2023年1月27日金曜日

また雪在宅

東京の職場に近い喫茶店にあったフランクフルトパンケーキセット。Hanakoに特集されたから、連れてってという女子もいて、でもこれ写真より大きくて多いからだいたい食べきれない。

はーでもまた食べたいなあ。まだお店あるのかなあ。

さて、雪まみれで帰ってきて、おとといは雪で、きのう溶けて、けさまた真っ白になるくらい、昼まで降った。

JRは、ずっと混乱していた。雪の降らないきのうまで。今日は雪は降ったけどおおむね正常だったらしい。

9時間閉じ込められたなんて話を聞くと、自分は30分で降りて良かったと心から思う。次もそうしよう。状況にもよるが、特に天候によるときは止まったら粘らない。

ぬくぬくしすぎ。月曜からは寒い中でも出るぞ。雪の中ひきこもったから、手回りのお菓子などが底をつきかけている笑ので明日は買い出しだなっと。

2023年1月25日水曜日

雪の写真上げときます。在宅でぬくぬく。

Blizzardブリザード〜♪

Blizzardブリザ〜ド♪☃️

関西も最強寒波。しかし大阪は夕方まで雪降らず、昼で帰ろうかと思っていたけど、ついつい終業近くまで。webには情報出てないけど、たぶん電車遅れてるからと早めに出た。

実際電車は15分ほど遅れていた。人多い電車に乗って、JR尼崎ですぐに乗り換え、うまくいった、あと数駅。

しかし・・なんと「運転士交代待ち」のため、そこで運転見合わせ状態。

同じ路線の新快速は走ってる、宝塚線も普通めに運行中。乗り換え客でどんどん車内はぎゅうぎゅうに。30分待ったが同じ理由で動かない。社内の雰囲気はピリピリしっぱなし。正直なんだそれ?雪はまだ降り始め、緊急っぽい動きはなかった。ということは優先度チョイス。これはJRの大ミスだ。再開のメド立たず、たとえ動いてもぎゅうぎゅうのまま駅間で停まる可能性高し。離脱することにした。

駅を出たらすごい雪。阪急塚口に行くか阪神に行くかの選択。まっすぐ南下で近めの阪神大物を目指すことにする。南向きの、阪急武庫之荘駅行きのバスが満員で通り過ぎる。まったく逆方向の武庫之荘は終点で、たぶん1時間近くかかるだろう。

大物も決して近くはない。しかし、運良く途中バスに乗れた。ICカードタッチが乗車時前扉のとこで1回というルールらしく、戸惑った動きをしてると

「こっち、このバス、まっすぐ行くだけやで」
「いや阪神大物・・」
「ああ、大物ね」

運転手、ガラ悪し。大物は各駅停車しか停まんないし、開発されたJR尼崎駅とか、阪神でも急行が停まる尼崎に行かないから心配してくれたのだろう。正直私は外見でよくなめられるのでそんな感じもあったし、会話はかみあわなかった。ただ不思議とイヤな感じはしなかった。

大物に着いてトイレ、ホームは人が少ない。8分待ちで普通。ガラガラで座る。平和だ。あたたかいし。次の尼崎で急行乗り換え。混んでたけども座れた。今津で阪急復帰も考えたが、確実性を考えて早めにバスに乗ることにする。阪神バス、乗り換えで阪急バス。これで安心。人はそこそこ。立つ人いない。外は雪、すさまじいな。ちょっと雨混じり?それともパウダー気味だから粒が細かい?

バス停からの山道は凍結はしてないが、なにせ坂道、めっちゃ滑りそう。在宅用のPC背負ってコケるわけにいかず、強風、そしてバランスを取るため傘はさせない。フードをかぶって、滑りそうなとこでは人の足跡の上を、膝曲げてゆっくり歩く。バランスを崩してもガードレールつかんだらおそらく手が切れる。マンホールや溝の金属製の覆いは避ける。Blizzard、ブリザード。めっちゃ雪まみれ。ようやく帰りつき、まずリュックに積もった雪をハンカチで完璧に払う。上着を払う。はーやっと着いた雪中行軍。

身体は最強ヒートテックハイネック、フリースにダウンにネックウォーマー、手袋にカイロで凍えることはなかった。乗り換えがうまく行ったこともあり、あまり遅くなく余裕があったこともあり、めったに歩けない夜の降雪の中にいたこともあり、ほんの少し童心がうずいて、なんかトータルでは楽しく帰った。

やっぱりダウンはフード付きを選ぶべし。今回の教訓。

2023年1月22日日曜日

【帰る場所は、ありますか?】

梅田のデパートにも出てる美味しいクリームパン。ある同級生の友人によれば高校の売店のクリームパンの次に美味いとか😆ほかきのう出してない写真上げときます。屋根の七色の瓦がうまく撮れなかったな〜と。

建築以外は車椅子バスケ🏀の天皇杯決勝、🏀Bリーグ横浜戦で河村が自己最多41得点の試合、🏀NBAの渡邊雄太出場試合、🏃🏻都道府県対抗駅伝、🏐Vリーグ女子、⚽️サッカー皇后杯準決勝、またBリーグ横浜戦とスポーツ三昧の土日だった。

