの日。午後は敗者復活戦見て過ごし、本番までにワイシャツのアイロンかけを終わらせた。

いよいよ決勝。今回から順番はその場で決める。敗者復活はスーパーマラドーナに決定。2位のハライチと大差だった。敗者復活戦20組の中では、南海キャンディーズ、アインシュタイン、相席スタート、そしてスーパーマラドーナがうまく面白くまとめていたからどれかだろうと思ったら当たった。

1番となったゆにばーすは知らなかったが、かなり笑えた。すでにブレイクしてしまったかも?2番のカミナリ。審査員に叩かないほうがいいと言われ困惑。笑いきれない感じだった。

面白かったのは3年めだという「さや香」。単純というかベタな漫才だったが一番笑えた。優勝候補の一角、かまいたちはもうひとつかな・・。キングオブコントの1本目は作り込まれてて素晴らしかったが、今回はあまり執着を感じず。スーパーマラドーナは安定の面白さだと思う。

順位の入れ替えが起こる。今回はミキ、和牛、ジャルジャルの実力派が後に残った。ミキは初めて。面白いが、うーん。和牛のネタは素晴らしかったと思う。ブライダル企画のお話。ジャルジャルは無手勝流、というか得意の言葉ネタというか、創作もの。笑えたが、得点伸びず。

決勝は和牛、ミキ、とろサーモンとなった。んー、スーパーマラドーナかかまいたち残しといても良かったかな・・。最終的に優勝はとろサーモン。

いつも思うが、2本のネタをやって笑いを取るのは難しい。10組中3組に残らなければいけない。みな1本目に練りこんだネタを持ってくる。そのぶんかどうかは分からないが、2本目のネタは、見ている方は差を感じてしまう時がある。審査員はひねりやたたみかけなども見ているようだし、そうそうは続かないなと思ってしまう。

まあ、今年も、緊張感あふれるお笑いを楽しめて満足。

毎年のイベント。来年も楽しみだ。

2017年12月1日金曜日

11月書評の5

改めて今月はよく読んだ。19作品19冊。東京にいたころ、初めて単月10冊を超えて驚いたことが嘘のよう。トータルもおそらく新記録。来月末には年間ランキング!


あさのあつこ「夜叉桜」


時代劇シリーズ第2弾。鬱屈しているが、キレが素晴らしい。探して揃えようと思ってたら、文芸仲間の後輩が全部持ってますよ、と。めっちゃありがたい。


女郎が立て続けに殺された。喉を一斬りの手口で、同一犯と思われた。同心木暮信次郎と岡っ引の伊佐治は、新たな犠牲者が遠野屋の簪(かんざし)を持っていたことから、遠野屋の主人でもと武士の清之介を訪ねる。


いつもながら、世を倦み鬱屈した感情を暴走させがちな信次郎と、かつて人を殺めた凄腕の遠野屋清之介、そして間に入る伊佐治のバランスは素晴らしい。そして人の世の複雑さとやりきれない業の中にうごめく闇を正面から見つめた構成は息をもつかせぬ筆致を見せる。いやーアダルトで魅力的なエンタテインメントである。


貸してくれた後輩は、救いがないと、あまりいい感触を持ってないようにも見えたが、私はその部分に惹かれ、物語世界に入り込む。不思議な感覚だ。全体に暗いが、ただ予定調和で終わるものではない残滓があり、たまから、最後の光は、よく考えられた、よき展開だと思った。


いいですね。


鎮勝也「君は山口高志を見たか」


輝いた時期は短い。しかしちょうど記憶に残る豪速球。あのころの阪急はホントに強かった。


阪急ブレーブスに1975年から82年まで在籍した剛球投手、山口高志。プロ入り後、導入されたばかりのスピードガンでは153キロだった。しかし最も早かったという大学生時代は160キロは出ていたのでは、というくらい早かったという。


