2023年1月22日日曜日

1月書評の9

神戸女学院②

集合場所となった講堂とその隣のチャペル。講堂のステージのアーチはプロセニアムアーチというんだそうです。パイプオルガンは後ろ2階に1つ、前に1つありました。

神戸女学院は設立当初、神戸北野の山本通にあり、手狭になったため1933年西宮市の現在地に移転、ヴォーリズは奥さんの母校でもあったことから思い入れひときわだったそうです。

講堂は高い天井、広く大きく多い窓に天窓もあって明るいイメージ。

その隣のチャペル。プロテスタントです。クローバー、がポイントみたいで、チャペルの長椅子にも刻まれていました。

建築全般にヴォーリズ得意のスパニッシュ・ミッション・スタイルになっています。

私の好きなフランク・ロイド・ライトもそうなのですが、とにかく各所デザインが細かくて多彩。建築群のそれぞれに違った意匠が凝らされていて見どころが多く、ワクワクしっぱなしでした。

◼️ 二宮敦人「最後の秘境 東京藝大」

めっちゃおもしろい本でしたー。音校と美校、知的好奇心が大満足。心の持ちようも美しい。ブルーピリオドの現実レポート版?

マンガ「ブルーピリオド」と出会うまでは、大学の名前しか知らなかった国立東京藝術大学。美術学部、いわゆる美校と音楽学部、音校に大きく分かれている。競争率はとっても高い。ある年の絵画科の倍率は17.9倍だったそうだ。

音校はやはり見られることが基本で男女ともに爽やか、華麗で楽器を扱う手を大事にして洗い物もしない。美校は荒っぽい雰囲気で汚れやケガは避けて通れない。美術だけにオシャレな人はいて、自分の身体で美を表現するポリシーで露出の多い方もいるようだ。競争社会の音校と並べて展示できる美校。片や楽器や衣装、レッスン代にお金がかかり、片や材料代が半端ない専攻もある。

対照的な部分や共通点。これでも絞ったそうだが、実に多くの分野を取材していて楽しい。

美校、油画に日本画はもちろん、鍛金、彫金、鋳金(ちゅうきん)の金三兄弟、かぶれが友達の漆芸、最も多忙な建築、みなで窯番をしながら同じ釜の飯を食う陶芸、沸騰した石鹸水や劇薬に教授は素手で触るという染織に写真映像コンピュータ、身体表現、インスタレーションやプロジェクションマッピングも実践する先端芸術表現科。

バリバリ働くデザイン科が印象的。インタビューした女性はオシャレで生活空間をスタイリッシュにリフォームし、ウェブデザイナー、映像アシスタント、バイトしているビストロの内装を手掛け、絵の家庭教師&モデル、1000人収容のホールで舞台美術、クラブの演出にバニーガール、ガチャガチャ景品人形の原型作り。注文に合わせて作るという特徴を持つ。

音校のほうはピアノ、声楽、打楽器、ハープ、ファゴット。それから口笛の世界チャンピオンなどという人もいる。オルガン、バロック音楽を探究する人など色々。邦楽科長唄三味線専攻の女性は津軽三味線の全国大会優勝者。津軽じょんがら節からJ POP、アニソンなどをアイドルの衣装を来て演奏するキラキラシャミセニスト。観光大使や地元の魅力宣伝部長、また海外文化交流使節団として世界各国で演奏している。

美校も音校も、奏者、創作者だけでなく、展覧会や広報の仕事を学ぶ学科もある。そして両者のコラボも楽しさが伝わってくる。

東京藝大の学生は、受かっただけで相当なエリート。創作活動は積極的だし、結果を出している物もいる。インタビューからは建設的で、専攻について深く考えた跡、それを表現できる力が窺える。加えておもしろいのが、自分が選んだ専攻、その活動を「どうしようもなく」愛しているということ。だからエリートなのだろうとも思う。

小説などを書いている著者は、藝大の女性と結婚している。奥様は、なんでも作ってしまう人で常識外れでもあり、この本の良きアクセントになっている。

とても興味深く、人生やり直せるなら・・なあんて考えさせてくれる1冊。楽しく早く読了。掛け値なく楽しい、お薦めできる作品です。

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