さて、先日早期退職される方の最終出社日で、昔の同僚を集めて花束を渡してお見送りした。

会社に入った時の部署で、カッコよく優しかった先輩。私はミナミを生まれて初めて歩いたのは先輩の案内だった。

一緒に仕事したのはもうはるか以前になる。若手だった頃は、年配の方々の昔の話は、どこか異次元な気もしていた。でも自分のことになってみれば30年前もまさに昨日のようで、モノクロでもセピアでもなく、めっちゃカラーだ。

「はい、花束!いけぇーフィーゴ♪!!」

集まった先輩同期後輩とも昔話に花が咲く。久しぶりでもまったく違和感がない。大変な仕事の後遅くに飲みに行くと、自然に若者のテーブルができてバカな話をして笑っていた。

今回セレモニーで集まり、一緒にいた時間はたかだか20分くらい。でも誰もが、心に持っていることを感じたと思う。

おおげさにいえば、これも人生。決してそう意図したわけでも、リキんでも焦ってもいない。

帰る場所がある。ありがたいことだ。

1月書評の9

神戸女学院②

集合場所となった講堂とその隣のチャペル。講堂のステージのアーチはプロセニアムアーチというんだそうです。パイプオルガンは後ろ2階に1つ、前に1つありました。

神戸女学院は設立当初、神戸北野の山本通にあり、手狭になったため1933年西宮市の現在地に移転、ヴォーリズは奥さんの母校でもあったことから思い入れひときわだったそうです。

講堂は高い天井、広く大きく多い窓に天窓もあって明るいイメージ。

その隣のチャペル。プロテスタントです。クローバー、がポイントみたいで、チャペルの長椅子にも刻まれていました。

建築全般にヴォーリズ得意のスパニッシュ・ミッション・スタイルになっています。

私の好きなフランク・ロイド・ライトもそうなのですが、とにかく各所デザインが細かくて多彩。建築群のそれぞれに違った意匠が凝らされていて見どころが多く、ワクワクしっぱなしでした。

◼️ 二宮敦人「最後の秘境 東京藝大」

めっちゃおもしろい本でしたー。音校と美校、知的好奇心が大満足。心の持ちようも美しい。ブルーピリオドの現実レポート版?

マンガ「ブルーピリオド」と出会うまでは、大学の名前しか知らなかった国立東京藝術大学。美術学部、いわゆる美校と音楽学部、音校に大きく分かれている。競争率はとっても高い。ある年の絵画科の倍率は17.9倍だったそうだ。

音校はやはり見られることが基本で男女ともに爽やか、華麗で楽器を扱う手を大事にして洗い物もしない。美校は荒っぽい雰囲気で汚れやケガは避けて通れない。美術だけにオシャレな人はいて、自分の身体で美を表現するポリシーで露出の多い方もいるようだ。競争社会の音校と並べて展示できる美校。片や楽器や衣装、レッスン代にお金がかかり、片や材料代が半端ない専攻もある。

対照的な部分や共通点。これでも絞ったそうだが、実に多くの分野を取材していて楽しい。

美校、油画に日本画はもちろん、鍛金、彫金、鋳金(ちゅうきん)の金三兄弟、かぶれが友達の漆芸、最も多忙な建築、みなで窯番をしながら同じ釜の飯を食う陶芸、沸騰した石鹸水や劇薬に教授は素手で触るという染織に写真映像コンピュータ、身体表現、インスタレーションやプロジェクションマッピングも実践する先端芸術表現科。

バリバリ働くデザイン科が印象的。インタビューした女性はオシャレで生活空間をスタイリッシュにリフォームし、ウェブデザイナー、映像アシスタント、バイトしているビストロの内装を手掛け、絵の家庭教師&モデル、1000人収容のホールで舞台美術、クラブの演出にバニーガール、ガチャガチャ景品人形の原型作り。注文に合わせて作るという特徴を持つ。

音校のほうはピアノ、声楽、打楽器、ハープ、ファゴット。それから口笛の世界チャンピオンなどという人もいる。オルガン、バロック音楽を探究する人など色々。邦楽科長唄三味線専攻の女性は津軽三味線の全国大会優勝者。津軽じょんがら節からJ POP、アニソンなどをアイドルの衣装を来て演奏するキラキラシャミセニスト。観光大使や地元の魅力宣伝部長、また海外文化交流使節団として世界各国で演奏している。

美校も音校も、奏者、創作者だけでなく、展覧会や広報の仕事を学ぶ学科もある。そして両者のコラボも楽しさが伝わってくる。

東京藝大の学生は、受かっただけで相当なエリート。創作活動は積極的だし、結果を出している物もいる。インタビューからは建設的で、専攻について深く考えた跡、それを表現できる力が窺える。加えておもしろいのが、自分が選んだ専攻、その活動を「どうしようもなく」愛しているということ。だからエリートなのだろうとも思う。

小説などを書いている著者は、藝大の女性と結婚している。奥様は、なんでも作ってしまう人で常識外れでもあり、この本の良きアクセントになっている。

とても興味深く、人生やり直せるなら・・なあんて考えさせてくれる1冊。楽しく早く読了。掛け値なく楽しい、お薦めできる作品です。

1月書評の8

建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ屈指の名作と言われる国の重要文化財、神戸女学院の一般見学会(事前申込)に行ってきました。前から観に行きたかったのでテンション上がりまくりです。

この図書館の天井化粧、素晴らしいですね。窓が大きく、ベランダから中庭と3方の建築が見渡せます。テーブルや卓上のライトも当時のものだとか。また図書館の閲覧室の側面上にあるフロアはロビー&廊下のようになっていて、おしゃれで座り心地の良さそうな椅子がありゆったりしていました。

