なにせ数を読んだので、その他作品のおまけコーナーを設けまする。自分でも、ランクから落としちゃったけど印象的、というのは沢山あったし、振り返りの意味も込めて。
今年は村上春樹「1Q84」から始まった。6巻からなるこの超長編、暗いが、女テロリストと幼なじみの再会、という、春樹にしては俗っぽいストーリーで、集中して読めた。
中島京子「小さいおうち」
お手伝いさん小説。パンチには欠けるが、よい味わいだった直木賞作品。
船戸与一「砂のクロニクル」「虹の谷の五月」
国際的ハードボイルド。殺しに女、なんでもありで面白かった。「虹の」は直木賞受賞作。
奥泉光「シューマンの指」
耽美派小説。「さよならドビュッシー」あたりとセットにして読んだら良いかも。
京極夏彦「姑獲鳥の夏」
長かったが、途中からずんずん進んだ。発行当時の新機軸のミステリーか。来年は他も読もう。
西加奈子「円卓」
小学生の話。なかなか笑えてほやっとして、いい感じだった。
宮下奈都「よろこびの歌」
女子高生の話。さわやかで微笑ましい作品。
村山由佳「星々の舟」
直木賞。なんか作り過ぎな気もしたが、時折胸を刺した。
綾辻行人「Another」
「館」シリーズもいいが、こちらもまずまず。作家本人もお気に入りのようだ。中学生サスペンス。続編を早く文庫に。
乙川優三郎「生きる」
時代もの。派手ではないが、感じるところもある、渋い良作。
小杉健治「父からの手紙」
あり得ないが、最後の手紙には心を打たれた。
金城一紀「GO」
痛快な作品。やはり直木賞。在日コリアンのお話。
辻村深月「凍りのくじら」
内容、オチともにもうふたつだが、設定と味付けは今年最高。恋愛現役世代ぽい感覚も良。
東野圭吾「真夏の方程式」
舞台はきれい、少年のひと夏の出来事。明快なトリック説明が光る。
桜庭一樹「荒野」
黒猫ちゃん、可愛らしいね。やはり「私の男」が特殊でこちらあたりの方が桜庭本流か。
貫井徳郎「乱反射」
実験的作品と言っていいだろう。色んな人の無意識の悪意が積み重なる。トライに評価。
村上春樹
「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」
ミニな作品だが、なんか、とてもハルキらしいと感じてしまうのは私だけだろうか。
奥田英朗「サウスバウンド」
初の奥田英朗。少年の揺れ動く心も描いているが、なんか途轍もなくハチャメチャで、そこが面白い、ロハスな作品である。
梨木香歩「家守綺譚」
意外に良かった。調べてみると、本屋大賞上位の実績あり。不思議な書生もの。続編ないかな。
相場英雄「震える牛」
巷で人気の本。タイトルで先が見えるが、社会ネタの、警察もの。
薬丸岳「天使のナイフ」
江戸川乱歩賞。ううーん、いまいち感が強かったが、心には引っ掛かった。少年犯罪の話。
恩田陸「黄昏の百合の骨」
いやもう、恩田陸が生み出したお気に入りの主人公水野理瀬が向こうの世界の人で・・。続編あるようなので楽しみだ。
三浦しをん
「まほろ駅前多田便利軒」
直木賞。なんか池袋ウエストゲートパーク的な臭いも。基本はマンガの、三浦さん。
道尾秀介「カラスの親指」
暗い道尾秀介にしては、意外にコミカルだったりして。大きな仕掛けが存在するが・・。
柚木麻子「ランチのアッコちゃん」
中身はマンガだが、なぜか吸引力がある。傑作の類に入るだろう。
乾ルカ「メグル」
最初の作品こそホラー色強いが、どの短編もまずまず色が出ている。素養はあるので、大作を書いて欲しい。
桂望実「嫌な女」
巷で評価が高い本。エリート女弁護士と、女が武器の女との対比。一生を追い掛ける、さらりとした感の本。
葉室麟「蜩ノ記」
色々と考えさせられる直木賞作品。優秀過ぎる武士に心酔する監視役。時代ものパターンだが、完成度が高い気も。
綾辻行人「奇面館の殺人」
こうでなくっちゃの、本格派ミステリー、今回も館、仮面と楽しめました。
近藤史恵
「サクリファイス」「エデン」
ミステリーとして読むというよりは、自転車ロードレースものとして楽しむのが良。日本人選手白井誓・チカが世界に挑む。
坂口安吾「不連続殺人事件」
ミステリー界で傑作とされる作品。言動行動ともに荒いが、謎解きミステリー本道として感心する本。昭和23年の発表とは思えない完成度かと思う。
以上、おまけでした!
2013年12月24日火曜日
2013パパ読書大賞の2
はや3年目を迎えたこの企画。今回はいよいよ大賞の発表です。ちなみに昨年までのランキングを振り返っておきましょう。
2011年
大賞 「リセット」北村薫
1位 「対岸の彼女」角田光代
2位 「モルヒネ」安達千夏
3位 「13階段」高野和明
4位 「パレード」吉田修一
5位 「四度目の氷河期」荻原浩
次点 「ドミノ」恩田陸
「神様のカルテ」夏川草助
2012年
大賞 熊谷達也「邂逅の森」
1位 村上春樹
「国境の南、太陽の西」
2位 柚木麻子「終点のあの子」
3位 宮下奈都「スコーレNo.4」
4位桜庭一樹「私の男」
5位北村薫「玻璃の天」
6位辻村深月
「冷たい校舎の時はとまる」
7位窪美澄「晴天の迷いクジラ」
8位北村薫「スキップ」
9位冲方丁「天地明察」
10位誉田哲也「武士道セブンティーン」
となってました。
今回は、年間大賞を決め、ランキングを発表したあと、過去3年間のベスト5を決めたく思います!ひとつ注意は、かつてランキングが下だからといって、今回もそうでないとは限らないこと。かつての5位が、同じ年の3位を抜かすのもあり、です。
改めて、今年は、ここまで131作品146冊を読むことが出来ました!まあここまで読むのは今年だけだろうなー。詳細はひとつ下のコラムに並べて有りますので見て下さいませ。
ではさっそく行きましょう!
2013パパ読書大賞は・・
藤原伊織「テロリストのパラソル」
と、なりました!初の上半期からの大賞。下半期も他の追随を許さず、トップを守り抜きました。なんか、読書慣れして、心が動きにくくなってきたのかと気にしたりもしています。
抜群のエンタメ性、息もつかせぬ展開、そして、横たわる、お気楽さ加減。全てがマッチした作品。そんなにサスペンス&ドンパチ好きではなかったはずなのにな、と思ったりもしますが、面白いことこの上なしです。
さて、年間ランキング。
1位 木内昇「漂砂のうたう」
2位 朝井リョウ
「桐島、部活やめるってよ」
3位 山本兼一「利休にたずねよ」
4位 乾ルカ「あの日にかえりたい」
5位 山本兼一「火天の城」
6位 天童荒太「悼む人」
7位 西加奈子「通天閣」
8位 道尾秀介「月と蟹」
9位 三崎亜記「となり町戦争」
10位 夏川草介「神様のカルテ2」
以上、断腸の想いでランキング付けしました。粒揃い、という自信は有りますが、まあ好みなので。
木内昇「漂砂のうたう」
明治維新から10年、落ちぶれた武士の苦悩を純文学的に描く。暗いが、様々な要素と仕掛けが、計算のもと
文章以上の効果を出している。ブンガク作品を読んだ!と読後に充実感に浸れる一冊。
朝井リョウ
「桐島、部活やめるってよ」
瑞々しさが印象として消えない。このところ高校生ものといえば女性作家が目立っていたが、若い男性の目の付けどころに感心した。
山本兼一「利休にたずねよ」
濃厚で濃密。描写とディテール、主人公の迫力が凄まじい。章立ての妙も含め、まごうことなき直木賞作品。
次点はいっぱいありすぎる。さまざまな形で感性を刺激してくれた、全ての作品に感謝。
という訳で、3年間のベストオブベストランキング!選考は困難を極めましたわよ。
1位 北村薫 「リセット」
2位 熊谷達也「邂逅の森」
3位 宮下奈都「スコーレNO.4」
4位 藤原伊織
「テロリストのパラソル」
5位 角田光代 「対岸の彼女」
と、なりました!
最後は好き、で選んだな。5作品中、直木賞受賞作が3つ、候補がひとつ、ノーマル、というか目ぼしい賞を受けてないのは「スコーレNO.4」だけ。
「リセット」はやわいファンタジーかも知れないが、北村薫はやはり、好きである。大筋とディテールの合致、独特の筆致というところに惹かれている。少し前の作品で、リアルでギスギスし気味な昨今の作品群の中、ほっとする部分もある。2位以下も、私にとってはいずれ劣らぬ名作ばかりだ。「邂逅の森」は迫力を感じたし、「スコーレNO.4」は女性的視点からの超名作だと思う。「テロリストのパラソル」は前述の通り。「対岸の彼女」も女性的視点だが、男性にも訴えかけてくる。
そして、3年間の前の1年、私が本を読み始めたころ、これまでで最も衝撃を受けたのは
角田光代「八日目の蝉」
だった。読了した瞬間、呆然としたのも、続編を書いてでも何とかしたい、と思ったのも、これが最初で、今のところ最後。私の中では、別格の作品。ベストセラーだから、本好きの方はお読みだろうが、もし未読ならばぜひ読みましょう。NHKのドラマもDVD借りてきて見ましょう。
ランキングは難しい。面白い、というのと、構成技術、表現的にキレキレなもの、表面的には面白くないが、感性の深いところへ訴えかけたり、文章を超えた迫力があるもの、それぞれある。どれを上位につけるかなんて、その時の行き当たりばったりだ。印象は、薄れたり、逆に時が経つほど強まったりするし。
しかし、よく読んだ1年だった。来年も、今年ほどではないだろうが、また読んで行きたいと思っている。来年のテーマは、月ごとのテーマ付け。1月はシャーロッキアン本に決めていて、その後推理小説、いわゆる洋書、などを考えている。まああんまり縛りすぎると良くないかもなので、うまい塩梅にしよう。
全国のみんな、元気に読書してますか?この稿、最後までお読み頂き、ありがとう。来年も、よろしくね!
2011年
大賞 「リセット」北村薫
1位 「対岸の彼女」角田光代
2位 「モルヒネ」安達千夏
3位 「13階段」高野和明
4位 「パレード」吉田修一
5位 「四度目の氷河期」荻原浩
次点 「ドミノ」恩田陸
「神様のカルテ」夏川草助
2012年
大賞 熊谷達也「邂逅の森」
1位 村上春樹
「国境の南、太陽の西」
2位 柚木麻子「終点のあの子」
3位 宮下奈都「スコーレNo.4」
4位桜庭一樹「私の男」
5位北村薫「玻璃の天」
6位辻村深月
「冷たい校舎の時はとまる」
7位窪美澄「晴天の迷いクジラ」
8位北村薫「スキップ」
9位冲方丁「天地明察」
10位誉田哲也「武士道セブンティーン」
となってました。
今回は、年間大賞を決め、ランキングを発表したあと、過去3年間のベスト5を決めたく思います!ひとつ注意は、かつてランキングが下だからといって、今回もそうでないとは限らないこと。かつての5位が、同じ年の3位を抜かすのもあり、です。
改めて、今年は、ここまで131作品146冊を読むことが出来ました!まあここまで読むのは今年だけだろうなー。詳細はひとつ下のコラムに並べて有りますので見て下さいませ。
ではさっそく行きましょう!