生い立ち、経歴を追った内容になっている。高校時代、ブレイクした関大時代、今でいえばドラフトの目玉的存在だったのに大学卒業時にはプロ入りを拒否したこと、社会人からの遅いプロ野球入り、それからの目覚ましい活躍、引退、指導者への転身。折々の出来事について、山口から聞いた短い一言とともに綴られる。滲み出るのは、良き人柄だ。そういう構成にして、伝えたいことを分かりやすく出している。


私は長嶋巨人1年目からプロ野球に興味が出て、阪急ブレーブスが日本シリーズで広島、巨人を倒すのをテレビで見て、その強さに感嘆していた。役者が揃っている。盗塁王福本、大熊、加藤、マルカーノ、DHの印象が強い高井、長池、ヒゲの森本、キャッチャー中沢、ショート守備職人大橋。投手も、足立、山田久志の両アンダースローに憧れ、山口には、なんて速い球を投げるんだと驚いた覚えがある。


1976年の日本シリーズで出て来たばかりの簑田が、上手いスライディングで生還したシーンはよく覚えている。そんな、昔の思い出が詰まった本でもある。


豪速球投手は見てみたいものだ。私が見たかったのは、最速時代の江夏や鈴木啓示、栃木大会5試合でヒットをほとんど打たれなかったという高校時代の江川卓。山口の記憶があるのは喜ばしいと思う。


語ってると長くなる(笑)。ともかく、先発、リリーフにフル回転という当時の風潮、当時のプロ野球チーム、選手たちも含めて楽しめる本だ。福岡人としては、平和台が荒れていた、という感想も懐かしい。小学生の頃観に行った試合では、ヤジが汚くて、ロッテの金田監督に、観客が水をかけて言い合いのケンカになっていた。


ちょっと記録偏重な感じや、切り口がまっすぐ過ぎるところ、新聞表記の野球用語(「左越え」とか)なんかはんーと思うが、全体として楽しめた本だった。


望月麻衣「京都寺町三条のホームズ7 

                  贋作師と声なき依頼」


今回はひとつの区切りの巻。ラノベは文化。引き込まれて読んでしまった。


寺町三条の骨董品店「蔵」のホームズこと家頭清貴とその彼女で蔵のバイト女子高生・真城葵。ある日蔵に、贋作師でホームズの仇敵・円生が訪ねてくる。かれは白磁の香合を出してホームズに鑑定してほしい、と頼んだがー。


かつて何度も真贋を見極める「対決」をし、犯罪にも手を染める仇敵。2人の間には厳しい緊張感が漂い、時には身体で闘う。そんな2人は似た者同士で互いに嫉妬している。その両人の関係性に変化のある巻。


ちょっと一方的観点かもしれない。円生が妙に弱気でもあるし。ただ謎解きは面白く、グイグイと読む者を引き込む。いやーラノベは文化だなあ。栞子さんも面白かったし。


今回も高桐院行きたくなったし、松風食べてみたくなった。


区切りとはいえシリーズはまだ続く。まだまだ楽しめそうだ。





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11月書評の4

東京出張2週連続。やはり6年居た身としては色々回りたい。今回は竹馬の友と会えたし、ご飯も美味しかったが少々散財した。^_^

Eiko「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」

いやー電子書籍であっという間に完読。まじめにやろうっと。

ヨガ・インストラクターの著者が、4週間で開脚できるようになるというストレッチの方法をビジュアルで解説、またその内容を盛り込んだビジネスマン・ビジネスウーマン小説を執筆している。

私は、この本で開脚ブームが起こってしばらくした頃、緩んできた身体のケアとして開脚柔軟を始めた。まだ10ヶ月ほどだが、酒を飲んだ時、体調が悪い時以外は毎日やっている。著者のストレッチはwebでも見ることができたから、一部を見よう見まね、あとはオリジナルの方法で続けているが、まだ全然開かない。20度くらいは改善して、でもまだ120度ほど。

うーむと思っていた時に、電子書籍アプリで無料購読のお知らせが来たから飛びついて読んでみた。

改めて読んでみると、やはり自分のやり方は甘いんじゃないかと痛感。形を見直してまたトライし続けなきゃね。複雑なことは一切書いてなく、いくつかのストレッチだけ。シンプルで、だからいいのかも知れない。