ため息が出ますねえ😉椅子は座り心地良かった。。

◼️ ボニー・マクバード
「シャーロック・ホームズの事件録
           悪魔の取り立て」

パスティーシュ・シリーズ3作め。いちばん楽しめたかな。ボロボロになっていくホームズ。

ハリウッドの脚本家、プロデューサーの才女ボニー・マクマードによるシリーズ3作め。休む暇なく繰り出される犯罪、ホームズの操作。相変わらず活力にあふれ、読み進むのが早くなる作品だ。

現在は慈善活動をしているが、過去には何か悪行をなした裕福なセレブたち。ロンドンにはルミナリアンクラブという緩いつながりがあるという。

その構成員たちが変わった手口で殺されてゆく。ベッドで死体が見つかった新聞王の男が溺死していたり、床屋チェーンで材を成した人物は自分の店の椅子でのどをかき切られて死んでいた。犠牲者の名字のアルファベットを追って行われているかのような凶悪な連続殺人。いくつかの犯罪現場にタロットカードが残されていた。

折しも新しい警視総監はホームズを敵視し、妙なゴシップ記者がやたらとホームズを悪魔の化身のように攻撃していた。フランスのアナーキストも活発に活動している。混沌とした状況の中、ホームズは旧知のレストレードの協力で捜査を続けていたが、ある日行きあった警視総監ビリングスは特殊な手錠でホームズをひどく傷つける。

このシリーズはホームズに余裕がなくなるよう仕向けている。兄のマイクロフトの諫言も含め、反発するような出来事も多い。フランス人アナーキストも危険な爆弾を持って活動している。ボロボロになりながら捜査を続ける。へフィという格闘術と捜査能力に長けた少女がホームズファミリーに加わり、相談を持ち込んできた女学校の経営者である妖艶な夫人がホームズに擦り寄る。果たして真相はー。

前作に比べスケール的には小さくなったかも。またあまり本格推理、パスティーシュっぷりを楽しむものではない。しかし矢継ぎ早の展開でおもしろさにページが進む。それは3作に共通にしている。そして今作は、なんだかなあ、という部分もあったシリーズのストーリーが少々単純化されている。誰が味方か、敵かー、そして真犯人はー。

余裕のないホームズはモルヒネ投与後にコカインを注射するなどムチャをする。また、原典ではクールでやや無口なホームズが甲高い声でわめくことが多いのは、シリーズの特徴か。

大変楽しく読みました。

2023年1月14日土曜日

1月書評の7

名建築で買い物を。

1925年竣工、大阪・船場ビルの小粋な古書店再訪で1冊。オリジナル栞いただきました。嬉しい。

名建築で、夕食を。

御堂筋の顔ともいうべき大阪ガスビル、1933年竣工、行きたかったガスビル食堂で名物のビーフカレーとムーサカ。暮れゆく雨の御堂筋。途中から照明を落として、モダンな雰囲気と、味を楽しみました。

名建築で、音楽会。

1918年完成の大阪市中央公会堂。大集会室でなくて中集会室で、小編成オケのコンサート。

いつものコンサートホールでなく、同じ目線、すぐ近くでの演奏、バロック楽器を使用した古典派の曲。ストリングスやフルートの柔らかな噛み合わせに心地良くなる。浸りました。

高校同級生たちとのイベント。正月、福岡に帰省していた方からは太宰府のお菓子とマンハッタンチロルチョコのおみやげ。私が丹下健三の本を読んでるのを知って、友人が丹下建築の卓上カレンダーをくれました。

やっぱり建築はさ、楽しみを増幅してくれるよね。

雨は強く斜めの降り、濡れネズミで帰りつき、熱いコーヒー飲んで、ストレッチで身体をほぐして、あったかい風呂入って眠ったのでした。

◼️ウィリアム・シェイクスピア
「ペリクリーズ」

大人気のロマンス劇。奇跡がまばゆい。

シェイクスピアといえば「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」の四代悲劇、「ロミオとジュリエット」、また「ヴェニスの商人」「十二夜」などの喜劇が有名。晩年にはロマンス劇と呼ばれるものを書いている。「ペリクリーズ」はロマンス劇の1つで、1608年の初演以来人気沸騰していた作品だという。

スケールが大きく奇跡の起こるロマンス劇。先日「冬物語」を読み、もう少し読んでみたくなった。

時は古代、中近東、地中海沿岸近くの都市タイアの王ペリクリーズは、アンタイオケの王が実の娘である王女と近親相姦の関係にあることを知ってしまい、ターサスに逃れる。刺客が放たれたことを知ったペリクリーズはさらに逃げようと乗った船が難破してしまい、北アフリカのペンタポリスに流れ着く。

当地の王の信頼を得たペリクリーズは美しい王女、タイーサと結婚する。しかしタイアへの帰還途中に嵐に遭い、タイーサは娘マリーナを産み落とし死んでしまう。タイーサを棺に入れ海へ葬ったペリクリーズは、辿り着いたターサスでマリーナを太守に預けて帰国する。