2013パパ読書大賞は・・
藤原伊織「テロリストのパラソル」
と、なりました!初の上半期からの大賞。下半期も他の追随を許さず、トップを守り抜きました。なんか、読書慣れして、心が動きにくくなってきたのかと気にしたりもしています。
抜群のエンタメ性、息もつかせぬ展開、そして、横たわる、お気楽さ加減。全てがマッチした作品。そんなにサスペンス&ドンパチ好きではなかったはずなのにな、と思ったりもしますが、面白いことこの上なしです。
さて、年間ランキング。
1位 木内昇「漂砂のうたう」
2位 朝井リョウ
「桐島、部活やめるってよ」
3位 山本兼一「利休にたずねよ」
4位 乾ルカ「あの日にかえりたい」
5位 山本兼一「火天の城」
6位 天童荒太「悼む人」
7位 西加奈子「通天閣」
8位 道尾秀介「月と蟹」
9位 三崎亜記「となり町戦争」
10位 夏川草介「神様のカルテ2」
以上、断腸の想いでランキング付けしました。粒揃い、という自信は有りますが、まあ好みなので。
木内昇「漂砂のうたう」
明治維新から10年、落ちぶれた武士の苦悩を純文学的に描く。暗いが、様々な要素と仕掛けが、計算のもと
文章以上の効果を出している。ブンガク作品を読んだ!と読後に充実感に浸れる一冊。
朝井リョウ
「桐島、部活やめるってよ」
瑞々しさが印象として消えない。このところ高校生ものといえば女性作家が目立っていたが、若い男性の目の付けどころに感心した。
山本兼一「利休にたずねよ」
濃厚で濃密。描写とディテール、主人公の迫力が凄まじい。章立ての妙も含め、まごうことなき直木賞作品。
次点はいっぱいありすぎる。さまざまな形で感性を刺激してくれた、全ての作品に感謝。
という訳で、3年間のベストオブベストランキング!選考は困難を極めましたわよ。
1位 北村薫 「リセット」
2位 熊谷達也「邂逅の森」
3位 宮下奈都「スコーレNO.4」
4位 藤原伊織
「テロリストのパラソル」
5位 角田光代 「対岸の彼女」
と、なりました!
最後は好き、で選んだな。5作品中、直木賞受賞作が3つ、候補がひとつ、ノーマル、というか目ぼしい賞を受けてないのは「スコーレNO.4」だけ。
「リセット」はやわいファンタジーかも知れないが、北村薫はやはり、好きである。大筋とディテールの合致、独特の筆致というところに惹かれている。少し前の作品で、リアルでギスギスし気味な昨今の作品群の中、ほっとする部分もある。2位以下も、私にとってはいずれ劣らぬ名作ばかりだ。「邂逅の森」は迫力を感じたし、「スコーレNO.4」は女性的視点からの超名作だと思う。「テロリストのパラソル」は前述の通り。「対岸の彼女」も女性的視点だが、男性にも訴えかけてくる。
そして、3年間の前の1年、私が本を読み始めたころ、これまでで最も衝撃を受けたのは
角田光代「八日目の蝉」
だった。読了した瞬間、呆然としたのも、続編を書いてでも何とかしたい、と思ったのも、これが最初で、今のところ最後。私の中では、別格の作品。ベストセラーだから、本好きの方はお読みだろうが、もし未読ならばぜひ読みましょう。NHKのドラマもDVD借りてきて見ましょう。
ランキングは難しい。面白い、というのと、構成技術、表現的にキレキレなもの、表面的には面白くないが、感性の深いところへ訴えかけたり、文章を超えた迫力があるもの、それぞれある。どれを上位につけるかなんて、その時の行き当たりばったりだ。印象は、薄れたり、逆に時が経つほど強まったりするし。
しかし、よく読んだ1年だった。来年も、今年ほどではないだろうが、また読んで行きたいと思っている。来年のテーマは、月ごとのテーマ付け。1月はシャーロッキアン本に決めていて、その後推理小説、いわゆる洋書、などを考えている。まああんまり縛りすぎると良くないかもなので、うまい塩梅にしよう。
全国のみんな、元気に読書してますか?この稿、最後までお読み頂き、ありがとう。来年も、よろしくね!
2013年12月21日土曜日
パパ読書大賞 その1
写真は最近お気に入りのランチ。
さて、今年も始まりました。2013「パパ読書大賞」。
今回は、各賞の発表です!
まずは恒例どおり、全書名を。
今年は131作品146冊を読み切ることが出来ました。うち直木賞作品は13。「直」マークがそうです。
村上春樹「1Q84」(6)
村上春樹「遠い太鼓」
神永学「心霊探偵 八雲」シリーズ
「1.赤い瞳は知っている」
「2.魂をつなぐもの」
中島京子「小さいおうち」直
蒼井上鷹「ホームズのいない町 13のまだらな推理」
高田郁「今朝の春 みをつくし料理帖 」
北村薫「六の宮の姫君」
船戸与一「砂のクロニクル」(2)
浅田次郎「珍妃の井戸」
藤原伊織「テロリストのパラソル」直
川村元気「世界から猫が消えたなら」
横山秀夫「第三の時効」
藤沢周平「蝉しぐれ」
石田衣良「波のうえの魔術師」
石田衣良「4TEEN」直
奥泉光「シューマンの指」
神永学「神霊探偵八雲」シリーズ
「3.闇の先にある光」
「4.守るべき想い」
船戸与一「虹の谷の五月」(2)直
京極夏彦「姑獲鳥の夏」
和田竜「のぼうの城」(2)
山田悠介「ニホンブンレツ」
ナンシー・スプリンガー
「エノーラ・ホームズの事件簿
〜消えた公爵家の子息〜」
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズ
「栞子さんと二つの顔 」
高田郁「小夜しぐれ みをつくし料理帖」
天童荒太「悼む人」(2)直
北村薫「朝霧」
伊坂幸太郎「フィッシュストーリー」
アルフレード・ガティウス
ホセ・マリア・ウック
「なぜレアルとバルサだけが儲かるのか? サッカークラブ経営に魔法は存在しない」
江橋よしのり
「世界一のあきらめない心」
夏川草介「神様のカルテ2」
桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」
乾ルカ「蜜姫村」
三浦しをん「風が強く吹いている」
藤原伊織「ひまわりの祝祭」
ヤン・マーテル「パイの物語」(2)
西加奈子「円卓」
山本兼一「利休にたずねよ」直
宮下奈都「よろこびの歌」
北村薫「ニッポン硬貨の謎」
神原一光「辻井伸行 奇跡の音色 恩師との12年間」
高田郁「心星ひとつ みをつくし料理帖」
村山由佳「星々の舟」直
藤原伊織「手のひらの闇」
綾辻行人「Another」(2)
乙川優三郎「生きる」直
三宅博「虎のスコアラーが教える『プロ』の野球観戦術」
小杉健治「父からの手紙」
金城一紀「GO」 直
江國香織「号泣する準備はできていた」直
辻村深月「凍りのくじら」
藤原伊織「名残り火 てのひらの闇 �」
高田郁「夏天の虹 みをつくし料理帖」
東野圭吾「真夏の方程式」
五十嵐貴久「For You」
桜庭一樹「荒野」
スコット・フィッツジェラルド
「冬の夢」
城島充「ピンポンさん」
舞城王太郎
「世界は密室でできている。」
辻村深月「太陽の坐る場所」
貫井徳郎「乱反射」
西加奈子「さくら」
ウイリアム・アイリッシュ
「幻の女」
朝井リョウ
「桐島、部活やめるってよ」
高田郁「残月 みをつくし料理帖」
舞城王太郎「煙か土か食い物」
村上春樹
「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」
泡坂妻夫「しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの神霊術」
重松清「君去りしのち」
湊かなえ「少女」
梨木香歩「家守綺譚」
福井康雄「大宇宙の誕生」
江戸川乱歩「孤島の鬼」
太田治子「明るい方へ
父・太宰治と母・太田静子」
村山斉
「宇宙はなぜこんなにうまくできているのか」
西加奈子「通天閣」
百田尚樹「モンスター」
星新一「きまぐれロボット」
スコット・フィッツジェラルド
「グレート・ギャツビー」
ジュリアン・シモンズ
「知られざる名探偵物語」
日々野真理「凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦」
奥田英朗「サウスバウンド」
相場英雄「震える牛」
道尾秀介「月と蟹」直
長谷部誠「心を整える」
高橋克彦「鬼」
桜庭一樹「伏 贋作里見八犬伝」
薬丸岳「天使のナイフ」
恩田陸「黄昏の百合の骨」
藤原伊織「ダックスフントのワープ」
長友佑都「日本男児」
高橋克彦「白妖鬼」
高橋克彦「長人鬼」
吉村昭「吉村昭の平家物語」
東野圭吾「夜明けの街で」
三崎亜紀「となり町戦争」
三浦しをん
「まほろ駅前多田便利軒」直
道尾秀介「カラスの親指」
柚木麻子「ランチのアッコちゃん」
乾ルカ「メグル」
アンソニー・ホロヴィッツ
「絹の家」
殊能将之「ハサミ男」
桂望実「嫌な女」
長友佑都「上昇思考」
ジョン・H・ワトスン著
ローレン・エスルマン編
「シャーロック・ホームズ対ドラキュラーあるいは血まみれ伯爵の冒険ー」
由良弥生「眠れないほど面白い『古事記』」
藤原伊織「シリウスの道」(2)
中村文則「掏摸」
野沢尚「龍時01ー02」
野沢尚「龍時02ー03」
野沢尚「龍時03ー04」
辻村深月「島はぼくらと」
ヴィンセント・スタリット
「シャーロック・ホームズの私生活」
百田尚樹「ボックス!」(2)
三島由紀夫「青の時代」
村上龍「歌うクジラ」(2)
乾ルカ「あの日にかえりたい」
海堂尊
「チーム・バチスタの栄光」(2)
葉室麟「蜩ノ記」直
綾辻行人「奇面館の殺人」
坂口安吾「明治開花 安吾捕物帖」
近藤史恵「サクリファイス」
原田マハ
「総理の夫 First Gentleman」
山本兼一「火天の城」
J・E・ホルロイド編
「シャーロック・ホームズ 17の愉しみ」
近藤史恵「エデン」
木内昇「漂砂のうたう」直
坂口安吾「不連続殺人事件」
雫井脩介「火の粉」
古関順二
「野球を歩く 日本野球の歴史探訪」
昨年の2倍近い量なので、さすがに多い。薦めて下さった方、貸してくれた方、ありがとうございました。
では、今回は、各賞の発表から!
ベストエンタテインメント賞
野沢尚「龍時」シリーズ
文化人類学賞
高橋克彦「鬼」シリーズ
期待する作家賞
西加奈子 乾ルカ
ベストスポーツ賞
長谷部誠「心を整える」
ベストノスタルジー賞
五十嵐貴久「For You」
特別賞 藤原伊織
「ダックスフントのワープ」
なかなか燃えさせてもらった「龍時」シリーズは日本の高校生がスペインリーグに挑戦する話。
文化人類学プライズの(笑)「鬼」シリーズは、陰陽師ものである。「白妖鬼」「長人鬼」「空中鬼」「紅蓮鬼」と続く。
「白妖鬼」から「空中鬼」までは、「鬼」で出て来た陰陽師、弓削是雄を中心としてお馴染みの仲間たちが活躍するエンタテインメント。私は鬼好きなので、楽しめた。
期待する作家さん2人。両方ともすでに直木賞候補に名を連ねているが、決して文壇歴は長くなく、これから数々の大作を書く方々だと思っている。西加奈子はその大阪的テイストと構成力、乾ルカはホラーぎりぎりのファンタジックさ、不思議な魅力をほんの少し大衆的にし、文章を超えた迫力を持つ作品を待っている。
もちろん、このへん、意図的に昨年から読んでいる人は外してあるので、期待する人もそれなりに実は居るんだけど。三崎亜記は、もうひと作品読んでから考えるかな。
ベストスポーツ賞、なでしこの「世界一のあきらめない心」も卓球の「ピンポン!」も良かったが、真面目な長谷部くんはまた新たな面が見えたようで受賞。この本は、スマートで、深いものがある。ここまで多岐に渡って、突き詰めて考えているのかと、プロフェッショナリズムを感じる一冊。
「For You」高校生恋愛もの。オチはどうでもよくって、時代設定も、内容も実にノスタルジック。サザンが聞こえてきそうである。
特別賞は、短編集中、表題作に特に捧げたい。藤原伊織らしくない作品。作品中の挿話が、大変良かったと思う。
以上、各賞でした!次回はいよいよグランプリ!
さて、今年も始まりました。2013「パパ読書大賞」。
今回は、各賞の発表です!