でも開脚を始めてからの、最初は続けるのがちょっと大変な部分、進歩し始めてからのやる気は少しだけ共感できた。いま私も、だいぶ前には倒れるようになっている。肘もつくことができる。あとは脚を開くだけだーってそれが一番難しくかつ達成しなきゃいけない目的なんだけど。。次は135度を目標にまたがんばろう。

篠宮あすか「あやかし屋台なごみ亭」

福岡生まれの著者、「太宰府オルゴール堂」に続き、今度は中洲の屋台を舞台にして描くあやかしもの。

金曜日だけ開店する屋台、なごみ亭ー。26才の女店主・椎葉なごみが作る料理を、狐のあやかし・コンが連れてきたワケありの客が食べる。そこには切実な理由があった。20才の木戸浩平はある日、目覚めた時部屋にいたコンに連れられ、なごみ亭で働くようになる。

前に、太宰府というローカルな懐かしいエリアを小説に取り挙げてくれて嬉しいと思ったが、今回は屋台。しかもこちらはシリーズ化しているようだ。屋台は大学の4年間くらいしか行かなかったが、やはり懐かしい。「ともちゃん」また行って焼き鳥にラーメン食べたいなっと。

さて、今回はあやかし。あんまり悲惨すぎることはないけれどそれぞれに切ない事情。しっぽりとした風情が街の屋台に似合う。登場人物の関係性のコミカルさ加減とバランスが取れている。

ただ前作でも思ったが、ちょっと抜けたような雰囲気の部分もあるなあ、と。もう少し詰めても良さそうな気もする。

さて、物語は博多弁である。私は地元にいた頃、かなりベタな博多弁の中にいたという自覚がある。「ちゃ」がやたらと入る。浩平の博多弁もそうなのだが、この年代の男子はここまでベタな博多弁は話さない、という感覚がある。どうなんだろか。

また「ちかっぱ」(思いっきり、めっちゃなどの意)などという言葉が、ラノベとはいえ小説のセリフになっていることはちょっと驚いたりする。

私の世代では古い博多弁「つやーに」(キザな、カッコつけてさっという意)、「しろしか」(うっとおしい)、なんかは消えかかっていて、それこそ「ちかっぱい」などの言葉が出てきたくらいかと感じていた。浩平のベタな博多弁は強調するためにあえてそうしているのか、新しいのか古いのか、さすがにもう分かんない。

題材GOOD。シリーズ次作も探して読もう。

柴崎友香「その街の今は」

京都で本屋巡りをした時、ミョーに興味を惹かれた柴崎友香。大阪の街を楽しめる作品。

ハズレの合コンの帰り、クラブに寄った歌子は、友達の友達である良太郎と酔った勢いでベタベタし、メアドを交換する。翌日、一緒にいた友人の智佐に様子を聞かされるも、前夜の記憶がなかった歌子だったが、アルバイトをする喫茶店に、良太郎が現れるー。

出だしはかなり軽めだし、全編にわたってフツーの20代後半女子、という感覚に貫かれている。歌子の目から見て感じることが主で、大阪で生まれ育った歌子が、街の古い写真が好きなこと、が副菜としてこの物語に彩りと深さを与えている。

名前はもちろん知らないわけではなかったが、興味を抱いたのは、先日京都のセレクトブックショップに行って興味を惹かれたからだ。「ビリジアン」という作品を○○氏が絶賛!と書いた帯だった。どうも女子系のようだ、と目を留めた。後日地元で買うときに、芥川賞受賞の「夏の庭」と本作とどちらにしようか迷ったが、先に織田作之助賞などの賞を獲得し、ブレイクしたのがこっちじゃないかな~と勝手に思い買ったが、正解のような気がしている。

過去の街の写真が好きで、そこに時代性を感じるのは、面白い発想である。先に書いた軽い日常や20代後半にしては薄い恋愛の状況と、高齢の方の話や古い写真の探訪は、控えめに表現される地元愛とともに興味深い対比として心をくすぐる。関西在住として描かれているミナミの光景がよくわかるだけに、より面白かった。安心して読める物語だ。