月日が経ち、美しく成長したマリーナはターサス太守の妻の不興を買い命を狙われる。殺されずには済んだものの海賊にさらわれ、あろうことか売春宿に売り飛ばされるー。

王と王妃と娘、というのが貫かれたテーマといえる。近親相姦の王と王女、王女タイーサをペリクリーズと娶せるペンタポリス。また自分の娘より美しいマリーナを妬む王妃と追認するだけの王、そしてペリクリーズとマリーナ。

いまのリビア、レバノンから北アフリカなど遠方への移動。同じ地中海沿岸とはいえギリシャ世界はあるとしても、中近東を舞台に設定したのはシェイクスピア作品として珍しいと思う。度重なる出航と難破。大航海時代を経て通商ルートが開かれていた時代、観る人の世界への憧れをかき立てただろうか。宗教的にゆかりがある地域というのも刺激のひとつだったかも知れない。

奇跡、はロマンス劇の定番。今回は2つも盛り込んである。その瞬間を、観衆は待ち望み感動して、大団円での収まりによい気分で家路へ就くのかと想像する。売春宿のくだりなど少々野卑な言葉も飛び交う。ピンチを煽る感じもあるが、やはりどこかほっこりしている。身分の高い方も観ている中で、そのバランスをとってあるのではと思ったりする。

予定調和。でも思い切りふりかぶったハッピーエンドもひとつ望まれているものかと。演劇は異世界なんだからと考える。

喜劇も多く書いたものの、悲劇や史劇でかなりえぐい成り行きを描いてきたシェイクスピア。ロマンス劇は幾度かの変節を経て辿り着いた、熟練の技なのかもしれない。

残る未読のロマンス劇は「シンベリン」。また読みたくなってきた。

1月書評の7

名建築で買い物を。

1925年竣工、大阪・船場ビルの小粋な古書店再訪で1冊。オリジナル栞いただきました。嬉しい。

名建築で、夕食を。

御堂筋の顔ともいうべき大阪ガスビル、1933年竣工、行きたかったガスビル食堂で名物のビーフカレーとムーサカ。暮れゆく雨の御堂筋。途中から照明を落として、モダンな雰囲気と、味を楽しみました。

名建築で、音楽会。

1918年完成の大阪市中央公会堂。大集会室でなくて中集会室で、小編成オケのコンサート。

いつものコンサートホールでなく、同じ目線、すぐ近くでの演奏、バロック楽器を使用した古典派の曲。ストリングスやフルートの柔らかな噛み合わせに心地良くなる。浸りました。

高校同級生たちとのイベント。正月、福岡に帰省していた方からは太宰府のお菓子とマンハッタンチロルチョコのおみやげ。私が丹下健三の本を読んでるのを知って、友人が丹下建築の卓上カレンダーをくれました。

やっぱり建築はさ、楽しみを増幅してくれるよね。

雨は強く斜めの降り、濡れネズミで帰りつき、熱いコーヒー飲んで、ストレッチで身体をほぐして、あったかい風呂入って眠ったのでした。

◼️ウィリアム・シェイクスピア
「ペリクリーズ」

大人気のロマンス劇。奇跡がまばゆい。

シェイクスピアといえば「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」の四代悲劇、「ロミオとジュリエット」、また「ヴェニスの商人」「十二夜」などの喜劇が有名。晩年にはロマンス劇と呼ばれるものを書いている。「ペリクリーズ」はロマンス劇の1つで、1608年の初演以来人気沸騰していた作品だという。

スケールが大きく奇跡の起こるロマンス劇。先日「冬物語」を読み、もう少し読んでみたくなった。

時は古代、中近東、地中海沿岸近くの都市タイアの王ペリクリーズは、アンタイオケの王が実の娘である王女と近親相姦の関係にあることを知ってしまい、ターサスに逃れる。刺客が放たれたことを知ったペリクリーズはさらに逃げようと乗った船が難破してしまい、北アフリカのペンタポリスに流れ着く。

当地の王の信頼を得たペリクリーズは美しい王女、タイーサと結婚する。しかしタイアへの帰還途中に嵐に遭い、タイーサは娘マリーナを産み落とし死んでしまう。タイーサを棺に入れ海へ葬ったペリクリーズは、辿り着いたターサスでマリーナを太守に預けて帰国する。

月日が経ち、美しく成長したマリーナはターサス太守の妻の不興を買い命を狙われる。殺されずには済んだものの海賊にさらわれ、あろうことか売春宿に売り飛ばされるー。

王と王妃と娘、というのが貫かれたテーマといえる。近親相姦の王と王女、王女タイーサをペリクリーズと娶せるペンタポリス。また自分の娘より美しいマリーナを妬む王妃と追認するだけの王、そしてペリクリーズとマリーナ。

いまのリビア、レバノンから北アフリカなど遠方への移動。同じ地中海沿岸とはいえギリシャ世界はあるとしても、中近東を舞台に設定したのはシェイクスピア作品として珍しいと思う。度重なる出航と難破。大航海時代を経て通商ルートが開かれていた時代、観る人の世界への憧れをかき立てただろうか。宗教的にゆかりがある地域というのも刺激のひとつだったかも知れない。

奇跡、はロマンス劇の定番。今回は2つも盛り込んである。その瞬間を、観衆は待ち望み感動して、大団円での収まりによい気分で家路へ就くのかと想像する。売春宿のくだりなど少々野卑な言葉も飛び交う。ピンチを煽る感じもあるが、やはりどこかほっこりしている。身分の高い方も観ている中で、そのバランスをとってあるのではと思ったりする。

