2023年1月7日土曜日

1月書評の1

2023初っ端!

◼️アリ・スミス「秋」

ふむふむ。イギリス文壇で評価の高い方。効いてきて、スカッとして、心が軽くなる?^_^

日本で言うと純文学的な形になるのだろう。ストーリーとしては、大学非常勤講師のエリサベスがかつて仲の良かった隣人、不思議な面を持つダニエル101歳を特養老人ホームに訪ねていくこと、シンプルだ。そこに、ほとんど眠っているダニエルの回想、エリザベスの日常で起こる煩雑な出来事、女性ポップアーティストポーリーン・ボティの事、エリザベスの母のこと、などが、時代もバラバラに語られる。

EU離脱の賛否を問う国民投票、ブレグジットが行われて、賛成多数の結果にショックを受けた著者が急いで書き上げたという本書はまた、季節四部作であり、冬春夏と刊行・翻訳されている。

眠る老人、その長い人生には深みとミステリアスなものがあり、ファンタジックさと人間の現実が並び立っているかのように思える。

そしてエリザベスについては、こだわりと、反発、美術とセクシュアリティへの興味、それらを育んだ彼女の人生の歩みなどを描いていて、それが全編を貫く高音のような感じで効いてくる。どこか演劇的に織り込まれる、ザワザワして社会状況もそれを助長する。


解説によれば、アリ・スミスの作品は「たくさんの印象的場面のスケッチ」から成りたっていて「日常的な風景を見事に切り取る言語的手腕」が魅力なんだそう。私的には、慣れが大事かなと。最初は正直よく分からなかった。少しずつ分かってきた終盤に、物語の前進が覚知できて、やはり解説にある「読むと元気になる」「心が軽くなる」という効能もなんとなく分かった。

32歳のエリザベスが愛する人は。そしてダニエルは目を覚ますのかー。

四部作残りと、高評価の長編「両方になる」も興味あるかな。

0 件のコメント:

コメントを投稿