純文学的とはいえ、も少し心を動かすところがあってもいいとは思う。が、他の作品ではどんなストーリーの展開をしているんだろうと興味が湧いた。もっと読んでみよう。

森鴎外「山椒大夫・高瀬舟」

教科書には載ってたけれど、ちゃんと読むのは初めての森鷗外。さてさて入門編。

平安時代末期、筑紫へ左遷され帰ってこない夫を探すため妻と安寿、厨子王の姉弟、女中の4人は旅に出るが越後直江の浦で悪い人買いに騙され、姉弟は丹後由良の山椒大夫の奴婢となる。ある日姉の安寿は厨子王と一緒に山へ柴刈りに行きたいと申し出、認められるー。
(「山椒大夫」)

「山椒大夫」「魚玄機」「じいさんばあさん」「最後の一句」「高瀬舟」「寒山拾得」が収録されている。昭和13年、1938年出版の短編集で、解説は斎藤茂吉さんである。いやー文学史。「山椒大夫」が発表されたのは1915年。森鷗外晩年で、歴史ものをよく書いていた頃の作品だそうだ。

なにぶんすべて短い。最も長い山椒大夫が46ページである。14ページのものもある。伝聞調の感じのものがほとんどで、日本の江戸時代や、唐の長安の話まである。えっこれで終わりー?という話も正直あるが、短い中にエッセンスが詰まっているな、というのが感想だ。

安寿の一計を知った時、その前の彼女の振る舞いを思って胸を締め付けられるし、「魚玄機」は難しくてもひとつ分からないながら、天才女詩人の行く末に感じるものがあるし、「じいさんばあさん」「最後の一句」もけなげさと凛とした部分に惹かれる。ここまではすべて女性が主役である。

「高瀬舟」も昔教科書で読んだ通り印象的だ。

森鷗外は有名な作品がたくさんあり、ここでどうと言ってしまえないが、歴史ものには、一瞬の光を感じさせる描き方がある、というのはひとつ体得した。さてさて他も読んでみようかな。

11月書評の3

奈良探訪出来なかったのは残念だけど、それなりにあちこち行けたのが嬉しかった月だった。京都で同窓会。東京、福岡から大挙して上洛され、普段は話せない人たちと楽しい会話が出来た。

望月麻依「京都寺町三条のホームズ6.5
ホームズと歩く京都」

週末に京都に行くから、ちょっと自分の中の雰囲気作り。

シリーズふりかえり京都ガイドブック、とでも言おうか。先品に出て来た京都観光スポットを紹介しつつ、書き下ろしと、またその場所が出てきたシーンを、目線を変えて書いてある。写真や4コママンガも楽しい。

このシリーズは、軽い恋愛&ミステリーを絡ませたライトノベルで、京都の名所が「行ってみたい!」と思わせる筆致で描かれている。確かに、何巻も出ているため、ガイドブック的にまとまったのかあれば、と思ったこともある。まさか本当に、しかもこんなに工夫を凝らして作るとは思わなかった。

その名所を訪れた文章も、もとは3人称や葵の1人称だったりするのをホームズ目線に変えたりして、なんというか、手を抜いてない(笑)。

ラストに葵の親友香織のモノローグがあるのだが、ホームズについて思う、
「・・絵に描いたような『完璧さ』が、どうにも胡散臭く思えて仕方ない」
というくだりにはプッと吹いてしまった。

シリーズ中、京都名所の描写で印象が強いのは南禅寺かな。そして食べ物は今宮神社のあぶり餅。今の季節美味そう!

