宝厳院・獅子吼の庭。手前が「獅子岩」
◼️ ウィリアム・シェイクスピア
「終わりよければすべてよし」
恋と封建制度がごちゃっとねじれて一気に解決へ。シェイクスピアらしい喜劇かなと思いきや、他にはない特徴も。
新潮文庫のシェイクスピアは全部読んで、ソネットも読んで、残りはちくま文庫でと思ってはいたが手が出てなかった。図書館にもなかったはずが、これがポンと置いてあったので借りてきた。
ものが古典の部類に入るだけにちくま版も全部揃ってるかと思いきや、この文庫は今年の春に出てようやくシリーズ完結だとのこと。ちょっと驚いた。
さて、終わりよければすべてよし、原題は
All's Well that Ends Well
どんな話なのかな。シェイクスピア久しぶり。
若くしてルシヨン伯爵となったバートラム。母に仕えるヘレンは伯爵の侍医の娘。ヘレンはバートラムに恋をしていた。
ヘレンはフランス王が医師も匙を投げた病と知り、父秘伝の薬で治療すると直訴する。そして無事治癒の暁には、好きな貴族を私の夫に欲しいと持ちかけ、約束する。果たして王の病は全開し、伯爵の後見人である王はバートラムにヘレンと結婚するよう命じる。
バートラムは身分違いのためこれを嫌がり、逃げるため、腰ぎんちゃくのパローレスの言にも押されて、フィレンツェとシエナの戦争に参加する。戦で功を遂げたバートラムはフィレンツェの女、ダイアナを口説こうとやっきになり、そのことが巡礼の旅に出ていたヘレンに知れる。ヘレンはダイアナと通じ、策略を持ちかける。
一方伯爵の仲間内では軍鼓をなくしたパローレスへの非難が高まっていた。いかに軽く味方を裏切る輩か証明しようと、貴族たちはバートラムに計略を提案する。戦のどさくさに紛れてパローレスを拉致し、敵方の外国人を装って監禁・尋問するというのだ。策ははまり、パローレスは捕らえられたー。
この後ヘレンは死んだふり、までする。結果的にはパローレスはみなの思い通りの人物だったことが知れ、またバートラムの悪行はすべて明らかになる。現代のコメディみたいやね。
取り違え、というか作戦だけども、源氏物語の宇治十帖をも思い起こさせるベッド・トリックや、パローレス拉致以降、外国人になりすますドタバタ、おなじみの道化、ねじれた恋物語などなどシェイクスピア色満載。最後は、そうまでして結婚してもだいじょぶなの?となんとなく疑問を感じて終わる。まあ喜劇ですから。
訳者あとがきによれば女性のセリフで始まるシェイクスピア劇はこれが唯一だそうだ。さらに女性の独白じたい珍しいシェイクスピアもので、ヘレンの独白の行数は「ロミオとジュリエット」のジュリエットについで2位で、ヘレン以外にもバートラムの母の伯爵夫人、さらにはダイアナにも独白がある。3人の女性キャラに独白をあてたということに、訳者はシェイクスピアの肩入れを感じているとか。
確かに、「ヴェニスの商人」に代表されるように、シェイクスピアには賢い女性が活躍する話はよくあるけれど、独白も多いヘレンの強さは今回ちょっと異質かも知れない。
序盤、ヘレンとパローレスが処女について高らかに言い合う場面がある。全編に明らかにセックスを意識したセリフが散りばめられており、あまり上演されないイメージもどこか納得、という気がした。
やはりシェイクスピアは楽しい。今回は特殊な点もあった。なんか世界の趨勢に合ってるような笑。もう少し読みたいな。
◼️ 髙田郁「あきない世傳 金と銀十 合流編」
長きにわたる伏した期間を終え、幸と五十鈴屋が羽ばたく巻。
江戸店主・幸の五鈴屋は呉服・太物屋。順調に売り上げを伸ばしていたが、お上から多額の借財を押し付けられ、幸の妹・結は新しい図案の型紙を手にライバル店へと駆け込んで女将となる。さらに呉服仲間の商売を妨害したとして仲間を外されて主力である呉服商売が出来ず、廉価の木綿や麻などの太物だけの店となってしまった。
幸と周囲は知恵を巡らせる。暑い夏に、部屋着、下着ではなく、外でも1枚で着こなせる薄く小粋な浴衣があればー。川開きの花火をヒントに図柄も決まり、長い時間をかけて準備をし、藍に白抜きの浴衣で勝負に出るー。
ポイントとなる人の1人は菊栄姉さん。もと五鈴屋の嫁、離縁して戻った実家「紅屋」で耳かきつきのかんざしなどのヒット商品を生み出し、女名前OKの江戸で独立して勝負しようと五鈴屋江戸店に居候する、幸の姉代わり。商才に恵まれていてよき話し相手だ。いいキャラやねえ。いかにも江戸ものっぽい。
正直ここ数巻たるかったのだが笑、シリーズものだからこその時間のかけ方で、ようやく新しい局面がひらけた感じで清々しい。
笑いを取るところも面白いし、さてこれからどうなるか。最新巻はもう手元にあるからすぐ追いつくなっと。
0 件のコメント:
コメントを投稿