2014年12月25日木曜日

2014パパ読書大賞 大賞発表!


いや〜1年は早くって、もうやって来ました。4回目の大賞発表。あくまで個人的なものですが、毎年多少悩みます。前段は短い方がいいので、早速行ってみましょう!

パパ読書大賞、2014年、年間のGRAND PRIXは・・


朝井まかて「恋歌」

でした!

昨年に引き続き、上半期からの受賞。幕末期、陰惨を極めた水戸天狗党の主導権争いと弾圧。題材、また女性の視点から見た幕末史、というのも新鮮だったし、何より文章を超えたパワーを唯一感じた作品だった。素晴らしかったと思う。私はやはり本格派が好きだ。実は「楽園のカンヴァス」と迷ったのだが、僅差で今回こちらになった。

では年間のランキング!

1位 原田マハ「楽園のカンヴァス」
2位 重松清「青い鳥」
3位白石一文「ほかならぬ人へ」
4位宮部みゆき「小暮写真館」
5位朝井リョウ「もういちど生まれる」
6位伊坂幸太郎「バイバイ、ブラックバード」
7位中田永一「くちびるに歌を」
8位梨木香歩「西の魔女が死んだ」
9位夏川草介「神様のカルテ3」
10位北森鴻・浅野里沙子
「邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ」

別ステージ賞

和田竜「村上海賊の娘」
百田尚樹「海賊と呼ばれた男」

1位「楽園のカンヴァス」は、題材といい展開といい映画のようで格好がいい。何が良いかというと、明るい希望が見出せるところが、全体の色彩を豊かにしている。

2位「青い鳥」は、泣かせる戦略と感覚が未だに分からない。中身にそんなに共感したわけでは無いが、それまでがベースとなって最後は感動で震えてしまった。不思議な体験だった。

3位「ほかならぬ人へ」は、やわい2つの中編で、本格派には見えないかも知れないが、深いところで感じるものがある。評価されて然るべきものだと思う。

別ステージ賞の2つは、その名の通りで、ものすごい大河ドラマ過ぎる感じだ。両方それなりに面白かったのだが、不満もあったから選外。ただ壮大なエンタメであることは確かである。

さて、今年は短編を読んだり、海外の名作を読んだり、推理小説をまとめて読んだりと、それなりに充実した年だった。貸してくれたり推薦してくれた皆さんには感謝申し上げます。

このクリスマスには、ホームズものを読んでいる。よく似合うんだこれが。4年間のトータルを数えたところ、400作品に達しようとしている。500を数えた暁には、報告させていただきます。

まだまだ物足りない。来年も、読むぞ〜!

2014年12月24日水曜日

2014パパ読書大賞! その2 各賞発表!

第1部は読了全作品掲載↓↓、第2部は各賞発表!なんか最終ランキング以外、救われない作品が多い気がして、今年は多めに賞を作ってみましたー!ではどうぞ。

【優秀短編集賞】

桜木紫乃「氷平線」
木内昇「茗荷谷の猫」

短編だから、いいものがある。余韻を楽しむのが、短編。

連作短編以外の短編集は苦手だった。何を打ち出したいか、感じさせたいか、どうもよく分からいものが多かったから。しかし今年は、人に聞いて短編集を楽しむ心の体制が整ったところに、良質の短編集を読めたという手応えがある。直木賞作家の女流2人とも、独自のベースを生かした、キレのいい短編集をものしている。

【そんなジャンルがあったか賞】

朱川湊人「花まんま」

直木賞受賞作。これも別の話の短編集。ジャンルは、「ノスタルジック・ホラー」。この作品についてはとにかく読めば分かる。軽めのホラーにノスタルジーが加わると、どんな色が出るのかということを。中盤にある表題作がお気に入り。

【カルチェ・ラタンの意味が分かった賞】

佐藤賢一「王妃の離婚」

これも、直木賞受賞作。中世のパリを舞台に王室の離婚を扱う、人間臭く熱気のあるドラマ。ずっと佐藤賢一は読みたいと思っていた。これも今年体感した新たなジャンルのひとつかな。

【ハードな作りと強いクセ賞】

高村薫「レディ・ジョーカー」

読むのもハードだったが、これは面白い作品のうちに入る。まだ軽い方だというが、作家のクセを大いに感じた作品。

【最優秀外国小説賞】

ウィリアム・サマセット・モーム
「月と六ペンス」

ある意味究極の小説でいつまでも心に残った。「夜間飛行」「君のためなら千回でも」「夏への扉」など他の作品も粒が揃っていた。

【ザ・読み応え賞】

原寮「私が殺した少女」
稲見一良「ダック・コール」
伊東潤「義烈千秋 天狗党西へ」

いずれもどこか感ずるところがあった作品。「ダック・コール」は本当に不思議な短編集だった。

【ベストエンタメ賞】

柳広司「ジョーカー・ゲーム」
「ダブル・ジョーカー」「パラダイス・ロスト」

もはや何も言う必要はない。ファン多きスパイもの。

【期待してるぜ賞】

乾ルカ 三崎亜記

乾ルカの「君の波が聞こえる」は感ずるものがあった。三崎亜記は、脱出する必要があるかな。

【功労賞】

高田郁「みおつくし料理帖シリーズ」

この8月、「天の梯」でついに全10巻完結。大変多くのファンと私の、胸と胃袋を刺激し続けてくれたことに感謝します。ああ、おなか減ってきた。

【ベストスポーツ賞】

金子千尋
「どんな球を投げたら打たれないか」
はらだみずき「スパイクを買いに」

スポーツもの自体あまり読んでないが、文句無し。金子千尋は抜群。はらだみずきの物語は、視点が変わっていて、また気持ちよくさせてくれた。

【泣泣賞】

浅田次郎「鉄道員」
重松清「青い鳥」

「ぽっぽや」は短編なのに、重松清は途中まではクールに読むのに、泣かされた。「青い鳥」はホンマにビックリ。騙されたと思って読む価値あり。

【笑×2賞】

奥田英朗「空中ブランコ」

まあ、笑かしてくれましたね。義父のヅラネタは電車で笑いを堪えるのが大変だった。去年かおととしの西加奈子「通天閣」もこの賞に該当するかな。

【特別賞&表紙賞】

黒柳徹子「窓際のトットちゃん」

そんなちひろの、こどもの絵のような♪
その道の超一級の方がお描きになったから、というのもあろうが、心を捉えて離さない表紙だ。表紙としては、「小暮写真館」もよかったな。

次回はいよいよ大賞発表!

2014年12月23日火曜日

2014パパ読書大賞! その1


今年もやってきました、4年目を迎えた毎年歳末の祭典(笑)、私的年間大賞。

今年は130作品140冊を読み切ることが出来ました。数的には昨年とほぼ同じ。今年は三部構成で、まず、読了全書籍のリストを掲載します。直マークは直木賞受賞作、(数字)は巻数を表します。では早速GOGOゴー!