とか雰囲気を盛り上げながら、京都では、セレクトブックショップ、つまり本屋巡りを軽くしようかなと考えている本読みでした。

内山淳一「動物奇想天外 江戸の動物百態」

テレビ番組のようなタイトルだが、主に江戸期の画家は、どのような動物を描いたか、というテーマの画集プラス解説。たまにはビジュアルも面白い。

江戸時代、国内のものに加え、象やラクダ、龍など、舶来や想像上の動物も盛んに描かれていた。その傾向と歴史、その動物の意味合いを整理分析し、誰がどの動物が得意だったか、また描かれ方の変遷や裏話的なものも紹介している。犬猫といったポピュラーな画題についてもスコープしている。

ラクダは正倉院のモチーフともなり、古くから人気の動物だったようだ。虎は、1860年ごろ実物が来日する以前も毛皮は入っていた。象は室町時代に来日していたようだが、1728年に来た時は大変な騒ぎだったそうだ。また画人は、インコやオウムなどを好んで描いた。

岸駒(がんく)という画人が、虎の頭骨や脚を取り寄せ、頭骨には毛皮を被せてみた、というエピソードは面白い。虎は若冲や北斎のものも見たが、デフォルメしてあるとはいえ、やはり猫っぽい。岸駒の描く虎は迫力満点だ。

また、江戸時代に出土した象の骨か「龍の骨」と鑑定された、というのもなかなか楽しい。この頃まで、龍は実在を疑われてなかったらしい。

円山応挙が写生、観察して見たままに描く、というのを始め、多くの画人に広がった、とか、若冲がマス目描きというものすごい方法で象を描いていたりと知的好奇心も刺激される。

ある視点からの絵画集、まずまず満足。面白い。

坂東眞砂子「逢はなくもあやし」

奈良が舞台の小品、という感じの物語。持統天皇への思い入れが伺える。

東京のOL、香乃(こうの)は旅に出たまま2ヶ月帰ってこない恋人、篤史の消息が知りたくて、篤史の実家のある奈良・畝傍山の近くの大石町を訪ねる。篤史は実家で亡くなっていたー。

坂東眞砂子といえば、直木賞作品の 「山妣(やまはは)」など、迫力のある人間ドラマに特徴がある。遺作となった「朱鳥の陵(あけみどりのみささぎ)」には、持統天皇の、夫・天武天皇に対する情念が綴られていた。今回はその、さわりというような作品。

奈良の雰囲気は大好きだ。この時代の話も好きである。井上靖「額田王」とか。

180ページくらいの分量も読むのにはちょうどいいのだが、人物造形、話の折り合い方など、少し物足りなかったかな。まあ空気感を楽しんだということで。

カズオ・イシグロ「浮世の画家」

戦前・戦中と戦後のギャップに翻弄される画家の心。のみならず時代の移り変わり全般が主題。ズバッと描かず浮かび上がらせるのが特徴だな。

戦後間もない頃ー。引退した著名な画家、小野益次は戦争で妻と息子を亡くした。次女の紀子に縁談が持ち上がっていた折、里帰りした長女の節子から小野は「慎重な手順を踏んだほうがいい」と示唆される。紀子の前の縁談が突然断られたのは、過去の自分の方向性に原因があったことを、小野は気付いていたー。

起きている現実の時代の動きを、直面している事柄に表象させ、小野と周囲の人々との会話と、過去の回想で主題を浮かび上がらせていく。重々しく深いという印象を与える作品。

カズオ・イシグロは戦後の長崎を舞台にした長編デビュー作、「遠い山なみの光」で、イギリスで注目され、この作品では最も権威あるブッカー賞を僅かの差で逃したという。そして次の長編「日の名残り」で同賞を受賞する。

「日の名残り」を読んだのはずいぶん前だが、「山なみ」からそこまでの手法はほぼ同じだったと思う。主に具体的な現実に向き合うものだったので、「わたしを離さないで」がめっちゃ仮想現実のファンタジーだと分かった時は驚いたものだ。

戦中戦後のギャップにまっすぐに、人間的に向き合っている姿勢と客観的に見える筆致は読む者の心に訴えかけるものがある。しかし解説にもあるが、日本人作家の描き方とはちと一線を画しているかのように見える。