まずは恒例どおり、全書名を。
今年は131作品146冊を読み切ることが出来ました。うち直木賞作品は13。「直」マークがそうです。
村上春樹「1Q84」(6)
村上春樹「遠い太鼓」
神永学「心霊探偵 八雲」シリーズ
「1.赤い瞳は知っている」
「2.魂をつなぐもの」
中島京子「小さいおうち」直
蒼井上鷹「ホームズのいない町 13のまだらな推理」
高田郁「今朝の春 みをつくし料理帖 」
北村薫「六の宮の姫君」
船戸与一「砂のクロニクル」(2)
浅田次郎「珍妃の井戸」
藤原伊織「テロリストのパラソル」直
川村元気「世界から猫が消えたなら」
横山秀夫「第三の時効」
藤沢周平「蝉しぐれ」
石田衣良「波のうえの魔術師」
石田衣良「4TEEN」直
奥泉光「シューマンの指」
神永学「神霊探偵八雲」シリーズ
「3.闇の先にある光」
「4.守るべき想い」
船戸与一「虹の谷の五月」(2)直
京極夏彦「姑獲鳥の夏」
和田竜「のぼうの城」(2)
山田悠介「ニホンブンレツ」
ナンシー・スプリンガー
「エノーラ・ホームズの事件簿
〜消えた公爵家の子息〜」
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズ
「栞子さんと二つの顔 」
高田郁「小夜しぐれ みをつくし料理帖」
天童荒太「悼む人」(2)直
北村薫「朝霧」
伊坂幸太郎「フィッシュストーリー」
アルフレード・ガティウス
ホセ・マリア・ウック
「なぜレアルとバルサだけが儲かるのか? サッカークラブ経営に魔法は存在しない」
江橋よしのり
「世界一のあきらめない心」
夏川草介「神様のカルテ2」
桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」
乾ルカ「蜜姫村」
三浦しをん「風が強く吹いている」
藤原伊織「ひまわりの祝祭」
ヤン・マーテル「パイの物語」(2)
西加奈子「円卓」
山本兼一「利休にたずねよ」直
宮下奈都「よろこびの歌」
北村薫「ニッポン硬貨の謎」
神原一光「辻井伸行 奇跡の音色 恩師との12年間」
高田郁「心星ひとつ みをつくし料理帖」
村山由佳「星々の舟」直
藤原伊織「手のひらの闇」
綾辻行人「Another」(2)
乙川優三郎「生きる」直
三宅博「虎のスコアラーが教える『プロ』の野球観戦術」
小杉健治「父からの手紙」
金城一紀「GO」 直
江國香織「号泣する準備はできていた」直
辻村深月「凍りのくじら」
藤原伊織「名残り火 てのひらの闇 �」
高田郁「夏天の虹 みをつくし料理帖」
東野圭吾「真夏の方程式」
五十嵐貴久「For You」
桜庭一樹「荒野」
スコット・フィッツジェラルド
「冬の夢」
城島充「ピンポンさん」
舞城王太郎
「世界は密室でできている。」
辻村深月「太陽の坐る場所」
貫井徳郎「乱反射」
西加奈子「さくら」
ウイリアム・アイリッシュ
「幻の女」
朝井リョウ
「桐島、部活やめるってよ」
高田郁「残月 みをつくし料理帖」
舞城王太郎「煙か土か食い物」
村上春樹
「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」
泡坂妻夫「しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの神霊術」
重松清「君去りしのち」
湊かなえ「少女」
梨木香歩「家守綺譚」
福井康雄「大宇宙の誕生」
江戸川乱歩「孤島の鬼」
太田治子「明るい方へ
父・太宰治と母・太田静子」
村山斉
「宇宙はなぜこんなにうまくできているのか」
西加奈子「通天閣」
百田尚樹「モンスター」
星新一「きまぐれロボット」
スコット・フィッツジェラルド
「グレート・ギャツビー」
ジュリアン・シモンズ
「知られざる名探偵物語」
日々野真理「凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦」
奥田英朗「サウスバウンド」
相場英雄「震える牛」
道尾秀介「月と蟹」直
長谷部誠「心を整える」
高橋克彦「鬼」
桜庭一樹「伏 贋作里見八犬伝」
薬丸岳「天使のナイフ」
恩田陸「黄昏の百合の骨」
藤原伊織「ダックスフントのワープ」
長友佑都「日本男児」
高橋克彦「白妖鬼」
高橋克彦「長人鬼」
吉村昭「吉村昭の平家物語」
東野圭吾「夜明けの街で」
三崎亜紀「となり町戦争」
三浦しをん
「まほろ駅前多田便利軒」直
道尾秀介「カラスの親指」
柚木麻子「ランチのアッコちゃん」
乾ルカ「メグル」
アンソニー・ホロヴィッツ
「絹の家」
殊能将之「ハサミ男」
桂望実「嫌な女」
長友佑都「上昇思考」
ジョン・H・ワトスン著
ローレン・エスルマン編
「シャーロック・ホームズ対ドラキュラーあるいは血まみれ伯爵の冒険ー」
由良弥生「眠れないほど面白い『古事記』」
藤原伊織「シリウスの道」(2)
中村文則「掏摸」
野沢尚「龍時01ー02」
野沢尚「龍時02ー03」
野沢尚「龍時03ー04」
辻村深月「島はぼくらと」
ヴィンセント・スタリット
「シャーロック・ホームズの私生活」
百田尚樹「ボックス!」(2)
三島由紀夫「青の時代」
村上龍「歌うクジラ」(2)
乾ルカ「あの日にかえりたい」
海堂尊
「チーム・バチスタの栄光」(2)
葉室麟「蜩ノ記」直
綾辻行人「奇面館の殺人」
坂口安吾「明治開花 安吾捕物帖」
近藤史恵「サクリファイス」
原田マハ
「総理の夫 First Gentleman」
山本兼一「火天の城」
J・E・ホルロイド編
「シャーロック・ホームズ 17の愉しみ」
近藤史恵「エデン」
木内昇「漂砂のうたう」直
坂口安吾「不連続殺人事件」
雫井脩介「火の粉」
古関順二
「野球を歩く 日本野球の歴史探訪」
昨年の2倍近い量なので、さすがに多い。薦めて下さった方、貸してくれた方、ありがとうございました。
では、今回は、各賞の発表から!
ベストエンタテインメント賞
野沢尚「龍時」シリーズ
文化人類学賞
高橋克彦「鬼」シリーズ
期待する作家賞
西加奈子 乾ルカ
ベストスポーツ賞
長谷部誠「心を整える」
ベストノスタルジー賞
五十嵐貴久「For You」
特別賞 藤原伊織
「ダックスフントのワープ」
なかなか燃えさせてもらった「龍時」シリーズは日本の高校生がスペインリーグに挑戦する話。
文化人類学プライズの(笑)「鬼」シリーズは、陰陽師ものである。「白妖鬼」「長人鬼」「空中鬼」「紅蓮鬼」と続く。
「白妖鬼」から「空中鬼」までは、「鬼」で出て来た陰陽師、弓削是雄を中心としてお馴染みの仲間たちが活躍するエンタテインメント。私は鬼好きなので、楽しめた。
期待する作家さん2人。両方ともすでに直木賞候補に名を連ねているが、決して文壇歴は長くなく、これから数々の大作を書く方々だと思っている。西加奈子はその大阪的テイストと構成力、乾ルカはホラーぎりぎりのファンタジックさ、不思議な魅力をほんの少し大衆的にし、文章を超えた迫力を持つ作品を待っている。
もちろん、このへん、意図的に昨年から読んでいる人は外してあるので、期待する人もそれなりに実は居るんだけど。三崎亜記は、もうひと作品読んでから考えるかな。
ベストスポーツ賞、なでしこの「世界一のあきらめない心」も卓球の「ピンポン!」も良かったが、真面目な長谷部くんはまた新たな面が見えたようで受賞。この本は、スマートで、深いものがある。ここまで多岐に渡って、突き詰めて考えているのかと、プロフェッショナリズムを感じる一冊。
「For You」高校生恋愛もの。オチはどうでもよくって、時代設定も、内容も実にノスタルジック。サザンが聞こえてきそうである。
特別賞は、短編集中、表題作に特に捧げたい。藤原伊織らしくない作品。作品中の挿話が、大変良かったと思う。
以上、各賞でした!次回はいよいよグランプリ!
12月書評の2
スペインなど合作の「二人のアトリエ」という映画を観た。第2次大戦中ドイツの占領下にある、スペイン国境に近いフランスの街、拾われた娘をヌードモデルにした、著名な彫刻家の話。モノクロ作品である。
穏やかで、よくあるストーリーだったが、映画は最後が難しいとつくづく感じた。特に芸術系の場合は早くきっぱりとオチを付けなければ冗長になるばかりだし。今回は強引だな、というのが感想だった。
さて後半。期待はずれのものもあったが、面白いラインナップだった。
近藤史恵「エデン」
うーん、面白かった。前作「サクリファイス」よりも重くも唐突でもない分楽しめた。締めの事件には同様のことが起きるのだが、あまり気にならず、今度はツールの行方に集中できる。
自転車のロードレースシリーズ第2弾。フランスのプロチームに移籍を果たした白石誓、チカはついにツール・ド・フランスに出場する!
ツール・ド・フランスというものは、ロードレースというものは。今回もちろんこれが最も読んでいて楽しいが、このシリーズの良さは、チカの、透明感とどこかしら茶目っ気を併せ持つようなキャラクターではないかと思う。
同僚ミッコもGood。番外編も出ているようだが、次のポルトガル編も読みたいな。
木内昇「漂砂のうたう」
なんというか、モダンな時代の文学作品に、現代テイストを混ぜたようなイメージのものだ。
明治維新から10年、東京・根津の遊郭で立番をしている元武士の定九郎。世は士族の反乱が相次ぎ、騒然としていた。時代の波の中で落ちぶれた我が身に諦観と割り切れぬものが相混ざった感情を抱く定九郎の周囲に様々な出来事が起こる。
2010年上半期直木賞。道尾秀介「月と蟹」との同時受賞である。木内昇(のぼり)は女性作家さん。これまで直木賞候補になったこともなく、いきなり、という感じで賞をさらった感がある。
「漂砂のうたう」は閉塞感の漂う中、普通の人間がもがく姿を描いた、純文学に近い小説だ。維新後権力を削がれた武士の苦悩ともがく姿を、べったりとした閉塞感をベースとして描き切っている。
どこか幽霊のような感じも漂う噺家のポン太、看板花魁の小野菊、妓夫太郎の龍造、噂話好き、おしゃべりの下男嘉吉、賭場の仕切り、山公など強いキャラクターの人物が出て来て飽きさせない。
また、幽玄のテイストを強める仕掛けとして、噺が効果的に使われている。時代の移り変わりも、折に触れうまく混ぜ込んである。いわゆる痛快さはないが、時代に翻弄された、ある武士の心の有様を描く表現が、次から次へと積まれて行く佳作だ。もちろん現代人へと捧げたテーマでもあるかも知れないが、改めて御一新、というのは想像できないほど劇的な変化だったのでは、と思える。
惜しむらくは、かつての小説よりも、隠喩が直接的なこと、またなぜかうまく事が回ってしまうのに説明が無いこと、、ラストだけがさわやかに出来すぎていることだろうか。
エキサイティングな類のものではなく暗いが、一気に読んでしまった。考えてみれば、反乱ものはあっても、庶民的なこの時代の武士の姿にスポットを当てたものはあるんだろうけど、新鮮で興味ある時代と題材であり、行間の雄弁さはなかなか読み応えがあった。
坂口安吾「不連続殺人事件」
面白く読み進んだ。推理小説の名作として日本では確固とした地位を築いている作品。
立て続けに起きる8件の殺人。歌川一馬家に集まった、多くのクセのある招待客のうち、真犯人は誰なのか?またそのトリックは?