M・J・トロー
「レストレード警部と3人のホームズ」
ロバート・L・フィッシュ
「シュロック・ホームズの冒険」
ローリー・キング「シャーロックホームズの愛弟子 女たちの闇」
エラリー・クイーン「恐怖の研究」
ピーター・ローランド
「エドウィン・ドルードの失踪」
ダニエル・スタシャワー
「ロンドンの超能力男」
スティーブン・バクスター他
「シャーロック・ホームズの大冒険」(2)
エドワード・B・ハナ
「ホワイトチャペルの恐怖」(2)
キース・オートリー
「ホームズ対フロイト」
テッド・リカーディ
「シャーロック・ホームズ 東洋の冒険」
中山七里「いつまでもショパン」
桜木紫乃「氷平線」
朱川湊人「花まんま」直1
カーレド・ホッセイニ
「君のためなら千回でも」(2)
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖5~栞子さんと繋がりの時~」

1月 15作品18冊

京極夏彦「後巷説百物語」直2
木内昇「茗荷谷の猫」
白石一文「ほかならぬ人へ」直3
石田衣良「REVERSE」
三谷幸喜「清須会議」
浦山明俊
「鬼が哭く 陰陽師 石田千尋の事件簿」
佐藤賢一「王妃の離婚」直4
夏川草介「神様のカルテ3」
沼田まほかる「ユリゴコロ」
高田郁
「美雪晴れ みをつくし料理帖 」

2月 10作品10冊/25作品28冊

高村薫「レディ・ジョーカー」(3)
高橋克彦「空中鬼・妄執鬼」
モーリス・ルブラン「七つの秘密」
浅田次郎「鉄道員」直5
ロバート・A・ハインライン
「夏への扉」
奥田英朗「空中ブランコ」直6
小関順二 「2014年版 プロ野球 問題だらけの12球団」
モーリス・ルブラン
「8・1・3の謎」
北森鴻・浅野里沙子
「邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ」
青山潤「アフリカにょろり旅」
井村君江「アーサー王ロマンス」

3月 11作品13冊/36作品41冊

柳広司「ジョーカー・ゲーム」
山本一力「あかね空」直7
マイケル・ハードウィック
「シャーロック・ホームズ わが人生と犯罪」
天野篤「熱く生きる」
ウィリアム・サマセット・モーム
「月と六ペンス」
朝井リョウ「もういちど生まれる」
松井今朝子「吉原手引草」直8
北村薫「ひとがた流し」
詠坂雄二「電氣人間の虞(おそれ)」
夏目漱石「草枕」
宮内悠介「盤上の夜」
福澤徹三「東京難民」(2)

4月 12作品13冊/48作品54冊

藤田宜永「愛の領分」直9
柚木麻子「あまからカルテット」
有川浩「レインツリーの国」
掛布雅之「若虎よ!」
NHK「ポスト恐竜」プロジェクト編著
「恐竜絶滅 ほ乳類の戦い」
奥田英朗「イン・ザ・プール」
城平京「名探偵に薔薇を」
近藤史恵「タルト・タタンの夢」
アサヒグラフ特別取材班
「ドキュメント 横浜vsPL学園」
宮部みゆき「小暮写真館」(2)
三崎亜記「失われた町」
はらだみずき「スパイクを買いに」

5月 12作品13冊/60作品67冊

ジョン・クラカワー「荒野へ」
夏目漱石「こころ」
近藤史恵「サブァイヴ」
朝井まかて「恋歌」直10
ルイス・キャロル
「不思議の国のアリス」
柳広司「ダブル・ジョーカー」
荻原浩「コールドゲーム」
乙一「箱庭図書館」
村上春樹「女のいない男たち」
乾ルカ「君の波が聞こえる」
石田衣良「シューカツ!」
和田竜「村上海賊の娘」(2)

6月 12作品13冊/72作品80冊

恩田陸「蛇行する川のほとり」
原田マハ「楽園のカンヴァス」
アラン・ムーアヘッド
「恐るべき空白」
朝井リョウ「星やどりの声」
長岡弘樹「傍聞き」
浅田次郎「地下鉄に乗って」
梨木香歩「冬虫夏草」
柳広司
「吾輩はシャーロック・ホームズである」
中田永一「百瀬、こっちを向いて」

7月 9作品9冊/81作品89冊

アントワーヌ・ド・サン・テグジュペリ 堀口大学訳「夜間飛行」
高橋克彦「写楽殺人事件」
原寮「私が殺した少女」直11
稲見一良「ダック・コール」
島田荘司「斜め屋敷の犯罪」
伊坂幸太郎
「アヒルと鴨のコインロッカー」
椋鳩十「黒物語」
高田郁
「天の梯 みをつくし料理帖 」
綾辻行人「十角館の殺人」
乾くるみ
「イニシエーション・ラブ」

8月 10作品10冊/91作品99冊

白石一文「翼」
京極夏彦「嗤う伊右衛門」
筒井康隆「ロートレック荘事件」
道尾秀介「光媒の花」
柳広司「パラダイス・ロスト」
西川美和「ゆれる」
北原尚彦
「ジョン、全裸連盟へ行く」
舞城王太郎「ビッチ・マグネット」
高橋克彦「緋い記憶」直12
百田尚樹「海賊と呼ばれた男」(2)
重松清「青い鳥」

9月 11作品12冊/102作品111冊

ジョナサン・スウィフト
「ガリヴァ旅行記」
桜庭一樹「赤×ピンク」
三浦しをん「仏果を得ず」
三浦しをん「あやつられ文楽鑑賞」
黒柳徹子「窓際のトットちゃん」
カート・ヴェネガット・ジュニア
「タイタンの妖女」
宮下奈都「誰かが足りない」
西山繭子「バンクーバーの朝日」
太宰治「グッド・バイ」
伊坂幸太郎
「バイバイ、ブラックバード」

10月 10作品10冊/112作品121冊

有栖川有栖「ダリの繭」
伊東潤「義烈千秋 天狗党西へ」
森沢明夫「虹の岬の喫茶店」
万城目学「鴨川ホルモー」
北林一光「ファントム・ピークス」
松岡圭祐「ミッキーマウスの憂鬱」
北村想「怪人二十面相・伝」
北村想「怪人二十面相・伝 PARTⅡ」

11月 8作品8冊/120作品129冊

貴志祐介「悪の教典」(2)
金子千尋
「どんな球を投げたら打たれないか」
恩田陸「クレオパトラの夢」
東野圭吾「マスカレード・ホテル」
東野圭吾「マスカレード・イブ」
森見登美彦「四畳半神話体系」
江本孟紀「実は大したことない大リーグ」
中田永一「くちびるに歌を」
水原秀策「サウスポー・キラー」
梨木香歩「西の魔女が死んだ」

12月 10作品11冊/130作品140冊

今年はシャーロック・ホームズに始まり、8月にミステリー月間、11月は、読んだことない作家月間、というテーマを作った。「読んだことない」は来年早々にもまたやりたいし、外国の定番ミステリー、ハートボイルドも興味あり。次回は第2部、
各賞発表!


