日本シリーズはまれに見る激戦でおもしろかった。ちなみにヤクルトとオリックス。明治神宮野球大会、花巻東の佐々木麟太郎、広陵の真鍋彗、九州国際大付の佐倉俠史朗と1年生スラッガーのホームラン全部見た。花巻東vs広陵の準決勝は手に汗握る好ゲーム。負けた佐々木麟太郎は涙を浮かべていた。大阪桐蔭のドラフト候補、松尾汐恩も決勝で2本ホームランを打ってた。
トム・ホーバスJAPANの初陣中国戦、中国は本当に強かった。新しい選手も多いし、やはり2週間ではスピードの中でのスリーポイントの精度も低いし、連携もダメだしで仕方ないところも多かった。
PGの齊藤拓実、寺嶋良、岸本隆一、さらにSG西田優大の活躍が目立った。いい感じ。これからこれからだ。
◼️️ E•T•A•ホフマン
「くるみ割り人形とねずみの王様」
バレエの原作。可愛く、怪しく、おどろおどろしい。
友人にバレエの先生がいることもあって、今年「ドン・キホーテ」という舞台を映像化した作品を映画館で観た。クリスマスの定番という「くるみ割り人形」がまもなく封切られる。チャイコフスキーの名曲も楽しみに、観に行こうとは思っているが、なにせバレエはセリフがないし、どんなストーリーかは押さえておいたほうが分かりやすい。興味もあって原作を借りてきた。
とはいえバレエはホフマンの物語を父アレクサンドル・デュマがかなり省略してフランス語訳、さらにおよそ80年の時を経てバレエの台本化されたそうで、不気味さかげんがなくなっているとか。子ども向けの話もより幻想的だったりおどろおどろしいほうがおもしろかったりするからカットされていない原作を先に読むことができて、かえって良かったと思った。
マリーとフリッツの幼い兄妹はクリスマスイブに、上級裁判所顧問官のドロッセルマイヤー伯父さんから大きなお城のレプリカと、くるみ割り人形をプレゼントされる。マリーは人形がとても気に入った。しかしくるみを割っていたフリッツが乱暴に扱ったために、人形の歯は欠け下顎が緩んでしまう。
人形と一緒にベッドへ入ったマリーの耳に、不思議な声が聴こえてくる。やがて、くるみ割り人形軍とねずみの魔王たちとの戦闘が始まったー。
最初の戦闘で人形軍は負けてしまい、マリーはねずみ魔王から、傷ついた人形への攻撃をたてにした脅迫を受ける。くるみ割り人形には幻想の王国での物語があり、ドロッセルマイヤー伯父さんのお話でマリーは夢のような、時にグロテスクなストーリーを追体験し、ついには人形の世界に入り込む。
どこかほんのりとアリスっぽくもあるかな。とハッピーエンドのファンタジックな物語。ドロッセルマイヤーがけっこう怪しい役回りで、良い味を出している。くるみ割り人形、というのがまたおどろおどろしさとコミカルさを醸し出すいいギミックだなという感じもする。その分ハッピーエンドが際立つのかなと。
子どもの小さな頃、よくディズニーの映像を観た。クリスマスという季節は大きな想像力を広げたくなる外見をまとう。
さて、バレエ映画が楽しみだ。ドロッセルマイヤーの奇妙さ、別の世界の人間という怪しさはそのままにしてて欲しいかな。
◼️ カズオ・イシグロ「特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレイクスルー」
ノーベル文学賞受賞記念講演。「気づき」の大切さ。ちょっと高次元だけども。
図書館をウロウロしている時に目に入った本。ノーベル賞の記念公演は川端康成「美しい日本の私」、トルコのオルハン・パムク「父のトランク」と読んできて3つめで、それぞれ感慨深いものがあった。
川端はインドより東のアジアでは初の受賞だったから日本の美をアピールしたもので、オルハン・パムクはトルコの環境を描写しつつ、父との絆を強調した感動を呼ぶ話だった。
カズオ・イシグロは自分の辿った文学的な道と気づきの瞬間を述べている。
カズオ・イシグロは5歳までを長崎で過ごした。いまでも当時の風景ははっきりと心に残っているとか。
地方の大学に通っていた25歳の頃、自分でも驚いたことに生まれた街、長崎の終戦間際の話を書き始め、異様なエネルギーをかけて創作に没頭したという。あれは「決定的に重要な数カ月」でその時期がなければ作家になっていなかったかも知れないとか。
イギリスに来て最初の11年は、日本へ帰る前提で、日本の雑誌ほか情報を常に家族が仕入れていたという。その中で、自分が属し、自信とアイデンティティを与えてくれる場所を「保存」することが必要だったと。記憶に持っている日本は年月の間にどんどん変わっていってしまうことを自覚していたから、とイシグロは書いている。
その作品「遠い山なみの光」、やはり終戦後の日本を舞台にした続く第2作「浮世の画家」は私も読んだ。時代による微妙な空気と断絶を間接的な会話で描いた話だった。そういう意味があったのかと、驚くような、腑に落ちるような感慨をいま述懐を読んで持っている。
その後は日本ものとは離れた。第3作「日の名残り」を書き上げ、何かが足りないと思っていた。トム・ウェイツの「ルビーズ・アームズ」というバラードを聴いていた時、天啓が舞い降りた。鎧のように固めた感情に亀裂を入れることー。「日の名残り」は堅いイギリス流の執事が思い切って踏み出さすことが出来なかったために喪失を味わう話である。
さらに、タイトルにもある「特急二十世紀」。この戦前の映画を見ながらイシグロは、人間関係を立体的に描いてみては、といったような気づきを得たという。重要なターニングポイントだったとか。
この時のブレイクスルーは「わたしを離さないで」に生かされているというが、さすがに分からない^_^
世界情勢は2000年代にもドラスティックに変わっておりイシグロは実感を持って見つめている。ノーベル賞受賞者としての提言もある。
私的には、
物語ることの本質は、何よりも感情を伝えることであり、私にはこう感じられるのですが、おわかりいただけるでしょうか、あなたも同じように感じておられるでしょうか、と語りかけるものー。
という言葉に惹かれる。
だんだん幻想的になっていくなと思いつつ、まだ未読の作品もあるので、講演の感想をもってまた読むのも楽しみだ。
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