坂口安吾、戦後すぐ「堕落論」を発表、太宰治、織田作之助らとともに新文学の旗手として注目された。1948年この作品を発表、第2回探偵クラブ賞、いまの日本推理作家協会賞を受賞した。
これの前に読んだ、「安吾捕物帖」が、どうももひとつ分かりづらかったのでどうかと思ったが、ずんずん進んで、あっという間に読み切った。
この作品も「捕物帖」と同じく、男女の情欲の話がたくさん出てくるし、なにせ登場人物が相変わらず多いし、会話や態度はあり得ないくらい野卑な面があり、まさに異世界の様相を呈しているのだが、傑作の名に恥じない出来だと思う。
「心理の足跡」がポイントだが、その仕掛けも、トリックとその理由もなかなか唸るものがある。
一つ二つ疑問点はあり、また現代の小説からしたら無駄もとても多いように見えるが、典型的な犯人当てミステリーで充分楽しく読めた。
雫井脩介「火の粉」
古典的なサスペンス、というのがまずもっての印象だ。解説にもあるが、まずベースとなる女性たちの描き方が上手いと思う。そして、違和感から悪意、八方塞がりの状態、どんでん返しと急展開・・。一気に読み切った。
初の雫井脩介、人に薦められた作品である。宮部みゆきのような色を感じるサスペンスである。ゆっくりと日常に時間をかけて描いている部分が印象に残った。
裁判官梶間勲は、一家3人殺害事件で逮捕、起訴された被告に無罪判決を下す。冤罪を晴らした形となったその被告人武内が、ある日梶間の隣の家に引っ越して来た。
裏表紙には、「読者の予想を裏切り続ける驚愕の犯罪小説」とあるが、少なくともこの本については、大まかな成り行きと犯人がかなり早い段階から読めるので、ラストに向かってディテールを追って読み進む感じだ。
ストーリーの最も重要な核となる証言が最初は抜け落ち後で都合良く出て来ていて、どうも捜査を意図的にずさんに描いている、とも思ってしまう部分もある。
八方塞がりの場面を淡々と、しかし巧妙に作りあげている部分など面白かったが、ちょっと色合いと先が見え過ぎてるな、という感想だ。
古関順二
「野球を歩く 日本野球の歴史探訪」
日本の野球史を振り返りつつ、ポイントとなった幾つかの球場を紹介、詳細に述べ、実際見に出かけている。
野球も歴史も好きなので、面白く読めた。私事で言えば、昔福岡に香椎花園という遊園地があって、そこへよく連れて行ってもらった。
香椎花園の隣には、草に覆われ使われていない香椎球場の、蔦に覆われた石のスタンドがあった。繋がりはないが、打ち捨てられた球場に立ち、妙に感慨が湧いてくる気がした。いまはなき平和台球場もまた思い出多く、西鉄福岡駅から、新天町を通って、西鉄グランドホテルの前を通って、裁判所の前のお堀端を歩いて、福岡城址にある球場への道を登る道のりは、ワクワクしてことさら楽しかった。数年前には球場跡地も再訪した。
知識として野球史は面白いし、上のような理由で球場跡巡りもゆかりの地探訪も好きである。著者いわく、神宮球場の描写が美しかったという、ハルキの「ねじまき鳥クロニクル」でも読んでみようかな。
穏やかで、よくあるストーリーだったが、映画は最後が難しいとつくづく感じた。特に芸術系の場合は早くきっぱりとオチを付けなければ冗長になるばかりだし。今回は強引だな、というのが感想だった。
さて後半。期待はずれのものもあったが、面白いラインナップだった。
近藤史恵「エデン」
うーん、面白かった。前作「サクリファイス」よりも重くも唐突でもない分楽しめた。締めの事件には同様のことが起きるのだが、あまり気にならず、今度はツールの行方に集中できる。
自転車のロードレースシリーズ第2弾。フランスのプロチームに移籍を果たした白石誓、チカはついにツール・ド・フランスに出場する!
ツール・ド・フランスというものは、ロードレースというものは。今回もちろんこれが最も読んでいて楽しいが、このシリーズの良さは、チカの、透明感とどこかしら茶目っ気を併せ持つようなキャラクターではないかと思う。
同僚ミッコもGood。番外編も出ているようだが、次のポルトガル編も読みたいな。
木内昇「漂砂のうたう」
なんというか、モダンな時代の文学作品に、現代テイストを混ぜたようなイメージのものだ。
明治維新から10年、東京・根津の遊郭で立番をしている元武士の定九郎。世は士族の反乱が相次ぎ、騒然としていた。時代の波の中で落ちぶれた我が身に諦観と割り切れぬものが相混ざった感情を抱く定九郎の周囲に様々な出来事が起こる。
2010年上半期直木賞。道尾秀介「月と蟹」との同時受賞である。木内昇(のぼり)は女性作家さん。これまで直木賞候補になったこともなく、いきなり、という感じで賞をさらった感がある。
「漂砂のうたう」は閉塞感の漂う中、普通の人間がもがく姿を描いた、純文学に近い小説だ。維新後権力を削がれた武士の苦悩ともがく姿を、べったりとした閉塞感をベースとして描き切っている。
どこか幽霊のような感じも漂う噺家のポン太、看板花魁の小野菊、妓夫太郎の龍造、噂話好き、おしゃべりの下男嘉吉、賭場の仕切り、山公など強いキャラクターの人物が出て来て飽きさせない。
また、幽玄のテイストを強める仕掛けとして、噺が効果的に使われている。時代の移り変わりも、折に触れうまく混ぜ込んである。いわゆる痛快さはないが、時代に翻弄された、ある武士の心の有様を描く表現が、次から次へと積まれて行く佳作だ。もちろん現代人へと捧げたテーマでもあるかも知れないが、改めて御一新、というのは想像できないほど劇的な変化だったのでは、と思える。
惜しむらくは、かつての小説よりも、隠喩が直接的なこと、またなぜかうまく事が回ってしまうのに説明が無いこと、、ラストだけがさわやかに出来すぎていることだろうか。
エキサイティングな類のものではなく暗いが、一気に読んでしまった。考えてみれば、反乱ものはあっても、庶民的なこの時代の武士の姿にスポットを当てたものはあるんだろうけど、新鮮で興味ある時代と題材であり、行間の雄弁さはなかなか読み応えがあった。
坂口安吾「不連続殺人事件」
面白く読み進んだ。推理小説の名作として日本では確固とした地位を築いている作品。
立て続けに起きる8件の殺人。歌川一馬家に集まった、多くのクセのある招待客のうち、真犯人は誰なのか?またそのトリックは?
坂口安吾、戦後すぐ「堕落論」を発表、太宰治、織田作之助らとともに新文学の旗手として注目された。1948年この作品を発表、第2回探偵クラブ賞、いまの日本推理作家協会賞を受賞した。
これの前に読んだ、「安吾捕物帖」が、どうももひとつ分かりづらかったのでどうかと思ったが、ずんずん進んで、あっという間に読み切った。
この作品も「捕物帖」と同じく、男女の情欲の話がたくさん出てくるし、なにせ登場人物が相変わらず多いし、会話や態度はあり得ないくらい野卑な面があり、まさに異世界の様相を呈しているのだが、傑作の名に恥じない出来だと思う。
「心理の足跡」がポイントだが、その仕掛けも、トリックとその理由もなかなか唸るものがある。
一つ二つ疑問点はあり、また現代の小説からしたら無駄もとても多いように見えるが、典型的な犯人当てミステリーで充分楽しく読めた。
雫井脩介「火の粉」
古典的なサスペンス、というのがまずもっての印象だ。解説にもあるが、まずベースとなる女性たちの描き方が上手いと思う。そして、違和感から悪意、八方塞がりの状態、どんでん返しと急展開・・。一気に読み切った。
初の雫井脩介、人に薦められた作品である。宮部みゆきのような色を感じるサスペンスである。ゆっくりと日常に時間をかけて描いている部分が印象に残った。
裁判官梶間勲は、一家3人殺害事件で逮捕、起訴された被告に無罪判決を下す。冤罪を晴らした形となったその被告人武内が、ある日梶間の隣の家に引っ越して来た。
裏表紙には、「読者の予想を裏切り続ける驚愕の犯罪小説」とあるが、少なくともこの本については、大まかな成り行きと犯人がかなり早い段階から読めるので、ラストに向かってディテールを追って読み進む感じだ。
ストーリーの最も重要な核となる証言が最初は抜け落ち後で都合良く出て来ていて、どうも捜査を意図的にずさんに描いている、とも思ってしまう部分もある。
八方塞がりの場面を淡々と、しかし巧妙に作りあげている部分など面白かったが、ちょっと色合いと先が見え過ぎてるな、という感想だ。
古関順二
「野球を歩く 日本野球の歴史探訪」
日本の野球史を振り返りつつ、ポイントとなった幾つかの球場を紹介、詳細に述べ、実際見に出かけている。
野球も歴史も好きなので、面白く読めた。私事で言えば、昔福岡に香椎花園という遊園地があって、そこへよく連れて行ってもらった。
香椎花園の隣には、草に覆われ使われていない香椎球場の、蔦に覆われた石のスタンドがあった。繋がりはないが、打ち捨てられた球場に立ち、妙に感慨が湧いてくる気がした。いまはなき平和台球場もまた思い出多く、西鉄福岡駅から、新天町を通って、西鉄グランドホテルの前を通って、裁判所の前のお堀端を歩いて、福岡城址にある球場への道を登る道のりは、ワクワクしてことさら楽しかった。数年前には球場跡地も再訪した。
知識として野球史は面白いし、上のような理由で球場跡巡りもゆかりの地探訪も好きである。著者いわく、神宮球場の描写が美しかったという、ハルキの「ねじまき鳥クロニクル」でも読んでみようかな。
12月書評の1
ふたご座流星群は、極大の日を過ぎるとすぐ収束したとか。頑張って観て良かったなあ。
さて、12月書評、ちょっと早いが、も打ち止めにする。ここまで9作品9冊。
では行きましょう。
近藤史恵
「サクリファイス」
自転車ロードレースの話。夢中で、あっという間に読み終わる。2007年刊行、本屋大賞2位も取った作品。
陸上の有名選手でありながら勝つための走りに嫌気が差した白石誓は、自転車ロードレースの選手に転身する。エースを勝たせるために犠牲になる選手の存在、自分が勝つために走るのではないこと、に誓は惹かれていた。
この設定は自然なようで不自然だ、と思うが、まあよかろう。一般に馴染みのないネタを気持ち良く俎上に載せたことは評価できるし、実際興味が湧いて、続編の「エデン」もすぐ読みたいほどだ。しかし・・悪意も極みなら、オチも正直あまりに極端な気がする。それを含みこんでのタイトルでもあるわけだが・・
あまり長くはない作品だけに余計唐突感が否めない。ただそれだけ、考えさせるということは、衝撃を与えることに成功しているからとも言える。
原田マハ
「総理の夫 First Gentleman」
なんというか、マンガですね。目のつけどころは面白いと思う。まずもって設定からそうで、何から何まで揃いすぎているかと。エンタメには欠かせない要素かもしれないが。
ただせっかく入り口は良かったのに、もう少し斬り込んで欲しかったのが正直。表層的にうまく完結しているが、どうも上滑りしている。
女性の、スーパーヒーロー誕生。なんでも出来る才媛、凛子さん。そしてスーパーお金持ちでお坊ちゃん、ハンサムなおとなしい旦那、日和さん。おっさん的には女子の願望を全て叶えている作りかと思える。悪意あり、まっすぐな情熱あり、笑いありのエンターテインメントだ。
真面目な話、現実世界でもそろそろ日本にも女性総理が生まれてもおかしくはないのだが、とも思える。イギリスなんかもうかなり前にサッチャーが出現したし。妙に大人になることが流行りの世の中で、まっすぐすぎることも逆に魅力にも映る。こうクールっぽい分析をしてもクライマックスでは、凛子さんのバランスの良さに感心し、その頑張りにウルウル来ちゃったりもしたし。
世の中そんなにうまくいくもんじゃないんだよ・・と思うよりは、真面目に、もっとこちらが意外に思えるくらいの斬り込みが、やはり見たかったかな。シングルマザーへの弱者対策は現代には必要だと思うし、逆に、専業主婦の偉大さとその想いも組み上げて欲しかった気もする。
山本兼一「火天の城」
時代もの好きの女性の友人がイチオシだった作品。直木賞作品「利休にたずねよ」の解説で宮部みゆき氏が評している通り、山本兼一は「働きもの」の作家さんで、この作品では、建築の細部にその評通りのディテールが記してある。
