【優秀短編集賞】
桜木紫乃「氷平線」
木内昇「茗荷谷の猫」
短編だから、いいものがある。余韻を楽しむのが、短編。
連作短編以外の短編集は苦手だった。何を打ち出したいか、感じさせたいか、どうもよく分からいものが多かったから。しかし今年は、人に聞いて短編集を楽しむ心の体制が整ったところに、良質の短編集を読めたという手応えがある。直木賞作家の女流2人とも、独自のベースを生かした、キレのいい短編集をものしている。
【そんなジャンルがあったか賞】
朱川湊人「花まんま」
直木賞受賞作。これも別の話の短編集。ジャンルは、「ノスタルジック・ホラー」。この作品についてはとにかく読めば分かる。軽めのホラーにノスタルジーが加わると、どんな色が出るのかということを。中盤にある表題作がお気に入り。
【カルチェ・ラタンの意味が分かった賞】
佐藤賢一「王妃の離婚」
これも、直木賞受賞作。中世のパリを舞台に王室の離婚を扱う、人間臭く熱気のあるドラマ。ずっと佐藤賢一は読みたいと思っていた。これも今年体感した新たなジャンルのひとつかな。
【ハードな作りと強いクセ賞】
高村薫「レディ・ジョーカー」
読むのもハードだったが、これは面白い作品のうちに入る。まだ軽い方だというが、作家のクセを大いに感じた作品。
【最優秀外国小説賞】
ウィリアム・サマセット・モーム
「月と六ペンス」
ある意味究極の小説でいつまでも心に残った。「夜間飛行」「君のためなら千回でも」「夏への扉」など他の作品も粒が揃っていた。
【ザ・読み応え賞】
原寮「私が殺した少女」
稲見一良「ダック・コール」
伊東潤「義烈千秋 天狗党西へ」
いずれもどこか感ずるところがあった作品。「ダック・コール」は本当に不思議な短編集だった。
【ベストエンタメ賞】
柳広司「ジョーカー・ゲーム」
「ダブル・ジョーカー」「パラダイス・ロスト」
もはや何も言う必要はない。ファン多きスパイもの。
【期待してるぜ賞】
乾ルカ 三崎亜記
乾ルカの「君の波が聞こえる」は感ずるものがあった。三崎亜記は、脱出する必要があるかな。
【功労賞】
高田郁「みおつくし料理帖シリーズ」
この8月、「天の梯」でついに全10巻完結。大変多くのファンと私の、胸と胃袋を刺激し続けてくれたことに感謝します。ああ、おなか減ってきた。
【ベストスポーツ賞】
金子千尋
「どんな球を投げたら打たれないか」
はらだみずき「スパイクを買いに」
スポーツもの自体あまり読んでないが、文句無し。金子千尋は抜群。はらだみずきの物語は、視点が変わっていて、また気持ちよくさせてくれた。
【泣泣賞】
浅田次郎「鉄道員」
重松清「青い鳥」
「ぽっぽや」は短編なのに、重松清は途中まではクールに読むのに、泣かされた。「青い鳥」はホンマにビックリ。騙されたと思って読む価値あり。
【笑×2賞】
奥田英朗「空中ブランコ」
まあ、笑かしてくれましたね。義父のヅラネタは電車で笑いを堪えるのが大変だった。去年かおととしの西加奈子「通天閣」もこの賞に該当するかな。
【特別賞&表紙賞】
黒柳徹子「窓際のトットちゃん」
そんなちひろの、こどもの絵のような♪
その道の超一級の方がお描きになったから、というのもあろうが、心を捉えて離さない表紙だ。表紙としては、「小暮写真館」もよかったな。
次回はいよいよ大賞発表!
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