予定調和。でも思い切りふりかぶったハッピーエンドもひとつ望まれているものかと。演劇は異世界なんだからと考える。

喜劇も多く書いたものの、悲劇や史劇でかなりえぐい成り行きを描いてきたシェイクスピア。ロマンス劇は幾度かの変節を経て辿り着いた、熟練の技なのかもしれない。

残る未読のロマンス劇は「シンベリン」。また読みたくなってきた。

1月書評の6

今年の干支、兎のような国立国際美術館のデザインは、あべのハルカスも手がけたシーザー・ペリ。竹の力強さを表しているとか。

かつて関西にあった芸術集団の作品群らしく、説明を寄せ付けない絵画造形とかいう話で、私は詳細を解説する言葉を持たない。具体と言いながら抽象に見える作品たちは、全くわけが分からないというものは意外にもなかった。色ペンの線だけで創作する人、記号にこだわる人、絵の具を垂らしたりこぼしたりして描く人などさまざま。絵本「もこ、もこもこ」の絵を描いた画家さんの作品も出品されてました。

◼️ 宇佐見りん「推し、燃ゆ」

ふむふむ。興味深いモチーフ、みずみずしい筆力。

芥川賞。帯によれば2021年最も売れた本だそうだ。私の読書の師匠も買ったと言ってたな・・と思い出した。息子が買って読まないまま。んじゃちょうだい、と手にした。

いきなり事件から始まる。「推しが燃えた。」

主人公の女子高校生、あかりの推し、であるアイドルがファンの女性を殴ったとの報道があり、本人も認めた。

SNSは炎上、好感度も落ちる。しかしあかりは変わらず推し活動を続ける。あらゆる情報に目を通し、しゃべったことはすべてルーズリーフに書き起こし、すでにファイルが20冊に達している。DVDや写真集は常に保存用、観賞用、貸し出し用の3つ買う、人気投票の権利を得るためCDを50枚購入する、などなど。ちなみに推し情報を書き込むブログも人気だ。

対象の真幸というアイドルは男女で構成されるグループに所属、イメージカラーは青、で少年のような可愛さと、心中の葛藤をうかがわせる言動、抑制しているのがわかるような態度を見せる。あかりは、幼少の頃、舞台のピーターパンを観に行き主演の真幸が心に残り、高校に入った頃再認識して、推し活を始めた。

のっけから事件、そしてもちろん事態は動く。あかりの私生活も変わっていく。

テレビで推し活、とはどんなことをしているのかを観たことがある、入れ込み方が半端なく、消費が多い。はたから見たらそこまで?と思うのが推し、だ。もはや推し活するヒト、という固有の生物のような捉えられ方がなされている。まあそうだよね。昔からある追っかけ、という言葉よりなんか前衛的かつ急進的。

世の中には好きなことにのめり込んでいる人、ちょっと好きすぎやろ、と周りが思うくらい、も結構いるだろう。多くの人はまた、没頭する趣味を持っていて、社会生活とバランスを取りながら取り組んでいるだろう。その限り好きなことを思い切りやっているのだからほっといてほしい、という心持ちもあると思う。推し活は、自分のメリット、という点では、借金のほうが多いかも知れず、新しく異質な感も漂う。10代と若いあかりにの有り様に、羨望という見方もあるのだろうか。

推し活とはなにか、をまず描く。主人公あかりも参加しているSNS、家族、バイト先の店の騒々しさ、喧騒が際立つ。もちろんあかりも積極的に動く。しかしあかりが求める静かな境地が醸し出されている気がする。

推し活が最優先で、やがて学校にも家族にも見放され、荒れた独り暮らしをする。ここに来て昭和の香りが漂ってきたな、と思う。

日常よくある細かなことを印象的に、時に思い切って表現して、織り交ぜている。それもまたあかりを取り巻く喧騒のひとつ。

率直に感じたのは、朝井リョウはじめ先行の作家さんに似たテイストかな、ということ。また、近年アメリカを中心に人気が高まっているという「コンビニ人間」ほかのように社会に適合しない、ちょっと怪しい人ものでもあるかな。

物語の成り行きとしてはその道だな、とどこか合理性も併せ持つ。全体としては、やはりみずみずしさが魅力と言っていいかと思う。

次に著者の本を読んだ時、どんな印象を受けるのか、ちょっと楽しみだ。

1月書評の5

手元にチケットがあった「すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合」が最終日で、中之島美術館とそのお隣の国立国際美術館へ。

入ってすぐのトイレから始まってて、黒テープと黒ペンでびっしりと模様や記号が😆

数式の概念?を取り入れ、きっちりとした線と模様を描く菅野聖子さんという方には惹かれるものがありました。残念ながら菅野さんの撮影可の作品はなかった。

中には何かを描こう、という意図が伝わってくる作品もあって、なかなか刺激を受けた展覧会でした。


◼️ 小野不由美「鬼談百景」

学校、独り暮らしの部屋、古い家屋にトンネル。

読者の体験談をもとに創作された話だそうだ。短い篇が、数えてないけどおそらく百。不思議系な話も多く、よくよく考えたり、自分がその身だったらゾクっ・・ときそうなものばかりだ。

