やっと到達しました。年間大賞。1年に1度のこの催しもはや5年め。昨年までの年間大賞を振り返ります。
2011年 北村薫「リセット」
2012年 熊谷達也「邂逅の森」
2013年 藤原伊織「テロリストのパラソル」
2014年 朝井まかて「恋歌(れんか)」
私は自他ともに認める女子系読書家。しかしここまで年間大賞4回のうち3回が男性作家。意図したわけではないんだけどね。
前フリはここまでにして、では!
2015年の年間大賞は・・・
【年間大賞】 朝井リョウ「何者」
でした!
最も感銘というか、衝撃を受けたのがこの作品で、迷うことはなかった。作者の身近な素材で、鮮やかな仕掛けを作る。表現の多彩さも含め完成度が高いと思う。テクニカルなイメージも強いので、いつかは仕掛けばかりでなく朝井リョウの心の叫びを読んでみたい気もするな。
では引き続き・・【年間ランキング】
1位楊逸(ヤン・イー)「時が滲む朝」
2位ピエール・ルメートル
「その女アレックス」
3位須田桃子「捏造の科学者 STAP細胞事件」
4位坂東眞砂子「朱鳥の陵」
5位上橋菜穂子「狐笛のかなた」
6位長野まゆみ「少年アリス」
7位川端康成「雪国」
8位高橋克彦「火怨〜北の耀星アテルイ」(2)
9位熊谷達也「荒蝦夷」
10位ジャック・ロンドン「野性の呼び声」
11位藤沢周「武曲(むこく)」
12位米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」
13位伊東潤「巨鯨の海」
14位湯本香樹実「夏の庭 The Friends」
15位村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(2)
16位奥田英朗「ガール」
17位上橋菜穂子「闇の守り人」
18位岩城けい「さようなら、オレンジ」
19位桜木紫乃「ホテルローヤル」
20位島本理生「リトル・バイ・リトル」
てなもんですね。
大賞の次に1位をつけるのも毎年書くんですが、まあボクシングも1位の上にチャンピオンがいるということで・・。1位がないと収まりが悪いのです。
1位の「時が滲む朝」は天安門事件前後の話。亡命した運動家ではなく、民主化運動に参加した普通の学生のその後を描いている。大学の時に中国、東欧そしてソ連でドラスティックな変化があって、ノスタルジーに訴えかけてきた。
2位の「その女アレックス」は、構成の巧みさが本当に素晴らしい。読むごとに真実が明らかになる、その意外性がポイントだった。
3位のSTAP細胞は、よく整理出来ていない事案を理解するのに役立った。あのセンセーション、突然なにが起きてどう去って行ったのか、よくわかった。学界の盲点というか闇、ですな。
4位は壬申の乱もの。これに影響されて飛鳥まで足を伸ばした。今年一番思い出に残る外出だった。飛鳥はすばらしい。
5位のファンタジー、今年は上橋菜穂子の年だったな。キレがあって、曖昧な部分が少ない、つまり都合のいい展開が少なく、感覚的に、話に光が見えるような気がする。
その他も思い出に残る作品ばかり。今年は「リトル・バイ・リトル」や「夏の庭」など短い良作をたくさん読んでいい刺激を受けた。また川端康成に感銘を受けた年でもあり、外国の古典もミステリー、物語問わずそれなりに読んだ。
さあ、来年はどんな作品が待っててくれるだろう。また、読むぞ。