2014年12月22日月曜日

12月書評の2




12月の読書が充実していると、良い気分になる。毎年だいたいそうだ。サラサラ読めるもの、流行もの、スポーツもの、大河もの、全て必要。みな批判承知の上で書いているのだろう。それでもやはり、本格派が好きだな。来年も、たくさんの出会いを期待している。

森見登美彦「四畳半神話体系」

実験的作品と言えるだろう。やはり万城目学と似てるなあ。

下鴨幽水荘という下宿屋の、四畳半の部屋に住む、「私」は映画サークル「みそぎ」を小競り合いで辞め、2年間を無駄にした大学三回生。人の不幸で三杯は飯が食えるという小友人・小津とともに、京都の街をドタバタと駆け回る。

ネタはバラさない方がいいだろう。けっこう極端な形を取った実験的ファンタジー作品。相変わらず剛腕で押すような部分もあるが、工夫して、色々と小ネタからオチまで考え尽くされている。正直途中からめんどくさくなったりするが、ほのぼのとして憎めないところが救ってくれる。

森見登美彦といえば、「夜はみじかし歩けよ乙女」がもうひとつ合わず、少々敬遠していたが、この作品のテイストと工夫の中に愛すべきところをちょっとだけ見出した気がしている。貸してくれた同僚も、この作品で好きになったと言っていた。

もひとつふたつ、読んでみるかな。

江本孟紀「実は大したことない大リーグ」

活字とNHKはなんとかならないものか。そろそろ「大リーグ」という呼び方はやめた方がいいと思うのだが。

タイトル通り、江本孟紀氏が、アメリカのメジャーリーグのみならずスポーツ報道からウエイトトレーニングに頼りすぎの風潮から、アベノミクスのエクスパンション構想、高校野球におけるタイブレークや球数制限まで、終わったばかりの野球シーズンを例に斬りまくっていく本である。

数字データを用いて論を展開しているものもあれば、感情論もある。伝聞また少ない取材に寄って持論を展開する場面もある。中には野球経験のないライターを揶揄する文章もある。中身には正直賛否両方だが、スカッとする部分が多くあるのも確かだ。

肩は消耗品で球数を厳しく制限するメジャーで、実は中4日で投手を使い倒し、結果としてヒジを故障しトミー・ジョン手術を受ける投手が急増している事実。その一方でアメリカに比して日本の若手にハングリーさが足りないこと。親会社と密着した旧態依然とした球団経営・・。某国営放送がメジャーリーグ中継をものすごい大金で契約していることにも話が及んでいる。

田中マー君が故障した時、日本の高校時の投げ過ぎがクローズアップされたことには「なんで?」とさすがに思ったものだ。一方で済美の安楽投手や前橋育英の高橋光成投手の不調を、直後の海外遠征と秋季大会の関係に結びつけるのは、誰もが感じたことだけに共感は出来る。

まあこの辺は、織り込み済みだろう。今シーズンの回顧と、スパッとエモやん節で言い切ることが目的だろう。ハッキリ言うのも、必要だな、とも思える書である。

中田永一「くちびるに歌を」

少々予想と違ったが、最後はやっぱりちょっと泣かされた。一気読みで寝不足。

長崎・五島列島に住む中学3年生、桑原サトルは存在感が無く、友達もいない「(ひとり)ぼっちのプロ」。仲村ナズナは合唱部員。熱心だった顧問が産休のため、合唱部には自称ニート、音大出の柏木先生が東京から赴任してくるが、その美貌目当ての男子部員が増え、合唱部は混乱する。そして、合唱部に入ったサトル、部長のエリを支えるナズナは、それぞれに家庭の事情をも背負っていた。

なかなかあらすじが難しく、長くなってしまった。当たり前だが、中学生は多感な時期で、元気だったり、落ち込んだり、自分の立ち位置を悟ったり、うまく立ち振舞う術を身に付けたり、うまくやってるつもりがはたから見るとバレバレだったりした。色恋に敏感過ぎることもあった。そういう部分をぎゅっと上手に詰め込んでいるような感じだ。

「百瀬、こっちを向いて」から読んでいると、中田永一、乙一のほうが通りがいいが、は、ある程度パターンづいたキャラクター設定をしているように思える。特に男子。しかし、この作品のストーリーは、「まっすぐの中ひねってる」感もある。

最初は、離島の無垢な子供たちを、都会から来た魅力抜群の女教諭がやる気を出させ、コンクールで優勝させる話、くらいに思っていたので手を出しかねていた。ところが、軽く予想は裏切られ、柏木の、クセのあるバイプレーヤーぶりにちょっと唸った。もう少し柏木の真意や詳しい事情を作っても良かったかな。柏木に限らず、すごく抑制している部分を物語中に感じたのは、気のせいだろうか。

物語の大半は中学生のストーリーであり、幼い部分もあるが、仕掛けもあり、展開は飽きさせない。悪意は少ないがスパイスとして覗く。オチも、まっすぐだ。九州ことばも可愛らしく、懐かしい。

やはり歌は素晴らしい。ラストに近いところは予定調和っぽいんだけどウルウルなってしまう。「くちびるに歌を持て」。年末にしみじみと良い作品に浸れたと思う。

水原秀策「サウスポー・キラー」

野球もの多いな、最近。コンビニで衝動買い。

プロ入り2年め、人気球団オリオールズのエース、沢村航はクールな頭脳派左腕投手で、旧弊な考え方の首脳陣や選手たちともなじんでいない。ある日の試合後自宅のマンションの前で、沢村は正体不明の男に突然殴打され、その後先輩投手のパーティーの会場近くでも暴行を受ける。やがて怪文書がマスコミに発信され、沢村は八百長への関与を疑われる。

基本は1人称のハードボイルドである。2005年の作品、第3回このミス大賞。大変な災難に巻き込まれる沢村の、クールで、意外に多弁で、笑えない冗談好き、という性格がハマっている。ある左腕投手を連想してしまって、おかしかった。

謎が謎を呼び、やがて共通点が見えてくる。そして首謀者は動機に納得できる意外な人物・・。そして魅力的な女性、手強い相手、浮かんでは消える容疑者、だんだんと見えてくる真実の部分も飽きさせない、とサスペンスの王道を行っている。

野球の部分はウエイト・トレーニングをめぐる世代間ギャップや投球の詳細な分析、投手の行動、心理などかなり取材、勉強の跡がありふんだんに盛り込んである。そしてクライマックス、無謀な約束をした沢村のピッチング・シーンは圧巻で、なるほど面白い出来になっている。

難は謎の正体で、オチの部分はそりゃその通りだね、という感じ。人物には動機があるが、理由がまっとう過ぎて、だからってプロ野球の球団がそこまでするか?とかいう疑問が消えず、また得られる満足感が少ない。人とシチュエーション設定への依存度が高いのだ。

主軸となる人物の魅力、展開の仕方、描写などは秀逸だけど、ディテールにもひとつな部分が見え隠れする。でもまあそれなりに楽しめた作品ではあった。

余談だが、私はあまり外国ミステリのベースがない。クイーンはだいたい読んだし、アガサもまあまあ、「樽」「偽のデュー警部」「苦い林檎酒」「深夜プラス1」なんかは読んだけど、その他は勉強不足。この本を語るとき、決まったように出てくるディック・フランシスもいつかと思いながら読んでいない。来年は、その辺も攻めようかな。

