2021年12月30日木曜日

2021年間ランキング・各賞

◼️年間ランキング 各賞

今年もやります11年めの年間ランキング。まずは各賞。いつもながらテキトーに笑決めました。

◇表紙賞
葉室麟「緋の天空」

恒例の表紙賞はこれだーというのがない正直。内容から選出。光明皇后、奈良の大仏開眼のときの聖武天皇の后。藤原不比等の娘。藤原氏の権力伸長のための陰謀で長屋王が殺され、夫の聖武天皇は精神の均衡を崩し何度も遷都を繰り返す。

このような背景のためか、光明皇后は神経質な性格で描かれることも多い。私は光明皇后御願の国分尼寺、法華寺でモデルとなったと言われる十一面観音像を見た。能書家であり、多くの寺の建立に携わったことを考えても前向きな、いや、光り輝くような姿を思い描く。そんな小説が読みたかった。葉室流の小説でその願いが初めて叶った。

◇海外日本人文芸賞

・村田沙耶香「コンビニ人間」
・松田青子「おばちゃんたちのいるところ」


「文芸ピープル」という本で日本の女性作家さんのちょっと変わった本が欧米圏で出版ラッシュになっている、という情報を読みかじり、いくつかチョイスしてみた。商業的成功を収めた「コンビニ人間」はまあ、経験としてはよかったかなと笑。松田青子は歌舞伎や謡の知識も盛り込まれていて、もう1つくらいは読もうかな。

◇ホームズ賞

・Authur Conan Doyle
「A Scandal in Bohemia(ボヘミアの醜聞)」
「The Red-Headed League(赤毛組合)」

・ブラッドリー・ハーパー
「探偵コナン・ドイル」

英語原文で読むと、隅々まで言葉に注意を払うのでまた違った意味合いが見えてくる。人気爆発したこの最初の短編2つは改めてほんとうに楽しめた。赤毛組合は色彩感、やね。

パロディは、その人気が出る短編の前「緋色の研究」「四つの署名」まで発表したものの、まだ売れていなかったころのドイルとホームズのモデルとなったドイルの恩師ベル博士が切り裂きジャックに立ち向かう話。ジャックものは多いけれど、これもまた面白かった。

◇芸術賞①

・ベルトルト・リッツマン編
「ヨハネス・ブラームス クララ・シューマン
友情の書簡」

・ウィリアム・シェイクスピア
「ウィンザーの陽気な女房たち」

・ジャック・ジロドゥ「オンディーヌ」

惜しくもランキングに漏れてしまった作品たち。上はシューマンの未亡人のピアニスト・クララとブラームスの書簡集。当時の音楽家たちの名前も、2人の関係性もよく見え、読み応えがあった。

シェイクスピアは、まさにシェイクスピア型ドタバタ喜劇の要素が詰まった作品で大いに楽しめた。

「オンディーヌ」はいくつか舞台で観た、という声をいただいた。元の話となった「ウンディーネ」とともに演劇の古典の1つなんだなと再認識。

◇芸術賞② 絵画編

・上村松園「青眉抄」
・原田マハ「たゆたえども沈まず」
・堀尾真紀子「フリーダ」

コロナ禍で外出が憚られる中、芸術展も縮小ぎみ。絶対行きたかった京都の上村松園展。ホントに楽しかった。上村三代の作品所蔵・展示してある奈良・学園前の松柏美術館も訪ねた。日本画は油画に比べてペタッとしているけども、日本人を描くには合ってるような。しっとりしてクールで古典的な上村松園は好きだなあ。今年は影響で能の謡も勉強したし。五徳を逆さに被ってそれが鬼の角になる「鉄輪」なんてぜひ観に行ってみたい。いい感じ。

原田マハは、「サロメ」をランキングに入れている。こちらは最近巷に多いゴッホもの。ゴッホは強烈で観る者を惹きつける。だけども当時はまるで売れず逍遥したその人生に、日本人画商を絡ませたドラマ。北斎の風景画ほか浮世絵が流行したという世相にも興味があったので読んでよかった。

フリーダ・カーロの名は知ってはいたが、身体的なハンディや絵そのものについては詳しくなかった。迫力ある人だと感じた。

◇スポーツ賞
井手口孝「走らんか!」
福岡第一高校に男子バスケットボール部を作り、やがて県内絶対王者の福大大濠高校を倒すまでになり、全国制覇を成し遂げた先生の著書。自分が同じ地区でバスケット部だったから思い入れ深い本。

◇文豪関連賞

安部公房「箱男」
川端康成「眠れる美女」
アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ
「老人と海」

「箱男」はあんまりわけ分かんなかったけど、ダンボールを被って必需品は中にぶら下げて暮らすという発想が天才笑。

「眠れる美女」は川端康成尊崇のワタクシが読んでなかったエロな風俗?の話。これが読んで行くうちになんとも死の匂いを濃厚に嗅ぐからおもしろい。

「老人と海」は100分de名著で取り上げられたので再読。やっぱ読んでこの番組で、というのはとてもいいなと。川端康成もやってくんないかな。


◇特別賞

村上春樹「女のいない男たち」
アントン・チェーホフ
「かもめ・ワーニャ伯父さん」

今年観た中で最もよかった映画が「ドライブ・マイ・カー」。
村上春樹のこの短編集、映画は同名小説ばかりでなく他の篇のエッセンスも取り込んである。そして映画の核となる劇「ワーニャ伯父さん」。人生の深さと喪失。最後のセリフが心に響く。

「でも、仕方ないわ、生きていかなければ!ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。」

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