8月は13作品12冊。まずまず充実していた月だった。コロナウィルスはデルタ株が猛威をふるい、各地の過去最多記録を軽々と更新して、兵庫県もついに1000人越え。一時期280人とかが最高だったころはもはや悠久のかなた。
8/20から緊急事態宣言が発令され、ピークアウトの兆候がみえている。対策が功を奏したかはともかく、どの波にもピークはあるようだ。私もワクチンの接種が2回終わり。感染はするのでこれまで通り注意するだけだ。
◼️ 宮部みゆき
「泣き童子 三島屋変調百物語三之続」
残暑の中の怪異譚。充実した巻!
残暑はまだきびしいし、この季節にこそ怪談!という気分があってシリーズ読み。
以前も書いたけれど、宮部みゆきは上手さが先行してるような感があってやや苦手ぎみだったけれど、この巻は絶好調、筆のノリが感じられて面白かった。
わけあって江戸の袋物屋の叔父夫婦に預けられている18歳のおちか。叔父の発案で怪奇な物語を聞き捨て、語り捨てで集める趣向の聞き役となる。すでに評判は広がり、きょうもおちかは「黒白の間」で町の語り手からもたらされる不思議な話に耳を傾けるー。
今回はなかなかぞっとする話もあり、また外へ百物語を聞きに出掛ける趣向もありでバリエーションが豊か。なんといっても中心は「まぐる」だった。既読の「荒神」を想起させるかのような正体不明のとんでもない生き物が荒れ狂う。なんか「進撃の巨人」なんて思い出したりして。
綾辻行人の「殺人鬼」シリーズも、殺人鬼という生き物が、残虐至極に子供から大人まで殺しまくる話だけれど、いっそフィクションと割り切れるからか、逆に独特の吸引力があった。
解説によれば、著者は「これまで以上に、やりたい放題やらせていただいた感じです(笑)」とコメントしているとか。宮部みゆきの好みが炸裂し、読んでいてノリノリなのが分かるような気がした。まさにアヤツジの「殺人鬼」にも似た感覚に捉われた。
「怪異を語り、怪異を聴くと、日頃の暮らしのなかでは動かない、心の深いところが音もなく動く。何かがさざめき立つ。それによって重たい想いを背負うこともあるが、一方で、ふと浄められたような、目が覚めたような心地になることもあるのだ。」
この作中の言葉はいやー名文、と唸らされることしきり。
まとまりがよく、楽しめた巻でした。
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