梨木香歩「西の魔女が死んだ」

素朴な、名作。対比があって面白い。

中学1年のまいは登校拒否になり、両親に、田舎に住む母方の、イギリス人のおばあちゃんに預けられる。自然の中で規則正しく生活するおばあちゃんのもとで、「魔女修行」に励むまいは元気を取り戻すが・・  

日本の作家で自然を語らせたら梨木香歩の右に出る者はいないのではないだろうか。「家守綺譚」「冬虫夏草」でもそうだが、この方の造詣の深さとその表現、描写、さらに物語への取り込みには恐れ入ってしまう。

この話は短いけれど、とても魅力的なストーリーだと思う。主人公のまいのみならず、祖母と母親との関係、現代的な仕事に携わり多忙で単身赴任の父等々を、おばあちゃんの生活を中心に、多弁でなく浮かび上がらせている。

我が家の祖母も、ジャムを作っていた。土筆を採ってくれば卵であえてくれたし、田んぼでヨモギを採ってきて、てんぷらにして食べさせてくれた。私は、この物語で言う「オールドファッション」に触れた最後の世代かも知れない。

素晴らしい梨木香歩の色。今後も楽しませて欲しい。1年の読書を締めくくるに相応しい作品だった。

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12月書評の1




12月は10作品11冊。ちと野球に寄った月だったかな。まあ面白く過ごせた。では今年最後の月書評。

貴志祐介「悪の教典」

お初の貴志祐介。まあその、このテイストならば・・。2010年下半期の直木賞候補作。

蓮実聖司は晨光学園町田高校の英語教師。さわやかなルックスと巧みな弁舌、切れる頭脳と行動力で、生徒のみならず、先生たちの中でも何かと頼られる存在。しかし、彼には戦慄するような裏の顔があった。

最初は、変わり者の、出来る英語教師として、主人公を描いているが、それがだんだん裏の顔に変わっていくことにかなり気を割いていくのが分かる。学級の描き方も、工夫の跡が見える。後半は、パニック・エンタテインメント。「このミス」1位となったタネ明かしも最後にある。

ひとかどのエンタテインメントである事は疑う余地は無いだろう。しかし、相当な切れ者のはずの蓮実の犯行は、高校生にすら感づかれ、それが原因で極端な行動を取る、という繰返しで、ちょっと鼻白んでしまう。それでスーパーさを強調されてもチグハグ、という印象だ。ミステリー好きのならい、どいうやつで、完成度を求めたくなる。

ひと昔前、綾辻行人の「殺人鬼」という、とにかくバケモノが人を残虐に殺しまくる、というシリーズが人気を博した事があった。想像の世界のみに許されるハチャメチャさを人は歓迎する。私もそうだし、今回はそこに学園もの、という要素も上手に加えてあるのだが、好みでいうともうふたつ。親世代で面白いという人は少数では?

ただこの作品が世に受けたのも事実。直木賞の選考で、宮部みゆき氏は、ハスミンかっこいい、という読者がいるのも、その読み筋に驚いて、眉をひそめる読者がいるのも、この作品の勝利。単独犯での大量殺人、という扱いにくいテーマを恐れなかった、と評価していた。新しい小説、と捉える向きも文壇にはあるようだ。批判も多いし、私もどっちかというとそうだけど。

貴志祐介氏は新世代の作家さんだと思っていたが、自分よりはるかに年上と知ってびっくり。そのパワーには敬意を表したくなった。

金子千尋
「どんな球を投げたら打たれないか」

いやー、野球好き、めちゃくちゃ面白かった。

今シーズン、16勝5敗、防御率1.98で最多勝、最優秀防御率、そして沢村賞を受賞した
、オリックスバファローズの金子千尋投手の本である。

数年前に読んだ、渡辺俊介投手の「アンダースロー論」、題名は忘れたが、岩隈久志投手の本、古くは桑田真澄投手の著書など、現役の投手の作品を読むのはそもそもとても興味深い。それがその時のプロ野球トップ選手の「リアル」だからだ。

その中でもこの本は抜群に面白い。独自の思考を細やかに書いてくれていること、変化球についての詳しい説明、実際の試合を追いながらのピッチングの組み立てについての言及など、中身もこれまでのものとはひと味違う感じだ。

何より読者として嬉しいのは、説明しにくい感覚的なことを、何とか言葉で理解してもらおうと工夫している跡が見えること。

私は週刊ベースボールがよく特集する「魔球の投げ方」、ようはプロ野球の変化球の握りなどをクローズアップするもの、などが大好き。だから、個人的にはやはり変化球の項が楽しかった。また、パワーシンカー、パワーカーブ、ナックルカーブという今風の変化球の話も大変嬉しい。

いかに細かいところまで頭を使って行動しているか、固定観念を覆したスプリット・フィンガード・ファストボールの習得、変化球への考え方、気の持ち方など、独特なものもあるが、ほとんどは納得出来て、感じ入るところも多い。

元プロ野球選手の経営するお店で聞いた話、「プロ野球選手の中でも、一流と言われる人は、ちょっと違う考え方を持っている。」というのが頷けた気がした。

やっぱたまにはスポーツものは必要だね。

恩田陸「クレオパトラの夢」

「なんだわ」言葉は恩田陸の特徴だな、やっぱり。

女言葉の麗人、神原恵弥。アメリカの製薬会社に勤める恵弥は、双子の妹、和見の住む、北のH市を訪れる。不倫相手の研究者を追いかけて行った妹を連れ戻すためだが、恵弥にはもう一つ、「クレオパトラ」という目的があった。

2003年の作品。私は数年前、「恩田陸読破計画」を立てたが、歩みはのろい。こうして年間数作を読んでるだけだ。とりあえず「ロミオとロミオは永遠に」「ねじの回転」は上下巻なのですっとばして、次は「禁じられた楽園」か、クセが強そうな「Q&A」と既読をすっとばして、「夏の名残りの薔薇」かな、と思っている。一応出版された順番にチェックしている。これまで面白かったのは、
「六番目の小夜子」「球形の季節」「ネバーランド」「ドミノ」「黒と茶の幻想」、そしてやはり、「夜のピクニック」かな。主人公で言えば、少女マンガ的ではあるが、水野理瀬シリーズがけっこう好きである。

さて、「クレオパトラ」。神原恵弥は「MAZE」の主人公だったらしいが覚えていない。最初に書いた、「なんだわ」言葉、つまり女性らしい、過ぎる言葉遣いは恩田陸の特徴だと受け止めているが、それを男の恵弥に言わせているところが遊び心の一環だろう。確かに、一種の、物語を落ち着かせる、もしくは主人公のスーパーぶりを際立たせる効果はあるなあ、と思ったりした。ちなみに以後、神原恵弥シリーズは出ていない。

