2023年1月14日土曜日

1月書評の7

名建築で買い物を。

1925年竣工、大阪・船場ビルの小粋な古書店再訪で1冊。オリジナル栞いただきました。嬉しい。

名建築で、夕食を。

御堂筋の顔ともいうべき大阪ガスビル、1933年竣工、行きたかったガスビル食堂で名物のビーフカレーとムーサカ。暮れゆく雨の御堂筋。途中から照明を落として、モダンな雰囲気と、味を楽しみました。

名建築で、音楽会。

1918年完成の大阪市中央公会堂。大集会室でなくて中集会室で、小編成オケのコンサート。

いつものコンサートホールでなく、同じ目線、すぐ近くでの演奏、バロック楽器を使用した古典派の曲。ストリングスやフルートの柔らかな噛み合わせに心地良くなる。浸りました。

高校同級生たちとのイベント。正月、福岡に帰省していた方からは太宰府のお菓子とマンハッタンチロルチョコのおみやげ。私が丹下健三の本を読んでるのを知って、友人が丹下建築の卓上カレンダーをくれました。

やっぱり建築はさ、楽しみを増幅してくれるよね。

雨は強く斜めの降り、濡れネズミで帰りつき、熱いコーヒー飲んで、ストレッチで身体をほぐして、あったかい風呂入って眠ったのでした。

◼️ウィリアム・シェイクスピア
「ペリクリーズ」

大人気のロマンス劇。奇跡がまばゆい。

シェイクスピアといえば「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」の四代悲劇、「ロミオとジュリエット」、また「ヴェニスの商人」「十二夜」などの喜劇が有名。晩年にはロマンス劇と呼ばれるものを書いている。「ペリクリーズ」はロマンス劇の1つで、1608年の初演以来人気沸騰していた作品だという。

スケールが大きく奇跡の起こるロマンス劇。先日「冬物語」を読み、もう少し読んでみたくなった。

時は古代、中近東、地中海沿岸近くの都市タイアの王ペリクリーズは、アンタイオケの王が実の娘である王女と近親相姦の関係にあることを知ってしまい、ターサスに逃れる。刺客が放たれたことを知ったペリクリーズはさらに逃げようと乗った船が難破してしまい、北アフリカのペンタポリスに流れ着く。

当地の王の信頼を得たペリクリーズは美しい王女、タイーサと結婚する。しかしタイアへの帰還途中に嵐に遭い、タイーサは娘マリーナを産み落とし死んでしまう。タイーサを棺に入れ海へ葬ったペリクリーズは、辿り着いたターサスでマリーナを太守に預けて帰国する。

月日が経ち、美しく成長したマリーナはターサス太守の妻の不興を買い命を狙われる。殺されずには済んだものの海賊にさらわれ、あろうことか売春宿に売り飛ばされるー。

王と王妃と娘、というのが貫かれたテーマといえる。近親相姦の王と王女、王女タイーサをペリクリーズと娶せるペンタポリス。また自分の娘より美しいマリーナを妬む王妃と追認するだけの王、そしてペリクリーズとマリーナ。

いまのリビア、レバノンから北アフリカなど遠方への移動。同じ地中海沿岸とはいえギリシャ世界はあるとしても、中近東を舞台に設定したのはシェイクスピア作品として珍しいと思う。度重なる出航と難破。大航海時代を経て通商ルートが開かれていた時代、観る人の世界への憧れをかき立てただろうか。宗教的にゆかりがある地域というのも刺激のひとつだったかも知れない。

奇跡、はロマンス劇の定番。今回は2つも盛り込んである。その瞬間を、観衆は待ち望み感動して、大団円での収まりによい気分で家路へ就くのかと想像する。売春宿のくだりなど少々野卑な言葉も飛び交う。ピンチを煽る感じもあるが、やはりどこかほっこりしている。身分の高い方も観ている中で、そのバランスをとってあるのではと思ったりする。

予定調和。でも思い切りふりかぶったハッピーエンドもひとつ望まれているものかと。演劇は異世界なんだからと考える。

喜劇も多く書いたものの、悲劇や史劇でかなりえぐい成り行きを描いてきたシェイクスピア。ロマンス劇は幾度かの変節を経て辿り着いた、熟練の技なのかもしれない。

残る未読のロマンス劇は「シンベリン」。また読みたくなってきた。

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