夜の学校。そもそも学校というのは怪談の宝庫というか、自殺があったり先生の不祥事があったり、多くの人が、好奇心旺盛な時期に通過する場所で、七不思議や伝説に事欠かない。普段多くの生徒でにぎやかだから誰もいないと妙に不気味だったりするし。この本にもいくつも出てくる。小学校の宿泊訓練や天体観測、高校のブカツの合宿の感覚を思い出す。冒頭の「未来へ」「増える怪談」なんかはコワイなあ。放送委員だったこともあって「開かずの放送室」は懐かしく印象に残った。

男女ともにアパート・マンションの独居はなにかとありそうだ。自分は特に大人になってから、そのへん鈍かったのかあまり思い出はない。独り暮らしの阪神大震災はホントに怖かった、という感想だけ。本書を読んで、いまこれらの話を知ってたら怖かったかもーと思っている。女の幽霊?がドアノブをガチャガチャ鳴らす「来訪」なんかあったらやばそう。

逆に小さな頃は、夜枕もとに誰か立っていたとか鏡を覗くと後ろに何かが映っていたとかめっちゃ苦手の怖がりだった。福岡・柳川市にあった母の実家は昔の商家で広く、いとこ親戚が集まると楽しかった。けれども異質な環境というのもあり、皆と並んで蚊帳の中に寝て、夜1人起きたりすると周りを見るのがいやで、でも見てみたくて逡巡して枕もと、足元や鏡を見てみる、なんてしてたなと思い出す。昔の家には襖の上に必ずあった「欄間」の篇や風呂場の怪「髪あらい」なんか思い出す感覚がある。

トンネルといえば、映画「犬鳴村」にも出てきた犬鳴峠で深夜クルマを降りてライトを消し、旧道のトンネルを歩いたりした。怖楽しい体験、また地元には広く伝わるタクシーの怪談があり、タクシーも出てくる車関連の怪、「トンネル」は合わせ技のような篇だなと考えた。両方のコワイ感覚。でも自分の楽しいの構成要素だったりする。「電話ボックス」「廃病院」なんかいかにもな話。

体験談がベースであり、いかにも自分が成していた日常生活の中で、ちょっと踏み越えたら突き当たりそうなものばかり。なんとなく尻切れトンボなのは余韻を残し、意味がつかめないと逆にリアルだ。演出が少ない話は身に迫るぞくッ・・がよけい増幅される気がする。小野不由美の作品は先日まで読んだことがなく、いくつもある手管の、ひとつの形かなと直感する。

先に「残穢」を読んださい、関連本と承知していたが読むのが遅くなってしまい、繋がりをあまり思い出せなかった。残念。とっておいていつか続けて読むことにしよう。

1月書評の4

写真はチーズクリームのキャロットケーキ。

春高バレーTVに釘付け、先週3連休のうち土日は春高バレーでほぼ家から動かず。

世代エースの鎮西・桝本は右ひざに深刻なケガをかかえながら、3回戦東北、準々決勝福井工大福井と3セットマッチフルセットで勝利、準決勝は2m7cmの麻野らを擁するインターハイ王者東山と5セットマッチフルセットで勝ちぬいた。決勝は駿台学園。エース佐藤と打ち合い、やはりフルセットの攻防、最後に力尽きた。

2回戦で当たった強豪松本国際戦、エース安食のいる東北との死闘、ギリギリの準々決勝、そして東山戦と、見応えのある勝負の連続。息子が好きで注目していた鎮西をはじめ、選手たちにありがとうを伝えたい。一方で運営には課題があるように思えた。ともかく、あー終わったーっ。


◼️小野不由美・nakaban「はこ」

はこ、音がする、開く、そしていなくなる。

怪談えほんシリーズ、ここまで宮部みゆき、京極夏彦、有栖川有栖、佐野史郎、あさのあつこと読んできた。読みたかったうちの1つ、小野不由美。さてさて。

小さなはこ、ふると音がする。開くと、ハムスターがいなくなる。少し大きな箱が開くと、飼い犬がいなくなる。そしてクローゼットから音がする。何が、誰がなくなる?

ストーリーは独創的なものかと思う。不可思議、不気味な力が身に迫る。話の怖さもそうだが、絵が怖いなあ〜。アップの表情、暗さ、不安が直接的に働きかけてきて増幅する。1人で暗がりで読んでたらゾクっとしたかも。

子どもというのは怖いのが好きなものだ。でも、独りになったとき、どこかで思い出して不安の種になっちゃいそうな絵と話。一番怖かった宮部みゆきの絵本は、これ幼児に言うの反則?な感じもしたけども、こちらは幼児にとって怖いことは、というのを最後に持ってきている。「残穢」などの小野不由美、さすがうまいな、と思ってしまった。いまちょうど「鬼談百景」を読んでいる。

怪談えほん、まだ綾辻行人も、皆川博子も、恒川光太郎も残っている。楽しみだ。

◼️島本理生・平岡瞳
「まっくろいたちのレストラン」

献身と痛み、そして・・やっぱり最後は泣けるなあ。嬉しくなる。

恋の絵本シリーズ。
いたちがレストランを始めた。店は大繁盛。でもいたちはお客さんが自分の鋭い牙を見たら気を悪くすると思い、ずっと後ろを向いていた。

ある日、うさぎのお嬢さまが店に来て、2人は仲良くなる。しかしお嬢さまにはうさぎの王子という婚約者がいたー。

うさぎを襲うワシ、身を挺して立ち向かったいたちは深傷を負う。

青、黒、そして白が印象的、ちょっと版画のような質感のある絵。冷たさと、コンプレックスによる距離感がよく表されているような気がする。痛みと、ハッピーエンド。いささか大味な気がしないでもないけども、やはり泣けてしまう。報いと救いがないとね。


