ひさびさ夜外食は新大阪でお好み焼き。ソース辛いの食べたかった・・!
◼️ アントン・チェーホフ
「かもめ・ワーニャ伯父さん」
チェーホフ4大劇の2つ。独特の哀しさ。
再読。読もうと思ったきっかけは「ドライブ・マイ・カー」という映画で、劇中劇で主人公が「ワーニャ伯父さん」のセリフの練習をし、その役を演じ・・という構成で、よいアクセントとなり、劇以外のストーリーの成り行きにも影響を及ぼしていたから。映画の中の場面は断片的なので全体を知りたいと思った。
「かもめ」といえば、北村薫の名作「円紫さんと私」シリーズでヒロインの女子大生「私」が好んでいた。
裕福な田舎の地主の娘ニーナが女優になろうと有名作家の男と街に出るが、役者として芽が出ず、男にも捨てられる話の「かもめ」。
「ワーニャ伯父さん」はやはり田舎で暮らす退職教授とその若い妻エレーナ、先妻の母とその息子で40歳台後半のワーニャ、教授と先妻の娘ソーニャらのドラマ。みな先妻一族の地所に住んでいる。
家族は教授に振り回される生活をしており、荒んでいる。器量の良くないソーニャは出入りの医師アーストロフに憧れていた。エレーナがソーニャの想いを医師に打ち明けるが、アーストロフにその気はなく、エレーナに言い寄る。一方、教授はこの地所を売ってはどうかと言い出し、長年地所の管理をし教授に尽くしてきたという自負を持つワーニャは憤慨する。
ついには教授とエレーナの夫婦が出て行き、アーストロフも離れ、ワーニャとソーニャらは取り残されるー。ワーニャが教授の先妻、つまり自分の妹に救いを求めているのが印象的。
どちらの劇も羽ばたけない鬱屈がベースになっている。劇の成り行きというよりは地方で裕福でなく貧乏でもなく、世間的な感覚に左右される家族が、これと言ってしまえない、解決方法の見えないような長い憂鬱を抱えていて、それがチェーホフ独特だな、とも思う。
色恋沙汰が多く、シェイクスピアっぽい向きも?笑こちらはベタッと押しつぶされたような雰囲気を助長しているような。明るくない。
「かもめ」は向こう見ずに飛び出してみたもののうまくいかない人生を描き、悲劇で終わる。「ワーニャ伯父さん」はラストがはじける感覚。
アストーロフにふられたソーニャは、自分の人生はなんだったのかと悲しむワーニャを励まし、2人で地所管理の仕事を猛然とこなす。
「でも、仕方ないわ、生きていかなければ!ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。」
「あの世へ行ったら、どんなに私たちが苦しかったか、どんなに涙を流したか、どんなにつらい一生を送ってきたか、それを残らず申し上げましょうね。すると神さまは、まあ気の毒に、と思ってくださる。その時こそ伯父さん、ねえ伯父さん、あなたにも私にも、明るい、すばらしい、なんとも言えない生活がひらけて、まあ嬉しい!と思わず声をあげるのよ」
この後にもきらきらしい、安堵の世界の表現がなされる。そしてその時こそやっとー
「ほっと息がつけるんだわ」
静かに幕。
ブレイクスルー、希望の長セリフ。映画でも抜群に効いていた。
絶望さかげんには、どうも同化しかねるのが正直。なのでつながりとか、セリフの深さなどはもうひとつ推し量れない。でも、このラストの意外さと希望にはほだされる。
誰にもある人生の価値の検討。普遍的でよく分かった気になる。
◼️ 髙田郁「あきない世傳 金と銀十一 風待ち篇」
快進撃の最新巻。幸の「力」は横に太くなっていく。
髙田郁といえばベストセラーとなった「みをつくし料理帖」。番外編も出ている。その本編は10巻。おそらく「あきない世傳」はも少し人気が及ばないかも。でも、「みをつくし」を巻数で超えたんだなあと、ちょっとした感慨がある。
江戸が大火に見舞われる。幸の五鈴屋は助かったが、懇意にしている人気役者、菊次郎らが出演する芝居小屋や幸の妹・結の出奔先である音羽屋も焼けてしまった。
先に藍染の浴衣で評判となった五鈴屋は、火の用心の祈りを込めた柄を考案し、浅草太物仲間と染めの技術を分かち合い、全店で売り出す提案をする。
しかし火事でダメージが深いとも噂される音羽屋が呉服から太物商いに手を広げ、どうやら不作の綿を買い占めているらしいという情報が入る。また、染めの特殊技術を教えた職人が姿を消した。
しかししつこい妨害により太物仲間の店たちには結束が生まれた。そして、幸の元に新たな浴衣の依頼が舞い降りるー。
太物は絹の呉服ではなく綿を中心とする庶民的な着物のこと。
十一巻まで、幸の人生が変転し、大阪から江戸へと進出し、呉服から太物扱いへの転換を余儀なくされ、さらに知恵を絞るとここまでもなかなか壮大だったけれども、まだまださらなる仕掛けがあるかとその手際に驚き喜ぶ。知恵は江戸風俗の延長上にあり、月日を考えさせる。
もちろん快進撃にはきれいすぎるな、という感はある。次はいまや敵愾心むき出しの結の身に転機が訪れるのではと見ているが、まだ単純な悪役の延命を図るか・・?
楽しみに次を待とう。
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