ミステリーのネタ、「クレオパトラ」の正体はやがて明らかになるが、けっこう飛躍があるオチ。それよりは、登場人物たちの小さな謎をぐるぐると描く、H市の旅情をも盛り込んで、その成り行きを楽しむものとなっている。

どっから見ても丸わかりのH市は、これも遊びの一環なんだろか。まあミニな恩田テイストを楽しむ一作だろう。

東野圭吾「マスカレード・ホテル」

この作品を読みきった日は、たまたま外国人にバス停でガイドした。英単語を駆使してなんとか、だったが、理解してくれたときの満足感に、ついホテルマンを思い出した。こじつけなんだけどね。ちなみに日本語を読めない方々は、平日と休日ダイヤの違いに当惑うようだった。

サスペンス・エンタテインメント。やっぱ東野圭吾は読者の楽しませ方を知って、徹しているな。

東京駅近くの一流ホテル、コルテシア東京のフロントクラーク、山岸尚美は、刑事に対しての、ホテルマンとしての教育係を命じられる。ホテル内で起こるであろう殺人事件に関する協力だというのだ。しぶしぶ承知する尚美だったが、クラークを装う役の新田刑事は、ぶっきらぼうな男だった。

テレビドラマのような設定と進行だ。ホテル特有の様々な客が引き起こす小さな事件を交えつつ、大きな謎を解決していく。長めの作品だが、一気に読めてしまう。ホテルものの小説はそれなりに有るが、多分初めて。クレーマーとその対処の現実などが分かって面白かった。

謎そのものについては、本編中にも触れられているが、正直を言うと手が込み過ぎている印象である。ミステリーというよりはやっぱサスペンスかな。

ただ作者は幾つかの暗合も駆使していて、なかなか面白いし、真相もタイトルに準拠していて、さっぱりとまとまっている。東野圭吾作品は、やっぱり楽しめる逸品ではある。

東野圭吾「マスカレード・イブ」

甲子園ボウル観戦中。関学、強いな。
オリジナル文庫。「マスカレード・ホテル」前夜のお話。

ホテルのフロントクラーク尚美、警視庁刑事の新田。それぞれの若き時代の話の短編や現在の事件、尚美と新田が微妙に交差する中編が入っている。

統一テーマはやはり、仮面、覆面というものだ。大人の苦味を効かせた事件集。未読の方は、こちらの方から先に読んだら面白いかも。東野圭吾流エンタメ全開だ。

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2014年12月20日土曜日

時は2015年





月曜日、年内最後の出張をしてきた。香川県丸亀市。人気のうどん屋さんに連れてってもらって、かまたまうどんを食べて満足。新大阪から岡山まで新幹線、特急に乗れば1時間半で着く。東京の時のように本読んでのんびりしてたら、あっという間に着いてちょっと焦った。

用は、来春の仕事の下見である。もう来年、2015年体制。小学生の頃、ノストラダムスの大予言の年、1999年は何歳だなあ、と考えてたころからすると、なんて遠くへ来ちゃったんだろう。

どうという事もないのだが、書評、レビューを投稿しているコミュニティに内紛らしきものが起きていた。レビューアーランキングがあって、私は現在70位台にいるのだが、すごい人は凄く、上位10人なんて、ものすごい活字の達人たちで、本当にたくさん読んで投稿している。素直に尊敬する。

んで、1位にランクされてる人は紹介本について詩を書いているだけで、書評ではない、いかがなものか、と10位以内の別の方が言い出し、ひとくさり書いて、コミュニティをやめた模様だ。常連さんの間に波紋は広がり、批判の声もあったが、数日後、ひとくさりのクレーム投稿は削除されていた。

まあ正直どうでもいい。私は自分の書評をアップして、他の人のレビューをふんふんと見るだけで、あまり熱心にお友達活動はしてないしする気もない。ネットが普及し始めた頃あるチャットコミュニティの常連だったが、そこも好き嫌いなどあった模様で、残念ながらそんな事は必ず起こってくるようだ。首を突っ込まないのが吉である。

水曜。えらい寒い。帰りはそうでも無かったが行きは顔が凍りそうになった。そんな中、山を下ったバス停まで道半分のところでケイタイを忘れた事が発覚、寒い中、登りの道を戻り、バス1本遅れた。友人夫妻の娘さんが入り用だそうで、交響曲のスコアを貸して、と仰せつかっていて、いつもの電車に乗ってくる友人なので、きょうはこりゃ遅れた、しまったと思ったらその友人、なぜか同じ遅れた電車に乗り込んできて、手間なく渡せた。どってこたないが、不思議なもんである。

水曜。寒ーい。朝うっすらと雪化粧。滑って遭難しないようガッチリした靴を履いて行った。最近異動してきた後輩を、おしゃれな、しかしギョーザだけの店に連れてったら、大げさなくらい喜んでくれた。最も寒い仕様の格好をしていって、帰りに同僚女子に「あんた、モコモコやんか」と突っ込まれる。腕が回りません。風があってひどく冷たい。息子とくっつきあって寝る。

木曜。仕事を振られて急に忙しくなった。朝コンビニで「このミス大賞受賞作」と帯で触れ込みが書いてあった本を衝動買いしたが、2007年発行の本だった。コンビニに置いてたら新作と思うぞ。ビニールしてあって中見れなかったし。コンビニがよくやる手口で、はっきり言って詐欺だと思う。でも読む。ちょっと最近本を買い過ぎかな。

寝かしつけた後、読書に引き込まれ、中田さん永一「くちびるに歌を」読了する。

翌金曜日は寝不足。朝、いつかの外国人のおばさんがバス停から帰って行くところに出くわす。まだ分かんないのかな。

「Go  back  home?」と声を掛けると、先方も思い出したようで、

「Oh yes.  Don't  worry.  Ba〜ye!」

と返してきた。ふうむ。別にいいけどさ。

昼はトンカツ、帰ったら食卓にトンカツ。だいたい予感で避けられるものだが、神通力も消えたかな。ビールを飲んで和む。寝かしつけ時寝入ってしまい朝方起きて風呂入る。

拾っていくとなにかとあるもんだ。今後もこのテュリャテュリャ方式を、たまに使おうっと。

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2014年12月16日火曜日

暦の上ではDecember



タイトルに、意味はあんまりない。それにしても師走は早いなあ。写真は月と木星。

先週は年内最後の東京行があって、御茶ノ水から横浜へ。合間に友人にも会えた。横浜の低価格ホテルは狭くて昼間も暗かったが、ロフト構造でスペースを活用していて、こざっぱりとした印象だった。無料の朝食も思ったより充実してたし。

その 朝ご飯は、パンのみと最初聞いてたので、食堂入り口にあったパンをひょいひょいと大皿に入れ、サラダも他の惣菜も同じ皿に取って奥へ行くと、なんと、どどんと炊飯器が。のりもふりかけも生卵も完備されていた。この誘惑には耐え切れず、パン食べた後に卵かけごはんをいただいた。(笑)