大きなストーリーと、書き込まれた行間のディテールで感情が直接揺らされた感もあった。これで1の桜庭一樹と3を読了。2の辻村深月も読みたいなと。

1月書評の3

年末にせっせと遊んだのに比して、年明けはさしてどこへも出掛けなかった。

妻単独帰省で息子と2人暮らし、1日はのんびりして格付けチェックを観て、2日も息子のご飯の用意をしつつスポーツ王を観て、3日は新春カラオケ。

3年ぶりのカラオケ。
YOASOBIの「夜に駆ける」「群青」
10-FEET「第ゼロ感」(映画スラムダンクのエンディングテーマ曲)
ウタ(Ado)「新時代」
LiSA「紅蓮華」
ヒゲダン「宿命」
緑黄色社会「Mela!」
に持ち歌の
中島美嘉「雪の華」
ミスチル「HANABI」あたり。

息子は優里「ドライフラワー」「ベテルギウス」とかbuck number「水平線」、ヒゲダンでも「Subtitle」とか。上手いな若者。やっぱカラオケしとかんと下手になるなと思った2人で2時間でした。

◼️ ジェームズ・グレアム・バラード
「結晶世界」

調和しないから惹かれるのか。SFと純文学。

この作品のタイトルを見かけたのは、松村栄子「僕はかぐや姫」だった。女子校に通う、いささかマニアックな文芸部員の主人公が読んだと一瞬出てきた。地元の古書店に出ていたのを見つけて入手した。

さて、入り口はSFである。アフリカの奥地の村へ、サンダーズという癩病が専門の医師が、やはり医師の友人のクレア夫妻を訪ねていく。サンダースは妻の方のスザンヌ・クレアと不倫関係にある。ところが現地には軍が出動しており、森の中で植物、動物、無機物など関係なく、どんどん水晶で覆われていくという現象が大規模に進行していたー。

小説は水晶化する森の執拗なほどの描写、陽光の繁栄やコロナ、砕け散る光、映った物体の表現で溢れている。そして屈折した人間模様をも映し出す。スザンヌを探す旅でありながら、同地に来ていたフランス人ジャーナリスト・ルイーズとサンダーズは男女の仲となる。スザンヌとその夫マックス・クレア、サンダーズとの三角関係プラス明るいルイーズの要素が極限状況で絡み合う。

加えて、繰り返される過酷な森での行軍。建築家ベントレスと鉱山主ソーレンセンの、病んだ女性を巡る三角関係。加えて軍のラデック大尉、神父のバルザス、快速艇を操る船長アラゴンと、どこか奇妙さが常識の仮面の下から見える面々の存在感と役割、精神のありようが描写される。それらは小さな舞台でさまざまな角度から語られ物語を織り込んでいく。そしてあたあ、やはりそうあるべき?とも思われる方向へ収束する。


やはり国内と海外は違うな、と改めて思う。当たり前なんだけど。和ものは調和を大事にするイメージ。海外SFは設定から発想が、意外性豊かで、その中に粗っぽくてでもどこか感じることのできる意味をおぼろげに描く。今作のドラマでは時間、空間、人間というものについて、哲学的とでもいうような理屈がセリフに出てくる。それでいて見せるところは印象的に見せている。

それにしても水晶の世界に男女の三角関係を2つも入れている。まるで絵の中に図形を駆使した葛飾北斎みたいだな、とか。水晶の光はホクサイが多用したベロ藍か。三角関係、片や人間臭い感じ、もう片方はファンタジックでかつ狂気を伺わせる。そこへ明るく常識的な愛人を出し、奇妙な状況下のセックスまで入る。

水晶に侵食されつつある中のオルガンの響き、宝石の役割などというのも象徴的っぽい。

あまり長くない長編に濃密なSF&純文学。情景の想像、位置関係などの把握にやや苦労、短い割には時間がかかったけども、おもしろかった。

2023年1月7日土曜日

1月諸表の2

年が明けてから、外国小説ばかり。

◼️ アーデルベルト・フォン・シャミッソー
「影をなくした男」

表紙が目を引く奇想な本。微妙な空気は著者の時代体験か。

いかにも奇譚という書名、シャミッソーという著者名、そしてこの、岩波には珍しい?そこはかとなく怪しそうで目立つ表紙絵。ホフマンほか、この時代のヨーロッパの奇妙な話は独特の深い魅力を帯びている。

貧乏なペーター・シュレミールは、職を求めて裕福なヨーン氏の元へ身を寄せる。パーティーで、大きな望遠鏡、トルコ絨毯、はては屋外テント一式や馬具付きの馬といったものたちを、なんと小さなポケットから全部取り出してみせる、灰色の服の男にびっくりする。周りの人々は彼をさして気にかけてないようだ。

そしてシュレミールは灰色の服の男に請われるまま、自分の影と、黄金の金袋を交換する。一瞬にして大金持ちになったシュレミール。しかし、影がないことで不幸に襲われるー。