天下布武を目指す織田信長の命により、安土城築城の総棟梁となった岡部又右衛門以言は、息子の岡部又兵衛以俊とともに、苦難に遭いながらも天下に並ぶところのない城を築く。
城を築くということは、土地の設計、建物の配置から始まって、多くの人の差配、膨大な資材、石垣用の石、瓦の調達から、建物の設計デザイン図、届いた資材の精製、正確な木組みの設定ほか気が遠くなるほどの作事工程が必要である。それを紐解いていく物語でもある。
当の信長ほか侍の都合で振り回される棟梁たち、さらに敵対勢力からの妨害も入って築城は困難を極めるが、だからこそ出来上がったときの爽快感は大きい。工程が丁寧に描かれていため、尚更である。
しかしながらその安土城は、完成から時を置かず、信長が本能寺の変で亡くなったため、程なく焼失、幻の城となる。
山本兼一の作品は、濃密である。「利休にたずねよ」もまた別の仕掛けがあって濃いのだが、「火天の城」はスケールも壮大であり、また無常でもあり、夢を見ることができる作品だ。噂に違わぬ一作だった。
J・E・ホルロイド編
「シャーロック・ホームズ 17の愉しみ」
シャーロッキアン本ここに極まれり、という作品である。んーまあ、あまり一般向けではないかも。
ちなみに17、とは1階から、ホームズとワトスンが住んでいる2階へ昇る階段の数にかけてあるそうだ。作中に、見るだけでなく観察しなければ、と説くホームズがワトスンに、例えばいつも使っている階段は何段か知っているかね、と問う印象的な場面があるから、こう持って来たのだろう。
内容は、パスティーシュ、パロディもあるが、よく言われるホームズ作品中の日付けその他の矛盾点についての論文、ワトスンの研究、挿絵画家シドニイ・パジットの絵を用いての研究、はたまた宿敵モリアーティ教授が死亡した後の、家族の、創作された釈明文、ベイカー街221Bは正確にはどこにあったのか、など、これがほんまもんのシャーロッキアンだ!という数々のものが詰まっている。
その多くは、まだホームズものが連載もされていた、ドイルも存命中の前世紀前半、1920年代などに書かれたものだ。
なんというか、私もシャーロッキアンと自称することもあるものの、この人たちのこの作品群を見たら赤ちゃんみたいなものである。(笑)入門本では決してない、ということだけお伝えしておきます。はい。
さて、12月書評、ちょっと早いが、も打ち止めにする。ここまで9作品9冊。
では行きましょう。
近藤史恵
「サクリファイス」
自転車ロードレースの話。夢中で、あっという間に読み終わる。2007年刊行、本屋大賞2位も取った作品。
陸上の有名選手でありながら勝つための走りに嫌気が差した白石誓は、自転車ロードレースの選手に転身する。エースを勝たせるために犠牲になる選手の存在、自分が勝つために走るのではないこと、に誓は惹かれていた。
この設定は自然なようで不自然だ、と思うが、まあよかろう。一般に馴染みのないネタを気持ち良く俎上に載せたことは評価できるし、実際興味が湧いて、続編の「エデン」もすぐ読みたいほどだ。しかし・・悪意も極みなら、オチも正直あまりに極端な気がする。それを含みこんでのタイトルでもあるわけだが・・
あまり長くはない作品だけに余計唐突感が否めない。ただそれだけ、考えさせるということは、衝撃を与えることに成功しているからとも言える。
原田マハ
「総理の夫 First Gentleman」
なんというか、マンガですね。目のつけどころは面白いと思う。まずもって設定からそうで、何から何まで揃いすぎているかと。エンタメには欠かせない要素かもしれないが。
ただせっかく入り口は良かったのに、もう少し斬り込んで欲しかったのが正直。表層的にうまく完結しているが、どうも上滑りしている。
女性の、スーパーヒーロー誕生。なんでも出来る才媛、凛子さん。そしてスーパーお金持ちでお坊ちゃん、ハンサムなおとなしい旦那、日和さん。おっさん的には女子の願望を全て叶えている作りかと思える。悪意あり、まっすぐな情熱あり、笑いありのエンターテインメントだ。
真面目な話、現実世界でもそろそろ日本にも女性総理が生まれてもおかしくはないのだが、とも思える。イギリスなんかもうかなり前にサッチャーが出現したし。妙に大人になることが流行りの世の中で、まっすぐすぎることも逆に魅力にも映る。こうクールっぽい分析をしてもクライマックスでは、凛子さんのバランスの良さに感心し、その頑張りにウルウル来ちゃったりもしたし。
世の中そんなにうまくいくもんじゃないんだよ・・と思うよりは、真面目に、もっとこちらが意外に思えるくらいの斬り込みが、やはり見たかったかな。シングルマザーへの弱者対策は現代には必要だと思うし、逆に、専業主婦の偉大さとその想いも組み上げて欲しかった気もする。
山本兼一「火天の城」
時代もの好きの女性の友人がイチオシだった作品。直木賞作品「利休にたずねよ」の解説で宮部みゆき氏が評している通り、山本兼一は「働きもの」の作家さんで、この作品では、建築の細部にその評通りのディテールが記してある。
天下布武を目指す織田信長の命により、安土城築城の総棟梁となった岡部又右衛門以言は、息子の岡部又兵衛以俊とともに、苦難に遭いながらも天下に並ぶところのない城を築く。
城を築くということは、土地の設計、建物の配置から始まって、多くの人の差配、膨大な資材、石垣用の石、瓦の調達から、建物の設計デザイン図、届いた資材の精製、正確な木組みの設定ほか気が遠くなるほどの作事工程が必要である。それを紐解いていく物語でもある。
当の信長ほか侍の都合で振り回される棟梁たち、さらに敵対勢力からの妨害も入って築城は困難を極めるが、だからこそ出来上がったときの爽快感は大きい。工程が丁寧に描かれていため、尚更である。
しかしながらその安土城は、完成から時を置かず、信長が本能寺の変で亡くなったため、程なく焼失、幻の城となる。
山本兼一の作品は、濃密である。「利休にたずねよ」もまた別の仕掛けがあって濃いのだが、「火天の城」はスケールも壮大であり、また無常でもあり、夢を見ることができる作品だ。噂に違わぬ一作だった。
J・E・ホルロイド編
「シャーロック・ホームズ 17の愉しみ」
シャーロッキアン本ここに極まれり、という作品である。んーまあ、あまり一般向けではないかも。
ちなみに17、とは1階から、ホームズとワトスンが住んでいる2階へ昇る階段の数にかけてあるそうだ。作中に、見るだけでなく観察しなければ、と説くホームズがワトスンに、例えばいつも使っている階段は何段か知っているかね、と問う印象的な場面があるから、こう持って来たのだろう。
内容は、パスティーシュ、パロディもあるが、よく言われるホームズ作品中の日付けその他の矛盾点についての論文、ワトスンの研究、挿絵画家シドニイ・パジットの絵を用いての研究、はたまた宿敵モリアーティ教授が死亡した後の、家族の、創作された釈明文、ベイカー街221Bは正確にはどこにあったのか、など、これがほんまもんのシャーロッキアンだ!という数々のものが詰まっている。
その多くは、まだホームズものが連載もされていた、ドイルも存命中の前世紀前半、1920年代などに書かれたものだ。
なんというか、私もシャーロッキアンと自称することもあるものの、この人たちのこの作品群を見たら赤ちゃんみたいなものである。(笑)入門本では決してない、ということだけお伝えしておきます。はい。
2013年12月15日日曜日
メテオ
流れ星を初めて見たのは小学校の時。私の実家があった所は大きな街が近くに無かったので、それなりに星は見えていた。でも、5年生の夏、山のキャンプ場で見た星空はまったく違って、空を星が埋め尽くしているようだった。
その星々の真ん中を横切るように、尾を引いた流れ星が流れた。星のかけらを撒きながら、流れるストロークも長く、想像していた以上の綺麗さだった。以来今まで、流れ星と言えばその時の流星を思い出す。テレビなんかでよくあるように、BGMにチャララン♪なんて効果音が付くような感じだった。
大人になって流星群を気にするようになったのは最近だが、東京在住時、伊豆へ家族で旅した際、ちょうどオリオン座流星群の時期だったので、皆が寝た後外で安楽椅子に座って眺めていたら、スッ、スッと線のようにいくつか星が薄めの光で流れた。
かつて、ある芸能人が、きょうはオリオン座流星群極大らしいから、ずっとオリオン座眺めていたのに一つも見えなかった、とブロクに書いていたが、この伊豆の観測でなるほどと思った。
伊豆の宿は山の方で、オリオン座は海の方向。間に国道や打ちっ放しだろうか、の灯りがあった。しかし東京や大阪よりよほど良く星が見えた。そんな条件でも、線のような弱い光しか見えないのだから、そもそも流星群ってこんな感じで、都会の明るさでは見えないのが普通じゃないのか、私が小学生の頃見たのは「火球」という部類に入る大型のものじゃないのか、と思うようになった。
なので、あまり流星群の観測には興味が無かったのだが、13日金曜の夜はふたご座流星群の極大ということで屋上テラスでしばらく粘ってみた。って書いて気がついたが、13日の金曜日だったか。ジェイソン♪
月明かりあり、ふたご座には、明るくまたたかない木星が光っている。まあ10分くらいかなあ、そんなに見えるものじゃないし、という気分。冬の星座は狭い範囲に1等星が集まっているので綺麗だが、すばる=プレアデス星団の方向を仰ぐと、ほとんど見えない。実家でははっきり見えていたから、こりゃダメかな・・と思っていたら、突然カストルの上に流れた。
正確には、小学生の頃見たものとも、伊豆とも違い、短いストロークで、一瞬明るくなり、消えて行った。思わず「来た!」と呟いていた。紛れもなく流れ星だった。
一つ見たら欲が出るもので、もうひとつ見るまで粘る!と思ったものの、その後30分近く見ていても、全く流れなかった。(笑)さすがに、寒さに負けて中に入った。
ふたご座は、五角形のぎょしゃ座の下にある。縦に双子の星、カストルとポルックスが並んでいて、下のポルックスの方が明るい。実家では、カペラを中心としたぎょしゃ座の力強さ、そしてふたご座の優しいフォルムには圧倒されたものだが、やはりこちらでは明るさも迫力も足りないような気がする。まあこんなもんだろな、でも見れたからよかった、と思い風呂に入った。
風呂上がり、どこか諦めきれず、日付が変わる頃が極大だと思い、また屋上に出た。もうふたご座は天空高く昇っている。山近くだけに空が広く、星に手を伸ばしたくなる。木星はまたたかず、平べったい光を放っている。放射点が高い方が、良く見えるという話だ。
まあそんなに見れないわなーと軽く眺めていたら、ふたご座の東方向、北斗七星の方で、スッと、明るめの、ストロークが長いものが流れた。おお!と思ったらすぐ、今度は西方向、お隣のオリオン座の方に、流れた。こりゃ運がいい、とちょっと興奮してきたところで、少し後に、ふたご座の真ん中あたりで、最初に見た感じの、ストロークが短いものが横に流れた。
それから風呂上がりであることもしばし忘れて、20分以上見入ってしまった。視界の端では2つ3つ流れ、中には明るいものもあった。オリオン座方向に多いようだ。さすがに冷え切るとまずいな、最後の一つ、と、思い出してしばらく、オリオンとふたご座の中間当たりを見ていると、ちょうど視界の中央に、すうっと、長めのストロークのものが斜めによぎったので、そこで切り上げた。
流れ星は、音が無い。スッと流れて、光って、消える。願いごとを3回唱えるなど、とても無理だ。でもその静けさが、一瞬の煌めきが、記憶に残る。
ふたご座流星群は、年頭のじぶんぎ座、夏のペルセウス座と並び三大流星群と言われ、毎年流れる数が多い良質の流星群のようだが、本格的に観測していた人には、かなり満足度の高い夜だったのではないか。
これからはもっと流星群見てみよう、と思った13日金曜日の夜だった。
翌土曜日は、息子とママお出掛けでワンコとお留守番。もうママいないと、ソファで2頭のダックスとくっついてないとすぐ不安げな行動を取るのでどっかりと、読書の時間にした。夜は近くの新しい店で焼き肉。もうふたつ、だった。夜は雲が広がってしまい、流星群観測はまた来年かな、と思い、寝る。
日曜日は酷寒の中、外仕事。家に帰って、溶けた。さて、年も押し迫って来た。次週は、いよいよ!
