嵐山。
◼️ 堀尾真紀子「フリーダ・カーロ」
衝撃というか、心のどこかを抉られる良書。
映画のタイトルにもあり、ラテンアメリカの画家さんということは知っていたけれど、こんなに壮絶な人生を歩み、挑むような絵を描く人だったとは知らなかった。
1907年、メキシコシティ南西のコヨアカンに生まれた。幼い頃の病で右脚の発育が悪く、また10代後半に電車とバスとの衝突事故で凄まじい重傷を負い、一命は取りとめたものの、以降絶えず右足と背骨の痛みに苛まれることになる。
フリーダは高名な画家ディエゴ・リベラへ自分の絵を見せに行き、2人は恋に落ちた。親子ほども歳の離れた結婚。フリーダはディエゴへの深い愛を終生保ち続けた。
フリーダは色鮮やかな民族衣装を纏い、おしゃれで、気位が高く、孤高。フェミニン、コケティッシュで奔放。メキシコに逃亡していたトロツキーとも浮名を流した。自画像が圧倒的に多いその絵は、こちらに刺し込んでくるかのような人間臭い強さを持っている。2人のフリーダの心臓が描かれ、血管で繋がっている「二人のフリーダ」、割れた身体にのぞく背骨を描く「ひび割れた背骨」、顔は大人の赤ちゃんフリーダが乳母の乳を吸う「乳母と私」などグロテスクと言える絵も多い。でも何か熱いパワーを投げつけられているような力がある。
ディエゴとは離婚して再婚した。彼は他の女性と付き合うことを隠そうとはせず、果てはフリーダの妹、クリスチーナとも関係を持つに至ってしまう。フリーダは傷つき、自らも日本人の彫刻家イサム・ノグチら多くの愛人と付き合う。
やがてニューヨークで、パリでの展覧会でフリーダは成功を手中にする。パリではマルセル・デュシャンの手配で絵が展示され、ミロやカンディンスキー、そしてピカソもフリーダを称賛した。
退廃的なパリを厭い、やがてフリーダはメキシコへと帰る。美術学校の教師となり生徒たちにも慕われたが、やがて身体の状態が悪化、椎骨などの手術を繰り返し投薬も増えていった。
「希望の木」という作品には、病人運搬車に横たわり背中の手術の傷を見せている姿の隣に、赤いテワナ衣装をまとい守護神のように付き添って座っているフリーダが描かれている。これも二人のフリーダ。この絵には惹きつけられる。
なんというか、読んでいると、不思議な感覚が抉ってくる。それはすなわち、フリーダの絵から受ける感覚と同じ。つながった、太く長くキリッとした眉、冷めたような、しかし深く覗き込んでくるような瞳。
イデオロギーに支配される世界と国家、さらに芸術界ではシュールレアリスムという概念が強かったころ、土着の文化を愛したフリーダは、苦難の中、時代を駆け抜け、自分を抉り、決然とした絵を残した。
いまはフリーダ美術館となっている生家「青い館」読むだけで強い魅力を感じる。
集中できる、良書でした。
◼️ 村上春樹「古くて素敵なクラシックレコードたち」
オーラをまとうというレコードたち。すごいですねえ。
いままさにショパンコンクールにハマっている。たまたま貸してもらったこの本を、コンテスタントの演奏を聴きつつ読み進めた。
村上春樹氏は1万5000枚くらいLPレコードを持っているとか。アナログレコードが趣味であり、LPレコードにしかないオーラのようなものを楽しみに集めているという。しかも価値のあるものに興味はなく、古レコード屋のバーゲン箱を漁ってなるべく安く買ってくるのが趣味らしい。ジャケ買いするのも好きみたいである。チョイスの年代も古く、好みも見える。
いやー好きなんだろうなあ、というのが見える。堪えられないんでしょうね。
その中から486枚を抜き出して紹介した本。私もクラシック好きなのだが、初心者コース修了ていど、まだまだ修行中の身。ふむふむと楽しく読み込めた
ヴァイオリニストはオイストラフやハイフェッツ、メニューイン等々。たまにコーガンとかアンネ・ゾフィ・ムターとか。有名どころ。
ピアニストでよく出てくる印象が強いのがゼルキン。そしてルービンシュタイン、バレンボイム。
両方とも人気がもう一つな人も多数出ている。そういうのも楽しみのようだ。自分だけが見つけたマエストロ、的な。
ヴァイオリンはヒラリー・ハーン、チョン・キョン・ファなんかの名前は出てこないしピアノではキーシンなど出てくるはずもなく果てはアルゲリッチも1枚出たかどうだったか。
指揮者はアンセルメ、ミュンシュ、ミトロプーロス、そしてバーンスタインなんかが好きなのかなと思わせる。クラシックの本だけに、音の響きや曲の表現が実に多彩。
興味が湧いたのはハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲とか弦楽四重奏、ピアノ五重奏などなど。あまり聞かず、これまでやや敬遠気味だった。
ジャケット見てしまう気持ちは分かるなー。行き当たりばったりを好むのもわかる気がする。
目で楽しめて、音でまた楽しむ。そろそろクラシックコース中級編くらいに進んでみようかなっ♪
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