世俗的な善悪は扱われているように見えるが、「山なみ」同様、文脈でそれを断罪しているわけではないことに好感を覚える、ってとこかな。

11月書評の2


だいたい11月の中旬には、夏物スーツコートなしじゃ寒いわそろそろ、となるものだが、今年は寒くなるのが早く、ダウンを早々に着た。中旬には美術展行った。北斎展ではえらい目にあった。歌川広重もかなーり良かった。


彩瀬まる「骨を彩る」


最後の短編には掴まえられてしまった。やっぱ女子系だなあと再認識。解説があさのあつこというのも不思議な偶然。


不動産事務所を営み、10年前に妻を亡くした津村成久は中学生の娘・小春と2人暮し。実家の弁当屋を手伝っているバツ1の相川光恵とたまにデートしている。成久は最近よく妻・朝子の夢を見る。夢のに出てくる朝子は、なぜか手の指が欠けているのだった。

(「指のたより」)


こう書くとグロそうだが、全くそんなことはない。成久、光恵、その学生時代の友人玲子、成久の事務所に勤める浩太郎、そして小春をそれぞれ主人公にした短編集。


それぞれにどこか鬱屈したものを抱え、日常の現実に向き合う。もちろん展開に波はあるが、いわば普通の人たちのエピソードを淡々と描いている。最初はその穏やかさに読みやすさを感じたがそこまで強いものは感じていなかった。タイトル通り「骨」を意識させる要素がさりげなく散らされている。


しかし、小春が主人公の「やわらかい骨」は、その抑えていたものが一気に解放されて、普通すぎるのが逆に説得力となって、もどかしさがリアルで、心を攫われた。ほろり。ラストもきれいだった。


巻末のあさのあつこの解説が、まるで緩やかな小説集のひとつのピースとなる事まで意識してか(笑)、めっちゃ熱かった。


デボラ・インストール

「ロボット・イン・ザ・ガーデン」


本屋でよく見かけるな、というのを貸してもらった。う~ん、そこそこってなとこか。


家事などの仕事にアンドロイドが就く風潮のイギリス。獣医志望だが親が遺した家で漫然と暮らすベンと、弁護士のエイミー夫婦の庭に、ある日レトロなロボット、タングが座っていた。タングを気に入り世話を焼くベンに、エイミーはいらいらし、やがて離婚を切り出し去ってしまう。失意のベンは出所不明のタングを修理すべく長い旅に出る。


だらしないベンが、幼児並みの知能を持ったタングと世界をあちこち放浪しながら成長する、という物語だ。タングも成長してかわいく見えてくる。


サクサクと読んだが、ややまだるっこしい感があるのと、微笑ましい雰囲気には浸れるが、新しいものはあまり感じられなかったな。


タングの愛らしさは人気を集め、諸国にも翻訳されているらしい。やがて続編や映画が出るか、といったところらしい。


ふむふむ、これが新たなトレンド?と思いながら読了した。トレンドって言葉も古いな(笑)。


島本理生「七緒のために」


14歳、女子の友情。危うく、理屈どおりではない感情。解説は村田沙耶香ってのがマッチしてるな。


神奈川の私立中学で孤立し、東京の中学に転向してきた雪子は、同級生でやはり浮いている七緒と仲良くなるが、やがてその言動に振り回されるようになるー。


中学生の「七緒のために」と、高校生の友情もので短い「水の花火」を収録した一冊。


あとがきで本人が「女の子同士の濃密な友情を書くことは、ほとんどありませんでした。」としている通り、島本理生と言えばあまり成熟していない世代の恋愛小説に特徴がある。


女性作家であればどこかで書くテーマではあるが、「七緒のために」はちょっと読んでいて痛く、救いがない。我が身を振り返っても、中学生の時は色んなことがあったけど、そう理屈どおりに解決したかと言われればかなり違う。でも、この「寄り添うほどに互いを救えない少女たちの物語」(あとがきより)はまた、小説的リアルさを肌で感じさせる。