その星々の真ん中を横切るように、尾を引いた流れ星が流れた。星のかけらを撒きながら、流れるストロークも長く、想像していた以上の綺麗さだった。以来今まで、流れ星と言えばその時の流星を思い出す。テレビなんかでよくあるように、BGMにチャララン♪なんて効果音が付くような感じだった。
大人になって流星群を気にするようになったのは最近だが、東京在住時、伊豆へ家族で旅した際、ちょうどオリオン座流星群の時期だったので、皆が寝た後外で安楽椅子に座って眺めていたら、スッ、スッと線のようにいくつか星が薄めの光で流れた。
かつて、ある芸能人が、きょうはオリオン座流星群極大らしいから、ずっとオリオン座眺めていたのに一つも見えなかった、とブロクに書いていたが、この伊豆の観測でなるほどと思った。
伊豆の宿は山の方で、オリオン座は海の方向。間に国道や打ちっ放しだろうか、の灯りがあった。しかし東京や大阪よりよほど良く星が見えた。そんな条件でも、線のような弱い光しか見えないのだから、そもそも流星群ってこんな感じで、都会の明るさでは見えないのが普通じゃないのか、私が小学生の頃見たのは「火球」という部類に入る大型のものじゃないのか、と思うようになった。
なので、あまり流星群の観測には興味が無かったのだが、13日金曜の夜はふたご座流星群の極大ということで屋上テラスでしばらく粘ってみた。って書いて気がついたが、13日の金曜日だったか。ジェイソン♪
月明かりあり、ふたご座には、明るくまたたかない木星が光っている。まあ10分くらいかなあ、そんなに見えるものじゃないし、という気分。冬の星座は狭い範囲に1等星が集まっているので綺麗だが、すばる=プレアデス星団の方向を仰ぐと、ほとんど見えない。実家でははっきり見えていたから、こりゃダメかな・・と思っていたら、突然カストルの上に流れた。
正確には、小学生の頃見たものとも、伊豆とも違い、短いストロークで、一瞬明るくなり、消えて行った。思わず「来た!」と呟いていた。紛れもなく流れ星だった。
一つ見たら欲が出るもので、もうひとつ見るまで粘る!と思ったものの、その後30分近く見ていても、全く流れなかった。(笑)さすがに、寒さに負けて中に入った。
ふたご座は、五角形のぎょしゃ座の下にある。縦に双子の星、カストルとポルックスが並んでいて、下のポルックスの方が明るい。実家では、カペラを中心としたぎょしゃ座の力強さ、そしてふたご座の優しいフォルムには圧倒されたものだが、やはりこちらでは明るさも迫力も足りないような気がする。まあこんなもんだろな、でも見れたからよかった、と思い風呂に入った。
風呂上がり、どこか諦めきれず、日付が変わる頃が極大だと思い、また屋上に出た。もうふたご座は天空高く昇っている。山近くだけに空が広く、星に手を伸ばしたくなる。木星はまたたかず、平べったい光を放っている。放射点が高い方が、良く見えるという話だ。
まあそんなに見れないわなーと軽く眺めていたら、ふたご座の東方向、北斗七星の方で、スッと、明るめの、ストロークが長いものが流れた。おお!と思ったらすぐ、今度は西方向、お隣のオリオン座の方に、流れた。こりゃ運がいい、とちょっと興奮してきたところで、少し後に、ふたご座の真ん中あたりで、最初に見た感じの、ストロークが短いものが横に流れた。
それから風呂上がりであることもしばし忘れて、20分以上見入ってしまった。視界の端では2つ3つ流れ、中には明るいものもあった。オリオン座方向に多いようだ。さすがに冷え切るとまずいな、最後の一つ、と、思い出してしばらく、オリオンとふたご座の中間当たりを見ていると、ちょうど視界の中央に、すうっと、長めのストロークのものが斜めによぎったので、そこで切り上げた。
流れ星は、音が無い。スッと流れて、光って、消える。願いごとを3回唱えるなど、とても無理だ。でもその静けさが、一瞬の煌めきが、記憶に残る。
ふたご座流星群は、年頭のじぶんぎ座、夏のペルセウス座と並び三大流星群と言われ、毎年流れる数が多い良質の流星群のようだが、本格的に観測していた人には、かなり満足度の高い夜だったのではないか。
これからはもっと流星群見てみよう、と思った13日金曜日の夜だった。
翌土曜日は、息子とママお出掛けでワンコとお留守番。もうママいないと、ソファで2頭のダックスとくっついてないとすぐ不安げな行動を取るのでどっかりと、読書の時間にした。夜は近くの新しい店で焼き肉。もうふたつ、だった。夜は雲が広がってしまい、流星群観測はまた来年かな、と思い、寝る。
日曜日は酷寒の中、外仕事。家に帰って、溶けた。さて、年も押し迫って来た。次週は、いよいよ!
2013年12月9日月曜日
決定
金曜も休みでゆっくり3連休。歳末はいつも、靴の修理とクリーニング。きょうも夕方に1個靴を持って行って、預けていたシャツを引き取ってきた。
日中は、妻が外出したので、ワンコたちとのんびり、本を読んでいた。我が家の金曜夜はなかなかTV多忙で、6時半からレゴチーマのアニメ、7時からドラえもんSP、8時からフィギュアスケートのグランプリファイナル、9時から金曜ロードショーのルパン3世対名探偵コナン。ここまで息子は起きていて、見終わった後寝かしつける。そしてパパは0時からワールドカップの抽選会。
半分眠りながら見ていたが、ついに決まった。コートジボワール、ギリシャ、コロンビア。私も世界のサッカー情勢に詳しいわけではないが、なかなか特徴のある組み合わせだと思う。
一つは、いわゆる「超強豪」と言われるチームが無い、ということ。コロンビアは現在世界ランキング4位らしいが、それでも超強豪、というにはちょっと遠い。日本は、1998年フランスではアルゼンチン、2006年のドイツではブラジル、先の2010年南アフリカではオランダというそうそうたるチームと同居し、いずれも負けてきた。超強豪がいないといえば2002年の日韓と同じと言える。懸念された死のグループでもなし、パッと見て地味な対戦国で、楽観的にもなれそうに見える。少なくともラッキーなことには変わりがない。
もう一つ、2010年、さらにこれまでと比べ、日本の立ち位置がやや変わったこと。南アフリカでは、はっきり言って、同居チームからも最下位だと見なされていた。2006年のドイツであっさり敗退したこともあり、カメルーンもデンマークも、オランダにはちょっと勝てないだろうけど、日本にはきっちり勝って、両国で2位の座を争うものと思っていたはずだ。デンマークなど最終戦の段階でもまだ余裕のコメントをしていたし、これまでは相手国がナメてくれていた。どこか余裕のプレーをしていて、相手には身体を張っている雰囲気が感じられなかった。初出場のフランスはもとより、日韓でもベルギーの監督は日本に同点に追いつかれてビックリした、と正直に言っていたが、これまではその程度の扱いが続いていたということだろう。
しかし、南アフリカで困難なグループリーグを突破し、その後香川、長友がビッグクラブに移籍し、本田のミラン入りも決まったこと、などから対戦国の態度が変わり始めているのも確かだ。
初戦のコートジボワールは、南アフリカではグループリーグ敗退だったが、忘れてはいけないのが、大会前の練習試合で日本はまるで歯が立たなかったこと。グループリーグ敗退とはいえ、コートジボワールはブラジル、ポルトガルと同居のグループだった。当時攻めたい攻撃陣と、守りたい守備陣の間で対立があった日本は、コートジボワールとの試合を境に守備的な戦術を取ることにチームとして納得したという。
ギリシャは、確かかつての対戦では日本は勝っている。ヨーロッパには珍しい、徹底的な守備戦術でヨーロッパ選手権を制したこともある。ヨーロッパでは相対的に強いとは言えないだろうが、一筋縄ではいかない相手だ。
そしてコロンビアは、かつて国際大会でも、日本は見事に逃げ切り負けをされたこともある、したたかなチーム。相手に攻めさせておいて弱点を探り、勝負どころを逃がさないイメージがある。ここ数年タレントが育ち、監督が知将ペケルマンになって変わったようだ。
超強豪がいないことで、すべてのチームがグループ突破の可能性を最後まで信じて、身体を張って戦ってくるだろう。日本の実力もそれなりに評価され、力の拮抗している、油断できない国ばかり、という風にほかの3ヶ国も思っている。今度は日本をナメてくれない。超強豪がいないこたは反作用する。
確かに悪い組み合わせではない。勝てる、というムードに浮かれて足元をすくわれたドイツワールドカップの経験も我々は持っている。超強豪ではないが、いずれ弱くなどない国が集まったグループ。そこに前述の要素が加わる。とても楽な戦いではない。
個人的には、初戦のコートジボワール戦を心配している。前回初戦のカメルーンは、意外に身体能力の差が目立たず、またル・グエン監督のもと、一枚岩であったとは言い難かった。過去の経験から言えば、コートジボワールは日本がガツンと当たりに行っても、ビクともしないイメージだ。
ワールドカップは様々なことが作用する。環境面を整えるのに、ザックはジーコほど意固地ではないようだが、初めて体験する長期キャンプ的な、ナショナルチームによる世界最高峰の権威ある戦いに、どう手腕を発揮するか。また勝負においては監督の格、というのもある。そこはザックの場合はある意味賭けみたいなものだ。あと半年、3月まで代表戦は無いが、山ほどやることは有るだろう。報道の具合を観察するのも楽しみだ。
土曜日は午前は出掛けて、午後は息子がプールでパパはワンコとお留守番。Jリーグを見ていた。首位横浜FMは点が取れず優勝を逃がす。うずくまってなかなか立ち上がれない中村俊輔の姿に、ちょっと同情した。
日曜日はルパン三世対名探偵コナンの映画。大人のカップルの姿も目立ち、満席だった。ちょっと今回、ストーリーが見えづらいところがあったが、やっぱり面白い。晩ご飯焼肉を食べに行って、家では子供の科学マンガ「宇宙のサバイバル」を読み込んだ。ゆっくり休んだし、子供とも遊んだし、年内のお仕事も残りわずか。頑張ろうかね。
日中は、妻が外出したので、ワンコたちとのんびり、本を読んでいた。我が家の金曜夜はなかなかTV多忙で、6時半からレゴチーマのアニメ、7時からドラえもんSP、8時からフィギュアスケートのグランプリファイナル、9時から金曜ロードショーのルパン3世対名探偵コナン。ここまで息子は起きていて、見終わった後寝かしつける。そしてパパは0時からワールドカップの抽選会。
半分眠りながら見ていたが、ついに決まった。コートジボワール、ギリシャ、コロンビア。私も世界のサッカー情勢に詳しいわけではないが、なかなか特徴のある組み合わせだと思う。
一つは、いわゆる「超強豪」と言われるチームが無い、ということ。コロンビアは現在世界ランキング4位らしいが、それでも超強豪、というにはちょっと遠い。日本は、1998年フランスではアルゼンチン、2006年のドイツではブラジル、先の2010年南アフリカではオランダというそうそうたるチームと同居し、いずれも負けてきた。超強豪がいないといえば2002年の日韓と同じと言える。懸念された死のグループでもなし、パッと見て地味な対戦国で、楽観的にもなれそうに見える。少なくともラッキーなことには変わりがない。