新横浜は駅から道を渡った街にホテルが固まっているので行きやすい、帰りやすいで重畳である。

木曜は晩ごはん入るかもがアテが外れ、同僚とノンアルコールサクめし。映画を良く見ている人で、一時期のヨーロッパ・アジア映画の話で盛り上がった。あのころは、よく観に行っていたものだ。イキっていた。楽しかった。幸せな若い日々だった。

金曜朝バス停に行ってみると、やや年配の女性の先客がぽつんと後ろのベンチに座っている。屋根付きのベンチ、その後ろに広いベンチと座るところは多いのだが、だいたい私が行くタイミングは前のバスが行ったばかりで通常待ち人がいない。私がいつも通りバス停の標識柱のところに立つと、先ほどの先客が隣に来て、時刻表を覗き込み始めた。こうする女性は困っていることが多いので少しして離れなければ声を掛ける。

「何かお困りですか?」 「ahー.JR Nishinomiya?」

アジア人種で、日本人といっても通じそうだが、思い切り英語だったんでびっくりした。 まずはネクストバスはこれだ、と指差す。彼女の顔は明るくなるが、次のバスはJR西宮までは行かない。さくら夙川までだ、と単語で教える。彼女が「ハンキュウシュクガワ、ワカリマス」と日本語で言ったのでそれも活用。

「ネクストバス、ハンキュウシュクガワ、JR サクラシュクガワ、ストップ。ノットゴーJR ニシノミヤ。バット、JRレイルウェイ、サクラシュクガワ、ユーライド、ネクストステイションイズニシノミヤ。」

ようはJR西宮までは行かないけど電車なら行けるよー。と言ったつもり。彼女は意味を理解したようだったが、どうも希望がもひとつ分からない。

JRニシノミヤまで直接行くバスはしばらく来ない、と指差す。すると彼女はこっちの時刻表はなんだ、と言う。イッツ ハラデー。さらに、15あたりを指差して、12より先の数字はなんだ、と訊いてくる。イッツスリーピーエム。これも理解してくれた。なるほど、日本語しか書いてないと平日休日は、外国の人にとっては確かに不思議な数字の並びになる。漢字にヒントを得ないということはこの人の出身は中華圏ではないのかな。また、外国では24時間表示は使わないのだろうか。

もうひとつの標識柱の方へ行き、こちらは、と言う。ハンシンバス。「オー、ハンシンニシノミヤデモOK。」しばらく来ない、と数字を指差すと、OK、サンキューとバス停を離れ、山を登る方へ歩いて行った。 タクシーなら山を降りる方向だよ、と言いかけたが、このような朝にこんな山のバス停にいるのは、近くのどこかに住んでいる、もしくは泊まった可能性が高い、と思い直す。時間があると知って家に帰ったのだろう。JRを使えばいいのに、それにしても目的地を訊けばよかったな、と思いつつ見送る。

この日は人間ドッグ。間を1回抜かして5年ぶり3回め。関西は・・とは言いたくないが、東京に比べて人も多くなく、広く綺麗で丁寧なクリニックだった。昼の部だったので、朝ごはんは食べられたが、9時以降は水もダメ、はひさびさちょっときつかったかな。2時間で終了。いつも思うがやっぱバリウムはなかなかハード。食事券を貰ったけど、ランチタイムは過ぎていて後日。腹減ったので、コンビニでおにぎりと肉まん。美味かった。

土曜はゆっくり寝て、天皇杯決勝を観戦。ガンバは強い。あっという間に宇佐美が先制点をゲット、そしてカウンターから追加点。山形も高い位置からプレッシャーをかけて、奪って攻める形がサマになっていて、粘り強くワンタッチで繋いで攻め込んでいく。ディエゴが中心。こりゃ、そこいらのJ1のチームより強いわー。しかし得点が取れない。後半ようやく山形が1点を返すが、すぐに宇佐美のミドルシュートで3-1。勝負は、決まった。ガンバ3冠!すごいね。

夕方本読んで、夜は息子とトランプ。神経衰弱とスピード、もはやなかなか勝てない。寝かし付けて、恒例のふたご座流星群観測。

風呂でなるべく温まり、ほこほこした身体でダウン着込んで熱いコーヒー持って行って、屋上テラスで40分強粘ったが、2個を捉えたのみ。視界の端では流れてるように感じるんだけど、判然としない。去年は10個は観れたのに。寒いしやめ。

翌日曜日、日本海側大雪だけど、こちらは陽が差して、閉めておきさえすればベランダ側は暖かい。ワンコを膝に乗せ、しばし読書タイム。東野圭吾「マスカレード・ホテル」「マスカレードイブ」読了。 その後甲子園ボウルをテレビ観戦。関学強いな。

夜はふたご座流星群に再チャレンジ。寒かった足に毛布をかけて、20時ごろから粘る。この日21時にピーク。すると今度は明るめのものを6個観測。スーッ、チカッという感じ。まずまず満足。。でもやはり耐えている時間のほうが長いな。

次の目標は真夏のペルセウス座流星群か。セカオワだな。息子が音楽クラブでやっているのでRPGは最近の鼻歌。 年末だし、1回くらい歌いたいのう。

2014年12月8日月曜日

ドメスティック・サッカー・クライマックス





この週末、土曜日は、外出しようかと思ったが、あまりに寒く取りやめ。妻子が外出している午前中はワンコとソファで一緒にいて、オリックスの金子千尋「どんな球を投げたら打たれないか」を精読。今季最多勝、最優秀防御率、パ・リーグMVPにベストナイン、そして沢村賞を受賞したピッチャーの、丁寧に書かれた作品だった。

変化球へのこだわりが利いていて、めっちゃ面白かった。そもそも週刊ベースボールがたまにやる、変化球の握り方などの解説企画「魔球の投げ方」など大好きである。今回はトップ選手のリアルがよく分かり、またパワーカーブ、パワーシンカー、ナックルカーブ等々今風の変化球についても書いてあって、大いに楽しめた。

妻子帰ってモスバーガーの昼食をいただき、少しだけ寝る。1530からはいよいよJリーグ最終節。浦和と勝ち点で並び得失点でリードしているガンバは、最下位で降格が決定している徳島とアウェー戦。常識的にはガンバの優勝だが、そうすんなり行くとも思えない。

案の定ガチガチに守る徳島。こうなるとなかなか点は取れないしガンバの動きも硬さが目立つ。途中浦和リードの報。ドキドキしながら見ていると、なんと浦和は名古屋にひっくり返された。アディショナルタイム、プレーが切れたところで、遠藤がベンチに確認、ガンバはボール回しに徹し引き分け。浦和はそのまま敗れガンバの優勝が決まった。

ガンバの長谷川健太監督は、今季初めに「復活というのはJ1に戻ったということではなく、優勝争いもしくはタイトルを獲って初めて復活と言える。」という意味のことを言っていたが、前半は降格圏にいたのに、J1昇格即優勝とは驚きだ。長谷川監督の喜びを見ていたら、少し感動した。

Jリーグの最終節は、1シーズン制だというのにドラマが生まれることが多い。今年もそうだったと思う。それは観ている方としてはいいが、気になるのは正直決定力の弱さである。