んー、暗くなるしあんま好きではなかったかな。でも痛いということは響いたということか。表現もあまり今回は好きではなかった。


「水の花火」は痛いんだけど穏やかなベースで好ましいので、この組み合わせはいいかも知れない。高校生デビューを果たした当時の作品らしく、みずみずしい。


天才・島本理生の作品は、これまで「リトル・バイ・リトル」「シルエット」「生まれる森」「ナラタージュ」と読んできた。映画で話題の「ナラタージュ」はまた違ったが、他の3作は好みだった。今回は、ちょっと異質だったかな。


阿刀田高「旧約聖書を知っていますか」


大学で「ドイツ語の最初歩」というテキストがあったが、阿刀田氏のこのシリーズはまさに最初歩だ。


旧約聖書の、アブラハムの旅から、その孫で子だくさんのヤコブ、さらにその子のヨセフの話、モーセの出エジプト、ダビデとソロモンなどの話を阿刀田流に、優しく、オモロかしく解釈している。サムソンとデリラ、ダビデとゴリアテ、そして創世記ではアダムとエバ、カインとアベル、ノアの方舟にバベルの塔も出てくる。


聞きかじってはいたものの、体系的な知識がなかったので、ほおほお、ふーんと読み込んだ。サムソンとデリラなんて古い映画のタイトルにあったけど、なんの話か知らなかった。


改めて時代の古さにも驚いた。アブラハムが旅を始めたのは紀元前18世紀。いやーすごいですね。


ひとつ告白すると、旧約聖書と新約聖書って何が違うのか今説明せよ、と言われたら・・ってなとこだったんで、故事とともにユダヤ教徒とキリスト教の立ち位置も再認識できた。


絵画を見ていると、色んな場面で聖書に基づ

くモチーフがある。よく描かれている、スザンナの水浴と2人の老人の話も出て来てへー、と思った。


阿刀田高は「ギリシア神話を知っていますか」「コーランを知っていますか」と来て、これがシリーズ3冊め。また読んでみよう。




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11月書評の1

11月は、長くて色んなことがあって、すごくたくさん読んだ。おそらく単月新記録。

11月3日は息子の中体連の新人戦について行き、尼崎の公園で「アドラー心理学」読んでたな。


ウィリアム・シェイクスピア「リア王」


人の心は食い違う。親と娘、娘とその夫、王と臣下。悲劇の決定版。


ブリテンのリア王は3人の娘に領地と権力を分け与えようとする。しかし美辞麗句を述べた長女ゴネリル、次女リーガンに比べ、言葉の端を繕えなかった三女コーディーリアに激怒、勘当し、諌めに入ったケント伯爵を追放してしまう。一方、グロスター伯爵の庶子エドマンドは、後継の地位を手に入れようと、嫡子エドガーを陥れようとする。


で、全てを失ったコーディーリアは、それでも結婚を申し込んで来たフランス王に嫁ぐ。2人の姉はそれぞれ公爵に嫁いでいたが、財産と権力を委譲された後、王に冷たくなり、王は正気を失って彷徨う。さまざまな展開があった後、やがてフランスはブリテンに攻め入る、という流れである。


入り組んだ陰謀の網を上手く組み上げてるな、と感じた。ここまでそれなりに読んできて、陰謀と行き違いがベースというシェイクスピアのパターンはなんとなく掴んでいるが、単体、という感じのしたマクベスやオセローに比べ、だいぶ複合的で、俗人的だ。悲劇の要素が昇華している作品かなと思う。


狂気の王の彷徨と、エドガー、グロスター、ケント、エドマンドら脇役の動きと台詞が終息へ向かって緻密な演出を施しているかのようである。大衆演劇だが文芸的で、物語を超えたものが感じられる。


解説では、文豪トルストイがシェイクスピアの作品を嫌いだったという興味深い事実が述べてあり、トルストイに反論する形で分析がなされてある。


個人的に今年はシェイクスピアと太宰治を読み進めたが、世界とドメスティックというスケールの違いこそあれ、クセと天才性に、どっか似てるな、と思ったのでした。


望月麻衣「京都寺町三条のホームズ6

                             新緑のサスペンス」


いつもは短編がいくつか、という感じなのだが、今回は長編もの。謎の美術品盗難と女子高生誘拐事件。相変わらず、あっという間に読める。ラノベは文化だな。


京都寺町三条の骨董品店「蔵」オーナーの孫で鋭い観察眼を持つホームズこと家頭清貴と、アルバイトの女子高生の真城葵は晴れて交際することになった。そんな折、「仏」に絡んだ美術品の窃盗が相次ぐ。また探偵の小松が「蔵」を訪れ、娘の失踪の捜索をホームズに依頼するー。