あの男には影がない!通りがかりの子ども、親しくしていた者たち、婚約者とその家族、果ては悪賢い召使いーまた名前がラスカルときたー、からも疎まれるシュレミール、魂の契約へと誘う悪魔、頂点から奈落へと変転し、悩み苦しむシュレミール。気の弱さがどうも先日読んだコンスタン「アドルフ」のぐずぐずの主人公や太宰の「人間失格」を思い出すような気もする。

しかしながらシュレミールは途中から七里靴を手に入れ、それで物語の風向きが一気に変わる。シュミレールには学があり、知識を活かそうとする才がある。

著者本人は影の意味をしつこく尋ねられて閉口していたという。けれども、物語をシャミッソーの体験になぞらえる解説もまたストンと落ちる気がする。そういう風に書いているのかもだけれど。有名貴族の家に生まれたもののほどなくフランス革命で地位を追われ、幼くしてプロシアの妃のお小姓となって家計を助け、ドイツ人としてナポレオン戦争に従軍した。親族はフランスに帰還していたため、ドイツにいてはフランス人と見られ、フランスは戻るとドイツ人と見られたという。この周囲からの異端視、怖れ、は常にシュミレールが苛まれる、身の置きどころのない雰囲気と一致する。

やがてベルリン大学で自然科学を勉強、このころに「影をなくした男」を書き上げている。その後世界を巡ったシャミッソーは植物学者となり、若い娘と結婚して家庭を築いた。このへんもまあ物語の成り行きと付合する。ふむふむ。

クリスマスだったかと思うけども、気に入っている小さな古書店で小粋な感じで並べられていたうちのひとつだった。お店の方から「この本私も大好きで、手に取っていただけたの嬉しいです」との言葉をいただいた。年末、クリスマス時期はどこか特別な、ファンタジックなフィルターがかかる気がする。すぐに新しい年が来て、雰囲気ががらりと変わるからだろうか。

シャミッソーは本書が書かれた前年に「ウンディーネ」をものしたフケー(フーケ)と交友していた。で、この原稿を入手したフケーは無断でさっさと出版してしまったらしい。「くるみ割り人形」「砂男」のホフマンも影響されたとか。

七里靴はどこか他の物語でも見かけた。この物語発祥なのかどうかは分からない。夢のある話だなと。この好奇心を抱かせるような古典の匂い漂わせる訳も好ましい。

しつこく言い寄る灰色の服の男に対するシュレミール。魔物のほうもどこかおかしくて、奇妙にしつこい。一方でやはり長いスパンや人生に潜んでいるもの、人間の意思、諦念をも感じさせる。影、というのは近しく、無力で、言葉もなく、さまざまな物事を体現する、パントマイムのピエロのようなもの。自身の影を客に呑む李白の「月下の独酌」を思い起こす。

楽しめた。近代ヨーロッパのファンタジー、メルヘン系の奇譚はも少し読んでみたいかな。

1月書評の1

2023初っ端!

◼️アリ・スミス「秋」

ふむふむ。イギリス文壇で評価の高い方。効いてきて、スカッとして、心が軽くなる?^_^

日本で言うと純文学的な形になるのだろう。ストーリーとしては、大学非常勤講師のエリサベスがかつて仲の良かった隣人、不思議な面を持つダニエル101歳を特養老人ホームに訪ねていくこと、シンプルだ。そこに、ほとんど眠っているダニエルの回想、エリザベスの日常で起こる煩雑な出来事、女性ポップアーティストポーリーン・ボティの事、エリザベスの母のこと、などが、時代もバラバラに語られる。

EU離脱の賛否を問う国民投票、ブレグジットが行われて、賛成多数の結果にショックを受けた著者が急いで書き上げたという本書はまた、季節四部作であり、冬春夏と刊行・翻訳されている。

眠る老人、その長い人生には深みとミステリアスなものがあり、ファンタジックさと人間の現実が並び立っているかのように思える。

そしてエリザベスについては、こだわりと、反発、美術とセクシュアリティへの興味、それらを育んだ彼女の人生の歩みなどを描いていて、それが全編を貫く高音のような感じで効いてくる。どこか演劇的に織り込まれる、ザワザワして社会状況もそれを助長する。


解説によれば、アリ・スミスの作品は「たくさんの印象的場面のスケッチ」から成りたっていて「日常的な風景を見事に切り取る言語的手腕」が魅力なんだそう。私的には、慣れが大事かなと。最初は正直よく分からなかった。少しずつ分かってきた終盤に、物語の前進が覚知できて、やはり解説にある「読むと元気になる」「心が軽くなる」という効能もなんとなく分かった。

32歳のエリザベスが愛する人は。そしてダニエルは目を覚ますのかー。

四部作残りと、高評価の長編「両方になる」も興味あるかな。

2023年1月1日日曜日

あけおめ2023

2023、おめでとうございます。

新年の瞬間には、3年ぶり?にカウントダウンイベントが行われているUSJから花火が上がるのが見え、神戸港の船舶が一斉に鳴らす汽笛が聴こえました。私的にはこれこそ新年で、嬉しい限りです。

新時代、はこの未来か。世界中は全部変わるのか。

ここ数年は特にドラスティックなものを感じています。人の力で為すものと、自然の脅威と、両方で。

また今年も驚き、実感する年になるのか。私としては、楽しみつつ、すこうし足りない努力をしてみようかなと。そして今年の年末は何を書いているのかをちょっと楽しみにしています。

先ほどまで書評を書いてました。今年もマイペースで^_^

とまれ、よろしくお願い致します。