徳島の頑張りは確かに素晴らしかった。エステバンの気の利いた働きには感心した。しかし、カウンターでいいチャンスもあったのに、決める方法がないかのようなアタックには首を傾げてしまった。ガンバにしてももうひとつ決め手がないままだったし、ふかすシュートが多過ぎた。

名古屋の攻撃力は確かに良いが、浦和もチャンスを外している。また、清水がスコアレスドローで残留を決めたが、相手の甲府も7試合負けなしとなった。失点得点ともに極端に少ない甲府に代表されるように堅守のチームが目立った今シーズンだったような気がする。外国ならば、という言い方は実は嫌いなのだが、強いチームは大事な所ではなかなか落とさない。なでしこリーグも含め、決定力があまり上がらない印象が残った。

夜は関ジャニでMayJ4番勝負を見て、沢田知可子ってやっぱうまいなと思う。

翌日曜日も寒かったが、朝から髪チョキチョキ。日陰は寒いが、陽が差して、風が冷たくない。さっさと昼にはお家へ帰る。きょうもお出掛けしていた妻子、ほぼ同じくらいに帰ってきて、野菜炒めラーメンのランチ。コーヒーにおやついただいて、きょうはJ1昇格プレイオフ決勝、ジェフvs山形。

勢いはなんつったって山形。準決勝アディショナルタイムでのゴールキーパーヘディングゴールJ史上初の印象が強烈。これであの磐田をうっちゃったのだから衝撃もあった。ジェフは関塚隆監督になってから強くなって3位。山形は百戦錬磨の石崎信弘監督。

前半、コーナーキックから山形先制。37分という良い時間帯で、前半の残り時間は少なく、後半ジェフは猛攻を仕掛けたい、でも2点目を取られたら終わり、というジレンマに晒される。ジェフはリーグでの順位が上で引き分けでも昇格だから、全てを賭けるわけではなく、普通の試合運びで1点取れたらという意識もあったのではと思う。ここぞと前線で活発なプレスを仕掛ける山形。どちらも運動量がハンパない。ジェフもチャンスはあったが、山形はGK山岸のファイン過ぎるセーブで切り抜ける。ついに試合はこのまま終了。時の運をものにした山形がJ1昇格最後の椅子をゲット、次週は天皇杯決勝でガンバと闘う。

J1に比べれば、まだ見応えのあった試合だったが、最終的な感想は同じ。こういう試合で違いを作り出せる選手がいないなあ、と思う。0-1も正直寂しいスコア。在りし日のストイコビッチなんか、大試合にこそ強かったけどな。

昇格プレーオフは、始まってから3回目。過去は6位の大分、4位の徳島が勝ち抜いているが、いずれも最下位で、1年でJ2に落ちている。来季の山形の出来如何では制度の問題を問うべきだろう。

ちょっと洋服の整理をして、本は、貴志祐介「悪の教典」と金子千尋を続けて読んだので気分的にちょっとお休みで、寝る。明日は雪で中止になった最終節1試合。

女子も一緒だけど、リーグ終わったらアウォーズをやってから天皇杯・皇后杯って、なんかサッカー界独特だな、といつも思うのでした。終わり。
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2014年12月1日月曜日

11月書評の2

来月は年間大賞の発表!
お楽しみに!

北林一光「ファントム・ピークス」

そう来たか、というネタだった。迫力はやはりある。

三井周平の妻、杳子は地元安曇野の山中で失踪し、半年後、少し離れた地点で頭蓋骨が発見される。それから程なく、山に来ていた若い女性、祖父の元に来ていた娘と孫が相次いで行方不明となった。

ちょっとぼかして書いているが、私は一昨年の年間ランキングでネタとして関連のある話を最上位にしているし、この物語中にも紹介されている、別の作家の、実在の惨劇を扱ったものも読んでいる。これらの話を現代に持って来たパニック・エンタテインメントだ。

これはブックオフの文庫人気ベスト100を見て買ったものだ。なるほど、迫り来る生々しい危険の迫力を感じるし、また「釣りキチ三平」も思い出すし、アラスカの写真家、故星野道夫氏の自然観に基づく考え方も導入されているようだ。

ここまで言うと何だか分かってしまう方も居るだろう。否定はしないし、ゾクゾクし、夜を徹して一気読みしちゃったし、会話に非常に力点が割かれ、映画の台本のようになっているところにも特徴がある。面白いことは間違いない。

ただまあ、最初の一行が正直な感想だったこともまた間違いない。

松岡圭祐「ミッキーマウスの憂鬱」

これもお初の松岡圭祐。ネタがなかなか興味深い。

ディズニーランドに準社員として入った後藤は、美装部員として仕事を始めるが、着ぐるみの着付けや部屋の掃除など、期待外れの仕事ばかり。さらに、運営会社の正社員と準社員とが、はっきりと色分けされている現実を知る。

この作家さんは、取材が上手なようだ。本の場合、本の内容は実在の事件をモデルにしたものなのか、どういった取材をして、取材先とのようなやりとりがあったのかは、シビアなものになるにつれ、何も書いていないのが通例だ。

普通に読んで、決してプラスばかりではないことやバックステージの描写もあるが、内容からして、ちゃんと取材してデフォルメしているのだと思う。恐らくは史上初のTDL小説としてひとつの価値を放っている。

物語の芯は明確で、だからこそポンポンと物事が進んでいくが、やはり展開が映画的で善悪と、キャラクターの性格付けがはっきりし過ぎている部分は合わなかった。

でもタイトルも含め、ひとかどのトピック小説であることは確かだろう。

北村想「怪人二十面相・伝」

いやあ〜好きだから、買っちゃうんだよね。ブックオフにPARTⅡまであったんで、まとめて買っちゃった。数年前に二十面相の映画があったが、その原作になった作品らしい。

昭和8年、妻を刺した父親に心中を迫られた8才の平吉はなんとか逃げ出し、市井のサーカス団に入る。平吉はそこで天才的な腕を持つ、丈吉に芸を教わる。やがて丈吉はサーカス団を足抜けし、行方知れずとなる。

江戸川乱歩さえ言及しなかった、怪人二十面相の正体についてアプローチした本である。戦前戦後の混乱の中、二十面相も明智小五郎も人間くさい描かれ方をしているので、新鮮ではある。

私は今でこそシャーロッキンだが、小学生の頃は二十面相とルパンの大ファンで、図書館にあるシリーズは全部読んでしまった。

その当時の、神出鬼没、というイメージとは、描かれている天才性、というところでは結びつくが、庶民性、という部分では、見てはならないところを見てしまった気分である。このアプローチに触れたのが、子供の頃でなく今で良かった、などと思ってしまう。

明智小五郎の生い立ちなり探偵を志した動機などは無いが、子供の頃は正義の味方だっただけに、こんなに自信家だったかしらと感じたりする。小林少年の性格まで記憶は無いが、今回のキャラクター設定は、なかなか気に入っている。

