2023年8月24日木曜日

8月書評の9

だいぶ日が短くなってきた。処暑。

◼️ 塩野七生・文 司修・絵
「コンスタンティノープルの渡し守」

コンスタンティノープル、トルコとキリスト教勢力がせめぎ合う東西の交差点・金角湾の小さな物語。

図書館の一般開架、単行本のところでたまたま目にした絵本。15-16世紀のオスマントルコ、イスラム教勢力とキリスト教勢力の戦争を描いた3部作「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」はとても興味深く読んだ。だいたいの背景は分かるし、やはりトルコのノーベル文学賞受賞者オルハン・パムクの本にもイスタンブールの地図がよく出てくるので地形も地名も少しは分かる。

オーブリー・ビアズリー風の白黒で線の細い絵に必ず鮮やかな色味のある図形、デザインを入れていて怪しさ漂う絵柄はなかなか不幸の匂いがして吸引力がある。

トルコに征服された金角湾、ギリシア商人居住地区ガラタと商都コンスタンティノープルを結ぶ舟の渡し守、14歳のテオは毎日忙しく働いていた。

ある日、テオは母を亡くしたためにガラタにある祖父母の家に住み、5日に1度コンスタンティノープルに住む父親の家に帰る美しい娘・ロクサーナと知り合い、舟の上でおしゃべりするのが待ち遠しくなった。いつしかロクサーナは降りぎわに百合の花束を残していくようになった。そしてある日、いつもの時間にロクサーナは現れなかったー。

塩野七生氏の著作でも、スルタン、トルコ側の君主のハーレムや男色ぶりについて書かれていたという記憶がある。

歴史的背景、そこに息づく少年と少女、淡い恋、大きな喪失。太古からギリシア人やマケドニア人が往来し、アラビア人、ペルシア人勢力と隣り合った場所、コンスタンティノープル。この上なくエキゾチックな、そして陰惨さを抱いた雰囲気が漂ってくる。

たしかオルハン・パムクがトルコ人としてトルコの歴史を描こうとしたところ、誰も読まない、と揶揄されたことがあった、とか書いてあった。トルコ側から見た、キリスト教勢力との最前線の抗争の歴史も読んでみたい気がする。

小アジア、ヨーロッパへの入り口、文化が交差する地域は魅力的だなあ。行ったことないし、読んでるだけ。でも古代ギリシアやトロイ戦争など歴史が古いし、星座にもなっている神々を感じてみたくもある、かな。

いろいろ考える絵本でした。

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