もう一つ、2010年、さらにこれまでと比べ、日本の立ち位置がやや変わったこと。南アフリカでは、はっきり言って、同居チームからも最下位だと見なされていた。2006年のドイツであっさり敗退したこともあり、カメルーンもデンマークも、オランダにはちょっと勝てないだろうけど、日本にはきっちり勝って、両国で2位の座を争うものと思っていたはずだ。デンマークなど最終戦の段階でもまだ余裕のコメントをしていたし、これまでは相手国がナメてくれていた。どこか余裕のプレーをしていて、相手には身体を張っている雰囲気が感じられなかった。初出場のフランスはもとより、日韓でもベルギーの監督は日本に同点に追いつかれてビックリした、と正直に言っていたが、これまではその程度の扱いが続いていたということだろう。
しかし、南アフリカで困難なグループリーグを突破し、その後香川、長友がビッグクラブに移籍し、本田のミラン入りも決まったこと、などから対戦国の態度が変わり始めているのも確かだ。
初戦のコートジボワールは、南アフリカではグループリーグ敗退だったが、忘れてはいけないのが、大会前の練習試合で日本はまるで歯が立たなかったこと。グループリーグ敗退とはいえ、コートジボワールはブラジル、ポルトガルと同居のグループだった。当時攻めたい攻撃陣と、守りたい守備陣の間で対立があった日本は、コートジボワールとの試合を境に守備的な戦術を取ることにチームとして納得したという。
ギリシャは、確かかつての対戦では日本は勝っている。ヨーロッパには珍しい、徹底的な守備戦術でヨーロッパ選手権を制したこともある。ヨーロッパでは相対的に強いとは言えないだろうが、一筋縄ではいかない相手だ。
そしてコロンビアは、かつて国際大会でも、日本は見事に逃げ切り負けをされたこともある、したたかなチーム。相手に攻めさせておいて弱点を探り、勝負どころを逃がさないイメージがある。ここ数年タレントが育ち、監督が知将ペケルマンになって変わったようだ。
超強豪がいないことで、すべてのチームがグループ突破の可能性を最後まで信じて、身体を張って戦ってくるだろう。日本の実力もそれなりに評価され、力の拮抗している、油断できない国ばかり、という風にほかの3ヶ国も思っている。今度は日本をナメてくれない。超強豪がいないこたは反作用する。
確かに悪い組み合わせではない。勝てる、というムードに浮かれて足元をすくわれたドイツワールドカップの経験も我々は持っている。超強豪ではないが、いずれ弱くなどない国が集まったグループ。そこに前述の要素が加わる。とても楽な戦いではない。
個人的には、初戦のコートジボワール戦を心配している。前回初戦のカメルーンは、意外に身体能力の差が目立たず、またル・グエン監督のもと、一枚岩であったとは言い難かった。過去の経験から言えば、コートジボワールは日本がガツンと当たりに行っても、ビクともしないイメージだ。
ワールドカップは様々なことが作用する。環境面を整えるのに、ザックはジーコほど意固地ではないようだが、初めて体験する長期キャンプ的な、ナショナルチームによる世界最高峰の権威ある戦いに、どう手腕を発揮するか。また勝負においては監督の格、というのもある。そこはザックの場合はある意味賭けみたいなものだ。あと半年、3月まで代表戦は無いが、山ほどやることは有るだろう。報道の具合を観察するのも楽しみだ。
土曜日は午前は出掛けて、午後は息子がプールでパパはワンコとお留守番。Jリーグを見ていた。首位横浜FMは点が取れず優勝を逃がす。うずくまってなかなか立ち上がれない中村俊輔の姿に、ちょっと同情した。
日曜日はルパン三世対名探偵コナンの映画。大人のカップルの姿も目立ち、満席だった。ちょっと今回、ストーリーが見えづらいところがあったが、やっぱり面白い。晩ご飯焼肉を食べに行って、家では子供の科学マンガ「宇宙のサバイバル」を読み込んだ。ゆっくり休んだし、子供とも遊んだし、年内のお仕事も残りわずか。頑張ろうかね。
2013年12月1日日曜日
晩秋
晩秋と聞いて思い出すのはやはり紅葉か。我が六甲山系もいい色に染まって、朝からハイキング客が多い。かつてはよく有馬の瑞宝寺公園に行ったものだし、東京の時は、有名な青山のいちょう並木を観に行った。六本木のイルミネーションも綺麗だった。そういえばさだまさしに「晩鐘」という歌があったなあ。
私が乗り降りするバス停はいつも人が多く、ふだんめったに降車ボタンは自分で押さないのであるが、先日はたまたま降りる人がいなくて、つい一つ乗り過ごしてしまった。慌てて次下車したが、より山に登ったところだから、降り立った夜のバス停の寂しいことったらなかった。幸いここなら家からさほど遠くなく、また犬の散歩で近くに来たこともあったから、道も分かって存外早く帰れたが、空気が冷たく、意外なところで晩秋を味わったりした。んーというか、もう冬だろうか。
さて、またブックオフに行って本選び。ブックオフには、通常値引き、つまり250円〜500円くらいの本と、105円コーナーがある。店によって差があるもので、擦り切れた本にこの状態で通常値引き?と思うこともあれば、こんなきれいなのに105円?と思うこともある。
今回の店はよく分かっていて品数も多く、最初通常値引きで手に取った本と同じものが、保存状態も悪くなく105円コーナーにもあったので、取り替えつついい買い物が出来た。
山本兼一「火天の城」
貴志祐介「火の粉」
近藤史恵「サクリファイス」
坂口安吾「不連続殺人事件」
の4つ。その他にも興味ある作品はあったが、まあこんなところで、だった。文芸もさすがに3年やっててお知らせもしているせいか、年末の総合ランキングへの期待の声をいただく。うーん、今年は難しいかな。3年間のベストも出したら、とも言われているので余計混迷するかも。
ジブリの「かぐや姫」。古典の原作にある程度忠実に作っているので興味深くはあるが、どうもよろしくなかった。子供向けのかぐや姫はだいぶ端折っているもので、かぐやは、自分に求婚する男たちに、この世にはあり得ない宝を持ってきて、と無理難題をふっかけるのだが、ここは普通カットされている。
その辺が入っているのははまあ、だったが、ちょっとあまりにまっすぐ創りすぎてて、面白くも深くもない。別のテーマを持たせているために、クライマックスであるはずの月に帰るくだりも唐突で神秘性もなにも薄まりすぎている。どうした!これで上梓したの?という感じであった。
土曜日、朝に息子が「ポケモンセンターに行きたい」と言ったので、じゃあ、朝ごはんと用意を済ませて、あの時間のバスに乗ろうかな、と算段したところで、胃にシクシクとした痛みが来た。
これはちょっとやめておいた方が、と息子に謝って、寝込む。特に午前中は、断続的になかなかな痛みがやってくる。胃液は酸なので、その分泌具合が悪いのか、もしくは寄生虫かと訝しんだ。そのうちに寒気もしてきて、多分疲労性の風邪かいな、と部屋を暖めて寝ていた。
なにも食べずでも腹は減らなかったが、夕夜少しづつご飯を食べて様子を見る。幸い夕方以降は強い痛みは無くなった。しかし妻にお風呂禁止令を頂き、風邪薬を飲んで、息子にうつすわけにはいかないと独り寝。去年も同じ時期に寝込んだなと思い返す。
翌日曜日もご飯以外はベッドで過ごす。だいぶマシにはなってきたがまだ違和感あり、時々痛んだりする。
寒気はなくなった。息子を退屈させて悪かったが、不調は土日で治すのが常。状態的にももう寝ている感じでもないし、早寝して、明日に備えよう。
私が乗り降りするバス停はいつも人が多く、ふだんめったに降車ボタンは自分で押さないのであるが、先日はたまたま降りる人がいなくて、つい一つ乗り過ごしてしまった。慌てて次下車したが、より山に登ったところだから、降り立った夜のバス停の寂しいことったらなかった。幸いここなら家からさほど遠くなく、また犬の散歩で近くに来たこともあったから、道も分かって存外早く帰れたが、空気が冷たく、意外なところで晩秋を味わったりした。んーというか、もう冬だろうか。
さて、またブックオフに行って本選び。ブックオフには、通常値引き、つまり250円〜500円くらいの本と、105円コーナーがある。店によって差があるもので、擦り切れた本にこの状態で通常値引き?と思うこともあれば、こんなきれいなのに105円?と思うこともある。
今回の店はよく分かっていて品数も多く、最初通常値引きで手に取った本と同じものが、保存状態も悪くなく105円コーナーにもあったので、取り替えつついい買い物が出来た。
山本兼一「火天の城」
貴志祐介「火の粉」
近藤史恵「サクリファイス」
坂口安吾「不連続殺人事件」
の4つ。その他にも興味ある作品はあったが、まあこんなところで、だった。文芸もさすがに3年やっててお知らせもしているせいか、年末の総合ランキングへの期待の声をいただく。うーん、今年は難しいかな。3年間のベストも出したら、とも言われているので余計混迷するかも。
ジブリの「かぐや姫」。古典の原作にある程度忠実に作っているので興味深くはあるが、どうもよろしくなかった。子供向けのかぐや姫はだいぶ端折っているもので、かぐやは、自分に求婚する男たちに、この世にはあり得ない宝を持ってきて、と無理難題をふっかけるのだが、ここは普通カットされている。
その辺が入っているのははまあ、だったが、ちょっとあまりにまっすぐ創りすぎてて、面白くも深くもない。別のテーマを持たせているために、クライマックスであるはずの月に帰るくだりも唐突で神秘性もなにも薄まりすぎている。どうした!これで上梓したの?という感じであった。
土曜日、朝に息子が「ポケモンセンターに行きたい」と言ったので、じゃあ、朝ごはんと用意を済ませて、あの時間のバスに乗ろうかな、と算段したところで、胃にシクシクとした痛みが来た。
これはちょっとやめておいた方が、と息子に謝って、寝込む。特に午前中は、断続的になかなかな痛みがやってくる。胃液は酸なので、その分泌具合が悪いのか、もしくは寄生虫かと訝しんだ。そのうちに寒気もしてきて、多分疲労性の風邪かいな、と部屋を暖めて寝ていた。
なにも食べずでも腹は減らなかったが、夕夜少しづつご飯を食べて様子を見る。幸い夕方以降は強い痛みは無くなった。しかし妻にお風呂禁止令を頂き、風邪薬を飲んで、息子にうつすわけにはいかないと独り寝。去年も同じ時期に寝込んだなと思い返す。
翌日曜日もご飯以外はベッドで過ごす。だいぶマシにはなってきたがまだ違和感あり、時々痛んだりする。
寒気はなくなった。息子を退屈させて悪かったが、不調は土日で治すのが常。状態的にももう寝ている感じでもないし、早寝して、明日に備えよう。
11月書評
6作品8冊。今年これまでのペースでいくと11月は極端に少ない。言い訳には何の意味もないが、最初の作品があまりに進まず読了までに10日以上を要し、さらに多忙のため読めない日が10日間ほどあった。ようは残る10日足らずで5作品6冊を読んだことになる。
まあしょうがねえな〜。龍にはちょっと、恨み節。ではスリーツーワン、スタート!
