2023年10月14日土曜日

10月書評の4

竹内栖鳳展@京セラ美術館。竹内栖鳳って明治期から日本画をモダン化したんだなあというのがよく分かった。ヨーロッパの動物園に行って模写した動物の絵がたくさん。ライオンも虎も大迫力。ほかもなかなかインスパイアされる構図や色使いがあったけれど、新鮮だったのは水墨画でベネツィアの港町の光景を描いていた作品。同じような構図の作品はこれまでの西洋画の展覧会で多く観た。水墨画で描くとこうなるのか、と意外な味わいを生んでいたことにいたく感心した。

◼️ 星新一「地球から来た男」

悪魔や死神、怪しい組織が出てくる短編集。星新一の色褪せないテイストに口元が緩む。

1981年の短編集。主人公に、死神や悪魔や正体不明の組織が絡む、という話ばかり収録されている。

表題作は産業スパイがとっつかまり、地球外の星に送る、と宣言され眠らされる。なにか昭和のコントだな、という気がしてクスッとなる。

「もてなし」はひたすらもてなされる『ブルギさん』になった男の話、また「ある種の刺激」は社会と人生に効く『ツボ』がおもろかしく展開される。

ときにハチャメチャ、そもそも不思議の多いショートショート。でもやっぱりこの収め方、常識的であるようで、コミカル。そのとぼけた具合がまさにツボをついてくる。安心して読める。

「あと五十日」ではデキる男が死神に人生の時間を宣告される。「ある日を境に」は福の神の話。それぞれシニカルなオチがつく。明るいものもあれば、どこか投げやりなこともあるが、シチュエーションに最適となるよう考え抜かれたラストだな、と考える。

「密会」は妻の口を借りてかつての恋人が話をする現象で、くるりと回る展開。人生少しくらいお気楽でも、という色彩もある。

「包み」はなにか、太宰治なんか書きそうな短編。パッとしない画家が、若い男にあずけられた包みの中味を想像しながら絵を描く。小説らしい篇だなと思った。

正体不明の力、展開、それによるオチと、一種ドラえもんっぽくもある。星新一は複雑、雑多、そしてネタ的にやはり興味を惹き、簡潔にスパッと終わる、その作品に籠めたものから独特の味わい、匂いが感じられる。

やはり巨匠だなと。また読もう。

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