ホームズ、小松、利休の探偵チームが大活躍、アクションもあって楽しめる。オトナの事情も絡み、カルトな団体も出てきて、あとがきに書いてあるような土ワイの世界。

全てが明らかになったのか、この先も何かあるのか、という感もあるが、まあエンタメでしょう。


以前からだが、基本は葵のモノローグだが、場面に応じて3人称だったり、他の人の1人称だったりを使い分けている。ちょっと興味深いかな。


まだまだ既刊があるから、楽しめそうだ。また京都観光の面も期待している。



アルフレッド・アドラー「個人心理学講義」


アドラー心理学の入門書的な本らしい。1929年の作品。ふむふむと読み込んだ。いくつか独特のキーワードがある。


10ページほどの章が13あり、劣等コンプレックスと優越コンプレックス、ライフスタイル、早期回想、共同体感覚という言葉を使い、さらに症例も引きながらアドラーが確立した個人心理学について説明がなされている。


幼児期の体験から、人のライフスタイルの原因を読み解いている部分が多い。主に人が人生の大きな三つの課題、すなわち交友、仕事、愛及び結婚に直面した時、それらを共同体感覚を持って適応しクリアして行けるかどうかをポイントとしている。正しいかどうか自信ないけど^_^。


ウィーン生まれのユダヤ人アドラーはフロイトと活動を共にしていた時期もあったが、後に袂を分かつ。ナチスの台頭によりアメリカへ活動の場を移した。この本はその頃の講義や講義ノートをまとめたもののようだが、編集者も作品成立の背景も分かっていない。しかし訳者によれば内容は『きわめて明晰なものである』とのことだ。


器官に劣等のある子どもの、興味の抱き方は興味深かった。また個人的には序盤の方にある『自分の行動や表現を信頼しないタイプの人がある。そのような人は、できる限り、他の人から遠ざかっていたいと思う。新しい状況に直面するところには行こうとはせず、自信が持てる小さな集まりに留まりたいと思う。』がちと効いた。なんか自分のこと言われているみたいーと(笑)。


実は心理学の本というのは初めてだが、子どもが図書館で借りて来たのでチャレンジ。人間の行動を分析、類型化するのも、症例もなかなか面白い。ちょっと小難しくて飲み込むのに時間もかかったが、ユングも読んでみようかな。


あさのあつこ「弥勒の月」


やばい、面白い。「バッテリー」のあさのあつこ、全くテイストを変えた時代小説。クセがあって、アダルト。


小間物問屋・遠野屋のおかみ、おりんの水死体が見つかった。身投げと思われたが、死体を確認に来た亭主の遠野屋清之介に、同心小暮信次郎と岡っ引きの伊佐治はただならぬ気配を感じ取るー。


謎の男・清之介と、向こう見ずだがデキる男・信次郎、年老いた常識人の伊佐治。この3人の絡みで話は進んでいく。


いやー、まず少年の小説のイメージにきっぱりと線を引くように、ややアダルトな出だし。そして、緊迫感あふれる清之介と信次郎のやりとり、間に挟まる伊佐治の演出がいい。息苦しいような、闇と光の演出の中、謎は深まっていく。


ミステリーとしてのプロットは、やや突飛な気もしたが、全編に流れる重い雰囲気と、やがて明かされる清之介と信次郎の思いが熱い。ある意味男臭いストーリー。


しかし、物語の底流を成すものは、女性らしいな、と思ってしまった。実は。


どこかであさのあつこは時代物もイイ、と聞いて読んでみたが大いに納得。シリーズで何冊か出ているらしいので、この閃きがどう展開するか、楽しみだ。




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