村上龍「歌うクジラ」(2)
難解で、しかも興味のある難解さでは無かった。読み進めるのに難儀し、昨今では最長の10日以上かかってようやく読了した。
期待して映画を観て、外された気分、というのが最も近いだろう。やたらと小難しい理屈が出て来るのもマイナス点。まったく実感として受け入れられない。物語の流れもサッパリだ。大きな曖昧な構想があるだけで、意外に、本当になにも考えられていない小説なのでは、と思った。
初めての村上龍はさんざんだった。まったく面白くなかった。これは読んだ人にしか分からないジョークだが、しばらく助詞の使い方がおかしくなってしまった。
乾ルカ「あの日にかえりたい」
見込み通り、傑作だったと思う。2010年の作品で、 直木賞候補作。webでそのことを知った時に、根拠はないが、ピンと来るものがあって、ずっと読みたかった。
表題作を含む短編集で、乾ルカ定番の、非日常の世界。北海道の気候風土もさりげなく取り入れて、全作品「あの日」をテーマに、書き上げられている。
以前にも書いたが、最初に読んだ「蜜姫村」がグロテスクホラーっぽい作品でがっかりし、次に「メグル」で、おそらくこれが乾ルカの良さなのだろうと少し思った。
そしてこの「あの日にかえりたい」で、全開とは言わないまでも、パワーある特徴を受け取った気がしている。考えてみれば、かえりたい「あの日」というのは誰にでもあり、かつ創作も様々なパターンが考えられるテーマだ。根元的にして、目の付けどころの良さ、感覚的にくすぐる部分も好みである。
もちろん、話の進み方は、先が読めちゃったりして、どこかしら拙いものが見え隠れするのだが、「色」はちゃんとあり、じんわりと読者の読みゴコロに響きしみこむ感じがする。
まさにこれから、の作家さん。もうしばらく楽しめそうだ。自分らしく、でも新境地に踏み込んだ、大作を読みたいな。
海堂尊
「チーム・バチスタの栄光」
次、次と読み進んだが、意外に単純な結末。捜査手法もさほど鮮やかには見えない。医療や大学病院の専門的な知識、現代手術の詳しい描写が入っているからこその話かと思える。
2005年の、このミス大賞。医療エンタメロジカルミステリーである。タイトルの不可解さも相まって、一時期大変もてはやされたベストセラーだ。
書いたのは、現役のお医者さんだ。解説には、一時期この作品の書評が出ない日は無かった、という意味のことが書いてある。それはそれですごい。
キャラ的には、主人公の田口を含め愛せる人物像を生み出しているのは確かだが、探偵役とストーリーが出来すぎているのも予定調和。もうひとつ収まりが悪かった。
葉室麟「蜩ノ記」
武士とは、認めらるべき姿とは。時代もののひとつの極と言える作品かと思う。
藩主の側室と密通したとして幽閉された、有能有志の武士・戸田秋谷。彼には、切腹まで10年の時間が与えられ、その間に家譜編纂の命が与えられていた。
時代ものといえば、江戸人情かエンタメ系でなければ、大体藩に御家騒動などがあって、それを軸に位の低い者や領民が振り回される、という図式がある。また、究極のサラリーマン社会である藩の内政の中で、不条理な命令に悩む主人公、というのもひとつの図式。そして、時代ものは、現代と違い、有形無形のしがらみのために、出来ないことが多いから、ドラマも生まれやすい、という土壌も併せ持つ。
2012年に直木賞を受賞したこの作品は、戸田秋谷という、有能な人格者を中心に進む。彼は光ある道をまっすぐ進める人で、人望を集め、彼の前では、悪はその影の濃さを増す、というキャラクターである。
この秋谷は、有能ゆえに政治の犠牲となるのだが、その因縁や、領民のある種リアリティある性質、彼を取り巻く、やや善悪がはっきりし過ぎている人々とストーリー展開の後、最後は大団円を迎える。
うーむ、さまざまな要素が相まって濃厚な物語にはなっているが、やはりはっきりしすぎているきらいがあると思う。ストーリー建ては勧善懲悪っぽいが、しかしそれを感じさせない噛み合い方で、考え抜かれた深さをも感じることができるのもまた確か。まあまず、だった。俗っぽさと清廉さはよい鏡ではあるが、きれいすぎる秋谷はちと完成度が高く、共感できるかは難しいところだ。
綾辻行人「奇面館の殺人」
これだよね、という感覚。「館」シリーズの第9作。今回も、とても読み応えがあった。ミステリ好きを揺らして、早めにひっくり返して、迷わせて、全ての要素を組み合わせて一気に理詰めで解決する。もはや現代推理小説家の雄、綾辻の本懐がここにあるのではないか。
「十角館の殺人」で鮮烈なデビューを果たし、早いうちから新本格派の旗手とされた綾辻行人は、20年以上の時を経て、未だ輝いている。
新本格派、つまり、舞台が大きな屋敷で、人が集まって殺人が起きて、連絡及び脱出が不可能な状況となり、探偵役が犯人を追い詰める。そこにはおどろおどろしい雰囲気だったり、ミステリ好きが喜びそうな仕掛けを潜ませる。
そして、犯行は、揺るぐことのない動機を持って成され、そのトリックにものっぴきならない事情が存在する。それが本格推理と呼ばれるものだ。私の中にも、この方式がミステリの基準になっているところがあり、ミステリを読む時にひとつの基準を構えてしまう。
資産家影山透一が、奇才中村青司に依頼して建てたという、東京都の外れにある奇面館。現在の主から、6人の男性に案内状が届く。奇態な仮面が数あるこの館で一晩過ごした参加者には200万を差し上げる、という。作家探偵鹿谷門実は、ひょんなことからこの集まりに参加することになる。そして、屋敷の主人が惨殺された姿で見つかった!
まあ、過去作品も、酔狂な集まりに強い動機は無かったように思えるが、今回は種明かしの肝心の部分が、必然性という意味で弱かったかなと。犯人当てのきっかけも、些細すぎるかな、と思った。
館シリーズもあと一つで打ち止めだとか。続けて欲しいなあ。
坂口安吾「明治開花 安吾捕物帖」
明治維新後しばらくの世相、風俗をよく描いている。事件も禍々しく、舞台設定にしても、どこか現代の新本格派を思わせる。
謎の操作に当たるのは洋行帰りの紳士探偵、結城新十郎。そして、取り巻きの剣術使い、泉山虎之介が、事件のことを伺いに行くのが赤坂氷川に住んでいる勝海舟である。
勝海舟と結城新十郎には接点は無く、事件について、両方が推理を披露する、というある意味贅沢な、ある意味混乱しがちな構成となっている。
昭和25年から27年に連載された物語ということだが、出てくる人が多すぎて、間を空けて読むと分からなくなる。それまでに説明の無かった者が突然出て来たりするし、新十郎の解決は、にわかに納得できかねるものある。
まあ、この作品を、安吾について、私にとっての鏑矢として、日本推理小説史上の傑作と謳われる「不連続殺人事件」を読んでみよう。
まあしょうがねえな〜。龍にはちょっと、恨み節。ではスリーツーワン、スタート!
村上龍「歌うクジラ」(2)
難解で、しかも興味のある難解さでは無かった。読み進めるのに難儀し、昨今では最長の10日以上かかってようやく読了した。
期待して映画を観て、外された気分、というのが最も近いだろう。やたらと小難しい理屈が出て来るのもマイナス点。まったく実感として受け入れられない。物語の流れもサッパリだ。大きな曖昧な構想があるだけで、意外に、本当になにも考えられていない小説なのでは、と思った。
初めての村上龍はさんざんだった。まったく面白くなかった。これは読んだ人にしか分からないジョークだが、しばらく助詞の使い方がおかしくなってしまった。
乾ルカ「あの日にかえりたい」
見込み通り、傑作だったと思う。2010年の作品で、 直木賞候補作。webでそのことを知った時に、根拠はないが、ピンと来るものがあって、ずっと読みたかった。
表題作を含む短編集で、乾ルカ定番の、非日常の世界。北海道の気候風土もさりげなく取り入れて、全作品「あの日」をテーマに、書き上げられている。
以前にも書いたが、最初に読んだ「蜜姫村」がグロテスクホラーっぽい作品でがっかりし、次に「メグル」で、おそらくこれが乾ルカの良さなのだろうと少し思った。
そしてこの「あの日にかえりたい」で、全開とは言わないまでも、パワーある特徴を受け取った気がしている。考えてみれば、かえりたい「あの日」というのは誰にでもあり、かつ創作も様々なパターンが考えられるテーマだ。根元的にして、目の付けどころの良さ、感覚的にくすぐる部分も好みである。
もちろん、話の進み方は、先が読めちゃったりして、どこかしら拙いものが見え隠れするのだが、「色」はちゃんとあり、じんわりと読者の読みゴコロに響きしみこむ感じがする。
まさにこれから、の作家さん。もうしばらく楽しめそうだ。自分らしく、でも新境地に踏み込んだ、大作を読みたいな。
海堂尊
「チーム・バチスタの栄光」
次、次と読み進んだが、意外に単純な結末。捜査手法もさほど鮮やかには見えない。医療や大学病院の専門的な知識、現代手術の詳しい描写が入っているからこその話かと思える。
2005年の、このミス大賞。医療エンタメロジカルミステリーである。タイトルの不可解さも相まって、一時期大変もてはやされたベストセラーだ。
書いたのは、現役のお医者さんだ。解説には、一時期この作品の書評が出ない日は無かった、という意味のことが書いてある。それはそれですごい。
キャラ的には、主人公の田口を含め愛せる人物像を生み出しているのは確かだが、探偵役とストーリーが出来すぎているのも予定調和。もうひとつ収まりが悪かった。
葉室麟「蜩ノ記」
武士とは、認めらるべき姿とは。時代もののひとつの極と言える作品かと思う。
藩主の側室と密通したとして幽閉された、有能有志の武士・戸田秋谷。彼には、切腹まで10年の時間が与えられ、その間に家譜編纂の命が与えられていた。
時代ものといえば、江戸人情かエンタメ系でなければ、大体藩に御家騒動などがあって、それを軸に位の低い者や領民が振り回される、という図式がある。また、究極のサラリーマン社会である藩の内政の中で、不条理な命令に悩む主人公、というのもひとつの図式。そして、時代ものは、現代と違い、有形無形のしがらみのために、出来ないことが多いから、ドラマも生まれやすい、という土壌も併せ持つ。
2012年に直木賞を受賞したこの作品は、戸田秋谷という、有能な人格者を中心に進む。彼は光ある道をまっすぐ進める人で、人望を集め、彼の前では、悪はその影の濃さを増す、というキャラクターである。
この秋谷は、有能ゆえに政治の犠牲となるのだが、その因縁や、領民のある種リアリティある性質、彼を取り巻く、やや善悪がはっきりし過ぎている人々とストーリー展開の後、最後は大団円を迎える。
うーむ、さまざまな要素が相まって濃厚な物語にはなっているが、やはりはっきりしすぎているきらいがあると思う。ストーリー建ては勧善懲悪っぽいが、しかしそれを感じさせない噛み合い方で、考え抜かれた深さをも感じることができるのもまた確か。まあまず、だった。俗っぽさと清廉さはよい鏡ではあるが、きれいすぎる秋谷はちと完成度が高く、共感できるかは難しいところだ。
綾辻行人「奇面館の殺人」
これだよね、という感覚。「館」シリーズの第9作。今回も、とても読み応えがあった。ミステリ好きを揺らして、早めにひっくり返して、迷わせて、全ての要素を組み合わせて一気に理詰めで解決する。もはや現代推理小説家の雄、綾辻の本懐がここにあるのではないか。
「十角館の殺人」で鮮烈なデビューを果たし、早いうちから新本格派の旗手とされた綾辻行人は、20年以上の時を経て、未だ輝いている。
新本格派、つまり、舞台が大きな屋敷で、人が集まって殺人が起きて、連絡及び脱出が不可能な状況となり、探偵役が犯人を追い詰める。そこにはおどろおどろしい雰囲気だったり、ミステリ好きが喜びそうな仕掛けを潜ませる。
そして、犯行は、揺るぐことのない動機を持って成され、そのトリックにものっぴきならない事情が存在する。それが本格推理と呼ばれるものだ。私の中にも、この方式がミステリの基準になっているところがあり、ミステリを読む時にひとつの基準を構えてしまう。
資産家影山透一が、奇才中村青司に依頼して建てたという、東京都の外れにある奇面館。現在の主から、6人の男性に案内状が届く。奇態な仮面が数あるこの館で一晩過ごした参加者には200万を差し上げる、という。作家探偵鹿谷門実は、ひょんなことからこの集まりに参加することになる。そして、屋敷の主人が惨殺された姿で見つかった!
まあ、過去作品も、酔狂な集まりに強い動機は無かったように思えるが、今回は種明かしの肝心の部分が、必然性という意味で弱かったかなと。犯人当てのきっかけも、些細すぎるかな、と思った。
館シリーズもあと一つで打ち止めだとか。続けて欲しいなあ。
坂口安吾「明治開花 安吾捕物帖」
明治維新後しばらくの世相、風俗をよく描いている。事件も禍々しく、舞台設定にしても、どこか現代の新本格派を思わせる。
謎の操作に当たるのは洋行帰りの紳士探偵、結城新十郎。そして、取り巻きの剣術使い、泉山虎之介が、事件のことを伺いに行くのが赤坂氷川に住んでいる勝海舟である。
勝海舟と結城新十郎には接点は無く、事件について、両方が推理を披露する、というある意味贅沢な、ある意味混乱しがちな構成となっている。
昭和25年から27年に連載された物語ということだが、出てくる人が多すぎて、間を空けて読むと分からなくなる。それまでに説明の無かった者が突然出て来たりするし、新十郎の解決は、にわかに納得できかねるものある。
まあ、この作品を、安吾について、私にとっての鏑矢として、日本推理小説史上の傑作と謳われる「不連続殺人事件」を読んでみよう。
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