2021年12月19日日曜日

12月書評の4

12/13、14はふたご座流星群のピーク。13は8コ見えるものの小さかったり、目の真ん中からわずかにずれて見えたりと不完全燃焼。翌日20時前から4時間くらいにわたって10コ。ストローク長いのもばっちり見えて今年も満足。


◼️ コルートス 「ヘレネー誘拐」/トリピオドーロス「トロイア落城」

紀元後の叙事詩。戦争の発端と流れのハイライト。そしてトロイアの木馬。

トロイアの木馬はもちろん知っていた。手塚治虫の「火の鳥」にも確かあったし。しかしトロイア戦争の原因や詳しい経過は覚えていなかった。

そもそもギリシア神話は有名な神や話も多いけど、出演神、者が多くてうまく整理できない。今回も最初の方に出てきた名前が後に出てきて、この人、何した人だったっけ、というのがふつうにあった。1度整理してみようか。今回の解説で、ゼウスたちが第三世代、クロノスらが第二世代で巨神族と呼ばれていることを知り、ひょっとしてナウシカの巨神兵と関係あるのかーと調べてみたが、ないみたいだった。

さて、覚えたてのトロイア戦争の原因。そもそもゼウスが人口抑制のため大戦争を起こす計画を立てたらしい。

ある結婚式に1人招かれなかった争いの女神がムカついて、黄金の不和の林檎を投げ入れ、女神たちの間に争いが起こる。ゼウスの指名によりトロイアの王子パリスがどの女神が林檎にふさわしいか決めることになった。私を選んでくれたら最も美しい女をあんたにあげるわよ、と約束したアプロディーテー(本の記載に従った)を選んだパリスはわざわざスパルタまで行ってスパルタ王メネラーオスの妻ヘレネーをさらってきて、これが原因でギリシャ側(アカイア軍)とトロイアの戦争となったとのこと。

紀元前8世紀のホメロスの「イリアス」「オデュッセイア」といった叙事詩が有名。紀元後は4世紀後半と言われているクィントスの「トロイア戦記」が「ホメロス」以後のトロイア戦争の終局までを唯一描いている。今回の2つはその少し後の時代に「トロイア戦記」を下敷きに、ハイライト的に書かれた叙事詩のようだ。

ただ、「ヘレネー誘拐」のエピソードは断片的にばらばらに各資料に記されているらしく、まとめて記載してあるのはこのコルートスの作品のみだということだ。

「トロイア落城」はこれまでに比べ、木馬の詳細を少し詳しく書いている、らしい。またヘレネーがなんか不思議にフラフラして両軍に影響を与えている。

短い作品。でも2〜3ページごとに注釈ページがあって、量に比して時間がかかった。神話はもちろんスッと理屈が通らないことも多いけど、時としてトロイの木馬といったような壮大な話を創作する。

ふたご座流星群を観て楽しんでいるきのうきょう、ギリシャ神話と星座。これも正確にはそうそう覚えてない。ホントに大規模整理してみようかな。


◼️ 芥川龍之介「浅草公園ー或シナリオー」

とぼとぼと、妖しい迷子の道行き。瞬間的な場面の連なり。

この前に読んだ平野啓一郎「ある男」で父を亡くした少年が読んでいた作品。

映画の脚本のような形式の文学作品で、レーゼシナリオというそうだ。1から78まで番号をつけて短いシーンが連ねてある。

浅草の仲店で父といっしょに歩いていた男の子が玩具屋で綱を登ったり降りたりする猿を見ているうちに父とはぐれてしまう。少年はあわてて父と背格好が似た男を探しすがりつくが人違いだった。

そして途方に暮れ、ちょっと考えた後、とぼとぼと歩き始める。

目金屋の飾り窓の西洋人形が話しかける。

「目金を買っておかけなさい。お父さんを見付けるには目金をかけるのに限りますからね。」

「僕の目は病気ではないよ。」

造花屋の飾り窓からは鬼百合の莟(つぼみ)が開き始める。

「私の美しさを御覧なさい。」

「だってお前は造花じゃないか?」

少年が巡るのは煙草屋、鐘楼、射撃屋、劇場の裏・・ひっそりとしているような、妖しいような、幻想的、断片的な風景が異世界のような雰囲気を醸し出すー。

この作品は亡くなった年に書かれたもの。つまり濃厚な死の匂いが漂う作品「歯車」と同じ。だんだんと、分かりやすいストーリーのあるものでなく心象を描き作品化していく傾向にあったのだろうか。作品化、というのは、個人的に著者が効果を狙っていると思うからで、やはり広い意味では物語となっているのかもしれない。

雑踏の中で父とはぐれた幼な子の頼りない気持ちを取り巻く一種ホラーのようなファンタジー。

短いだけに考えさせられる。

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