んー巡り合ったなあ、という感想で、嬉し楽しく読めた。

北村想「怪人二十面相・伝 PARTⅡ」

続編も一気読み。「青銅の魔人」の舞台裏もあったりする。

特攻を志願したが果たせず、平吉は戦後、サーカス団での義兄弟、吉三に再会、やがて吉三が世話になっている中国人、張大元の後ろ盾を得る。ある日、平吉のもとを、病のため余命幾ばくもない明智小五郎が訪ねて来て、先代二十面相に関する資料を渡し、自分の後を継ぐ小林は冷酷な面があるから気をつけろ、と警告する。2代目同士の勝負は。また師の丈吉や、行方不明の母サヨと、平吉は巡り会えるのか。

天才で指向性の強い先代と違い、どちらの2代目も欠点を持つ人間として描かれている気がする。先代に対しクールな割り切りを見せる2代目明智小五郎と、丈吉とサヨに会いたい平吉が奇妙な対比を見せる。

まさに舞台裏、という感じなのだが、やはり人間臭さに焦点を置いているのだろう。最後はメデタシ。シャーロッキンものは多いが、二十面相の本格パスティーシュは初めて読み、それなりに楽しめた。

犯罪者も、探偵も、天性が強い。ホームズは誰にもない天性がありながら、さらに実務的な研鑽を積んでいる。次はそれに向かわざるを得ない、強い動機でも読んでみたいかな。

11月書評の1




今週は久々に土日とも休み。のんびりした。土曜は単独で、日曜は息子と近くにお出掛け。また本買っちゃって、年内に消化できるか状態。やれやれ。

11月は8作品8冊。10日ばかり読めない日があったからまあこんなもんか。ではどうぞー!

有栖川有栖「ダリの繭」

アヤツジストの私。しかし有栖川有栖は初めて。

1993年の作品である。携帯電話が出てこない、というのは微妙にまだるっこし感がある。関西空港が開港している描写があるが、あれは1994年のことで、ちょっと不思議だったりする。

全国展開をしている宝石チェーンの名物社長は画家のダリを信奉し、髭もそっくりに真似している。その社長が自宅にある、リラクゼーションカプセルの中で死体となって見つかった。彼の顔からは自慢の髭が剃り落とされていた。

大阪、灘を舞台に繰り広げられるミステリー。関西の説明がそこかしこに見受けられる。ワトソン役の「作家アリス」は関西弁だ。

まず、ダリについての興味で購入したのだが、少しは言及があったものの、さすがに多くはなかった。謎も、一見エキセントリックで、頭脳的な犯人像を思い描いてしまうのだが、解明されるにつれもうひとつ魅力的でなくなってしまう。立ち回りが、ハデすぎるわりには、動機も実際の犯罪もあまり面白くなかった。

キャストも、探偵役を含めあまり惹かれるものではないかな。もうひとつふたつ読んでみよう、という気がしている。

伊東潤「義烈千秋  天狗党西へ」

お初の伊東潤。これは、先の直木賞受賞作、朝井なつみ、じゃなかった、朝井まかて「恋歌」と合わせて読むといいのではと思う。

時は幕末、攘夷思想の先駆けとなった水戸藩は、内部分裂を繰り返し、身分の高い保守派の武士達で作る「諸生党」は、藩内の激派に対し、志士の家族にまで過酷な弾圧を行った。それを女性的な、残された家族側からの視点で綴ったのが「恋歌」である。

今回は水戸天狗党の道行き、家族を残しての遠くへの長い行軍の話。水戸藩の内部分裂と幕府の関係がややこしいので、訳が分からなくなった部分もあった。

外国から安い綿糸や綿織物が流入、水戸の木綿栽培農家は壊滅的打撃を被り、心中が相次いだ。藤田東湖の息子、藤田小四郎ら天狗党は、「攘夷実行、横浜鎖港」を唱え、筑波山で蹶起する。討幕を目指したものではなかったが、幕府からの追討令のため、小四郎たちは戦いながら、京都の徳川慶喜の元へと長い行軍を始める。

天狗党ものは、島崎藤村の「夜明け前」など多くの作品に取り上げられている。これまで読んだことがなかったが、「恋歌」で初めて読み興味を惹かれた。また伊東潤は、直木賞候補となり、注目していたので、文庫が出て、迷いなく買った。

幕末好きのはずが、水戸を発して、栃木、山梨、果ては信州、越前を経て愛知、岐阜、福井に至る、こんなに長い行軍をしてたなんて全く知らなかった。長い旅の中、同志たちの姿は生き生きと描かれ、戦の中で倒れていくのに寂しさをも感じる。数ヶ月のことなのに、大河ドラマを見ているようだ。

一冊ものとしては長めで時間もかかったが、特に行軍が始まってからは面白く読めた。「恋歌」と違って、既存の歴史小説の枠をはみ出すことはないが、それなりに得心のいく作品だった。

森沢明夫「虹の岬の喫茶店」

サクサクと読めることがポイントか。

タイトルから想像する内容の、期待を裏切らない、ほんわかした話である。

妻に先立たれ小さな娘と2人残された男。就職活動に悩むライダー、夜逃げしてお金が尽き泥棒に入る元研ぎ師。岬にぽつんと立つ「岬カフェ」には様々な人たちが集まり、店主の悦子さんに癒されていく。

どんなもんだろうな・・と思って読み始めたのだが、美味しいコーヒーと音楽、絵画。美しいであろう岬の風景にキレのいいエピソードの連作短編で、トントン読めた。もちろん舞台設定はなにかしらファンタジーめいてもいる。しかし、重いが、重くなりすぎない程度に人間性も炙り出している。

冒頭にも書いたが、このサクサク感がポイントなのだろう。いくつか、ん?と頭を捻る場面があったのも確かだが、けっこう熱中して読めた。

万城目学「鴨川ホルモー」

初の万城目学。いやーけっこう予想外だった。

最初にタイトルだけ聞いた人はやっぱり「ホルモン」を思い浮かべるだろう。これほどタイトルで判断されちゃう本もないかもしれない。

京都大学に入学した安倍は、帰国子女の高村とともに、「京大青竜会」というサークルに入ることになる。安倍はそこで美しい鼻梁を持つ早良京子と出会い、恋に落ちた。杳として知れないサークルの活動だったが、やがて京都の3つの大学と「ホルモー」という不思議な競技をすることが見えてくる。

両方一作ずつしか読んでないが、一言で言えば森見登美彦にそっくりだ。京都が舞台、大学生、そこここに京都の心惹かれる地理案内と知的なウィットを絡めながら、勢いで不思議な世界を押し切る姿勢の青春小説。

中盤はベタな展開に大笑いしたが、なかなか進まないうじうじした部分にはちょっと焦れったかった。

鬼は私は好きだし、不思議な世界に押し付け感がないことにも好感が持てる。映画向きの話で、DVD借りて来ようかな、という気になった。

このデビュー作が話題を呼んだからか、次作「鹿男あをによし」が直木賞候補になり、その後の作品も直木賞候補作となっている。

正直「夜は短し歩けよ乙女」を読んで、森見登美彦はちょっと敬遠してたのだが、この作品に触れ、なぜか彼らの次作も読んでみたくなった。

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